2015年3月19日木曜日

球技専用スタジアム整備相次ぐ/世界の潮流は「利益生む施設」


間もなく着工予定の北九州市スタジアムの完成予想図
 
 全国でサッカーを中心とする球技専用スタジアムの整備や計画立案が相次いでいる。15年中の完成に向け、長野市と大阪府吹田市で建設プロジェクトが進行。北九州市ではPFI方式を採用した事業が始動し、福島県では商工会議所や県サッカー協会が「福島市にサッカースタジアムをつくる会」を設立した。クラブが自前でスタジアムを所有する欧州と異なり、日本の場合、その多くは自治体が整備主体。「施設をフル活用し、いかに利益を生み出すか」がスタジアム運営の世界的な潮流であり、完成後を見据えると課題は決して少なくない。
 球技専用競技場は現在、プロサッカーJ1・ガンバ大阪の本拠地となるスタジアムの建設が今年秋の完成を目指し大阪府吹田市にある万博公園内で進む。長野市ではJ3リーグで戦うAC長野パルセイロがホームゲームを行う南長野運動公園総合球技場の建設が進行中。北九州市では、小倉北区浅野3丁目にある海沿いの敷地にPFI方式でスタジアムを建設するプロジェクトが17年3月の供用開始を目指し、4月に着工する予定だ。
 このほかにも、京都府が収容人数2万5000人程度のスタジアムを建設するため「京都スタジアム(仮称)基本設計業務」を設計会社に委託済み。広島市や那覇市、富山市、静岡市などでもスタジアム建設の機運が高まっており、基本構想を策定する動きなどが出始めている。

ガンバ大阪の本拠地となるスタジアムの完成予想図
(スタジアム建設募金団体提供)
 
 ガンバ大阪の新サッカー専用スタジアムは、企業やサポーターからの寄付で建設費を賄うスキームを組んでいるが、それ以外は地方自治体が公共事業の一環として整備するケースが大半。欧州のサッカークラブのように潤沢な資金を使い、自前でスタジアムを建設する動きは、残念ながら日本では皆無。クラブが自前で専用スタジアムを持つのは、千葉県柏市を本拠地とするJ1柏レイソルだけで、そのスタジアムもスタンドの一部は仮設状態が続き、日常的な改修費の捻出にも苦労している。
 欧州では、中心市街地にある巨大なスタジアムにVIPルームを設け、ビジネスや宿泊施設に活用する例や、老人ホームや福祉施設を併設している例など、「サッカーを見る場所」という枠を超えた活用が進む。オランダには試合がない平日にスタジアムの駐車場を「パーク・アンド・ライド」の拠点して使い、市街地への一般車両の乗り入れを減らす取り組みもある。
 これに対して日本の場合、建設地が公園や公有地などにあるために商業利用や二次利用が難しいケースや、鉄道の駅など交通結節点から距離があるケースも見られる。プロサッカーチーム自体の資本力が乏しいことと相まって、欧州と同じような動きが今すぐ出てくるのは現実的ではない。
 さらにスタジアムを作ったとしても莫大な維持管理費を賄いきれず、持て余してしまうケースは少なくない。サッカー王国・ブラジルでも、昨年開催されたワールドカップのために改修した地方都市のスタジアムが開店休業状態に陥り、対応に苦慮した行政がバスターミナルとして活用している事態が起こっている。
 試合日にはホームチームを応援するため多くの観客が集まり、他地域からも来場が見込めるスタジアムは、自治体にとって格好の集客施設。公共投資で競技場を造るという発想から一歩踏み出し、欧州では当たり前のようになっている施設の姿をどう実現するのか、関係者の知恵と工夫が求められている。

長野市で建設中の球技場完成イメージ





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