2015年11月9日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・116

外国人労働者を受け入れる意識は徐々に広がっているが…
 ◇問われる、日本人の適用力◇

 「グローバル化という言葉をよく耳にするが、島国特有の閉鎖的な感覚はそれほど変わっていないのではないか」

 専門工事会社で外国人労働者の指導役を担う富田浩一さん(仮名)は、建設現場に限らず、日常の暮らしの中で外国人と接する日本人の対応にどこかよそよそしさを感じている。海で周囲から隔離された環境下で、外からの刺激に過敏に反応する国民性は、そう簡単に変わらないと見る。

 現場であからさまに人種差別的な対応を取る人は少ないが、外国人を日本人と同じ技能者としてはなかなか扱ってもらえない。言葉の壁はもちろんある。ただ、それ以上に異質なものを受け入れる日本人側の適応力の乏しさが目に付く。

 昨今の人材不足の折、外国人労働者の活用を国が推進していることもあり、元請のゼネコンも外国人を現場に入れることに一定の理解は示してくれる。

 「それでも品質確保や工期厳守が生命線であるゼネコンにとって、外国人を活用することで日本人以上のメリットが得られると考える会社は少ない。現場監督も会社からの指示で表面的には受け入れているが、『使ってもいいけど、面倒はそっちで頼むよ』と一線を引いてくる」という。

 業界全体の意識を変えない限り、外国人労働者を現場に受け入れる取り組みは一向に根付かず、建設市場のグローバル化も進展しないと考えている。

 指導している20~30代のベトナム人たちは、現場経験を重ねるに従って技能レベルが高まり、日本人と比べてもそん色ない仕事をこなす。片言の日本語しか使えないため、コミュニケーションに苦労する面はあるものの、指導・監督する相手の話を理解しようと常に真剣だ。

 「日本人でも人によって能力の差はあり、経験年数に対して技量が伴っていない人もいる。異国の地で働きながら、技能を必死で磨こうと頑張っている外国人技能者は、仕事へのモチベーションが高い。経験を積んで自信が付けば、日本人と同等以上の働きはできる」

 指導しているベトナム人たちから慕われる富田さんは、プライベートでも彼らにとって兄貴分的な存在だ。休日には、遊ぶお金もなく、街を歩いても見知らぬ人ばかりで宿舎にこもりがちなベトナム人たちを、パチンコや居酒屋などに誘う。

 家族や恋人を故郷に残し、何年も帰らずに異国で暮らせばストレスもたまる。「せっかく日本に来てくれているのだから、日本のことを好きになって帰ってもらいたい」と願う。

 日本の建設現場で技能実習を積んだ外国人に、即戦力として期間限定で働いてもらう国の「外国人建設就労者受け入れ事業」。職人不足の国内建設現場の労働力を確保する20年度までの緊急措置だ。賃金を日本人技能者と同等にするなど受け入れ後の管理面のチェックが厳しい。富田さんの会社内でも、外国人技能者の受け入れには賛否が分かれる。

 少子高齢化による人材不足への対応は、建設産業に限らず、日本が抱える大きな課題の一つだ。富田さんは、外国人労働者が国内の建設現場で働く姿が当たり前の風景になるように、力を尽くす毎日だ。

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