2015年10月8日木曜日

【回転窓】地域の味方になれ


 17年前、駆け出し記者のころに取材していた東京都新宿区の西富久地区再開発事業。先月竣工した再開発ビルの報道機関向け内覧会で久しぶりに現地を訪れ、その変貌に驚かされた▼見覚えのある周囲の街並みの中に超高層ビルがそびえ立つ。その足元には、当時の計画案に盛り込まれていた地権者用の一戸建て風のペントハウスが建ち並ぶ▼バブル崩壊の象徴として知られた西富久地区。地上げの影響を受け、塩漬けの土地が虫食い状に残った。地元では1990年に住民主導の街並み再生に向けた勉強会が発足し、97年には街づくり組合を結成して再開発事業の具体化に本格着手。四半世紀を経て関係者の努力が結実した▼事業推進の過程で、自治体や国の関係機関、民間企業が加わり、施設計画案は何度も見直された。合意形成前の新しい案をスクープし、関係者から抗議の電話を受けて新聞の影響力と怖さを教えられた▼「営利重視の権力者に寄らず、地域の味方になって下さい」-。再開発ビルの完成を見ることなく亡くなられた当時の組合理事長の一言は、今でも記者としての初心を思い出させてくれる。

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