2015年10月8日木曜日

【読み応えのある記事をどうぞ】斬新アイデアで公共施設をリノベーション

千葉県鋸南町の「新たな観光交流拠点計画」のイメージ
◇若手建築家・クリエーターと自治体、総務省がマッチング◇

 総務省が、若手建築家らのプロデュースによって地方自治体が管理する公共建築物の斬新なリノベーションを促す新事業を始めた。老朽化・陳腐化した公共建築物を地域の交流・にぎわい拠点などとして再生させたい自治体と、常識にとらわれない機能やデザインを実現させたい若手の建築家・クリエーターとの間を同省が仲介する仕組みで、このほど初弾事業として8件が選出された。観光需要の増加を見越して職員寮をバックパッカー向けの安宿へ再生させるなど、斬新な計画が相次ぎ具体化する。

 初弾事業の8件は、9月30日に東京都内で開かれた初のマッチングコンペの審査結果発表会で選出・報告された。審査員を務めた建築家の隈研吾氏は講評で、「今の時代のニーズに合った取り組みだ。今回のコンペはアイデアだけではなく、実現を前提にしているので審査をしていて面白かった」と振り返った。

 主な提案内容を見ると、東京都葛飾区と、宿泊施設のリノベーションなどを手掛けるR.project(千葉県鋸南町)が組んで取り組む「柴又BASE」計画では、2020年東京五輪を機に訪日外国人旅行客が大幅に増加するのを見越し、区の旧職員寮を外国人バックパッカー向けの安宿として再生させる。

 機能やデザインで重視するポイントとして、映画「男はつらいよ」シリーズ」で多くの人が知っている東京の下町ならではの雰囲気を味わえるよう考慮するという。映画の寅さんのように外国人に日本各地を旅してもらう拠点のような役割も担えるようにする。

マッチングコンペの審査結果発表会
(9月30日、東京・文京区の東大本郷キャンパスで)
 千葉県鋸南町は、首都圏にある複数の大学で建築を学ぶ学生の集団(大学名は非公表)と組んで、「新たな観光交流拠点計画」に取り組む。温浴施設「笑楽の湯」に併設された同町の老人福祉センターを、町民や観光客の交流拠点として再生。風呂上がりの来訪者が地元産の野菜などをつまみにビールを楽しめる「産直バー」や、誰もが気軽にくつろげる土間や畳の間を設ける計画だ。

 富山市と博報堂が組んで進める富山国際会議場の再生計画をはじめ、大規模な公共建築物に生まれやすい未利用・低利用空間の有効活用を図る提案が多かったのも特色だ。いずれも地元産品を売り物にするカフェや土産店などを設置するアイデアが具体化する。

 今回、総務省が企画した自治体と若手建築家・クリエーターとのマッチングは、公共インフラを民間に開放して地域経済の好循環を生み出すのに有効な手段として、高市早苗総務相が6月の経済財政諮問会議に提唱、実現した。

 夏から秋にかけて初のマッチングコンペが開催され、民間からの約60件の提案の中から8件のマッチング案件が選出された。

 公共建築物のリノベーションでは、規模の拡大や設備を更新するだけの単純な建て替えや改修にとどまるケースが少なくない。だが、リノベーションに合わせて斬新な機能やデザインを取り込めば、地域の活性化に役立つ新たな交流・にぎわい拠点として再生できる可能性もある。一般道路の休憩施設として全国に広がっている「道の駅」などはその成功例の一つともいえる。

 総務省の事業として全国規模で行うことで、実績が少ない若手の建築家や、実績があっても発想が斬新過ぎて採用されにくいクリエーターにとっては、アイデアを着実に実現できる新たな「登竜門」になると期待する声もある。

 総務省は今後、8件の事業に対し、設計費を補助する。さらにこれらが着実に具体化し、適正に運営管理されているかもモニタリングしていく予定だ。
 16年度以降もマッチングコンペを開催。自治体と、今回選出されなかった提案や新たな応募作品との有効な組み合わせを創出していく。

 同省が進める公共施設再生などの情報は「公共施設再生ナビ」へアクセスを。

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