2016年8月29日月曜日

【回転窓】ダムファンの増加に期待

 国土交通省が、平日に限っていたダムの施設見学と民間主催ツアーの受け入れを9月から休日も行うという。インフラを観光資源として生かすインフラツーリズムの人気が高まる中、治水と利水に欠かせないダムの役割をさらに知ってもらう狙いだ▼現地の職員の協力を得て、堤体内部を常時見学できるダムを増やしたり、未公開エリアに案内したりもする。「土日が休みの人にも見てもらいたい。水源地の活性化にもつなげたい」と同省の担当者。意欲的な取り組みに期待したい▼この8月も各地で豪雨が相次ぐ。台風9号では北上川上流のダム群が2000万立方メートル以上の水をため、宮城県内の被害を防いだ。一方で昨年9月の関東・東北豪雨で茨城県内の堤防が決壊した鬼怒川の上流は雨が少ない。ダム群の貯水量は平年を下回り、取水制限を解除できない▼気象庁によると、列島周辺の気圧配置は台風が接近しやすい状態。必要な場所に必要なだけ雨が降ってくれればよいが、自然はそんなに都合よくはいかない▼洪水と渇水を防ぎ観光客も魅了する。暮らしに欠かせないダムのファンがもっと増えてほしい。

2016年8月26日金曜日

【回転窓】ビレッジプラザに注目

「雲太、和二、京三」-。平安時代の子ども向け教育書「口遊」に記述があり、当時の三大建築物を指したものとされる。筆頭の雲太は出雲太郎の略で出雲大社本殿、2番目は大和二郎で東大寺大仏殿、3番目は京三郎で平安京大極殿という▼今の出雲大社本殿は江戸中期の造営で高さ24メートル。平安時代は高さ48メートルとされ、大仏殿の45メートルをしのいだらしい。48メートルは15階建てのビルに匹敵する。古来伝わる優れた木造建築技術が日本文化の一端を担ったことは間違いない▼リオデジャネイロ五輪に続く2020年東京五輪の競技施設には、伝統文化アピールのため木材が多用される。ところが、「環境に優しい五輪」を打ち出した4年前のロンドン五輪の競技施設にも、実は木材がかなり使われた▼ロンドンを超えて東京が何を発信できるか。注目は、東京・晴海の選手村に整備される休憩施設「ビレッジプラザ」。すべての部材を国産木材で賄い、大会後に再活用する施設は地域創生、循環型社会の実現を目指したものだ▼ビレッジプラザの基本設計者は現在公募中。世界を驚かせるアイデアが集まることを期待したい。

【治水施設が効果発揮】関東整備局、台風9号被害で応急復旧に全力

外郭放水路に流れ込む雨水=23日午前11時30分ころ
(提供:関東整備局)
関東地方整備局は、22日に関東地方に上陸した台風9号に伴う降雨への対応状況(24日午後6時30分時点)をまとめた。東京都で3回、埼玉県で2回の記録的短時間大雨情報が発表されるなど各地で大雨となり、直轄国道では、のり面の崩壊や橋台護岸の流失が確認され、応急復旧作業を行った。関東整備局管内では、崖崩れによる西武多摩湖線の脱線や、床上浸水被害なども発生した。一方で、ダムや放水路、多目的遊水池などの治水施設が被害の拡大を食い止めていたことも分かった。

 直轄国道では国道1号箱根新道の下り部分で22日午後2時30分ごろにのり面が崩壊。同日午後8時すぎにブルーシート養生による応急処理が完了し、翌23日午前9時30分からは大型土のう積みによる応急復旧を進めている。国道16号では、埼玉県入間市にある高倉橋の橋台護岸が流失。23日午前8時10分ごろに被害が確認され、同日午後6時に応急復旧工事を開始。午後11時30分に応急処理を完了させた。25日も復旧作業を進めている。

 治水施設の稼働状況を見ると、鶴見川多目的遊水池では約42万立方メートルの洪水を貯留した。遊水池が無かった場合は、鶴見川で氾濫危険水位を上回り、横浜市と川崎市で避難勧告が発令される恐れがあったという。

 利根川水系でも、首都圏外殻放水路で218万1000立方メートルを排水するなどの対応を実施した。那珂川・綾瀬川流域では、降雨の約16%を排水機場のポンプで強制的に流域外に排出したという。約1・3万戸が浸水した1979年10月の台風20号と比較すると、降水量は約1・1倍と多かったが、今回は浸水戸数が63戸にとどまった。

 相模原水系の宮ケ瀬ダムでは、東京ドーム13・4個分となる約1662万立方メートルの洪水をため込んだ。仮に同ダムが無かった場合には、氾濫危険水位を上回り、洪水被害が起きる恐れもあったとしている。

【掘るも掘ったり月進270m】鹿島、大断面NATMトンネルで月間掘進の国内最高記録

 鹿島がNATMによる掘削断面110平方メートル以上の大断面山岳トンネル工事で、月間掘進距離が過去最長となる270メートルを達成した。

 2台のドリルジャンボを使った削孔や独自のコンクリート吹き付け手法など合理化技術を複数投入。材料・設備も工夫し、作業時間の短縮と同時に安全性も向上させたことで、6月14日~7月14日(31日間)に最長掘削距離を記録した。

 従来の記録は前田建設が「国道45号新鍬台トンネル工事」で1~2月に樹立した月進232・5メートルだった。

続きはHP



2016年8月25日木曜日

【きっかけは厚労省緊急育成支援事業】内装工事会社に就職した押切雅仁さんの一日

 未就業者に建設現場で働くのに必要な技能の習得や資格取得の機会を提供し、建設業への就職に結び付ける厚生労働省の「建設労働者緊急育成支援事業」。15年度に建設業振興基金が受託して始まったこの事業に参加した多くの若者が業界で働き始めている。そうした若者の一人を東京都内のマンション工事現場で取材した。

 ◇研修通じ仕事の「イロハ」学ぶ◇

 内装施工の東京志村(千葉県習志野市、伊東弘樹代表取締役)に所属する押切雅仁さん(22)。ボード、軽鉄、床、クロス…。内装施工の基本を学ぶことができる仕上げ系技能者(内装)の研修を3月、2週間にわたって千葉・幕張で受けた。懇切丁寧に教えてくれる講師の手ほどきを受けながら、短い期間の中で内装工事の「イロハ」を学ぶことができ、「施工の基本的な流れをつかめたことは、実際の現場作業にも生かせる貴重な経験になった」と話す。

 建設工事の現場は、夏は暑く、冬は寒い。きつい、汚い、危険という「3K」の代名詞のようにもいわれる。柄が悪いというイメージを持っている人も少なくないが、押切さんは以前から「仮囲いの中で何が行われているのだろう」と興味を抱いていたという。「自分が住んでいる家を含め、建設の仕事がなければ、誰もが生活を営むことができない」。そう考える押切さんにとって建設業は、「カッコイイ」と思える憧れの職業だった。

 研修では、各職種に見合った技能を学ぶことができ、玉掛け、フォークリフト、研削砥石など現場作業に必要な資格も取得できる。すべて無料だ。建設会社への就職支援もセットで行われる。

 内装工事に関する知識はゼロだった押切さんも最初は不安だった。それでも「基本を一つ一つ教わることができた。資料や実際に現場で用いる資機材も用意され、とても分かりやすかった」。そうした中で実際に現場で働く心構えを醸成することもできたと振り返る。

 この春に就職した東京志村は、ゼネコンの下請として、年間を通じて数多くの現場で内装施工を手掛けている。押切さんも既に、ホテル、スーパーマーケット、病院、マンションと短い期間ながら多くの現場で経験を積み重ねてきた。

 外注先を含めて十数人で現場に出向き、内装施工に当たる。同社が中国から受け入れている技能実習生や建設就労者も一緒だ。そんな環境の中で、先輩社員たちは、時に厳しくも丁寧に仕事を教えてくれる。「自分のミスも的確に指摘していただけるので、次に生かすことができる」と押切さんも前向きに対応する。休憩時間に入る前、自分が施工した箇所を振り返って見ることは、仕事に対する充実感や達成感が得られる瞬間でもある。

 ◇現場に従事する心構えも◇

 上司や先輩から常に言われるのは「いつも現場をきれいにしておくこと」。ごみをためることは、それだけ作業効率の低下につながり、安全な作業にも支障を来す。今後さらに経験を積み、「先輩たちのようにボードをうまく張れるよう、自分の能力をもっと高めていきたい」。いずれは職長と呼ばれる存在になり、「大きな現場での施工を任されるようになりたい」と夢を抱く。

 同社の伊東代表取締役も押切さんが将来、会社を背負うような存在となることを期待しているが、悩みの種が、このところの建設業の離職率の高さだ。「ここ数年、若者が入職してきても、みんな数カ月で辞めていってしまった」と嘆く。

伊東代表取締役㊨と押切さん
研修を経て入ってきた押切さんにはもう1人、同期入社の社員がいる。2人が切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長していってほしい-。そんな思いから伊東さんは「現場で学んだことをノートにまとめておくように」と指示している。自分のやり方でよい。仕事をきっちりと覚え、これから入ってくる後輩たちにも仕事を教えられるようになってもらいたいとの願いもある。

 建設業の仕事の魅力は、何といっても自分が手掛けた仕事が形として残ることだ。「そんな仕事に憧れ、目的意識を持った若者にぜひ入ってきてもらいたい」と話す伊東さんも、やる気のある若者が就職前に研修を受けることができる建設労働者緊急育成支援事業の意義を高く評価する。

 技術や技能を習得するということ以上に、「心構えができることは大きな成果だ」として、引き続き、同事業で研修に参加した若者が入職してくることに大きな期待を寄せている。

【回転窓】科学技術館で楽しく体験

東京・北の丸公園で、たくさんの星をちりばめた外壁が目を引く科学技術館。今週初めに訪れると、夏休みも終盤とあって多くの子どもたちでにぎわっていた▼館内4階には「建設館」がある。ここでシールドマシンやタワークレーンの操作が行えるコーナーなどは、順番を待つ子どもたちでちょっとした列ができていたほどの人気ぶりだ▼日本建設業団体連合会(現日本建設業連合会)がそれまでの建設技術のPRスペースを、建設館としてリニューアルオープンさせたのは2003年夏。参加体験型の展示やワークショップ、実験などを組み合わせ、楽しみながら建設の科学と技術にアプローチできるようになっている▼恐ろしい地盤の液状化はどのように起こり、どう防ぐのか。そうしたコーナーに足を止める子どもたちも多い。訪れた日は表情の異なるコンクリートを一つずつ丁寧に手で触れていた小学生の姿も。建設の魅力にもきっと触れてくれたことだろう▼今夏話題の映画「シン・ゴジラ」の撮影場所にもなった科学技術館。都会の真ん中に大人の好奇心も十分に満たしてくれる施設があるのはうれしい。

【輝く!けんせつ小町】興栄コンサルタント・前川利枝さん

◇人のつながりを大切に◇

 大学進学時に土木建設工学科を選んだのには三つの理由があった。一つ目は実力で合格できそうな学科であること、二つ目は人付き合いが苦手で研究職に就きたいと思ったこと、三つ目は大きなものを作ってみたいと思ったこと。「前向きと後ろ向きの理由がありますが、結果的に今の自分には土木という選択肢しかないと思っています」。

 卒業後、富山県庁に入庁。道路の改良・維持を担当した。4年後、結婚を機に県庁を退職。夫の実家のある岐阜県内に転居した。「地元の測量設計事務所に勤めたのですが、1年半で辞めました。2人の子どもを出産したこともあり、数年間はパート勤めでした」。

 子育てをしながら感じていたのが“未消化感”。「どの仕事も中途半端で終わってしまい、このままではどの時点を振り返っても後悔する。自分はやはり技術屋になりたい」。

 漠然と目指していた技術士の資格取得へ向け、本腰を入れて勉強を始めたのは、こうした思いが強くなったからだ。「下の子はまだ夜泣きがあり、勉強しては子どもをあやし、机に向かう生活でした。家族の協力もあり無事に技術士の資格が取れました」。

 下の子どもが保育園に入園するのと同時に現在の会社に入社。子どもの迎えがあったため、事務職で時短勤務での採用だった。「仕事に就けただけでうれしかった。1年後に技術職に異動し、家族とも相談して通常勤務になりました。時短勤務では業務の主担当者になれないためです」。

 現在、道路グループに所属し道路維持・改良に関する調査設計業務などに従事する。最近では治山事業も担当し、崩壊した山腹現場に入って対策工のための調査設計も行う。「治山関係の仕事はあまり経験がないため、いろいろな人に各種の知識を教えてもらっています。どんな仕事も同じですが人とのつながりが大切です。人とのつながりで今の仕事が続けられています」。人付き合いが苦手だった学生時代とは変わった。

 子どもたちは中学生1年生と小学5年生に成長した。「将来の夢は技術者としての充実が、仕事にも生活にもよい刺激になること。だから今は目の前の仕事を一生懸命やるだけです」。

 (東濃営業所技術第一部、まえかわ・りえ)

【力いっぱい押してみました。その結果は…】日建連、都内でけんせつ小町現場見学会開く

 日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は24日、けんせつ小町活躍現場見学会を東京都練馬区の「(仮称)東映アニメーション新大泉スタジオ計画」で行った。

 小学生の女子を中心に夏休みの親子連れ28人が参加。建物を大地震から守るために地下部分に設置する免震ゴムに触れたり、現場に配置された足場に上ったりしながら、建設の仕事の大切さを肌で感じた。

 現場は築60年が経過した老朽施設を取り壊した跡に、S造(CFT)造地下1階地上4階建ての免震構造の建物を建設する。

 設計・施工を清水建設が手掛け、17年夏ごろの完成予定。清水建設で工事管理を務める蒔苗沢子さんのほか、新菱冷熱工業の女性職員2人も現場に従事し、女性の墨出し職人も働いている。

 見学会では、床部分のコンクリート打設や地下部分の免震装置の見学、足場体験、用意された装置を使った強風体験などを通じて、建設現場の仕事を学んだ。ブリヂストンが持ち込んだ免震体験車に乗り込み、東日本大震災や阪神大震災の揺れが免震装置によってどのように軽減されるかも体験した。

 参加者からは、女性技術者に対して、「業界に入ったきっかけは」「この仕事をしてうれしかったことは」といった質問が寄せられ、「職人さんと一緒に取り組み、建物が出来上がったときには感動する」などと回答した。

 日建連の竹島克朗常務執行役は「見学会を将来やりたいことを考える上でのきっかけにしてほしい」と呼び掛けた。

【自治体職員が現地視察】比ブトゥアン市、PPP推進で日本の自治体と交流

 日本とフィリピンの自治体がPPP(官民連携)の取り組みで交流を深めている。富山市と群馬県板倉町の職員らは、11~13日にフィリピン・ミンダナオ島北東部の中心都市・ブトゥアン市を訪問。同市で進む民間主導型PPPによる地域開発プロジェクトの現場を視察したほか、ロニー・ラグナダ市長らと意見を交わした。

 6月に就任したラグナダ市長は、ブトゥアン市の地場ゼネコンでCOO(最高執行責任者)を務め、長大など日系企業と地域開発事業を展開してきた。日本の先進的施策を取り込むことで同市を中心とするカラガ地域全体の低炭素型地域開発を効率的に進めるため、東洋大学PPP研究センターのアジアPPP研究所を通じ、日本の自治体と連携関係の構築に取り組んでいる。

 今回の訪問では、連携先候補の富山市、板倉町に加え、銀行、民間企業、、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)マニラ事務所の職員が参加。サム田渕東洋大アジアPPP研究所所長、難波悠国連CoE地方政府PPPセンター代表も招かれた。

初日は、民間主導型PPPによる地域開発として、11年から進められている「アシガ川小水力発電事業」「ブトゥアン市水道供給コンセッション事業」などの現場を視察した。

 2日目は、拡張計画が行われているナシピット港とマサオ港などを視察したほか、フィリピンの政府関係者に日本の先進的な取り組みとして、富山市が進めるLRT(次世代型路面電車)網と整合したコンパクトシティーによる低炭素型まちづくりなどを紹介した。

 最終日には、富山市の担当者が同市に拠点を置く民間企業と連携した都市ごみを燃料にした廃棄物による発電を説明し、低炭素型都市づくりに向けた施策の共有を提案。板倉町の担当者は、農業研修の人材交流などを提案した。ブトゥアン市の長期的な展望、開発コンセプト、予算・組織の裏付けなどの必要性についても議論された。

 ブトゥアン市は、先進的な自治体施策や組織体制・制度・システムなどを市政運営に生かすと同時に、日本企業の進出を呼び込む方針という。

【ホームドアの設置前倒しへ】国交省、駅の安全性向上へ検討会立ち上げ

ホームドアの設置をどう進めるのか、検討が本格化する
(写真はイメージ、本文とは関係ありません)
 東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で15日に発生した視覚障害者の転落・死亡事故を受け、国土交通省は鉄道駅ホームの安全性向上対策の検討に着手する。

 鉄道事業者などで構成する検討会を立ち上げ、ハード・ソフト両面から総合的対策を検討。ハード面では昨年2月に閣議決定された交通政策基本計画(14~20年度)で掲げたホームドア設置目標の前倒しや、新しいホームドア技術の普及促進などがテーマとなる。26日に初会合を開き、年内にも中間取りまとめを行う。

 24日の閣議後の記者会見で石井啓一国交相は、「(検討会では)ホームドアの整備前倒しを検討する」と表明。新型ホームドアの情報共有や駅係員によるアテンド、盲導犬を同伴する視覚障害者への接遇など、ハードとソフト両面からの対策強化を検討する考えを示した。

 国交省が6月にまとめた交通政策基本計画の初の追跡調査結果を見ると、駅のホームドアは20年度に東京都内などにある約800駅に設置する目標を立てているが、15年9月末時点で設置されたのは621駅。13年度から38駅しか増えておらず、国交省は、現状の設置ペースが続けば目標値を下回ると懸念している。

 政府が先にまとめた経済対策では、生活密着型インフラの整備として、鉄道立体交差やホームドア設置の推進、高齢者や障害者が住みやすくなる街のバリアフリー化などが列挙されている。

【「鉄の腕」で櫓を支持】大林組、熊本城緊急対策工事に総力挙げる

 城の再建を復興のシンボルに-。

 大林組が4月の熊本地震で被災した熊本城(熊本市中区)の再建に向けた緊急対策工事に取り組んでいる。

 崩壊を免れた角部分の石垣だけで辛うじて支えられている飯田丸五階櫓(やぐら)の倒壊を防ぐ工事では、櫓を上から覆うように仮設の架台を組み、櫓の下に荷重を受ける梁が付いた「鉄の腕」を入れて抱え込む方法を提案し、6~7月末の約2カ月という短期間で設置を完了した。

 熊本城は戦国大名・加藤清正が築城。大林組は、1877(明治10)年の西南戦争で失われた天守閣や本丸御殿の再建・復元工事を施工した。4月の熊本地震では石垣や塀、瓦が崩落したほか、建屋にひびが入った。

 同社は、熊本市発注の「熊本地震に伴う熊本城飯田丸五階櫓倒壊防止緊急対策工事」(工期16年6月~17年3月)と「熊本地震に伴う熊本城南大手門倒壊防止緊急対策工事熊本城南大手門倒壊防止緊急対策工事」(同16年6~8月)の施工を担当している。

 五階櫓倒壊防止緊急対策工事で一番の難題となったのは、架台施工段階での事故による櫓の倒壊をいかに防ぐかという点だ。櫓から離れた敷地で長さ33メートル、高さ14メートル、幅6メートル、重量220トンの架台を最大限まで組み立てた後、地面に敷いたレールで南側へ約20メートル、そこから西側の櫓まで約20メートルスライドさせる施工計画を採用した。

 櫓の下部の状況が確認できず、「鉄の腕」を指し込む空間の寸法も実測できない条件。地盤を崩壊させず、石垣や櫓にも影響を与えず安全に設置するため、「鉄の腕」の先端部となる荷重受け梁の鉄骨を、いったんボルト接合せずに、架台本体と重なり合うように電動ホイスト(巻き上げ装置)でつり上げ、架台のスライドに合わせて上下左右に動かしながら二つの石垣を越える手順を考案したという。

 現場を率いる土山元治熊本城工事事務所長は熊本県の出身。「被災した熊本城の姿を目にし、私を含め地元の皆さんにとって、熊本城がいかに大切な存在だったかということをあらためて認識した。今回の仕事を成功させることが、熊本の皆さんを元気付ける結果につながると信じて取り組む」と話している。

 工事の詳細は同社ホームページの「プロジェクト最前線」でリポートしている。

2016年8月24日水曜日

【プロジェクト・アイ】震災復興事業工事施工等一体的業務(岩手県陸前高田市)


 ◇施工は清水建設JV◇

 岩手県陸前高田市の高田町と気仙町で進む「陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務」。東日本大震災の大津波で甚大な被害を受けた土地をかさ上げし、大規模な高台を造成する工事が行われている。

 計画面積約300ヘクタール、約1100万立方メートルという膨大な量の土砂を扱うため、施工を担当する清水建設は複数のICT(情報通信技術)を組み合わせて工期短縮を図る技術を提案。効率的な施工管理を行いながら、急ピッチで工事を進めている。

 ◇作業効率化へUVAやICT建機導入◇

 計画の事業主体は陸前高田市。同市から事業委託を受けて業務全体の総合調整を行う都市再生機構が、復興まちづくりモデル事業としてCM(コンストラクション・マネジメント)方式で発注した。受注したのは、清水建設・西松建設・青木あすなろ建設・オリエンタルコンサルタンツ・国際航業JV。測量から調査、設計、施工までを一体的に行っている。

 清水建設は、これだけの大規模な造成工事を効率的に進めるために、▽無人航空機(UAV)による写真測量▽ICTブルドーザーによる敷きならしガイダンス▽ICT振動ローラーによる締め固め管理システム▽ICT油圧ショベルによるバックホウガイダンス▽GPSによるのり面変状監視-というさまざまなシステムを現場に導入した。

 使用するUAVは、時速80キロの飛行速度が出せる「固定翼」と呼ばれるタイプ。近年さまざまな現場で活用され始めたドローン(小型無人機)と比較し、1回当たりの航続時間が倍以上なのが特徴だ。

 UAVを、GNSS(汎地球測位航法衛星システム)による位置誘導に基づき自動操縦する。従来の20メートルメッシュでの方眼測量を行う場合と比べ、大幅な省人化と工程短縮を図ることができる。

 UAVによって収集した航空測量データを基に、1メートルメッシュの点群データによる2次元・3次元(2D・3D)モデルを作成する。
点群データで作成した現場の3Dモデル
 これによって、毎月の土工量を短時間で算出できるようになる。3Dモデルとオルソ画像(位置情報を含む真上から見たような傾きのない画像)を重ねた鳥瞰(ちょうかん)図を作成して出来形管理も行う。月ごとにデータを管理しているため、造成計画変更時の全体土量バランスの確認や、運搬計画の修正などにも早急な対応が可能になる。

 ◇街全体が現場、品質確保に全力◇

 ICT建機による施工効率の向上、工事品質の安定化も図っている。敷きならしでは、GNSS搭載のブルドーザーにより30センチ厚を高精度に確保。GNSS搭載振動ローラーによる規定の転圧回数(6回)管理も行うことで、ばらつきのない施工を実現する。

 GNSSによる位置情報を利用することで3DモデルによるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)データを作成し、情報の一元管理を図っている。1層ごとの締め固め終了後の面データを重ね合わせて作成した3Dモデルに、▽作業期間▽施工高さ▽走行時間▽転圧回数-などの属性情報を持たせて帳票管理を行い、高品質な盛り土施工につなげている。

 GNSSによるダンプトラックのトレーサビリティー(追跡可能性)管理も実施している。GNSS機能付きのスマートフォンをダンプに搭載し、土砂の区分や積み込み・荷下ろし地点の位置情報を取得してデータをサーバーに保存。これを各運搬段階に引き継ぐとともに、土質の試験結果を付与して敷きならし・締め固め工程にデータを引き渡す。

 現場で工事を指揮する小出直剛所長は「最盛期にはJVの社員や作業者も含め、現場の人員が1000人弱に膨らむこともあった。『街全体が現場』という感覚は今までに経験したことがない。全員を統制して安全に施工するためにも、繰り返し安全教育を徹底することを心掛けた」と工事の苦労を話す。

 UAVやICT建機については「最初は戸惑う人もいたと思うが、今では施工効率と品質の確保の点で優位性を大きく発揮してくれている」という。

 予定工期は19年3月まで。今後もしばらくは工事は続くが「被災地ではいまだに仮設住宅に暮らしている人も多い。少しでも早く工事を終わらせることが復興につながる。安全・安心を十分に考慮
しながら、残りの工事に取り組んでいきたい」と気を引き締めている。

 《工事概要》

 【工事名】=陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務
 【発注者】=都市再生機構
 【施工】=清水建設・西松建設・青木あすなろ建設・オリエンタルコンサルタンツ・国際航業JV
 【工事場所】=岩手県陸前高田市高田地区・今泉地区

【回転窓】熱戦はまだ終わらない

 地球の裏側で熱戦が繰り広げられたリオデジャネイロ五輪が閉幕した。21日に現地で行われた閉会式で次の開催都市である東京都の小池百合子知事に五輪旗が手渡された▼2020年東京五輪のPRタイムでは「ドラえもん」や「スーパーマリオ」など日本を代表するアニメ・ゲームのキャラクターを演出に活用。マリオに扮した安倍晋三首相が、ドラえもんの未来道具により地球を貫通する土管を通り抜けて会場に登場した▼キャラクターの力を借りて日本のソフトパワーを示したかったようだ。感動的なフィナーレを経て世の中が4年後の東京五輪に目を向ける中、もう一つのスポーツの祭典が始まる。9月7日開幕のパラリンピックだ▼12年ロンドン大会で「ゴールボール(女子)」競技に最年少選手として出場して金メダルに輝き、本紙14年元日号のインタビューにも登場いただいた若杉遥さんも2大会連続で出場する▼「日本では障害者スポーツはいまだにリハビリの一環としてのイメージが強く、健常者も楽しめる競技として認知されるように頑張りたい」と語った若杉さんたちに引き続き声援を送ろう。

【進路選択に役立てて】新潟建協ら、中学生に映像で仕事内容紹介



 新潟県建設業協会(新潟建協)と、新潟県建設専門工事業団体連合会(新潟建専連)は、23日に新潟市中央区の朱鷺メッセで開かれた県立専門高校メッセにブースを設けて、中学生とその保護者に業界の役割や仕事内容を紹介した。両団体がそろって同メッセに参加するのは昨年に続いて2回目。

 新潟建協は、5月に作成した建設業にやたらと詳しい男の子が女の子に建設技術を紹介するユーチューブで配信中のCMと、過去につくったTVCMの映像をブース内に設けたスクリーンで放映した。

 このほか、昨年と同様、建設業の役割や魅力を紹介するパンフレットを用意して来場者に、建設業は市民の生活に欠くことのできない産業であることを伝えた。ユーチューブとTVCMの映像の放映は今回が初めて。ユーチューブCMのアクセス数は約4万6500回に達しているという。

 新潟建専連からは新潟県室内装飾事業協同組合が参加。店舗の床によく使われるPタイル、アパートの水回りの床に多い長尺シート、壁クロスの3種類の張り込みを実演した。同時に、体験コーナーも設置。中学生がPタイル張りに挑戦する姿も見られた。

 専門高校メッセは、中学生の進路選択を支援する目的で新潟県が毎年開催している。

 県立の工業高校、農業高校やそれらの科を持つ高校、大学、企業などがブースを設けて、各校各科や大学は進学後の学習内容を、企業は自社の仕事内容を紹介する場になっている。

【季刊大林で新たな挑戦】史上最大の木造建築「方広寺大仏殿」を再現

大林組が広報誌「季刊大林」の最新号(57号)で、豊臣秀吉が京都に建てた史上最大の木造建築「方広寺大仏殿」の復元に挑戦している。

 同社の技術陣による誌上構想「大林組プロジェクト」で、秀吉の都市づくりと建築を京都を中心にひもとき、過渡期の京都に7年間だけ姿を現したとされる方広寺大仏殿の実像に迫った。監修は黒田龍二神戸大大学院工学研究科教授が務めた。

 1590(天正18)年に天下統一を果たした秀吉は、その4年前から京都での大仏殿建設の検討を開始。大仏殿は1588(天正16)年から7年の歳月をかけて建設された。

 完成した建物は、高さ、建築面積とも奈良の東大寺大仏殿の大きさをしのぐ規模だったという。この巨大建築物がどのようにして造られたかを詳細に解き明かしている。

 季刊大林は、建設にまつわる文化を考察、紹介する広報誌。中でも社内で編成したプロジェクトチームが歴史的建造物の復元や検証、未来社会に寄与する建造物や街の構想などに挑戦し、そのプロセスと成果を誌上で発表する「大林組プロジェクト」が人気。近年では、「宇宙エレベーター建設構想」を掲載している。

2016年8月23日火曜日

【回転窓】遺影の若返り、許容範囲は?

夏休みを終え、きのうから平常勤務という方もおられよう。お盆には、帰省した実家の仏間でご先祖の遺影と久しぶりに対面した方も多いのでは▼昨今は、死後に飾る遺影を生前に自ら用意しておく人も少なくないようだが、遺族が葬儀の前に近影を選ぶことも多いだろう。故人も気に入るよう、できるだけ表情も写りも良いものをと考えるのが人情だが、あいにく適当な近影が見当たらないこともある。高齢で長く寝込んだ人などはなおさらであろう▼近影でない場合、遺影の若返りはどこまでなら…。作家の嵐山光三郎さんが先日、雑誌の連載で〈遺影として使っていい許容範囲は10年から15年前ぐらいでしょう。70歳をすぎたら一律20%オフのサービスとする〉と持論を書いていた(週刊朝日「コンセント抜いたか」)▼新聞も著名人の訃報に付ける顔写真の確保に苦労することがある。当方もできるだけ良い表情をと考えるのだが、特に高齢の方は随分以前のインタビュー写真しか手持ちがないことも▼嵐山さんの言う「許容範囲」はなかなかいい線かもしれない。そんなことを考えながら仏壇に手を合わせた。

【語り継ぐ土木の心】九州電力代表取締役副社長・佐々木有三氏

 ◇異分野含め多様な議論積極的に◇

 --土木は何のために存在する。

 「土木は有史以来、人々の安全を守り、生活を豊かにする社会資本を整備し、維持・管理するために貢献してきた。電力の分野でも、経済社会やエネルギー事情の変化など時代の要請に応じた電源開発の担い手として腕を振るい、そのアイデンティティーを確立してきた。土木の役割は、いつの時代も『社会からの要請』に応え、『つくること』と『機能させ続けること』といえる。『つくる』のは『もの』だけではない。新たな『仕組み』をつくる、新たな『事業』をつくるのも土木の仕事といえる。そのために『人』をつくることも重要だ」

 --土木は常に自然を相手にしてきた。

 「5年前の東日本大震災では、自然と向き合う際には謙虚さが大事なことをあらためて学ばされた。想定を超える大災害になったことについて、『想定外は言い訳だ』と土木に対して批判が向けられた。しかし、震災直後に現場にいち早く駆けつけ、人命救助や応急復旧に献身的役割を果たしたのも土木だった。『自然に対する畏敬の念』を忘れず、『国土と人命を守る誇り』と『日本の将来を支えるという気概』を持ち、『自立』の精神で新しい時代を切り開いていくことが土木の原点であるべきだ」

 --これから土木技術者には何が求められる。

 「自然現象や施工品質といった不確かなものと向き合う際には、『分かっていること』と『分からないこと』をきちんと分け、『分からないこと』については、必要な情報を蓄積し、問題解決のための技術開発や研究に先導的に取り組んでいかなければならない」

 --土木への社会の理解や信頼も必要では。

 「土木技術者は、有事や困難に対して逃げず、避けたり捨てたりもしないという真摯(しんし)な姿を社会に積極的に示すことが重要だ。そのためにも、土木技術者一人一人が、周囲に目を向け、足を運び、そこから得られる新たな教訓やさまざまな情報を日頃の業務に落とし込み、自分は仕事を通じて社会とどう関わっているかをしっかり考えていく必要がある」

 「何事も前向きに受け止め、自らの思いを社会にしっかりと伝えられるよう説明力も磨かなければならない。そのためにも専門力を深めると同時に、社会の動きを察知できる広い視野をバランスよく身に付けることが重要だ。土木の仕事は、『定型』タイプでなく『変動タイプ』といえるだろう。変動タイプの仕事はあらゆることを想定し、その都度工夫を重ねて対処しなければ責任を全うできない」

 --次代の土木を担う若者への期待は。

 「まずは目の前の仕事を確実にやり遂げた上で、『なぜ』を繰り返し、真実を知ろうとする不断の努力を続けてほしい。そして、真実を知るためには、現場に足を運び、現物を見て、当事者と話すという現地、現物、現人の『三現主義』に徹することが不可欠だ」

 「特に大事なのが、異分野も含めた多様な議論・コミュニケーションを積極的に行い、複数の目で横断的に仕事を進めることだ。直面する壁に立ち向かった経験を一つ一つ積み重ねることで、自立する力、判断できる力が身に付き、確信を持って情報を発信できるようになる。決してうろたえたり、振り回されたりしないことが肝要だ。土木技術者の活躍の場は大きく広がっている。小さくまとまるのではなく、物事を大きく捉える姿勢を養ってもらいたい」。

 (技術本部長、ささき・ゆうぞう)

【凜】森本組東京支店・森末涼子さん


 ◇頼まれたらまずはやってみる◇

 幼い頃から図画工作が好きで、大学では建築学科に進んだ。「大学の課外活動で、木材を使いモニュメントとベンチを作る機会があった。何もない所に自分の手で物を完成させた経験から建設現場で働きたいという思いが募り、ゼネコンを就職先に選んだ」という。

 念願かなって入社後すぐに現場に配属された。今年で入社4年目。「頼まれたことはまずやってみる。これを繰り返し、自信を持って引き受けられるようにする」というプロセスを大切にしてきた。

 「前の現場ではマンション地下躯体の仮設足場の段取りを任されたが、数量を間違えて迷惑を掛けた。失敗もあったけれど、1フロアずつ高くなっていく様子を間近で見られたのがうれしかった」と目を輝かす。

 現在は東京都内のマンション建設工事で施工管理を担当。最初の現場でお世話になった所長や先輩と再び一緒になり、後輩もできた。「指示された内容を、理解を伴ってできるようになりたい」とさらなるステップアップを自身に課す。

 建築系技術職で現場に配属されている女性は社内で1人だけ。人見知りな性格だったが、職人とのコミュニケーションもうまくなってきたと感じている。「これまでの現場はどこもRC造だったので、S造にも挑戦してみたい」と目標を語る。

 休日は自宅でのんびりリフレッシュ。ジグソーパズルが好きで1000ピース級を手掛ける。「完成したらばらばらにしてまた始める。その都度違った楽しみがある」。

 (東日本橋2丁目作業所、もりすえ・りょうこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・145

最先端のテクノロジーで現場どう変わっていくのか…
 ◇「最適解」を追い求めて◇

 ICT(情報通信技術)やロボットなど最先端のテクノロジーを、建設産業にどのように取り込んでいけばよいのか-。

 建設会社で新技術などを活用して業務改善に取り組む部門に所属する前川聡二さん(仮名)。最近は国土交通省が推進している建設現場の生産性向上策「i-Construction」などの取り組みが注目を集め、現場や業務の生産性を高める施策の具体化に知恵を絞っている。

 「世の中の流れや同業他社の動きに後れを取らないように」との上層部の指示を受け、業界内外からの情報・アイデア集めにも一段と熱が入る。

 入社後、技術者として建築設計を中心に現場に関わってきた。近年は3次元(3D)モデルを活用するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の構築に力を入れてきた。社内では2次元の紙でのやり取りがまだ主流だが、3Dモデルの領域は着実に広がりつつあると手応えを感じている。

 業界内では、構造物の設計データや付属する各種情報を3Dモデルに統合し、建設生産の全プロセスで有効活用しようとする動きが活発化。建築物のBIMに加え、土木構造物を対象にしたCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の具体化に向けた官民の取り組みも目立ってきた。

 「こうした先進的な取り組みに対しては、総論では賛成派が多数を占めるが、各論に入ると従来のやり方を刷新することに異を唱える人が少なくない」。BIMやCIMなどの導入は、現場の生産性向上はもちろん、品質の確保や維持管理を含めたライフサイクルマネジメントの効率化などにも寄与するといった効果を分かってはいても、組織や個人が新しいやり方やシステムを受け入れ、それに慣れるには時間がかかると実感する。

 生産システムにいくら最先端のテクノロジーを組み込んでも、それを使う人たちの意識が変わり、スキルも高まらなければ意味がない。技術やシステムはあくまでも手段。最後は人で成り立っている産業だという原点に立ち返って、人材と技術をうまく融合させることが求められていると思う。

 新技術を使える環境を整えるには設備投資も必要だ。コストと手間をどれだけ許容できるかも業務改革を進める上での重要な要素となる。

 「3Dモデルを案件受注のためのプレゼンテーションで活用したい」と営業マンが言ってきた時に、どこまで労力と費用をかけ、どの程度のレベルのモデルを作り上げるかで判断に迷うこともしばしば。何でもかんでも新しい技術・システムを取り入れることが正しいとは限らない。費用対効果などを踏まえ、その時々で最適なやり方を見定めようと心掛けている。

 日進月歩のITが多くの産業の業務革新に大きな影響を与えていることは間違いない。従来の技術より優れた新技術を活用するのは自然の流れでもある。しかし、長い年月をかけて職人が技を磨き、技術者が知恵を絞って新工法を生み出してきた流れとは異なったものにも見える。「目先の新しさにとらわれすぎると、建設業の根幹をなす技術力が逆に弱まるのではないか」。そんな疑問もある。

 変えるべきもの、残すべきものとは-。日々、最適解への模索が続く。

【サークル】三井住友建設 SMCCランニングクラブ

◇たすきをつなぐ一体感が醍醐味◇

 マラソン好きの社員が集まり、2010年に駅伝大会に参加したのがきっかけで結成された。新入社員から50代のベテランまで、さまざまな部門・支店のランニング好きな社員35人が所属する。

 代表を務める田中徳明さん(管理本部経理部)が「たすきをつなぐ駅伝は、個人参加のマラソンとは違った楽しみや感動がある」と話す通り、チーム活動最大の醍醐味(だいごみ)は、駅伝だからこそ味わえるチームの一体感。年に2回参加する駅伝大会では、おそろいのオリジナルTシャツに身を包み、一体感を楽しんでいる。

 今年5月に東京都板橋区の荒川河川敷で開かれた「ハイテクタウン駅伝」には7チーム・28人が参加。全国から773チームが出場する中、クラブからの参加チームの一つ「SMCC NO.1」が見事6位入賞を果たした。秋に出場予定の大会では表彰台を目指している。

 そしてもう一つの楽しみが大会後に毎回開く反省会。「走った後のビールは最高」(田中さん)と、日常業務では交流の少ない他部署や世代の離れたメンバー間の交流促進に一役買っている。

 田中さんは「社内には隠れランナーがもっといるはず。全社的な活動に広げ、最終的に社内の駅伝大会が開催できるようにしたい」と、ランニングを通じて社内交流の輪を広げるつもりだ。

【駆け出しのころ】三信建設工業取締役執行役員東京支店長・城戸博行氏

 ◇疑問を持ち進化の第一歩に◇

 大学の機械工学科に在籍していたため、入社したら施工機械の整備を担当するのかと思っていました。

 ところが、入社試験の面接で言われたのは「現場に出てもらう」でした。土木の知識もなく不安でしたが、「考えるより慣れろ」と覚悟を決めました。それに知らないことを担当するのですから、自分で勉強していくしかないと良い意味で割り切ることができたのかもしれません。

 入社して1カ月間、当社が地盤改良工事を担当していた上越新幹線・中山トンネル(群馬県)の現場で研修を受けました。先輩から出水して危ない時期もあったと聞きましたが、私たちが研修に行ったのは工期も残すところ1年という時期で、出水もなく落ち着いた雰囲気の中で工事が進んでいました。

 そこには、現在の大沢一実社長が当時は主任として赴任していて、図面は誰が見ても間違いがないように数字の書き方に注意するよう言われ、事務所のドラフターで何回も書いて練習したのを覚えています。

 研修を終えると、シールド工事の立坑部を地盤改良する現場に配属されました。入社1年目は言われたことをやるしかなく、2年目になって少しずつ自分で動けるようになっていった気がします。

 この現場には、元請の共同企業体にも2人の新入社員が配属されていて、同年代の私たちは休日もよく一緒に行動していました。会社は違っても社会人の第一歩を同じ現場で踏み出せたことをとても心強く感じ、その後も長年にわたり良いお付き合いをさせていただいています。

 当時の教えで今でも大切にしているのは、地盤改良工事に伴って地上に出てくる土をよく観察することです。その土には、目には見えない地中からの貴重なメッセージが込められているからです。数値でも管理を行いますが、頭で考えるだけでなく、目で見て吸収したものは大変に役立つものです。

 「繊細に、そして大胆に」-。現在、社内で皆に言っている言葉です。事前にさまざまなことを想定して対応策を練り上げたら、現場では自信を持って実行してほしいと思っています。

 そして、常に「何でこうなっているのか」と疑問を持ち、「こうやればもっと良くなる」という自分の考えを持ってほしい。例えば施工機械はこの30年で大きく進化し、これからも進化していくはずです。進化というのは誰かが疑問に思うことから始まります。その進化の第一歩をぜひ踏み出してくれるよう期待しています。

 (きど・ひろゆき)1981年東海大学工学部動力機械工学科卒、三信建設工業入社。東京第一事業部主任、同課長、同部長代理、同部長、東京第三事業部長、東京支店副支店長、執行役員東京支店長などを経て、16年現職。富山県出身、58歳。
新人研修後に初めて配属された現場で