2014年12月8日月曜日

駆け出しのころ/大林組常務執行役員テクノ事業創成本部長・蓮輪賢治氏

 ◇成すべきこと見極めてゴールへ  最初の現場は、日生ニュータウン(兵庫県)へのアクセスとなる能勢電鉄日生線の新設工事でした。大規模な現場であり、私はいくつにも分かれた工区のうち、高架区間の工事を担当しました。  現場には前年に入社された大学院卒の先輩がおられ、この方が私の教育係でした。さらにその上の先輩方も含めていろいろ教えてもらいました。ですが、最初のころは学生時代に思い描いていた現場での仕事とは違い、毎日が単純作業の繰り返し。新入社員ですから当然なのですが、明けても暮れても測量や丁張り、事務所に戻ると出面の整理などと、とても工学的とは言えないものばかりでした。正直に言うと少しストレスを感じていましたが、現場は私も含めて5、6人のチームで所長の姿も近く、厳しいながらもそういう人間関係はとてもありがたかったです。  入社当時は現場にコピー機もなく、図面は青焼きでした。午後一番に行う打ち合わせのために昼飯を急いで食べ、参加人数分の青焼きを準備していたので、昼休みはほとんどありませんでした。それが当たり前の時代でした。  これまでの経験を通じ、一番に大事だと思うのはコミュニケーション力です。人にお願いする仕事の意味や意義というのは、普段から会話があればしっかり伝えられるはずで、何も大上段に構えてある時間を取って伝えるものではないと思っています。お客さまや協力会社との関係でも同じことが言えます。発注者の考えやニーズを、常に私たちからベクトルを合わせて的確につかんでいなければいけないと考えています。  私と同じように、駆け出しのころは仕事の意味や意義も分からず、単純労働が多いものです。でも、ものづくりのプロジェクトは必ず進行します。仕事というのは節目を考えて進めることが大切です。例えば正月休みまでにどこまでできるかなどと、抱えている仕事もそうした節目で捉えていくと、そうは苦にはなりません。つまり、メリハリを付けることです。  私は、これまで先輩たちの良いところだけを学ぼうと心掛けてきました。それが自分の宝になっています。取り巻く環境や立場は人さまざまですが、職責を果たすためには、お互いを認め合い、ベクトルを合わせていく必要があります。自らの成すべきことを見極め、周囲を巻き込みながらゴールに向かう中にこそ仕事の楽しみがあるはずです。  もちろん、楽しいばかりでは果実としての成果は得られませんが、若い人たちにはそのことを伝えていけたらと思います。  (はすわ・けんじ)1977年大阪大工学部土木工学科卒、大林組入社。07年東京本社土木本部本部長室長、10年執行役員東京本店土木事業部担任副事業部長、11年技術本部副本部長、12年常務執行役員、14年テクノ事業創成本部長。大阪府出身、61歳。

最初は学生時代に思い描いた仕事とは違っていたが、さまざまなことを吸収した

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