2015年5月22日金曜日

【回転窓】「後の先」の外交交渉

 太平洋を取り巻く国々で自由貿易圏をつくる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の日米協議が大詰めを迎えているとされる▼安倍首相が交渉への参加を表明したのは13年3月。各国が枠組みを固めつつあったころだ。出遅れながら長期間の交渉に持ち込んだ日本政府の粘り腰は一応評価に値するだろう。外交交渉で最も大事なのはいうまでもなく国益。それを意識した交渉を今後も期待したい▼TPP交渉と並行し、需要が急増するアジアのインフラ整備をめぐる主導権争いが激しくなっている。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を見送っている日本が打ち出した一手は、アジア各国へのインフラ資金の援助だ。AIIBが計画する資本金と同額の1100億ドル(13兆円)を5年で投じるという▼戦前の名横綱・双葉山が極めた取り口が「後の先」。相手に先に立たせ、当たり合った後には逆に勝負を有利に運ぶ形になっていたという。アジアのインフラ整備でも日本はTPPのように「後の先」といけるか▼AIIBに参加するのはTPPの5倍近い58カ国。外交力の真価が問われる。


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