2015年5月7日木曜日

【浪速のシンボルが生まれ変わる】通天閣が世界初の免震タワーに

6月末にはすべての工事が完了する
 大阪のシンボル「通天閣」(大阪市浪速区、高さ103メートル)が上部構造を免震ゴムで支える世界初の免震タワーに生まれ変わった。柱脚部で免震装置の設置が完了し、これまでタワー上部を支えていた柱4本のうち、最後に残った南東の柱を1日、通天閣を経営する通天閣観光の西上雅章社長が切断した=写真上。免震改修の設計・施工は竹中工務店が担当。14年10月に着工。今後、初代通天閣のエントランスをイメージした吹き抜け天井の復刻作業に着手し、6月30日の完成を目指す。
 工事では、道路上に通天閣があるという施工条件を踏まえ、地上8メートルのレベルに施工ステージを構築し、通行人や観光客の安全性を確保。最初に四つある柱脚部をコンクリートで固め、柱脚上端に免震ゴムやオイルダンパーを置くスペースをつくった。柱脚同士をつなぐ巨大な梁を設置した後に免震ゴムを設け、2階底部との間にコンクリート層を形成してタワー中上層部の垂直荷重を受け、最後に免震ゴム付近の鉄骨柱脚部を撤去した。
 通天閣観光の協力を得て、振動計測を行った大阪大学の宮本裕司教授によると、通天閣は構造的な劣化は進んでいないことが判明。阪神大震災や東日本大震災の発生後、設計用地震動が強化されたのに加え、南海トラフ巨大地震の発生の切迫性も指摘されるようになったことから耐震診断を実施、南海トラフ地震で塔の一部が変形する恐れがあることが分かった。この調査結果を踏まえ、免震工事が決まった。総工費は約6億円。
 現在の通天閣は2代目。初代は第2次大戦で焼失し、現通天閣は戦後復興のシンボルとして1956年に誕生した。2階には展示スペースや売店、3階には100年前の通天閣や一帯の新世界などを紹介するスペースを設け、4階と5階が展望台になっている。東京タワーも手掛けた内藤多仲が設計。西上社長は「次世代の人たちにも安全性が向上した通天閣を見てほしい」と述べた。また宮本教授は「通天閣の構造が耐震から免震に変わる日に立ち会えて光栄に思う」と感慨深げだった。

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