2015年12月28日月曜日

【年末のちょっと一息】1年間、ありがとうございました

こんにちは、ブログ管理人です。早いもので12月も28日、きょうが仕事納めという方も多いのではないでしょうか。私も15年の仕事は本日で終了。明日から年末年始の休暇に入ります。

 田舎に帰省する方、自宅でのんびりされる方、はたまた年末年始も休まず仕事をされる方。過ごし方はさまざまかと思いますが、どうか体調に気を付けて楽しい年末年始をお過ごし下さい。

 私事ではありますが、この年末はサッカー天皇杯の応援に全精力を傾けます。29日の準決勝を勝てば(イヤ、勝つので)、元旦は味スタで決勝戦。ガンバ大阪を下して優勝した2013年の元旦は最高の気分だったなー。新年早々、今はなき国立競技場で泣きましたよ、はい。

 ということで、来る2016年がみなさまにとって幸多き年でありますように。今年1年お世話になりました。来年もみなさまに楽しんでいただける記事をアップし続けるので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 新聞発行は12月28日まで。元旦に新春企画特集を発行した後、1月4日から平常通りになります。新春企画特集は1月1日、弊社HPに一部を、会員制オンラインサービスには全文アップします。お時間のある方はぜひ、HPにお越し下さい。


それでは Bonne Année !!!

【備えあれば憂いないし】中部整備局ら、富士山噴火緊急砂防計画策定

 中部地方整備局富士砂防事務所と山梨県、静岡県が、「富士山火山噴火緊急減災対策砂防計画(基本編)」をまとめた。

 噴火に伴う土砂災害の被害を軽減するため、噴火時に3者が連携し緊急のソフト・ハード対策を迅速、効率的に実施するための基本的な考え方を示した。

 これを踏まえ今後、具体的な対策を示す「対策編」の策定を進める。

 基本編では、噴火時の土砂移動現象(溶岩流、融雪型火山泥流、降灰後の土石流)に対し、対策の開始・中断のタイミングや対策期間、実施箇所、実施時期の考え方などを対策方針として示した。

 緊急対策の実施期間は噴火の前後数週間から2~3カ月を想定。また、緊急減災対策としてのハード・ソフト対策項目、実効性を高めるための平常時からの準備事項などを盛り込んだ。

 緊急ハード対策は、限られた対策期間で被害の防止・軽減を図るために実施。既存の砂防設備がある場所は、除石工などで効果的な対策を講じることができるため、平常時からの施設整備が重要とした。噴火活動の状況に応じ追加で仮設堰堤や仮設導流堤などを整備し、より減災効果を高める。砂防設備がない場所は仮設導流堤や仮設堰堤などを実施するとし、無人化施工も視野に入れて検討するとした。

 緊急ソフト対策は、火山活動の推移に応じ▽土石流監視機器などの緊急的な設置▽リアルタイムハザードマップによる被害範囲の想定▽土砂災害防止法に基づく緊急調査-などを中心に実施。

 緊急減災対策の実効性を高めるため、監視機器・情報通信網を活用するための体制構築、航空レーザー測量などによる噴火前からの地形データの整備、関係機関との連携や情報共有の強化など、平時から準備することが重要としている。

 今後策定する対策編では、基本編で示された対策方針に基づき具体的な対応を取りまとめる。また、▽施設配置計画▽必要資機材▽役割分担▽情報共有・連絡調整体制-などについて、対策予定箇所ごとに整理し実施体制も検討する。

【ダムの次は橋】ピーエス三菱が「橋カード」作成・配布

 ピーエス三菱が、広報活動を強化している。

 同社を身近に感じてもらうため、得意のプレストレストコンクリート(PC)技術を駆使して建設した橋梁を紹介する「橋カード」を作成。現場見学会や事業の地元説明会などで配布している。

 社内の表彰制度も改正し、橋梁模型コンテストで入賞するなど会社の宣伝につながる成果を上げた人を表彰するようにした。

 藤井敏道社長は「会社の知名度をもっと高めていきたい」としている。

 橋カードは、国土交通省が展開する「ダムカード」を参考にした。現在は10種類。国内で5橋目となる自碇式PCつり床版橋「白虹橋」(京都府)やPC8径間連続波形鋼板ウェブ箱桁橋「平成大橋」(岩手県)など、同社が手掛けた外観や構造が特徴的な橋梁を選んだという。

 カードの表側に写真、裏側には工事の概要や地域の情報を記載した。QRコードを付け、コードを読み取るとより詳細なデータを見られるようにもした。

 同社は、土木で培ったPC技術を建築分野にも広げている。設計・施工を担当し、PCaPC(レンコン梁圧着)工法を導入した千葉県成田市の国際医療福祉大学新校舎・体育館棟を紹介した一枚など、橋梁以外のカードも作った。

 広報活動の強化に向けた取り組みとしてこのほかホームページをリニューアル。現場見学会の開催も増やしている。藤井社長は「人に見てもらうのは仕事をしている社員にも刺激になり、現場に活気が出てくる。社外へのアピールになると同時に、社内にとっても良い効果だ」と話す。

 同社は、土木学会などが主催する「橋梁模型コンテスト」で7年連続で賞を受賞している。そうした社名の出る対外的な評価を受けた人を表彰する制度も新設した。

 グループ全体での成長を目指し、子会社との連携も強化しており、各種表彰制度では、グループ会社の社員も対象に加えていく。

【回転窓】ゆかしい人

「厳しいという言葉は使いたくない。これが“常態”なんだ」。22日に都内で開かれた清水建設相談役の故・野村哲也氏(元社長・会長)のお別れ会で生前の写真を眺めながらふと思い出した言葉だ▼野村さんは99年に社長に就任され、バブル崩壊後の厳しい時代に経営のかじ取りをされた。03年の新年のインタビュー時に「厳しい、厳しいと嘆いてもしょうがない。これが当たり前だと思えば前向きになれる」と答えていた▼激化する受注競争については「技術レベルで差がなければ、あとは顧客のニーズにどれだけ誠実に応えられるか。奇策なんかない。これを地道に愚直に追求するだけ」とも。強い信念を持ち、行動家で知られた野村さんらしい言葉だ▼今年も建設業の発展に尽くされた多くの方が鬼籍に入った。本日付最終面に、惜しまれつつ亡くなられた方のお名前を掲載した。駆け出し記者時代にお世話になった方もあり、残念でならない▼亡くなることを「ゆく(逝く)」という。その「ゆく」から出来た言葉に「ゆかしい」がある。年の瀬に今年逝かれた方々をゆかしく想い、あらためて手を合わせたい。

2015年12月25日金曜日

【建設業の海外展開は】海外交通・都市開発事業支援機構・波多野琢磨社長に聞く

 国際競争力の強化と世界経済の取り組みを政策の柱の一つに展開しているわが国の成長戦略。「質の高いインフラ輸出」をキーワードに、官民挙げた取り組みが行われている。アジア・太平洋地域に自由で公正な一大経済圏構築を目指すTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が大筋合意し、本邦企業には新たな事業機会の創出の可能性も広がる。インフラ整備を担うわが国の設計事務所、建設コンサルタント、建設会社の取り組みをどう見るのか、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の波多野琢磨社長に聞いた。

 ―― 建設業の海外展開の現状と、将来展望についてどう考えていますか。

 「鉄道、空港、港湾、道路といったインフラプロジェクトのコストの半分以上は土木工事が占めており、専用軌道を敷設する新幹線となるとコストの7割が土木工事です。それを担う日本の建設会社や関連の企業が海外でのプロジェクトに携わろうということは大変意味のあることだと思います。少子高齢化や社会の成熟など、将来の日本の傾向を考慮すれば、建設需要は今後、海外特にアジアの方が旺盛にあります。各社の経営戦略はそれぞれかもしれませんが、海外への進出は避けられません。当社はプロジェクトベースで、そうした取り組みを支援していきます」

 「建設業の仕事は範囲が大変広いというのが特徴です。海外においては、自らが出資して事業主体となって建設事業までを担うというケースはまだ少ないと思いますが、徐々にそうした事業展開も増えていく可能性があります。保有している建設技術や施工経験を、事業主体の一部やオーナーサイドに立って、プロジェクトに役立ててもらうことを期待しています。民間企業というは、競争して勝たなければなりませんので、事業者側に立つという取り組みが今後カギになると思います。その際、日本の建設業の経験というのは国内の公共事業が中心というのがネックです。公共事業は政府が企画した事業を施工するわけですから、海外のプロジェクト案件では通用しません。現地企業とのネットワークが重要であり、どんな企業と手を組むとプロジェクトがスムーズに進むかどうかは経験に左右されます。パートナー選びは海外事業を展開する上で最も重要な要素ですので、国内が忙しいからといって海外での事業展開を控えるのではなく、積極的に進出すべきだと思います」

 ―― 海外事業はリスクの高さが課題です。

 「インフラは造り続けていないと、技術が廃れてしまいます。日本企業の仕事は品質に優れている上に、工期も必ず守るので、造れば確実に評価されます。その積み重ねの経験が、その次の受注に結びつくと思います。合わせて、海外事業に限りませんが、リスクはつきものですので、事前に十分な情報を把握し体制を整えておくことが必要です」

 「我々は、なるべく日本の企業に活躍してほしいと思っています。ただ、建設業というのはローカル産業なので、日本企業の海外進出先の現地企業と組むことが成功のカギです。日本の企業には、施工管理のような高度な技術が必要な分野に力を発揮していただきたいと思いますし、日本の企業が携われるように、我々は出資していきます。もちろん、現地政府がかかわるプロジェクトもあるので、そうした場合は現地企業とJVを組む必要があります」

 「入札は価格と品質での勝負です。インフラは30~40年と使うわけですが、その間のメンテナンスコストも考慮しなければなりませんし、使われないものを造るプロジェクトに出資するわけにはいきません。投資ですから、回収しなければならないからです。ただし、環境と安全面のスペックに関して、妥協はできません。国際入札で日本の建設業の勝率が悪いのは、他国の企業と比べて海外での経験が少ないからでしょう。土木の技術は素晴らしいものがあるのですから、提案型で受注していくと成功すると思います。土木分野において提案だけする会社はたくさんありますが、その後の施工、施工管理までできるのは日本企業に優位性があります。インフラプロジェクトというものはある意味、陣取り合戦ですので、各国とも国を挙げてセールスを展開しています。日本もそうした動きを学ぶべきです」
 

 ―― 安倍政権は、成長戦略の一つとしてインフラ輸出に力を入れています。

 「これまで他国に遅れていた海外展開の公的支援が、安倍政権になり大きく変わりました。官邸主導で早い段階でファイナンスを決めるなど、相手国からも高く評価されています。政府が決めたあとは、民間には素早く動くことが求められます。企業が出るかどうかがポイントになるということです。インフラは、その国の発展のベースとなる社会資本です。経済発展という面だけでなく、港や空港、道路などを見ても安全保障の面で大変重要な社会資本といえます。我々も案件さえあれば出資していきます。民間が反応してくれるかどうかですので、民間が入りやすいような事業環境を整えるのも大事だと思います。ビジネスチャンスととらえて、人材を育成してほしいと思います。海外はローカルなリスクがありますので、ローカル企業のパートナーは重要です。場合によってはローカル企業をM&A(買収)するケースも出てくると思います」

 ―― JOINの今後の活動方針をお願いします。

 「規模の大きなものをできるだけ早い段階から出資したいと思います。日本の民間企業が入りやすいように計画づくりから関与しようと思います。フィリピンのクラーク空軍基地跡地とその周辺を含めた開発の調査に協力することになります。日本企業のこれまでの経験が評価された結果だと思います。都市開発の一つの実験として、取り組みたいと思います。基本計画は示されていて、都市開発や鉄道計画などが含まれています。ここでの成功が、他国での参考事例になると思いますので、しっかりとしたものを示します。JOINに頼んで良かったといわれるよう努力します」

 「人材の育成が大事ですので、JICA(国際協力機構)などと協力して取り組みたいと思います。まだ、当社の事業は始まったばかりですが、出資はスタートで、リターンがあって成功です。5年先にそういうのが出てくれば大成功です。まずは人材の育成からです。また、投資をする上ではどういったニーズがあるのかを把握する必要がありますので、建設業界の方々とも意見交換をさせていただきたいと思っています」。

 (はたの・たくま、69年東大卒、日本輸出入銀行入行。国際協力銀行外事審議役アジア・大洋州地域担当、在アラブ首長国連邦特命全権大使、東洋エンジニアリング取締役副社長などを歴任し、2014年10月から現職。70歳)

【回転窓】訪日客2000万人目前

 2020年に訪日外国人旅行客を年間2000万人とする政府の目標が達成確実な情勢となった。各月の旅行客数は10月まで34カ月連続で過去最高を更新しており、15年の累計旅行客数は19日時点で1900万人を超えた。この推移からすれば、前倒しでの目標超えは確実▼石井啓一国土交通相は「政府一丸の取り組みが奏功した」と指摘。同時に、これに慢心することなく、課題とされる受け入れ体制に万全を期するなど、手を緩めることなく観光立国の実現を目指していく構えだ▼本社のある東京・新橋でも、数年前までは珍しかった多くの外国人が行き交う風景が日常の光景となった。お隣の銀座の街を歩けば、「ここはどこの国?」と思えるほど。流行語にもなった中国人旅行者の「爆買い」に代表される消費行動は確実に日本経済の一端を担っている▼しかし真の観光立国を目指すには、東京だけでなく全国各地が外貨で稼げる体制を築く必要がある。地方の観光振興に欠かせないのが交通インフラの整備だろう▼建設業を含めてアベノミクスの効果を全国に行き届かせる鍵を握るのは、観光政策といえる。

【スター・ウォーズファン必見】写真展「DARK LENS」、東京・渋谷で開催中!!

Dark Lens, The Falcon’s Flight, Dubai, 2009 © Cédric Delsaux
 ◇建設現場とミレニアム・ファルコン号が融合◇

 世界中に熱狂的なファンを持つ映画「スター・ウォーズ」シリーズのキャラクターをモチーフにした写真展「DARK LENS」が、東京・渋谷のディーゼル・アート・ギャラリーで開かれている。フランス人写真家セドリック・デルソー氏の日本初の展覧会。映画の最新エピソードが公開されたばかりのタイミングに、スター・ウォーズの独特の世界観を味わえる展覧会になっている。16年2月11日まで。

 デルソー氏の作品は、建設現場や廃虚など近未来的な風景を撮影した写真に、スター・ウォーズに登場するロボットや宇宙船を合成している。撮影場所はドバイの建設現場や砂漠、パリやロンドンの街。見慣れた風景の中で、映画そのままのキャラクターたちがストーリーを演じている。

 ハン・ソロの愛機、宇宙船「ミレニアム・ファルコン号」がビルの建設現場を飛行する作品を見ると、現実に起こりそうな感覚に襲われる。現実とフィクションの境界を揺さぶる展覧会だ。

 時間は午前11時30分~午後9時。不定休。入場無料。詳細はホームページ

2015年12月24日木曜日

【がんばる、清水建設】インドネシアで攻勢、高い施工品質や技術力アピール

 インドネシアで40年にわたって建設事業を展開している清水建設。経済や政治情勢の変化などの影響を受け、手掛ける事業の量は時代によって変動したが、ここ数年は非日系の建築工事、政府開発援助(ODA)関連の土木工事など大型案件を相次ぎ受注し、事業量が急増している。各現場で安全確保や品質向上、工期短縮などの取り組みをアピールしてブランド力を高め、シンガポールに次ぐ第2の海外拠点として安定した事業基盤の構築を急ぐ。

 □アストラタワープロジェクト□

完成すれば、インドネシア最高層のビルとなる。自動車やバイクの生産・販売を主力事業とし、国内最大の売り上げ規模を誇るアストラ社の本社ビル(テナント用オフィス含む)としても注目を集める。

 沖和之建設所長は「当社の強みをアピールする上で、高品質はもちろん、工期の遅れが当たり前のこの国で契約工期を半年圧縮する目標を掲げ、チャレンジしている」と意気込みを語る。

 地下と地上の各工程で3カ月ずつの短縮を計画。逆打ち工法による地下掘削では、中間階床の構築を後に回して床下空間での大型重機の使用を可能とし、作業効率を高めた。

 雨期も作業スピードを落とさないよう、日本から持ち込んだトラス材で仮設テントを掛けた。掘削後はトラス材を転落防止用の外部養生に転用し、本格化する地上部の躯体作業の安全確保に役立てている。

 概要=RC造地下6階地上47階塔屋3階建て延べ16・5万平方メートルの規模。高さは261・5メートル。建築・設備・外構の施工を清水建設・TOTALJVが担当。請負金額は約210億円。工期は14年9月中旬~18年3月末。

 設計業務は意匠を日建設計、構造をアラップ、、設備をマインハート、外装をインハビットらが手掛ける。

 □B Buraun LVP-Product□ 

医療器具メーカーのB Braun社がジャカルタ郊外の工業団地に新設する大容量点滴薬パック(LVP)の生産施設。清水建設は建築工事を担当する。

 ドイツに拠点を置く施主をはじめ、オランダのコンサルタント、インドネシアの杭業者、設備の大気社などといった多国籍グループで事業を推進。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入し、設備の収まりや仕上げの確認など、関係者間の情報共有、調整の迅速化などを図っている。

 建設中の1期施設に続いて、敷地内に2期施設を今後整備する計画。佐久間伸一工事長は「1期工事で良い仕事をし、2期工事の受注につなげたい」と意欲を示す。

 概要=工場がS一部RC造3階建て、事務所がRC造2階建て。総延べ床面積は約2・1万平方メートル。工期は5月~16年7月。

 □MNCメディアタワー□

インドネシアのメディア最大手のMNCグループから設計・施工で受注した業務・ホテル中心の超高層複合ビル。

 当初、別の企業が基本設計を手掛け、清水建設が実施設計以降を行う計画だったが、施主側が建物高さの変更を要請(252メートル↓173メートル)。延べ床面積と完成時期を変更しない条件で再設計となり、同社の総合力でコンペに競り勝った。

 限られた工期の中で地下工事と並行しながら再設計の作業を進めた。地下工事では「リング逆打ち工法」により、地下躯体床を仮設の切り梁に代用。床中央部に開口を設け、地下6層の掘削作業の合理化を図った。

 地上躯体の構築では1フロア8日サイクルを目指し、▽4Dシミュレーションによる施工手順の検討▽クレーン作業の負荷軽減(油圧ジャッキによる外周足場のせり上げ、軽量アルミ型枠の採用)-などに取り組む。

 客室のモックアップを用いて、上層階に入るホテル(222室)の仕様などに関する施主側の承認を早期に得ながら施工を円滑に進める。

 周囲に施主の関連施設が立ち並ぶ現場で指揮を執る赤木創工事長は「品質や工期厳守はもちろん、二重・三重の安全対策で清水らしさをアピールしたい」と強調する。

 概要=RC造地下6階地上39階建て延べ約11万平方メートル。施工は清水建設・TOTALJV。工期は14年6月~17年9月。

 □ジャカルタMRT南北線1期工事□

ジャカルタ市内の交通渋滞の解消を主目的に、日本の円借款で整備が進む都市高速鉄道システム(MRT)南北線。総延長23・8キロのうち、15・7キロの1期工事を6工区に分割し、清水建設を代表とする4者JVが同国初の地下鉄工区(CP104、105)の施工を担当。同国初のシールド工法を採用し、多方面から注目を集めている。

 毎週木曜日には市民や学生を対象にした見学会を実施し、政府の要人も数多く訪れる。
 大迫一也建設所長は「今回の工事では渋滞緩和だけでなく、日本の優れた技術の移転も期待されており、シールド工事の経験のない現地スタッフやワーカーへの教育・指導にも積極的に取り組んでいる」と話す。

 概要=地下鉄工区では4カ所の地下駅舎、各駅を結ぶ2本のシールドトンネル(延長2・6キロ)と開削トンネル(延長460メートル)を整備。施工は清水建設・大林組・WIKA・JAYAJVが担当。清水建設は高架橋工区(CP103)にもJVサブで参画する。現時点で1期工事は車両の試験走行なども含めて18年12月の完成、19年の開業を見込む。

【事業開始は来年4月】関空・伊丹コンセッション、契約内容公表

契約書を手に記念撮影に応じる(左から)新関空会社・安藤圭一社長、
関空エアポート・山谷社長とエマヌエル・ムノント副社長=12月15日、大阪府内で
新関西国際空港会社が、関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の運営権売却で運営権者と交わした契約内容を公表した。

 オリックスや仏ヴァシン・エアポートなどが設立した特別目的会社(SPC)・関西エアポート(大阪市西区、山谷佳之社長)との契約期間は16年4月1日~60年3月31日の44年間。事業開始から2年間で両空港の基本・付帯施設に不具合が発生した場合、瑕疵(かし)担保責任として「1件5000万円以上」の場合に限り、新関空会社が補償する。

 運営権が引き渡される前に着手した工事は、関西エアポートに契約が継承され、工事業者に対する債務を関西エアポートが引き受ける。伊丹空港ターミナルビルの改修費用は、新関空会社が「自主財源による大規模改修事業」として一定範囲内で負担する。

 空港運営に関わる更新投資は、関西エアポートの判断と費用で実施する。ただし滑走路や誘導路の延長、エプロンの増設、空港施設の大規模変更など、国の関与が必要な案件は新関空会社の承認取得を義務付ける。滑走路の新設・除却、誘導路やエプロンの新設は事業範囲に含まれない。

 空港運営に伴うリスク分担を見ると、不可抗力で両空港に損害が生じた場合は、新関空会社と関西エアポートが協議し、契約の即時解除あるいは運営権者による機能回復を判断する。不可抗力に起因した損害の復旧費用は、火災などで350億円、放射能汚染で10億円を超えた部分を新関空会社が補償する。

 関空の地盤沈下のリスクに対応するため、関西エアポートは用地沈下の状況把握を実施するとともに、空港機能を維持するための長期的な対策工事計画を策定する。地下水対策、南海トラフなど巨大地震による津波対策も実施。地盤沈下の対応費は、累計沈下量が所定値を超えない範囲で関西エアポートが負担する。

 運営権譲渡の年間支払額は372億7500万円。履行保証金(1750億円)の金利効果や資産譲渡対価(314億円)を考慮すると、年間支払額は490億円に相当するという。

【新駅開業は来年3月26日】JR東・南武支線に小田栄駅

小田栄駅の完成イメージ
 JR東日本と川崎市は、JR南武支線新駅「小田栄」(川崎市川崎区)が16年3月26日に開業すると発表した。合わせて南武線(浜川崎~尻手間)のダイヤを改正する。

 新駅の所在地は川崎区小田栄1。南武支線川崎新町・浜川崎駅間の尻手起点2715m付近。川崎区の小田と小田栄の間の同支線小田踏切を挟んで川崎新町側に下り線ホーム、浜川崎側に上り線ホームを設置する。低コスト化と早期完成を最優先に両側に乗降口を設け、跨(こ)線橋などは設置しない。設置する施設はホームとホーム上屋、スロープ、簡易スイカ読み取り機など。事業費は約5億4800万円でJR東日本と川崎市が折半で負担している。

 新駅設置は、通常地元の要望を受けてから動きだす「請願駅」が多いが、小田栄駅はJR東日本が初めて自ら主導する「戦略的新駅」として設置する。同社の新駅設置は13年3月に開業した武蔵野線の「吉川美南駅」(埼玉県吉川市)以来となる。

【回転窓】1億総活躍に必要なのは

 保育士をしている女性から毎月の給料を聞かされ、そのあまりの安さに驚いたことがある。他人の子を預かる責任は重大。聞き分けのない幼子相手の仕事は精神的にも肉体的にも重労働だろう▼高齢者の介護施設で働く知人からも、給料などの待遇の貧弱さを聞かされたことがある。こちらもまた、昼も夜もないきつい仕事である。担い手不足が深刻化している福祉分野の現状は建設業界と似ている▼この一年の本紙の記事の中で、建設技能労働者の「処遇改善」という言葉は頻出用語の上位を占めると思われる。建設分野では幸い、労務単価の引き上げや社会保険加入など、道半ばとはいえ、処遇改善の取り組みはかなり進んだといえる。保育や介護の世界はどうなのだろうか▼新聞報道などを見る限り、政府は施設整備に予算は付けても、働く人への対応にはあまり熱心ではないようだ。介護報酬の引き下げで人手が集まらず、経営が傾く施設もあると聞く▼建設にも福祉にも共通するのは、現場の最前線で汗を流す人たちが軽視されやすい風潮だろう。これを放置するようでは、「1億総活躍社会」の名が泣く。

【初の実態調査】建設業の女性就業者、技術・技能者は4%

国土交通省は、建設会社で働く女性の実態調査結果を明らかにした。中小から大手までの1588社が回答。今年10月時点で、女性の就業者(事務系職員を含む)は全体の13・0%で、技術者の4・5%、技能者の4・2%だった。

建設業の女性の就業者数は推計値などはあったが、調査で実際のデータが分かったのは初めて。

 15年度の採用者に占める女性の比率は技術者で9・1%(前年度8・1%)、技能者で3・8%(2・5%)とともに増加していた。

 実態調査の結果は、5年以内に女性技術者・技能者を倍増させるとした「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」(14年8月策定)の目標達成に向けた政策立案に活用する。

 調査には主要建設業5団体のほか、住宅生産団体連合会(住団連)、JBNジャパン・ビルダーズ・ネットワークの所属企業・組合が回答した。

 調査結果によると、企業として女性活躍に取り組んでいるかを聞いたところ、「行っている」が29・6%、「今後行う予定」が34・7%で、合計すると64・3%だった。

 女性の採用や登用の数値目標については、設定済みが16・4%にとどまったが、「今後設定する」が59・6%に上った。

女性の継続就業のための産休・育休などの制度については、大半の企業が既に導入しており、子育てや介護で法定以上の短時間労務制度を設けている企業が57・0%と半数を超えていた。

 調査では産休・育休取得後の状況も質問。育休取得後に復職した人は、技術者の65・4%、技能者の54・5%にとどまった。事務系職員では68・0%だった。

 女性活躍のために解決が必要な課題を聞いたところ、最も多かった回答が「体力が必要な工程が多く、女性の担当業務が限られる」(52・7%)。

これに「女性は時間外労働などをさせにくいイメージがある」(38・7%)、「家庭との両立をフォローアップするための人員の余裕がない」(36・3%)が続いた。

  一方、効果的な女性活躍の支援策としては、「家庭との両立に配慮した労働時間の見直し」(56・7%)、「女性に適したハード環境整備の導入」(49・0%)、「家庭との両立に配慮した休暇取得制度の整備」(43・0%)などが挙がった。

【インフラツーリズム、来年も熱いよ】北海道開発局、見学ツアー企画の旅行会社募集!!

北海道開発局は、16年度にダムや橋梁などの公共施設の見学を旅行商品(ツアー)に取り入れた「公共施設見学ツアー」を企画・催行する旅行会社の募集を開始した。

 対象となる公共施設は43施設。16年1月12日まで開発監理部開発調整課で応募を受け付け、ツアーを実施する施設と時期を決める抽選会を同1月19日に行う予定。

 主な対象施設は、▽夕張シューパロダム(夕張市)▽国道37号白鳥大橋(室蘭市)▽小樽港(小樽市)▽千歳川遊水地(長沼町)▽函館漁港船入澗防波堤(函館市)-など。

 公共施設見学ツアーは、公共施設の役割を多くの人に理解してもらうことを目的に、13年度から実施しているインフラツーリズムの一環として行う。

 ツアーでは開発局職員が各施設の役割や必要性について参加者に説明する。 15年度の実績では、旅行会社9社が45施設でツアーを企画し、500人以上が参加した。

(写真はイメージです。本文とは関係ありません)

【強靱化は国家百年の計】国土強靱化担当相・加藤勝信氏に聞く

2013年12月に国土強靱(きょうじん)化基本法が施行されて2年が過ぎた。国土強靱化基本計画と、具体的な実施策を示した年度ごとのアクションプランに沿った取り組みが本格化している。第3次安倍改造内閣の加藤勝信国土強靱化担当大臣に、改めて国土強靱化の必要性と進ちょく状況などを聞いた。

 ―― 国土強靱化基本法が施行されて丸2年になりました。この間も各地で大規模な自然災害が多発し、依然、国土の脆弱性が指摘されています。

 日本は、東日本大震災以降も毎年のように大雨や水害、火山噴火などの多くの自然災害に見舞われています。首都直下型地震や南海トラフ地震の発生も従前から懸念されています。そういった日本の状況の中で、国土強靱化は喫緊の課題であり、中長期にわたり継続して進める「国家百年の計」と認識しています。

 先日決定した「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」でも、来年の春の取りまとめを予定している「ニッポン一億総活躍プラン」に向けて検討すべき方向性として、「希望を生み出す強い経済」の項目の中で、「事前防災のための国土強靱化の観点も踏まえ、計画的に社会資本整備を進めるとともに、地方創生を本格化し、地域におけるさまざまな資源を活用して活性化を進める」としたところであり、国土強靱化は地方創生とも絡む重要な施策であると考えています。

 ―― 国土強靱化基本法が施行されてからの2年間の取り組み状況をどう見ていますか。

 2013年12月に国土強靱化基本法が成立、施行され、翌年6月には強靱な国づくりのためのいわば処方箋となる「国土強靱化基本計画」と「国土強靱化アクションプラン2014」が策定されました。アクションプランは、施策の進ちょくを評価し、基本計画を着実に推進していくために、毎年度取り組むべき具体的な個別施策等を示したものです。今年6月に策定した「国土強靱化アクションプラン2015」では、この一年間の取り組みの進ちょくを把握・評価し、施策の拡充を図るとともに、進ちょく管理の徹底を図りました。2年間ではありますが、KPIの中には目標値を達成し、新しい指標を設定した項目もあるなど、国土強靱化の実現に向かって着実に進んでいると自負しています。

 今後検討していく「国土強靱化アクションプラン2016」でも、PDCAサイクルをしっかり回して、KPIが達成されていればさらに高度化し、国土強靱化の施策を加速させていきたいと考えています。2016年度予算概算要求では、国土強靱化に関連する予算について、政府全体の概算要求基準を上回る要求を行っています。

 ―― 国土強靱化基本法では、地方公共団体が地域計画を策定することができるとされていますが、地方公共団体の動きは鈍い印象を受けます。

 各地方公共団体で国土強靱化に取り組んでいただくことは、地域の方々の生命や財産を守ると同時に地方創生、地域の経済成長にもつながります。国土強靱化と地方創生は表裏一体の関係で、出来るだけ多くの地方公共団体に「国土強靱化地域計画」を策定していただきたいと思っています。現状では、すでに地域計画を策定している都道府県は10道県にとどまっていますが、34都府県が策定中あるいは策定予定としており、ほとんどの都道府県で地域計画を策定していただけると見ています。一方、市町村は、これからというところが多いようです。国としては、ガイドラインの配布や説明会の開催、出前講座などを通し、市町村でもしっかり国土強靱化の取り組みが進められるようサポートしていきます。

防災拠点機能を備えた超高層ビルを視察した=12月8日、都内で
―― 民間事業者への働きかけは。

 国土強靱化には政府、地方公共団体に加え、民間事業者の主体的な取り組みが不可欠です。民間事業者においては、大規模な災害発生時にも自らの事業を継続するための事業継続計画(BCP)の策定や事業継続性担保のための訓練、国土強靱化に役立つ新しい商品やサービスの開発・提供、帰宅困難者の受け入れ体制の整備等の社会貢献、といった観点から、様々な取り組みが行われています。

 今月8日に都心部の防災拠点機能を備えた超高層オフィスビルの東京日本橋タワー(東京都中央区)を視察させていただいたのも、民間事業者の役割に期待しているからにほかなりません。内閣官房のホームページでは、民間事業者による241件の先導的な国土強靭化の取り組み事例を公開しています。先ごろ事例の追加募集を行ったばかりで、こうした事例の紹介によって、他の企業への横展開を進めたいと考えています。

 こうした民間事業者のBCPの取り組みや災害時の帰宅困難者受け入れをはじめとする社会貢献などを促進していくため、評価、認証する仕組みを創設しようと、ナショナルレジリエンス(防災・減災)懇談会のワーキンググループで検討しています。認証制度が創設されれば、認証取得をどう促していくかについても検討する必要があると考えています

 ―― インフラの老朽化対策や既存不適格建築の耐震化も重要な課題となっています。

 高度成長期に急激に整備が進んだ膨大な数のインフラが40年、50年たち、一気に更新期を迎えています。インフラを管理するうえで、インフラ長寿命化計画の作成、点検診断技術の開発・普及、ITを活用した維持管理の効率化・高度化、技術者の育成配置、資格制度の拡充・運用といった施策が必要だと理解しています。地方公共団体には、インフラの老朽化対策を国土強靱化の地域計画とも整合をとって、進めていただきたいと思います。

 また中央防災会議による首都直下地震の被害想定では、耐震化率が100%になれば、2008年の耐震化率を用いた現状の被害想定と比べ、建物の全壊棟数と死者数は約9割減少すると試算しており、このような耐震化による効果をPRすることも必要です。また、「国土強靱化アクションプラン2015」では資金助成、税制上、融資上の優遇措置により耐震改修の確実な推進を後押しすることとしています

国土強靱化のPDCAサイクルイメージ(2015年度)
―― 国土強靱化を実現するために建設業に期待することは。

 建設業は、国土強靱化に必要な担い手ですし、災害が起きれば復旧、復興の中心的な役割を担うのは間違いありません。加えて、老朽化した施設を単に建て替えるのではなく、長寿命化するための維持管理、更新の手法などさまざまな面で高度な技術が求められており、建設業の役割は質的にも量的にも拡大していくと思われます。建設業が一定の事業量を確保し、安定的に経営を継続しながら社会的使命を果たす姿を見れば、建設業界で働くことを希望する若手も増え、次代を担う優秀な人材を育成していくことが可能になるでしょう。

【外環道整備も着実に】関東整備局、地中拡幅技術の検討成果公表

外環道都内区間の路線位置図
関東地方整備局が、東京外かく環状道路都内区間(東京都練馬区~世田谷区、延長16・2キロ)の整備の一環として進めていた「東京外環トンネル地中拡幅部における技術開発業務」の成果をまとめ、22日に計12件(対象箇所計4カ所)の地中拡幅工法の概要などを公表した。業務の委託先計9者(JV含む)は公募型プロポーザル方式で選定した。

 12件の地中拡幅工法は次の通り。▽提案者=〈1〉工法名〈2〉概要など。

 【東名JCT】

 ▽大林組=〈1〉円周シールド連結工法〈2〉本線トンネルを包括した大断面トンネルを構築するため、円周シールド機でリング状の構造物を順次構築し、それらを連結。マシンの発進基地は本線トンネル下部に構築

 ▽鹿島=〈1〉ビッグKアーチ工法〈2〉多数の鋼製パイプを地中に挿入することで地盤を支える「曲線パイプルーフ支保構造」や「注入式長尺鋼管先受け工」「高剛性ビッグアーチ支保構造」で2重の支保構造を設置した上で、本線トンネル周囲を掘削

 ▽熊谷組=〈1〉まがるーふ工法〈2〉4本の導坑トンネルを本線トンネルの周囲に構築。導坑トンネルを曲線状の函体でつなぎ合わせ、覆工構造を構築

 【中央JCT南側】

 ▽大林組=〈1〉円周シールド連結工法〈2〉マシンの発信基地はランプトンネルを延伸して構築

 ▽鹿島=〈1〉Kパイプリング工法〈2〉本線・ランプトンネルに沿うように導坑シールドトンネル2本を構築した後、多数の曲線の鋼製パイプで本線トンネルを覆い、地盤の安定性を確保。「凍結工法」で止水も行い、覆工構造を構築

 ▽前田建設=〈1〉CS-SC工法〈2〉円周シールド工法でランプ・本線トンネルを覆う発進基地を構築。円状の発進基地から本線トンネルに沿うようにシールド機を複数台発進させ、大断面の外殻を構築。外殻内部はRCリング覆工体で連結

 
外環道都内区間の路線位置図
(断面方向から)
【中央JCT北側】

 ▽清水建設=〈1〉SR-JP工法〈2〉本線トンネルなどを包むように複数の小口径シールド機を掘進。凍結工法などで地盤を防護しながら覆工構造を構築

 ▽安藤ハザマ=〈1〉WJセグメント+シールドルーフ工法〈2〉ランプトンネルを延伸させた後、小口径シールド機で本線・ランプトンネル周囲にルーフ構造を構築。本線・ランプトンネルのセグメントと接合し、大断面を構築

 ▽戸田建設=〈1〉地下水対応型継ぎ手による覆工の外殻先行構築工法〈2〉ランプトンネル側部から円周シールド工法で徐々に構築した発進基地より、角型鋼管を推進工法で施工し、地中拡幅断面を構築

 【青梅街道IC】

 ▽清水建設=〈1〉SR-JP工法

 ▽奥村組=〈1〉円周シールドと大口径密閉型パイプルーフを組合わせた地中拡幅工法〈2〉円周シールド工法で構築した発進基地から、仮設支保工として大口径パイプルーフを施工した後、その内部を掘削し、本設のSRC覆工構造を構築

 ▽西松建設・日本シビックコンサルタントJV=〈1〉3C先行覆工地中拡幅工法〈2〉本線トンネル周囲に構築した発進基地から、小口径シールド機を先行と後行の2段階に分けて施工。小口径シールドトンネル内部を鉄筋コンクリートで連結し、大口径覆工構造を構築。

2015年12月22日火曜日

【新国立はA案】優先交渉権者に大成・梓・・隈グループ

新国立競技場「A案」の外観と内観のイメージ
(JSC提供)
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設に向けた設計・技術提案プロポーザルで当選者が決まった。日本スポーツ振興センター(JSC)からの審査報告を受け、首相官邸で22日午前に開かれた関係閣僚会議(議長・遠藤利明五輪担当相)は、大成建設と建築家・隈研吾氏、梓設計による「A案」を了承した。安倍首相は同会議で「競技場を世界最高のバリアフリーや日本らしさを取り入れた、世界の人々に感動を与えられるレガシー(遺産)にする」と述べた。

 当選が決まった大成建設は「極めて重要な国家プロジェクトの優先交渉権者に選定されたことは、光栄の至り。責任の重さを十分認識し、国民に喜んでもらえるスタジアム建設に精一杯取り組む」とのコメントを発表した。

 技術提案書によると、「木と緑」をテーマにしたA案の施設規模はS一部SRC造地下2階地上5階建て延べ19万2363平方メートル。建物高さは49・2メートルを計画する。制振構造を採用し、屋根部分は木材と鉄骨のバイブリッド構造とする。

 建設費は1379億6290万円(税抜き)を見込む。設計・監理費は36億9060万円(同)で、うち基本・実施設計の業務費が19億4674万円。ユニット化による省力・効率化工法の採用や工区分割での屋根・スタンド仕上げ同時施工により、工期を大幅に短縮し19年11月末の完成を目指す。

 五輪開催決定後、新国立競技場の建設は、デザインの見直しや建設費の高騰などを背景に、当初計画が白紙になるなど迷走していた。設計・施工者が事実上決まったことで建設問題は決着し、今後はプロジェクトを予定通り進行する、受発注者の手腕と技術が注目される。

【たまごが可愛い】京都女子大学が学内アイデアコンペ

京都女子大学(京都市東山区、林忠行学長)は、今年1月に着工した新図書館の建設に連動したプロジェクトとして、飲食なども行える館内空間「カジュアルスタディースペース」をテーマにした学生アイデアコンペのプレゼンテーションと審査を学内で行った。

 最優秀賞は、1人でも使え、誕生会なども行えるたまご型個室や、メーキャップ機能などを導入するプランを提案した鳥居紗和さん、福場由芽子さん、松中美佳さんのDグループが獲得した。

 京女大は、新図書館の建築事業を学生たちの学びの場として活用するプロジェクトを、設計者の佐藤総合計画と施工者の鹿島などの協力を得て展開中。建築を学ぶ学生だけでなく全学部の1~4年生の学生約60人が参加している。

 1~2カ月に1回のペースでこれまでにセミナーを5回開き、新図書館の計画やインテリアプランの説明を受け、現場見学・学外の施設視察に参加しディスカッションを重ねてきた。

 最優秀賞に輝いたのは、家政学部生活造形学科で建築を学ぶ1年生3人によるDグループ。寮生や同学科の学生にアンケートを行い、学生のニーズを丁寧に拾って必要な機能を考察した。 

 たまご型個室空間は、1人や少人数で過ごせる空間に対するニーズが高く、京女大生の多くが頻繁に友人の誕生日を祝っている実態も踏まえ提案した。

 Dグループのメンバーは、「受賞はとてもうれしい。あったらいいものを伝えることができたと思う。緊張したけど、提案に笑ってもらえ、伝わっているという実感も得られた」と述べると共に、「1人にもなれる、可愛らしい」たまご型個室と、美意識空間は実現してほしいと話した。

【羽生選手もくるのかな?】横浜銀行アイスアリーナ(横浜市神奈川区)、リニューアルが完成

横浜市体育協会(山口宏会長)は20日、神奈川スケートリンク「横浜銀行アイスアリーナ」の開設記念式典を現地で行った。

 式典には林文子横浜市長、橋本聖子日本スケート連盟会長ら関係者と来賓多数が出席。テープカットを行いオープンを祝った。

 1951年に開設され、老朽化が進んでいた神奈川スケートリンクのリニューアル事業。建設地は神奈川区広台太田町1の1ほか(敷地面積4560平方メートル)。

 新施設の建築面積は3406平方メートル。規模はS造3階建て延べ6982平方メートル。耐震構造。1階にメーンエントランスと駐車場、2階には国際規格(30メートル×60メートル)のメーンリンクとサブリンク(23メートル×7メートル)、359席の観客席(2~3階相当)を設けた。駐車場は1階のピロティや敷地南側に53台分を整備している。

 設計・施工は三井住友建設・岡山建設JVが担当。旧施設の解体・撤去と新施設の設計・施工・工事監理、仮設リンク設置などを一括受注した。名称は横浜銀行がオフィシャルパートナーとなることで「横浜銀行アイスアリーナ」に決定している。

式典で林市長は「旧施設は市長就任時に視察して、老朽化が著しくすぐにでも建て替えたいと考えた。無事にリニューアルを迎え、施工を担当した三井住友建設JVに感謝したい」とあいさつ。

 山口会長は「建て替えは十数年来の検討を経てようやく実現した。市民に愛される安全・安心な施設にしたい」と喜びを語った。

 このほか式典には横浜銀行の寺澤辰麿頭取、三井住友建設の中島敏雄代表取締役執行役員副社長、岡山建設の工藤進一代表取締役らが出席した。

【工場探訪】TOTOウォシュレットテクノ土岐工場

◇需要変動対応ライン構築◇

 TOTOの子会社で温水洗浄便座「ウォシュレット」の研究開発や製造を手掛けるTOTOウォシュレットテクノ(北九州市小倉南区、堀本幹夫社長)。土岐工場(岐阜県土岐市)と茨城工場(茨城県桜川市)に製造拠点を構え、それぞれ西日本と東日本への供給を担う。

 土岐工場では需要に応じて生産量を変えられるシステムを8月にすべての製造ラインに導入。通常時の4割増の生産まで対応できるようにした。QRコードを利用した製品管理でトレーサビリティー(追跡可能性)を確保している。

 土岐工場の所在地は、土岐市泉町大富北山1916の165。従業員は410人(12月現在)。ウォシュレットの主力工場で、部品を生産する「成形棟」と、商品を組み立てる「組立棟」で構成している。成形棟では大型外郭成形品を内製化し、組み立て工程に最短供給できる。組立棟では、1階で主力商品、2階で補修部品や旧型商品をそれぞれ生産している。

 ウォシュレットの生産方式は、1980~90年代が大量生産に適した大型自動化ライン、2000年代に入って多品種少量生産を行う小型組み立てラインに進化。10年代には多品種大量(混流)生産に適するフレキシブル組み立てラインへと移り変わってきた。

 TOTOウォシュレットテクノは、すべてのウォシュレットに使用できる共通エンジン(半製品)を基盤としたプラットフォーム設計を10年に採用した。

 藏本維丈工場長は「従来は同じ性能、機能でも、それぞれの製品に合わせた開発や設計を行い、製品ごとに細かく製造していた。プラットフォーム設計によって生産工程が大きく変化した」と説明する。

 プラットフォーム設計をさらに有効活用するため、需要変動対応(ODP)方式の生産ラインを構築した。通常時は共通エンジン部分の製造をラインの先頭で行い、順次、部品を組み立てていく。

 一方、増産時は共通エンジンを海外の関連会社から調達し、組み立て工程に人員を集中して生産台数を増やす。これにより生産量が通常時の約40%増になるという。11年度から順次導入し、今年8月にすべての生産ラインでODP化が完了した。

 ◇増産時は組み立て工程に人員集中◇

 同工場ではQRコード利用した製品管理も徹底している。部品の受け入れから保管、部品出庫、製品組み立て、出荷までの工程すべてを管理。さらにウォシュレット製品のシリアルナンバーと部品とをひも付けし、出荷先のデータとも結ぶ。これにより万が一、製品に不具合が発生した場合でも迅速な対応が可能となるほか、誤出荷の防止にもつながる。

 ダイバーシティー(人材の多様化)活動に力を注いでいるのも同工場の特色だ。12年から毎年、特別支援学校の生徒を採用したり、工場学習の場としても受け入れを継続したりしている。

 14年10月に開かれた「岐阜県障がい児・者の教育と福祉振興大会」では、県内600社のサポーター企業の中から「企業内作業学習」「特別支援学校卒業生雇用」で特に顕著な功績がある企業として表彰された。

 地域住民向けの工場見学会も開催。「土岐工場を知っていただく」をテーマに14年度は566人が工場見学に訪れた。

 このほか、工場夏祭りや同社製品をPRする工場リモデルフェアを実施するなど地域住民との交流を活発に行っている。

【回転窓】おなじみとの別れ

 今年も残り10日となり、これまで比較的暖かだった気候も冬らしい寒さになってきた。降雪が遅れ、ほとんど雪がないまま開業を迎えたスキー場もあったと聞くが、本格的な冬将軍の到来ももう間もなくだろう▼寒さが増すにつれ、街中で少しずつ目立つようになってきたのが行き交う人のマスク姿。外国人の友人に聞くと、繁華街や電車などで目にするマスクだらけの光景は、彼らの目には非常に奇異に映るらしい。「なぜ日本人はマスクが好きなんだ」と聞かれ、答えに窮した▼冬に空気が乾燥してくると、風邪やインフルエンザがはやり始める。外出から帰ったら手洗いとうがいは必須で、カバのキャラクターでおなじみの「イソジン」うがい薬のお世話になる人も多いのでは▼日本ですっかり定着したカバ=イソジンの関係が来年3月で変わるそうだ。商標を持つ米国の製薬会社と国内製薬会社のライセンス契約が切れるのがその理由。半世紀以上も育ててきた主力ブランドを手放すのは大きな決断だったろう▼慣れ親しんだブランドが変わった後、うがい薬市場はどう変わるか。ニッチな話題だが、気になる。

【ベトナムで活躍中】日系マリコン、ラックフェン港浚渫工事相次ぎ受注

ラックフェン港の位置図
 ベトナム北部の国際港・ラックフェン港の航路浚渫工事を日系ゼネコンが相次ぎ受注した。五洋建設は21日、りんかい日産建設とのJVで、ベトナム政府から「ラックフェン国際港建設プロジェクト(航路浚渫工事)・パッケージ9」を総額約198億円で、東洋建設も同日、「同・パッケージ8」を約151億円で単独受注したと発表した。事業は日本の円借款のうち本邦技術活用条件(STEP)で実施される。

 同港はハイフォン市東部のカットハイ島に位置。物流を担うハイフォン、カイラン両港の拡張が難しいため、大水深の新たな主要国際港として整備される。同港の建設は日越両国による初のPPPプロジェクトとして実施されている。

 パッケージ8、9ともに、ベトナム交通運輸省が発注。コンサルタントは、日本工営・日本港湾コンサルタント・PORTCOAST・日本工営ベトナムJVが担当している。

 五洋建設・りんかい日産建設JV(出資比率は五洋75%、りんかい日産25%)が受注したパッケージ9は、航路沖合部を幅160メートル、全長10・3キロにわたって水深14メートルを確保するために浚渫する。浚渫土量は約1575万立方メートル。工期は正式着工から915日間。18年の竣工を予定している。

 東洋建設が担当するパッケージ8は、航路泊地の上流側を幅160メートル、延長7・1キロにわたり水深14メートルに浚渫する。浚渫土量は約1405万立方メートル。工期は915日間。ベトナムで同社が受注した工事としては金額、工期とも過去最大という。

【記者手帖】「一寸ずり」も旅の風情

JR日豊本線の特急列車が大分駅に近づくと、地元の魅力を紹介する車内放送が流れる。声の主は「世界の車窓から」のナレーションでおなじみの大分県出身の俳優、石丸謙二郎さん。別府湾の景色と相まって旅情をかき立てられる。歴史や文化、食などいくつか種類があり、先日は「一寸ずり」だった◆車内放送によると、「一寸ずり」とは少しずつしか進まないことを指す大分の方言。渋滞や行列などを表し、JRと並走する国道10号、通称「別大国道」はかつてはその代名詞のように言われていたとか◆現在の別大国道は、特に渋滞がひどかった別府市から大分市までの区間が6車線化されるなど拡幅事業が完了し、朝夕や観光シーズンの渋滞は解消された。車内放送を聞いていて、十数年前に友人とのドライブで渋滞に巻き込まれたことを思い出した◆インフラのストック効果をPRしようという動きが国や自治体で広がっている。パネル展示やホームページへの掲載が中心のようだが、地域性を出した伝え方や交通事業者などとの連携を考えても面白いのではないだろうか。(松)

【津波に襲われたその後に…】建設業「命」の現場で・14/第3章・線引きと選択と


 ◇インフラが紡ぐもの-幻の野蒜築港◇

 東日本大震災後、宮城県東松島市で、津波にえぐられた護岸の下から近代下水道としては国内最古級の「悪水吐暗渠あくすいばきあんきょ」が見つかった。明治三大築港の一つ、野蒜のびる築港事業の名残だった。東北開発の最重要拠点にしようと明治政府が工事を進め、1882(明治15)年に開港した。だが、2年後の台風で突堤が流失し内港が埋没。外港の工事を手掛けることなく事業は中止された。幻に終わった野蒜築港。その断片に再び日の光を当てたのは、あの日、何もかも奪い去った津波だった。

続きはHP

 (次回は来年1月12日に掲載します。ご意見・ご感想をメールでお寄せ下さい。東北支社・牧野洋久、mak@decn.co.jp)

2015年12月21日月曜日

【写真でお伝え】リニア中央新幹線・山梨工区着工!!!


 JR東海が東京(品川)~名古屋間で2027年開業を目指して進めるリニア中央新幹線の建設で、初の本線工事となる「南アルプストンネル」(延長約25キロ)の山梨工区が着工した。18日に関係者による安全祈願が山梨県早川町の現地で行われた。施工は大成建設・佐藤工業・錢高組JVが担当。土かぶりが1000メートルを超す区間を含む難工事を、事業者や施工者、地元関係者が協力・連携しながら進め、早期の完成を目指す。
 
JR東海・柘植康英社長㊧と大成建設・山内隆司会長による鍬入れの義
 
神事の後、記者の質問に答える(左から)大成建設・村田誉之社長、
JR東海・柘植社長、山梨県・後藤斎知事、山梨県早川町・辻一幸町長

 
最前線で陣頭指揮を執る大成建設JVの中原史晴作業所長
 リニア中央新幹線の東京~名古屋間(延長286キロ)のうち、実験線区間を除いた本線の建設工事は南アルプストンネルが先行して進められる。

 同トンネルは山梨・静岡・長野の3県にまたがり、標高3000メートル級の山岳地帯を貫いて構築される。施工区間では土かぶりが最大1400メートルに達し、高圧の湧水や破砕帯によるリスクも見込まれるなど高度な施工・管理技術が要求される。 

 初弾発注となった山梨工区(本線トンネルの施工延長約7・7キロ)は東側(東京側)区間に当たる。

 工事内容はNATMによる本線トンネル(幅約13メートル)とその他先進坑、非常口などの建設で、早川町内の非常口(早川、広河原)から本線に向かう斜坑を掘り進め、本線トンネルの掘削に入る。
 大成JVは今後、事前調査で試掘が行われた早川非常口の準備工を進め、16年3月には斜坑の掘削に取り掛かる。広河原非常口の準備工に16年1月、斜坑掘削には同年8月ごろに着手。本線トンネルの掘削は16年秋ごろに始まる見通しだ。

【回転窓】秀作味わう最後の機会?

坂倉準三(1901~69年)が設計した「神奈川県立近代美術館」(鎌倉市)が来年3月で閉館する。51年に開館した日本初の公立の近代美術館で、モダニズム建築の代表作と言える▼準三の長男竹之助氏が以前、この美術館をこう評していた。「ル・コルビュジエの提唱する美術館のあり方だが、西洋と日本の良い面を取り入れながら、日本の精神をうまくバランスさせた建物」。さらに、来日したコルビュジエが国内のさまざまな建築を見た中で「最も興味を持ったのが近代美術館だった」とも▼多くのモダニズム建築が保存問題に揺れる中、鶴岡八幡宮の境内にあるこの美術館も例外ではない。県は八幡宮との借地契約期間が満了する3月末に閉館させ、土地を更地にして返還する予定だった▼だが、建築的価値の高い文化遺産を後世に継承するよう建築関連団体や県民有志らが保存を強く要望。その結果、県と八幡宮は建物を引き継ぐ方向で現在調整を進めているという▼最後の展覧会は来年1月末まで。建物の活用策はまだ明らかになっていないが、坂倉建築の秀作を味わう最後の機会にはしてほしくない。

【凜】東亜グラウト工業管路メンテグループ技術開発室・平野美礼さん


 ◇的確な技術翻訳で現場を支援したい◇

 カナダの大学を卒業後、地元の神戸市で秘書として勤務していた。結婚を機に東京へ移り、得意の翻訳が生かせる東亜グラウト工業の海外事業部で採用が決まった。今年で入社6年目。現在所属する管路メンテグループは下水管路の調査や洗浄、更生を手掛ける。海外の技術資料やカタログ、メールの翻訳に加え、通訳、管路の更生材料の輸入業務なども任され、忙しい日々を送る。

 「英語が話せれば何とかなると思っていたが、専門用語は日本語で言われても難しい」。図書館で調べたり、先輩や上司に図解してもらいながら的確な技術翻訳に努めているという。初めて日本に入ってくる技術も少なくない。「新工法のマニュアルを訳した後に、現場の技術担当から『手順が分かり工事がうまくいった』と言われるとうれしい」と笑顔を見せる。

 ボールを管内に転がし音を取りながら漏水を発見する「スマートボール・システム」や、管内を氷で洗浄する「アイスピグ管内洗浄工法」など、同社が得意とする海外技術の中には、自身が初めて翻訳を手掛けた技術もあるという。

 「下水道と言うと、あまり良いイメージを持たれないが、快適な暮らしを支える重要インフラ」。身近に感じてもらうため、新聞社が主催する座談会に参加して意見を述べるなど広報活動にも積極的だ。「3歳になる娘と一緒に過ごす時間が一番のリフレッシュ。散歩に出掛けた時、地域で異なるマンホールの絵柄を見付けて楽しんでいる」。

 (ひらの・みれい)

【中堅世代】それぞれの建設業・121

現場の人手不足は深刻。後輩もなかなか定着しないが…
 ◇地元の将来を支える力になりたい◇

 雪国で生まれ育った佐々智隆さん(仮名)。地元の県を代表する建築会社に入って10年目の今年、仕事が縁で知り合った女性と結婚した。

 「これからまたやっていけそうだ」。その顔には自然と笑みがこぼれる。かつて心の中に大きく広がった不安が、少しずつ希望に変わっているのを感じている。

 入社後、20カ所近い建築現場の施工管理をひっきりなしに担当した。現場から現場へ、この業界では当たり前のことだと思いながら、学生時代に剣道で鍛えた体力と忍耐力で仕事をこなした。

 雪国の建設業の難点はやはり冬場。コンクリートを打つ前の晩は、天候や気温が予報通りになるかどうか心配で眠れない。寝不足がたたり、早朝の出勤時に居眠り運転をしてしまったことも。「車が路肩を乗り越えて田んぼに突っ込み、雪に埋まっちゃって。周りにいた人たちに助けてもらった」。

 身に異変が起きたのは、6年目の冬だった。自宅から車で1時間かかる現場に毎日通っていた。就業後、底冷えのする現場事務所に一人残り、図面を入念にチェックして翌日の作業の段取りを立てる。事務所を出るのが深夜1時、2時になることもざらだった。

 生真面目な性格が災いした。「どうしても体が言うことを聞かなくなってちょっと仕事を休んだ。すぐに現場に戻ったけれど、それからは休んでは戻っての繰り返し。焦りもあった。そんな毎日で心身ともに参っちゃったんだろうな」。心療内科に通い、1カ月ほど休職することにした。

 現場に穴をあけてしまったことが頭をよぎり、自分が情けなかった。しかし、心と体は何も考えずに休息することだけを求めているのが分かった。自室にこもり、趣味の映画を一日に2~3本も見る日々が続く。それを家族も静かに見守ってくれた。

 「あのころを脱して、今でも仕事を続けられているなんて不思議な気持ち。仕事のやり方を覚えてきたというのもあるけど、自分で心身のバランスを取れるようになったのかな」。つらかった経験が、確かに自分の糧になったと思っている。

 妻と出会ったのはその後だ。県内企業の若手社員が集まった交流会。通信会社に営業職として勤務する彼女は、偶然にも佐々さんの会社の担当だった。すぐに打ち解けて意気投合したが、何よりもうれしかったのは、自分の仕事のやりがいや大変さを理解してくれることだった。

 地元建設業界の今後を楽観視はしていない。人手不足は深刻で、後輩もなかなか定着しない。「職人さんだけでなく、自分の会社の人間もかつかつ。やっぱり3Kだもん。入ってくる人はいないよ」。JVの一員として大手ゼネコンの現場を経験した先輩がそのまま引き抜かれていく光景も一度ならず目にしてきた。

 「でも、自分はなあ…」。生まれ育った土地、そして理解してくれる人たちがいるということが、どれだけ大切なものか。中堅世代と呼ばれるにはまだ早いと思っているが、胸には地元の将来を支える力になりたいという思いが芽生えている。

【サークル】TOTO バスクリエイト野球部


 ◇明るく楽しみながら、全員野球で勝つ!!◇

 1987年、従業員の健康増進や、工場がある千葉県佐倉市の大会に参加して企業PRと認知度アップを図ることを目的に活動を開始した。佐倉工場に勤務する従業員17人のメンバーが練習に励んでいる。

 きっちりとした「管理野球」ではなく、それぞれのメンバーの柔軟な発想と、大井佑介監督(受注設計部受注設計企画グループ企画チームリーダー)の巧みな手綱さばきで、「明るく・楽しみながら・全員野球で勝つ」「仕事も野球も真剣に」をモットーに活動している。

 春と秋に開かれる佐倉市民大会に参加するほか、1年に1度開かれるTOTOグループ全社大会にも出場しており、13~14年には2連覇を果たした。こうした大会の合間に練習や試合を毎月1~2回実施するなど精力的に活動している。

 部長を務める颯佐光洋さん(製造部計画課工程推進チームチームリーダー)は「ベテランと若手がうまく融合し、14年は春季市民大会優勝、TOTOグループ全社大会では2連覇達成という好結果を残すことができた。これからも若手リーダーの育成や新入社員の勧誘、従業員の中に埋もれている原石の発掘を行い、活動の幅を広げていきたい。その上で勝利という結果が付いてくればベスト」と期待を込める。

【駆け出しのころ】若築建設取締役執行役員東京支店長・堺澤弘幸氏


 ◇だから自然にうそはつけない◇

 入社して5月の連休明けに配属されたのは仙台の現場でした。漁港の防波堤を造る工事です。ここの職員は上部工と杭打ちの班に分かれ、私は杭打ちを担当しました。先輩が時々来ていろいろ教えてくれたとはいえ、新入りがいきなり杭打ちの施工管理を任せられたものですから大変でした。

 若いころに携わった離島の漁港工事では、こんな失敗があります。コンクリートのエプロン舗装を施工し、検査の時にコアを抜いて調べたら厚さが1センチほど足りないのです。いろいろ言い訳を考えて検査官に説明していたのですが、そのうちに言葉が尽きてしまい、最後には「私の監督不行き届きでした」と謝罪しました。

 すると、それまでカンカンになって怒っていた検査官がにやっと笑い、「君は若いから許してやるよ」と言っていただいたのです。私がいつになったら誤りを認めるのかと待っておられたのかもしれません。

 この後、エプロン舗装をまた施工する機会があり、今度は前回の反省もあって少し厚めに造ってしまったんです。これには上司から厳しく怒られ、いかに計画通りに造ることが大切か、身に染みて分かりました。

 かつて会社の先輩が「現場の皆が社長のつもりでやらないとうまくいかないよ」と話していたのを思い出します。誰かに言われたことだけをその通りにやればいいというのではなく、一人一人が社長のつもりになって考えてやらないとうまくいかないという教えでした。

 海の工事で難しいのは、天候をどう読むかです。天気図をにらみながら判断に迷うこともあるのですが、例えば「あすのこの数時間は大丈夫だからやろう」などと決めます。そのチャンスを逃してしまったがために何日も施工できないこともありますから、自分が決断した通りに作業を行えた時はうれしいものです。

 海では、人間がどんなに頑張っても天気や波の状況が悪いと作業はできません。なぜできないのかと悩むのではなく、自然が相手だから仕方がないと思えるかどうか。そういった自然と波長の合う人でないと参ってしまうでしょう。

 自然は厳しいものです。人間の考えることなど大したことはなく、自然に対しては100点を目指しても取れるものではありません。120点の備えをしても、うまくいって60点くらい。だから自然にはうそがつけないのです。

 入社する時、履歴書に好きな言葉として書いたのは「待てば海路の日和あり」でした。この仕事には、まさに自分の波長に合うものがあったと思っています。

 (さかいざわ・ひろゆき)1980年中央大理工学部土木工学科卒、若築建設入社。横浜支店土木部長、事業統括本部土木部工事第一課長、東北支店工事部長、東北支店次長兼工事部長、執行役員東北支店長などを経て、15年6月から現職。東京都出身、61歳。

入社2~3年ころ、塩釜で仕事をしていた時の一枚

2015年12月18日金曜日

【就活戦線、依然売り手市場か!?】2017年卒採用、民間企業は前向き続く

新卒採用の熱はさらに高まる見通し
(写真と本文は関係ありません)
 リクルートホールディングスの研究部門、リクルートワークス研究所が民間企業の16年度採用見通しについて、調査結果をまとめた。

 2017年卒対象の大学・大学院生採用は、「増える」が13・4%、「減る」が4・2%となり、企業の採用意欲は高水準で推移する見通し。「女性の採用比率を高めるかどうか」という問いには、14・1%が「前年よりも比率を高める」と回答した。

 この調査は、従業員規模が5人以上の民間企業7210社を対象に実施した。電話とFAXで回答を収集。4794社の回答を集計・分析した(回収率66・5%)。

 建設業の動向を見ると、2017年の新卒採用(大学・大学院生)は、370社で「増える」が14・9%、「変わらない」が47・8%、「減る」が3・8%などとなった。「増える」から「減る」を引いた%ポイントは、+11・1で、前回調査の+14・8から若干低下した。ただ、製造や流通、金融・サービスなど他業界に比べ%ポイントは大きく、建設業が依然、人材確保に対して前向きな姿勢であること分析できる。

 女性採用の動向は、2017年新卒で「女性比率を高める」と回答した割合が14・1%。全産業ベースで割合を従業員規模別で再分析すると、1000人以上の企業が20・8%、1000人未満の企業が11・6%となる。業種別は製造業(16・4%)や流通業(16・0%)が高水準で、詳細を見ると証券(29・7%)、機械・プラントエンジ(28・0%)、自動車・鉄道(28・0%)が目立つ。

 初任給に関する問いは、2017年採用で「初任給を引き上げる」とした回答割合が、建設業で10・8%。建設業は他業種に比べ割合が高く、人材確保に向け給与水準の見直しなどを進めようとしている動きが表れているようだ。