2015年11月27日金曜日

【回転窓】大横綱の猫だまし

 相撲の立ち合いで、相手の眼前でパンッ!と両手を打ってひるませる珍技「猫だまし」を、1992年公開の映画「シコふんじゃった」(周防正行監督)で知った。大学の弱小相撲部の奮闘ぶりをコミカルに描いた作品で、竹中直人さんふんするキャプテンが強敵を相手にした時の秘策とうれしそうに語っていた▼大相撲九州場所10日目(11月17日)。関脇栃煌山を相手に横綱白鵬がこれを2度も繰り出して勝った。取組後に土俵で見せた表情は自信に満ちあふれていたが、9年連続年間最多勝の大横綱が、格下相手に珍技を使うとは▼現役時代「技のデパート」の異名を取り、猫だましも駆使した相撲解説者の舞の海秀平氏は「ファンサービスかもしれない」と評したが、苦言を呈したのが、20日急逝した北の湖日本相撲協会理事長や横綱審議委員会の面々。「横綱としてやるべきことではない」▼評価は分かれるところだ。角界の将来を誰よりも考える白鵬にしてみれば、会場を盛り上げたい一心だったのだろう▼モンゴル出身の大横綱にここまでさせる日本人力士たちのこれからが試されている一幕でもあった。

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