2015年8月26日水曜日

【首都圏Look at】東京・千代田区と港区が中小ビルの省エネ化支援強化

東京・港区の新橋周辺。中小規模のオフィスビルが集積する
◇助成金積増、事業所への専門家派遣も◇

 東京の都心区で、中小規模のオフィスビルの省エネ化を加速させようという動きが活発になっている。区内のエネルギー消費量の約7割をオフィスビルが占めている千代田区や港区では、大規模ビルに比べて設備改修などによるコストメリットが小さい中小ビルの省エネ化があまり進んでいないのが現状だ。そこで両区は、既存ビルの省エネ改修に助成金を交付する新制度を設けたり、専門家によるアドバイスで事業者の省エネ意識を啓発したりする取り組みの強化に乗りだした。

 千代田区は本年度、東京都と連携し、省エネ改修に対する新たな助成制度を開始した。都は、14~15年度の時限措置として「中小テナントビル省エネ改修効果見える化プロジェクト」を推進中。高効率空調機やLED照明などの導入経費(設備費、工事費)の一部を補助している。千代田区は、都の補助に上乗せして助成金を交付する。都心部の既存中小ビルの省エネ化の遅れに、両者が危機感を抱いて実現した。

 千代田区は、3月に策定した「千代田区地球温暖化対策地域推進計画2015」で、ビルの省エネ化に向けた中長期的な取り組み方針も打ち出している。新築の中小ビル(延べ床面積300~5000平方メートル)に対しては、ビル計画の初期段階からエネルギー対策を図るように誘導するため、「(仮称)事前協議制度」を創設することを明記した。

 従来もビルのエネルギー対策について書類の提出を求めてきたが、実効性をさらに高めるため事前協議を義務化する。ビルの外壁や窓の断熱、再生可能エネルギーの導入などを建築計画に盛り込んだ事業者に助成金を交付するほか、「省エネ事業所を認証する区独自の制度を新設することも検討している」(環境政策課)という。

 一方、既存の中小ビルに対しては、09年に開始した「グリーンストック作戦」を継続し、ビルの省エネ化支援に取り組む。オフィスビルで成果が上がってきたため、本年度にはマンションの省エネ化に対する支援も開始。春には、先行的に省エネ改修や一括受電の導入などを行うモデルマンションを選定した。モデルマンションで実証実験を行うことで、今後のマンション施策に生かす考えだ。

 都内自治体の中で二酸化炭素排出量が最も多い港区は、区内で大規模開発が多く計画されていることを念頭に「港区低炭素まちづくり計画」を11月に策定する予定だ。素案では、以前から進める省エネ設備の導入経費の助成制度のさらなる促進、大規模開発に合わせた自立分散型エネルギーシステムの導入や緑地確保の誘導などを盛り込んだ。

 既存の中小ビルを対象にした新規事業も本年度に立ち上げた。省エネ対策の支援を希望する事業所に専門家を派遣し、省エネ診断や運用改善・設備改修のアドバイスをする。本年度末までに、実際に省エネに取り組んだ事業所を「(仮称)省エネ推進事業所」に認定。来年度以降はそれをモデルケースに「取り組みをほかの事業所にPRし、意識啓発を図っていく」(環境課地球温暖化対策担当)考えだ。

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