2015年5月12日火曜日

【〝きぼう〟を胸に宇宙へ】大林組らがISSで航空産業向け先端材料実験

船外実験プラットフォームのイメージ
 大林組は11日、静岡大学、有人宇宙システム(東京都千代田区、古藤俊一社長)と共同で、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で航空宇宙産業向け先端材料の実験に乗りだすと発表した。鉄鋼の約20倍の強度を持つ「カーボンナノチューブ(CNT)」の耐久性を宇宙環境で検証するのが目的。船外の実験スペースに試験体を設置し、1~2年後に回収して放射線や紫外線などの影響を調べる。日本のゼネコンが宇宙で材料実験を行うのは初めてという。
 ISSは、地上から約400キロ上空に建設された有人実験施設。今回の実験は、CNTの建設材料としての可能性を探る各種実験の一環で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の簡易曝露(ばくろ)実験装置の利用テーマとして採択された。
 実験で使用するCNTは、高品質で長尺の撚糸(ねんし)形状。直径約20ナノ(ナノ=10億分の1)メートルの多層繊維をより合わせた複数の試験体を用意し、1年または2年間にわたり曝露実験を行う予定だ。
 1回目の試験体は、4月に米国のケープカナベラル空軍基地から米国の民間ロケットで打ち上げられた。今後、実験装置に試験体を取り付けた後、船外実験プラットフォームに据え付ける。
 CNTの複合材は電池材料などの用途で使われ始めている。橋梁のケーブルや構造体の耐震補強など建設分野のほか、航空機や宇宙機の機体、電磁シールド、輸送機器のケーブル材など幅広い利用が期待されている。ただ、使用環境が及ぼす影響は大部分が解明されていないという。
 大林組は、2050年の実現を目指す「宇宙エレベーター建設構想」を12年に発表した。月までの距離の約10分の1に当たる上空3・6万キロに「静止軌道ステーション」、地球の海洋上に基地となる「アース・ポート」を設置し、総延長9・6万キロのケーブルでつないでエレベーターを運行させる構想で、ケーブルの素材にCNTを使うことを提案している。

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