2015年7月15日水曜日

【回転窓】16歳の死と託された望み

 小児がんの専門医で俳人の細谷喨々に、病気で亡くなった子どもたちのことを詠んだ句がある。〈朝顔の花数死にし子等の数〉▼朝の間に美しく咲く朝顔も、昼を待たずにはかなくしぼんでしまう。その花を数えているうちに、幼くして死んだ子どもたちの顔が一つ一つの花に重なって見えてきたのだという。『NHK俳句 子どもを詠う』(西村和子著、NHK出版)から引いた▼「この世の不条理を感じずにはいられない、あまりにも短い時間でした」。役所に土木職として勤める知人の娘さんが、小児がんと3年にわたり闘った末に亡くなった。まだ16歳。葬儀の会葬礼状に書かれていた「不条理」の言葉が、これほど胸に重く響いたことはない▼医療機関のホームページによると、日本で15歳未満の子どもが「がん」と診断される確率は1万人当たり約1人。決して高い数字ではないとされるが、その1人の子どもと家族が感じる不条理は、どれほどのものだろうか▼冒頭の句を詠んだ医師のように、病と闘う子どもたちを救おうと、治療に明け暮れる人たちがいる。託された多くの望みがしぼむことはない。


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