2016年9月27日火曜日

【競技会場は50カ所】愛知県と名古屋市、26年アジア競技大会開催地に

26年の第20回アジア競技大会の開催地が25日、ベトナム・ダナンで行われたアジア・オリンピック評議会(AOC)の総会で愛知・名古屋に決まった。同大会が日本で開催されるのは1958年の東京、94年の広島に次いで3回目。県内で開かれる大規模な国際イベントは05年の「愛・地球博」以来となる。

 構想によると、36競技をメーンの瑞穂陸上競技場(名古屋市瑞穂区)はじめ50会場で開く。名古屋市を中心に、県内市町村の既存施設を可能な限り活用する。開催費用は主催者負担経費約850億円。内訳は、運営費約440億円、選手村整備費約300億円、仮設の競技会場整備費約110億円。全体のうち入場料やスポンサー料収入で約250億円をまかない、残り約600億円を県と市で負担する。割合は県が2、市が1。ただ、金額については不確定要素が大きいことから、さらに精査し、費用の圧縮にも努めるとしている。

 今後、整備が予定されている施設には、市が計画している(仮称)瑞穂公園体育館(セパタクロー会場)、港区のポートメッセなごや新第1展示場(スポーツクライミング)、県が常滑市に計画している大規模展示場(フェンシング、スカッシュ、BMXレース)などがある。ビーチバレー会場については(仮称)碧南緑地ビーチコート(碧南市)を新たに整備する。メーンの瑞穂陸上競技場やバレーボール会場の愛知県体育館は、大規模改修が予定されている。

 1万5000人を収容する選手村は、名古屋競馬場(港区)を取り壊した跡地が候補地。整備費用は300億円と見込まれ、県と市が1対1の割合で負担する。名古屋競馬場は、弥富トレーニングセンター(弥富市)に移転する予定。

 県は26日、開催が正式に決まったことを受け、知事を本部長とする「第20回アジア競技大会推進本部」と「アジア競技大会推進室」を設置した。推進本部の第1回会議を10月3日に開く。開催構想の策定は、県の委託を受けパシフィックコンサルタンツ・日建設計・日本設計・山下設計JVと電通が担当した。

【回転窓】快適職場で健康的に働こう

記者になって20年余。あちこちの取材先を訪れた時、きれいで快適そうなオフィスだな、と感じることが最近、目に見えて多くなった。ショールームをそのまま再現したような執務室もある▼取材を終えて社に戻り、資料が山積みで雑然とした自分のデスクを見ると、思わずため息をつきたくなる。オフィスのきれいさは業績や社員の働きぶりにどれほど影響するのか▼正確なところは分からないが、整然とした空間に身を置けば、自然と整理整頓しなければという気持ちにはなろう。その結果「あの資料はどこ?」「必要なメモが見つからない」ともの探しに無駄な時間を費やすことはなくなりそうだ▼快適な職場づくりや働く人の健康確保を目的にした全国労働衛生週間が今週土曜日にスタートする。1950年に始まった取り組みは今年で67回目を迎えるという▼建設業界でも近年は職場環境の改善に目が向けられ、あの手この手の策が講じられるようになった。屋外仕事が多いだけに快適さを追求するのは難しい面もあろうが、せっかくの労働衛生週間。健康的に働ける職場づくりをあらためて考えてみては。

【記者手帳】豊洲市場問題から考える

 外部の専門家会議の提言と異なり、土壌汚染対策の盛り土が施設直下にはされていなかった豊洲新市場の問題で東京都が大きく揺れている。詳細な経緯や理由は-。テレビや新聞は真相をめぐる報道を連日繰り広げている◆問題を最初に指摘したのは都議会共産党。その後、他の政党も独自の調査を次々敢行した。マスコミ、議会、都の3者が発信する情報が錯綜し、その慌ただしさが世間の不信感を一層高めているようにも見える。危ぶまれるのは、都が対策は万全としてきた豊洲市場での問題発覚で、他の公共事業にも疑念を持たれはしないかということだ◆特に世間の注目度が高い2020年東京五輪の競技会場整備などは、矛先が向きやすい事業の一つではないか。証拠もない一方的な疑惑には取り合う必要はないだろうが、建設業界としても、理不尽な批判が行われないよう気を引き締めておきたい◆全国では、地震や台風被害からの復旧支援で多くの建設業者が奔走している。「日本経済をけん引する」と自負する東京が、建設業の足を引っ張るような事態にだけはなってもらいたくない。(も)

【組み立て作業着々】関東整備局と中日本高速会社、外環道東名JCTの現場公開

 関東地方整備局と中日本高速道路会社は26日、東京外かく環状道路(外環道)都内区間の本線トンネル工事で使用するシールドマシンの組み立て状況を、報道陣に公開した。

 (仮称)東名ジャンクション(JCT、東京都世田谷区)から北側に向かうトンネルの掘進へ準備を進めており、国内最大規模のシールドマシンを組み立て中。同日には、カッターヘッドの一部が地上から立坑内に搬入された。

 公開されたのは、中日本高速会社が発注した「本線トンネル(北行)東名北工事」の現場。施工は大林組・西松建設・戸田建設・佐藤工業・錢高組JVが担当している。東名JCTから井の頭通りと交差する地点まで、外径15・8メートルのシールドトンネルなどを構築する。施工延長は9099メートル。工期は19年6月6日まで。

 泥土圧式シールド工法で、マシンは外径16・1メートル、機長は15・1メートル。マシン全体の重量は約3700トンに上る。カッターヘッドには、超硬合金チップの鋼製刃(ビット)が用いられており、カッターリングが2重になっている点が特徴。非常時にカッタービットを機内から交換できる装置なども導入されている。

 同日には、カッターヘッドの外側上半部分(約130トン)を組み立てるため、国内に4台程度しかないといわれる800トンづりの巨大クレーン車を用いて、慎重に立坑への搬入作業が行われた。シールドマシンの組み立ての進ちょく率は約8割という。設備関係の作業なども進め、早期の掘進開始を目指す方針だ。

 外環道都内区間では、大深度地下に、関越道と接続する大泉JCT(練馬区)から東名高速とつながる東名JCT(世田谷区)までを結ぶトンネルが構築される。延長は16・2キロ。関東整備局と東日本、中日本両高速道路会社が共同事業として整備を進めている。総事業費は約1兆6000億円。2020年東京五輪前の完成の可能性について検討が行われている。

2016年9月26日月曜日

【回転窓】生産性向上の行く末に期待

9年前に打ち上げられた日本の月面探査衛星「かぐや」が撮影した月面の高精細な映像を、日本放送協会(NHK)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)がインターネットで公開する取り組みを始めた▼多くの未公開映像を含む635本を10月末までにすべて閲覧できるようにする。上空を飛んでいるような視点で月面のうさぎを見られる映像もあるそうで、魅惑的な瞬間のお披露目を待ちたい▼政府が建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させる目標を設定し、建設業の動きも慌ただしさを増してきた。日本建設業連合会は、賃金や休日など技能者の処遇改善にもつながると見て対応を強化する▼生産性向上には技術の発展・普及が欠かせないが、経験豊富な職人が多いほど生産効率は高まるとの指摘も少なくない。登録基幹技能者の活用を求める声の大きさもそれを裏付ける▼JAXAは、映像を見た子どもたちが月面の有人活動に携わる将来に期待を寄せる。処遇に魅力を感じて入職した若者が匠(たくみ)となって高度な技術を駆使する20年、30年後の建設現場に期待しつつ、生産性向上の過程を見守りたい。

【水害乗り越え実現へ前進】茨城県常総市、圏央道常総IC周辺でアグリサイエンスバレー構想推進

 ◇復興の旗艦事業として早期実現へ◇

 昨年9月の関東・東北豪雨による水害で市域の3分の1が浸水した茨城県常総市。市は地権者と民間企業と共同で、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)常総インターチェンジ(IC)周辺の農業を核とした開発「アグリサイエンスバレー構想」を進めている。水害の影響で手続きの一時停止や計画地の見直しなどを余儀なくされたが、市はこの開発を「水害からの復興の旗艦事業」に位置付け、構想の早期実現を目指す。

 アグリサイエンスバレー構想では、「農業を活性化するための街づくり」を全国に先駆けて推進し、農産物の栽培・加工・販売までを行う「6次産業」を展開する。

 組合施行の土地区画整理事業で農地を集約・大区画化し、施設園芸や支柱付き太陽光発電施設(施設下部で日影栽培を実施)などを行う「生産拠点エリア」と、同エリアの農産物を加工・製造・販売・流通させるため物流・産業系の企業を誘致する「都市的利用エリア」をそれぞれ整備する。

 計画地は、本年度に開通予定の圏央道常総IC周辺の45ヘクタールの敷地。このうち、生産拠点エリアに14ヘクタール、都市的利用エリアに31ヘクタールを充てる。現在は全域が水田で農振農用地区域に指定されているため、開発に当たっては市街化区域への編入が必要で、県と関東農政局が区域変更に向けた調整を進めている。

 13年度に市が策定した「常総市圏央道(仮称)水海道インターチェンジ周辺地域事業計画書」では、計画地を62ヘクタールとしていたが、水害後に一部の地権者が「構想の実現には賛成だが、自分の土地は水田としてそのまま所有し続けたい」と現状維持を望む要望書を市に提出。市はこれを反映させて対象区域を縮小した。

 開発には業務代行者として戸田建設が参画。市と同社、地権者で組織する「常総市圏央道常総インターチェンジ周辺地域整備事業推進協議会」の3者が15年6月30日付で開発の推進に向けた基本協定を締結した。戸田建設は地権者からの要望があれば、温室栽培の施設整備など同社が研究を進める技術も導入するという。

 当初は、土地区画整理事業の着工時期を今年10月としていたが、水害によって計画地全体、さらに地権者の家屋も被災したため、水害からの半年間、開発に向けた議論や手続きが停止。その後、計画地の見直しなどもあり、スケジュールは後ろ倒しとなった。

 現状では、17年初めに都市計画変更を申請し、同年末までに決定したい考え。18年初めの区画整理事業の事業認可を経て、推進協議会を土地区画整理事業組合に移行。同年9月ごろの着工、21年末の竣工を目指す。

 事業費は当初40億円を見込んでいたが、計画地の見直しによって60億円程度に膨らむ見通し。事業費のうち市の負担額は5億円となる。

 水害によって一時は足踏み状態になったが、アグリサイエンスバレー構想は、今年3月にまとめられた「常総市復興計画」の中に、市の誇りを取り戻す復興の柱の一つとして盛り込まれた。市は、「水害後、立ち止まらずに開発を進めてほしいという市民の陳情をもらっている」(常総市担当者)とし、開発によって農業の新拠点を早期に完成させ、水害からの復興に道筋を付けたい考えだ。

【建設業の心温まる物語】岸之上工務店(高知県)浜田周作さん/身寄りのない子どもたちを通して恩返し

 中山道広さんという軽天・ボード工(軽量鉄骨で、壁や天井の下地を組み、その下地にボードを張る)職人のお話です。

 中山さんとは、私が新卒で初めて配属された現場ではじめて会いました。中山さんは、その時すでに職長で、いつも若い弟子を3~4人連れて現場にさっそうと現れ、体が大きく、無口でまさに「親方」といった雰囲気の人でした。弟子もまた無口でいつも黙々と仕事をしていました。いつも昼前になると中山さんの奥さんが、弟子の分も含めて弁当を持って来ます。私は「アットホームなチームだな」と思っていました。

 ある日、中山さんが、「◯日の〇時〇〇放送のテレビ見てみてや。自分が出ちゅうき。」と言ってきました。当日テレビを見てみると、番組は身寄りの無い子供を預かる施設を支援する取組みを紹介する内容でした。そして施設を出た人に住むところと仕事を与える活動をしているのが、中山さんでした。施設を出た人は中山さんがいつも連れている弟子の人で、その人たちは中山さんの家に住み込みで暮らしているようでした。そのため中山さんの奥さんが、みんなの分の弁当を持ってきていたのです。

 翌日現場に来た中山さんに「昨日見たで、中山さんがそんな事しゅうこと知らんかった。すごいねえ」というと、「いろいろあった子供らやき、最初は全然人と会話をようせんがよ。途中でおらんなる子も結構おる。けんど、残る子はちょっとずつ変わっていくで。今は打合せにも行かせゆうろう」。「自分の家に住まわして世話したのに、夜逃げされたら嫌になりませんか」と聞くと「そんな事あんまり気にせん。自分がそこの施設出やきね。恩返しよ。」そういってニコニコしていました。

【建設業の心温まる物語】センチュリー工業(神奈川県)吉浜秀昇さん/父が作った東京オリンピックの体育館

 私の父は、大工の棟梁でした。父は、中学校を卒業してすぐに大阪に行き親戚の家で大工の修行をしていました。そして二十歳過ぎに地元横浜に帰ってきて会社を興しました。当時は、高度経済成長中のため仕事は順調で、そのころ母と結婚したそうです。

 それから数年後、姉や私が産まれました。しかし私が物心ついたぐらいの時に、父はなぜか大工を辞めてしまいました。

 それから数年経ち、祖父の家で、バレーボールの試合をテレビで見ていると、この駒沢オリンピック公園総合運動場体育館の床は、お前たちのお父さんの会社が床を貼ったんだぞ、と叔父さんが言いました。私は嘘だ、と思いました。そんな話を父から聞いたことがなかったからです。叔父さんは、その仕事の手伝いに行っていたようで、そのころの話を詳しくしてくれました。

 「当時はまだ横浜から東京までは道が悪く、舗装が全くない状況で通うのが大変だったんだ。でも、東京オリンピックまでに完成させなければならなかったから一所懸命に仕事をしたんだ。お前たちのお父さんは大工棟梁として活躍していたな」

 父が大工だったのは知っていましたが、こんな大きい体育館の工事に携わっていたとは思ってもいませんでした。母からは、「近所のあのおうちはお父さんが建てたのよ」などと聞いていましたが、東京オリンピックの会場となる体育館の工事に携わっていたとは驚きました。

 大人になり、父の影響もあって建設業土木の道に進みましたが、いまだに父ほどの世間に知れ渡る大きい構造物には携わっていません。面と向かっては言えませんが父を誇らしく思っています。

【建設業の心温まる物語】マルツ電波(福井県)山川一樹さん/心に残る地元のビッグプロジェクト

 福井県敦賀市~小浜市間に舞鶴若狭自動車道が通っています。この道路の建設が始まった平成10年当時、私はまだ電気通信工事業に従事しておらず、「開通すると便利になるな」、と他人事でした。

 その後、この業界に転職し、監理技術者として、県内外の公共工事をいくつかこなした後、あの舞鶴若狭自動車道工事トンネル内ラジオ再放送設備設置工事の監理技術者を平成24年から2年間を担当する事となりました。まさか自分がこの工事の現場監督をするとは思いもよりませんでした。

 電気通信工事は全体工事の最後の2年間であり、予定どおり開通するためには絶対に遅れることができません。大きなプレッシャーのかかる工事でした。

 開通が近くなってくると「地元見学会」があり、私の家族が参加し、普段監督している現場や設備を見せることができました。子供達が大きな建設機械を間近で見たり、高い橋の上から眺めたり、トンネルの中を歩くなど、普段は歩くことのできない高速道路上で「お父さんすごい」と感動をしていたのが印象的でした。

 平成26年7月についに開通日を迎えました。地元の方々や家族から、「早くなったね」「半分の時間で行ける様になった」等、うれしい言葉をかけられました。

 地元人として地元企業として、地元で行われたビッグプロジェクトに貢献できたことを誇りに思っています。また竣工後に顧客から優良工事表彰までいただき本当に心に残る工事となりました。

【駆け出しのころ】高松建設東京本店執行役員工事本部長・井ノ原基守氏

 ◇声掛けられた嬉しさは忘れない◇

 建設会社を経営していた叔父の影響もあり、地元の工業高校では建築を専攻しました。卒業したら働くつもりでしたが、その会社の現場でよくアルバイトをしていた経験から、働くことの厳しさを知り、すぐに働くのは気力、体力、そして能力の面からも断念し、親に頼んで大学に進学しました。

 高松建設のことはゼミの先生に紹介していただきました。入社して短期間でしたが住宅工事に携わった後、奈良県内でホテルの建築現場に配属になりました。工期が短く突貫で進められた現場で、私を含めた社員8人が仮設宿舎で一緒に寝泊まりしながら仕事する日々でした。

 この現場ではとにかく走り回り、汗まみれで作業着も汚れていたため、ある日、現場にいると職人さんから「高松の監督さんはどこ」と聞かれたこともありました。私が高松建設の社員には見えなかったようです。いつの間にか体重も減るような、体力面でも非常に厳しい現場でした。

 次に担当した現場は、大阪市内のテナントビルでした。今でもお付き合いのある当時の担当課長だった方に、私はこの現場に配属されてすぐに「監督らしい仕事がしたい」と言ったそうです。自分では覚えていませんが、それまでは現場で走り回っていることが多く、建築技術者としての仕事ができていないのではと不安だったのではないでしょうか。

 1980年代半ばの好景気ということもあって、この現場も工期が厳しく、1週間ほどで鉄骨の穴開け加工図を書くよう指示を受けました。一日の現場の仕事を終えると、風呂に入るためだけに一度寮に帰り期日までに完成させました。その図面は現場での手直しもなく「よく書けている」と褒めていただき、技術者らしい仕事に携われたと自己評価できる現場でした。ここで技術者の基礎と、働く姿勢を学んだことが、後に入社2年目で初めて所長的な立場でマンション建築現場を任された時も生かせたと思っています。

 若かったころ、普段はなかなか会話をする機会が少ない上司から「あの現場は大変だったそうやな」「躯体の精度がいいと聞いているよ」などと短い言葉でも声を掛けてもらえた時はうれしかったものです。私の仕事を見てくれている現場の上司が、その方に報告してくれていたからそうした気遣いをしていただけたのです。私もできるだけそうした声を掛けるように意識しています。

 建物は手を加えれば加えるほど良いものになります。常に向上心を持ち、何事にもこだわって仕事をしてほしいと思います。現在は若い社員を以前より難易度の高い現場に配置して、仕上がりよく完成させてくれた時に大きな喜びを感じ、またそんな様子を見るのが今の私の一つのやりがいでもあります。

 (いのはら・もともり)1983年摂南大工学部建築学科卒、高松建設大阪本店建築部入社。建築部課長代理、購買部課長、工事部部長、工事第2本部長、14年4月執行役員大阪本店工事本部長などを経て、15年5月から現職。兵庫県出身、56歳。

2016年9月23日金曜日

【観光客増加に対応】札幌市内でホテル計画相次ぐ、9月中に3棟着工

札幌市内でホテル建設計画が相次いでいる。9月中には3件の工事が着工し、10月にはJR札幌駅前で1件がオープンする予定だ。いずれも延べ6000~8000平方メートル程度の規模。市営地下鉄大通駅に近い「狸小路商店街」の一画では16日、不動産業などを手がけるザイマックスが13階建てホテルを起工した。地下鉄豊水すすきの駅の近くでは、サンケイビルが同社による第8号のホテル開発として、道内では初めてとなるホテル建設に着手。札幌市では観光客数が年々増加傾向にあり、それに対応してホテル建設計画も増加している。

 大通駅の周辺でホテルを計画しているのはザイマックスや森トラストなど。ザイマックスは観光客でにぎわう狸小路商店街の一角(札幌市中央区南3西5の18の1ほか、敷地面積819平方メートル)でホテル建設を計画。プロジェクト名称は「札幌南三条西五丁目計画」で、建物の規模は地下1階地上13階建て延べ7235平方メートル。設計・施工は前田建設が担当し、16日に着工した。17年11月の完成を目指す。

 森トラストは7月、中央区大通西5丁目で農林中央金庫から約2800平方メートルの敷地を取得した。ホテルを中心にオフィスなどの機能も入る複合ビルの建設を構想している。設計や施工のスケジュールは未定。

東豊線豊水すすきの駅の周辺では、サンケイビルによるビジネスホテル「札幌すすきのプロジェクト」の建設工事が進行している。建設地は中央区南4西1の13の1ほか(957平方メートル)。

 建物はS造13階建て延べ8343平方メートルの規模。客室数は284室で、内訳はダブル142室、ツイン141室、バリアフリー1室。設計はケイファシリティーズ、施工は安藤ハザマが担当。18年春の完成を目指す。建物完成後はホテル運営会社のホスピタリティオペレーションズがテナントとして入居し、ホテルを運営する予定だ。

 JR札幌駅周辺では福岡地所が「ホテルフォルツァ札幌駅前」を計画しており、9月中に着工する予定。建設地は中央区北3西2の1の14ほか(724平方メートル)。建物はS造地下1階地上13階建て延べ6230平方メートルの規模。設計は山下設計が担当。施工者は未定。18年2月の完成を目指す。

 同じく札幌駅前では、野村不動産グループのNREG東芝不動産が10月、宿泊特化型ホテル「JRイン札幌駅南口」をオープンする予定。設計はINA新建築研究所、施工は熊谷組が担当した。

 所在地は札幌市中央区北3西1の10(881平方メートル)。建物はS一部RC造地下1階地上10階建て延べ6499平方メートルの規模。ビジネスや観光目的など幅広いニーズに対応し、客室204室のうち約半数をツイン・ダブルルームとした。1階には飲食店が入る予定。ホテル運営はJR北海道ホテルズが行う。

【輝く!けんせつ小町】若築建設名古屋支店・高山日向さん


 ◇目的意識を持って働く◇

 四日市港(三重県)の貨物輸送の利便性向上などを目的に建設が進む四日市臨港道路。同道路のP49~P53の橋脚工事(川越町)に従事する。今春入社のフレッシュウーマン、同期入社20人で唯一の女性土木技術者だ。さまざまな職種の人たちが力を合わせ、一つのものをつくり上げる建設(土木)に魅力を感じ、国立石川工業高等専門学校に入学。環境都市工学科(土木工学系)を今年3月に卒業し、若築建設に入社した。

 在学中にインターンシップで高速道路の橋梁点検現場を体験。橋桁の裏を細かく点検する技術者の背中が「とても格好良かった」と感動し、自らの将来の姿を重ねた。安心して走れるのはこうした人たちの地道な努力があることを知ったことも進路選択につながった。

 現場の仕事は男性ばかりのイメージもあり、「正直、不安だった」。だが、入社前に会社の上司になる人から「何も心配しないで。みんな待ってるよ」とメールが届いた。「涙が出るくらいうれしかった」と感激。現場では多くの職人さんと交流し、毎日が学びと反省の連続という。

 「大きな構造物をさまざまな職種の人がつくり上げる過程を見て感動した」と現場の魅力を語る一方、恵まれた環境に感謝している。土木は縁の下の力持ち的存在で、その存在を意識する国民は少ない。

 「土木は暮らしや経済活動に欠かせない大事な仕事。もっと多くの人に土木や土木技術の大切さを知ってほしい」

 現場の労働環境は改善されつつあるとはいえ、まだまだ厳しい。女性が建設業(特に現場)で働く上で多くの障壁がある。

 建設業に女性や若者が進出することは業界のイメージアップにもつながる。そのためにも、福利厚生など働きやすい環境づくりが欠かせない。だから「本人や一緒に働く職場の人の意識も大事だ。男性は女性を特別扱いせず、女性も目的意識を持ってほしい」と訴え、「建設業の現場で女性が働くのが当たり前の時代がやってくることを願っている」。

 これから経験を重ね、トンネルやダムなど大規模現場や海外での活躍も胸に秘めている。

 (四日市港霞ヶ浦北ふ頭地区道路〈霞4号幹線〉橋梁〈P49~P53〉上部工事作業所、たかやま・ひなた)

2016年9月21日水曜日

【回転窓】「こち亀」人気はこれからも

「秋本治先生 連載40年間お疲れ様でした!」。東京・亀有を全国区の地名度に高めたと言ってもいい人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。漫画誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で40年続いた連載が先週終わり、JR亀有駅には作者への感謝の気持ちを込めた横断幕が掲げられている▼先日の休みに訪れると、亀有駅は「こち亀」のキャラクターデザイン一色。多くのファンが詰め掛け、駅前では主人公・両さんらの銅像の周りで記念撮影をする幾重もの人垣ができていた▼政界からも連載の終了を惜しむ声が聞かれる。麻生太郎財務相は先週の閣議後会見で「ああいうキャラが立ってる漫画はなかなか面白いと思ってましたから、とても残念ね」と話した▼亀有は秋本さんの出身地でもある。横断幕には「地元亀有は、これからも『こち亀』を応援していきます」の文字も。地元の熱い声援を受け、今後も「こち亀」人気が衰えることはないだろう▼人気漫画が街の活性化にもひと役買っている。あらためて書くまでもないが、漫画は日本の文化と、亀有の両さんたちが笑いながら教えてくれているようだ。

【泥団子づくり、楽しかった?】大阪府左官工組、大阪市で上方左官まつり開く

 大阪府左官工業組合(邑智保則理事長)は18日、大阪市港区のORC200オーク広場で「上方左官まつり」を開いた。

 左官工事の魅力やものづくりの楽しさなどを広く発信することを目的に、15年から行っている取り組み。当日は多くの家族連れが訪れ、光る泥団子づくりや壁塗り体験などで休日の楽しいひとときを過ごした。

 このイベントは、高度に洗練された左官の技術・技能や土壁・しっくいの素晴らしさを知ってもらうことで、よりよい生活スタイルの実現や居住環境の改善・向上を図るとともに、若年労働者の確保・育成に向け、ものづくりの魅力や楽しさ、やりがいなどを伝えるのが目的。初開催となった昨年は2日間で1800人が来場した。

 1日だけの開催となった今年は、熟練の左官職人による壁塗りをはじめ、鏝絵や姫路城の修復で用いられた目地しっくい・懸魚(げぎょ)の展示、装飾的な左官仕事となる擬木の実演などを通じて日本の伝統技能をアピール。このほか、会場内では光る泥団子や消臭手形、壁塗りなどのものづくり体験に夢中になる家族連れの姿が見られた。

 邑智理事長は「来場者の皆さんには楽しんでもらえているようで何よりだ。学生向けの出前講座や一般市民向けの左官まつりなど、左官の素晴らしさをアピールする体制は整いつつある。こうした取り組みを今後も続けたい」と話した。

【鳴子ダムなど24件】土木学会、16年度選奨土木遺産を選定

鳴子ダム
土木学会(田代民治会長)は20日、16年度の「土木学会選奨土木遺産」として24件を選定したと発表した。1964年の東京五輪で築造された「湘南港」や、国内初の本格的100メートル級アーチ式コンクリートダム「鳴子ダム」などが選ばれた。江戸時代から昭和30年代までに整備された現存する土木施設を対象に、社会へのアピールやまちづくりへの活用といった観点から選奨土木遺産選考委員会(小林一郎委員長)が審査を行った。

続きはHP
信濃川千手水力発電所
向野橋
湘南港

磐越西線鉄道施設群

【管理している人と造った人と作った人】東京・六本木のダムカレーが人気!!

 東京・六本木のフレンチレストラン「グリル&ワイン ジーニーズトーキョー」(東京ミッドタウンプラザ1階)で、一流シェフが腕を振るって作る「ダムカレー」が人気だ。

 6月に始まった「土木展」との連動企画でメニューに加えられたダムカレー。この異色コラボが反響を呼んでいるだけでなく、こだわりの味を求めて来るリピーターも多い。このほど料理のモチーフになったダムの関係者が来店し、話題を集めているダムカレーの談義で盛り上がった。

 9月某日、ジーニーズトーキョーを訪れたのは中部電力発電カンパニー再生可能エネルギー事業部開発グループ長の細見浩氏と、清水建設執行役員土木総本部第二土木営業本部長兼土木企画室長の池田謙太郎氏。この店で提供されているダムカレーのうち、「キノコボルドー風ダムカレー」のモチーフになった岩倉ダム(長野県売木村、重力式コンクリートダム)と関わりのある会社の面々だ。

 中部電力は岩倉ダムを管理運営する事業者であり、清水建設は前身の清水組が約80年前にダム本体を施工した。細見氏は人気レストランで振る舞われているダムカレーのことを知った時、「私たちのダムがなぜカレーに?」と驚きを隠せなかったという。

 東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「土木展」とタイアップし、6月下旬から店で提供されているダムカレーは、豊平峡ダム(札幌市南区)、大久保山ダム(愛媛県愛南町)、そして岩倉ダムをモチーフにした3種類。それぞれに使う食材や盛り付けなどに工夫が凝らされ、いずれも他では食べられないオリジナリティーにあふれるダムカレーとなっている。「三つのダムは自分で調べて選びました。企画ものとはいえ、料理人としてやるからにはしっかりとしたものをお客さまに提供したいと思い、お話をいただいてから2カ月ほど試行錯誤して完成させました」とジーニーズトーキョー・グランシェフの伊藤正顕氏は振り返る。

 伊藤氏のダムカレーは、生クリームとバターをふんだんに使ったクリーミーな味が魅力のルーと、ダムが立地する地域のおいしい旬の食材を使っているのが特徴だ。岩倉ダムのカレーは、ダム湖に見立てたルーを、ご飯を三日月形に盛った堤体がせき止め、サイドメニューとして長野県が生産量日本一を誇るきのこのボルドー風と、豚のコンフィが添えられている。
お店オリジナルのダム〝カレー〟カード
細見、池田両氏とも、ジーニーズトーキョーのダムカレーを食べるのはこの日が初めて。「私たちのダムをこうした料理にしていただいているのは大変に光栄なことで、味も素晴らしくおいしい」(細見氏)、「土木の仕事では造った人たちの個人名は残らないことが多く、こうやって造ったものを取り上げていただけるのもうれしい。とてもおいしく、会社で話してまた寄らせていただきます」(池田氏)と、一流シェフがこだわって作り込んだダムカレーを堪能した。

 ジーニーズトーキョーのメニューにダムカレーが加わって約3カ月。「他のコラボ企画と違って露出度も少ないため、最初はあまり出ないかもしれないと思っていました」と伊藤氏。こうした予想に反し、今やダムカレーは店で人気のメニューであり、リピーターになってオーダーする人も多いという。

 ダムカレーは「土木展」が終わる今月25日までの期間限定メニューだが、伊藤氏は「このままいけば続けることを検討するかも」という。ダムカレーの人気に応え、近々に期間延長といううれしいお知らせがあるかもしれない。

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2016年9月20日火曜日

【日建連が特別協賛】舞台「けんせつ小町純情物語」、東京・渋谷で10月6日から

 現場の職人の魅力発信など建設関係の広報事業を行っている「建設マン.com」(代表・YUICHI)がプロデュースする舞台「けんせつ小町純情物語『やるっきゃない!!』」が10月6~9日(全7公演)に、東京・渋谷の「CBGKシブゲキ!!」で上演される。

 女性型枠大工の成長物語。建設業を取り巻く実際の課題を扱い、リアリティーを追求しながらも、「建設業以外の人にも興味を持ってもらえ、小中学生にも難しくない話」(YUICHI氏)になっているという。

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【回転窓】「建築の周辺」も撮る

建築物の写真を撮るのは難しい。被写体が大きく高くなるほど普通のレンズでは垂直性が失われ、全体が「ハ」の字形に写ってしまう。そうした写真を手に「素人だから」と自分を慰めることも▼撮影時に心掛けているのが、建物の周辺も撮ること。建物の中や外になるべく人がいる場面でシャッターを切るようにしている。おしかりを覚悟で書くと、人が写り込んでいない建物写真にはハの字写真よりも違和感を覚えてしまう▼建築写真で著名な村井修氏の作品は、建築だけにとらわれない幅広い視野や見方を教えてくれる。建築の成り立ちをもっと広く見て、日常生活や芸術など建築の背景としての周辺にも目を向ける。そんな写真家に自作を撮ってほしいという建築家も少なくない▼村井氏の故郷の愛知県半田市で写真展が始まった。市内の貴重な建造物5カ所を会場とする大規模な展覧会で、代表的な写真シリーズやポスターから初公開の作品まで鑑賞できる▼醸造や海運といった歴史の営みが残る半田の街を巡りながら、人を引きつける村井氏の感性と写真の魅力に触れてみてはどうだろう。10月16日まで。

村井修 半田写真展の情報はこちらから

【古民家改修でノウハウ活用】住友不、福島県磐梯町で街並み再生支援

 住友不動産は、福島県磐梯町で古民家再生を柱とした地方再生支援プロジェクトに本格的に乗りだす。

 同社の主力事業の一つである戸建て1棟をまるごとリフォームする「新築そっくりさん」事業での古民家再生の実績や技術・ノウハウを生かし、町が進める街並み再生事業を支援する。

 その初弾モデルとなる古民家の改修工事がこのほど完了。21日には現地で改修した古民家の見学会と街並み再生事業の説明会を実施する予定。これを機に、地域への古民家再生の提案活動を強化していく。

 磐梯町は平安時代に建立された慧日寺跡を歴史遺産の中心に位置づけ、観光客にとって魅力ある街づくりを進めている。資料館や道の駅などの観光周遊ポイントを結びつける上で重要なルートとなる門前町の参道沿いには、歴史的街並みを構成する古民家約80棟が立ち並ぶ。町は古民家群を「歴史的風致形成建造物」として指定し、統一された景観整備に取り組んでいる。

 住友不動産は、町が地域住民らと進める街並み再生の活動を支援。これまでに整備指針づくりのベースとなる個別案件への具体的な古民家再生プランのほか、古民家の統一的な外観整備に向けた指針案、町の将来景観をイメージした地域全体の再生イメージパースなどを提示・提案してきた。

 古民家を柱とした街並み再生事業では「風情ある景観を形成しながら、住居としての機能向上」を再生のコンセプトに掲げる。こうしたコンセプトや指針案のほか、新築そっくりさん事業で培った実績・ノウハウを踏まえ、住友不動産は初弾モデルとして築70年を超える古民家を改修した。地域の古民家改修への機運を醸成しながら、歴史的な魅力にあふれる街づくりを支援していく考えだ。

 新築そっくりさん事業では年間約400棟の古民家を再生させるなど、古き良き日本の伝統的な住まいを後世に残すための提案活動を展開。建物の風情、おもむきなどを残しつつ、居住者のライフスタイルを踏まえ、デザインや機能など現在の生活様式に対応した改修提案に力を入れている。

【記者手帖】台湾と日本の共通点は

今月初め、台湾・台北市の建設現場を取材した。日本のゼネコンの現地法人が施工する共同住宅新築工事で、作業員は全員ヘルメットをかぶり、安全帯を身に着けていた。開口部に飛来・落下防止用ネットを設置するなど安全設備も万全で、危険行為への注意を喚起する看板も随所に見られた◆地元の行政担当者によると、建設現場で発生する死亡災害の多くは墜落・転落災害。現法を通じて日本式の安全対策が浸透し、発生件数は減少傾向にあるという。取材した現場は熱中症対策にも積極的だった◆台湾でも作業員の高齢化が進み、担い手の確保・育成が課題の一つ。省力化工法の導入も活発だ。あるベテラン技術者は「型枠大工の労務費は10年前の5倍。現場の人手作業を減らすため、プレキャスト・コンクリート工法の導入が広がってきた」と話す◆生産性向上ツールとして、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用も増えている。こうして見ると、日本と共通する課題も少なくない。国内で取材しているかのような錯覚に何度も陥った。(田)

【地域の課題解決に貢献可能】Jリーグ・村井満チェアマンに聞く「スタジアム改革の現状は」

 これまでの発想から脱却し、スタジアムやアリーナを多機能・複合化施設として整備する。スポーツをめぐる新たなプロジェクトの胎動が全国各地で顕在化しつつある。プロスポーツの一つ、サッカー・Jリーグは数年前から「スタジアム改革」の必要性を訴え、行政や産業界にアプローチし続けてきた。地域活性化や産業振興など山積する社会的課題の解決策として、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満理事長(チェアマン)は「スタジアム整備はいくつかの答えを示すことができるはずだ」と断言する。

 --スタジアムをめぐる現状をどう見る。

 「Jクラブの中で自らスタジアムを所有しているのは柏と磐田の二つだけで、あとは公共施設を利用している。現時点で、スタジアムは行政による所有が前提になっており、利用日程や使用料といった条件は行政との話し合いの中で決まっていく」

 「最近、国を中心にスタジアムの産業化や『稼げる施設』への転換を図ろうとの機運が高まり、社会の関心も高まってきた。非常にうれしい動きではあるが、一クラブが数万人規模のスタジアムを自ら保有し運営することは、今の経営規模や税制では難しい。理想のスタジアムを実現する取り組みは、保有する・しないという観点ではなく、行政が抱える社会的な課題をどう解決するのか、行政にメリットがある形で提案することが現実的だと思っている」

 --スタジアム改革を進めるポイントは。

 「例えばJ1の場合、1度の試合で平均1・7万~1・8万人の観客が集まる。試合を開催するには、スタジアムだけでなく、来場者が使う公共交通や道路などのインフラ、警備などで行政の支援がどうしても必要になる。この意味で各クラブは行政機関とウイン・ウインの関係を築くことが不可欠になる」

 「少子高齢化などを背景に社会コストが上昇基調にある中、市民の健康増進や子どもたちへの道徳教育、国際交流、産業振興、地域活性化など行政が抱える問題は枚挙にいとまがない。こうした課題に対して新しい発想のスタジアムは、いくつかのソリューションを提供できるはずだ。Jリーグの理屈や都合だけでスタジアムを造るのではなく、社会のさまざまな課題を解決するため、地域とクラブが共に取り組むスタンスを大切にしたいと考えている」

 --各地でスタジアム整備の動きが具体化しつつある。

 「われわれが理想とするスタジアムは、街中立地、屋根付き、高速・高密度通信が可能な環境、充実したホスピタリティーが重要な要素だ。こうした要素を満たすスタジアムは地域の課題を解決する足掛かりになる。チェアマンに就任してから長野に新しいスタジアムができ、北九州では新幹線の駅から500メートルの場所でプロジェクトが進行している。京都や広島、長崎でも整備の動きが出始めている」

 「民間から寄付金を募って建設されたガンバ大阪のホームスタジアム『吹田スタジアム』(大阪府吹田市)の完成に興味を持つ行政関係者も多いだろう。クラブの動きが足りないと批判するのは簡単だが、それよりも各地にスタジアム整備の胎動があることに目を向け、リーグとして後押しすることが大切だと思っている」

 --スタジアム改革を後押しする方策は。

 「例えば高速・高密度通信を可能にする設備を導入するなど、リスクを負って良いスタジアムを造った場合、より多くの観客が集まり、社会的な関心も高まるなど、インセンティブが働く可能性は十分ある。今回結んだ長期の放映権契約はそうしたことを可能にするだろう。1万5000人程度の収容人数のスタジアムでは、どんなに経営努力をしても入場料収入には限界がある。ホスピタリティーゾーンが充実していなければ、来場者単価を上げることもままならない。中継用カメラが満足に設置できないこともある。自助努力で成長していこうと思ったら、スタジアムがボトルネックになる可能性は高い」

 「リーグからの配分金が多い、少ないだけではなく、自分たちの成長余地を考えた場合、スタジアムが非常に重要だということは、すべてのクラブ経営者が分かっている。問題は税制や法規制によって、私企業が数万人規模のスタジアムを所有し続けるのが難しいこと。そうした意味で各クラブと行政の向き合い方がポイントになる」

 --スタジアム整備のあるべき姿は。

 「スタジアム整備は新設ばかりでなく、改修も大きな割合を占める。例えば等々力陸上競技場(川崎市中原区)は改修で素晴らしいスタジアムに生まれ変わった。サッカーというイベントを盛り上げ、地域から関心を持ってもらう取り組みの延長線上に、スタジアムの改修や新設がある。クラブがどれだけホームタウンに貢献できているか、愛される存在になれるかが大切で、最初にスタジアムありきの議論ではない」

 「スポーツ施設は公共財であり、より多くの人たちに開放されていかなければならない。ともすると局所的な議論に陥りがちだが、スタジアム整備は本来、地域や社会にどう貢献できるかという視点で行われるべきものだ。吹田スタジアムのように、開発段階からリーグやクラブが関わっていくこともより重要になるだろう」。

 (むらい・みつる)
地域や社会にどう貢献するのか―。スタジアム整備のあり方が問われている