2015年12月18日金曜日

【工場探訪】住友大阪セメント栃木工場(栃木県佐野市)

 ◇バイオマス発電で環境負荷低減◇

 栃木県佐野市にある住友大阪セメントの栃木工場。セメント工場は今、さまざまな廃棄物を原燃料として受け入れており、栃木工場は同社の国内5工場の中で、セメント製造1トン当たりの廃棄物使用量が岐阜工場(岐阜県本巣市)に次ぎ2番目に多い。

 09年4月からは同社工場では初めてのバイオマス発電を導入。化石燃料の使用量削減による環境負荷の低減に取り組んできた。

 バイオマス発電だけで工場内の全電力を賄っているのは栃木工場だけで、環境に優しい工場の先頭を走っている。 「『地球環境を保全し、次世代へ良い仕組みを残す』を合言葉に、環境負荷の少ない高度なリサイクルシステムの実現を目指し、各種産業や自治体と連携して廃棄物や副産物をセメントの原料や熱エネルギーに活用する取り組みを進めている」。大嶋信太郎工場長はそう胸を張る。

 栃木工場は、地元で古くから産出されてきた石灰石を主原料にしたセメント製造を1938年に開始した。現在、年間の生産能力は約90万トン。関東をはじめ、東北や北陸など東日本の広域にわたりセメントを供給している。

 受け入れている廃棄物・副産物は、石炭灰や高炉スラグ、建設発生土、汚泥など。元は自然界に存在したこれら廃棄物の性状・成分をセメント原料の組成に近づけて1450度で高温焼成し、再生利用する。大嶋工場長は「工場周辺に自動車工場などが点在するため、廃棄物などを受け入れやすい環境が整っている」と話す。

 セメントを1トン製造するのに使用する廃棄物・副産物は589キログラム。バイオマス発電で発生する木質チップなどの灰までを含めると、廃棄物・副産物の使用量は801キログラム(14年度実績)にも上るという。

 9月の関東・東北豪雨では、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊し、大規模な洪水被害をもたらした。栃木工場では、被災地から水に浸かった米(約1375トン)や畳などの廃棄物を受け入れ、セメント製造に利用。被災地の復興にも貢献している。

 一方、工場で使う電力の全てを賄っているバイオマス発電。主燃料は木質チップだ。建設廃材や間伐材を細かく砕いたチップを燃料に蒸気を発生させ、タービンを回して発電を行う。出力は2万5000キロワット。余剰電力の売電も行っている。

 木質チップの使用量は1日当たり500トン。これにより、石炭などの化石燃料を使うのに比べると、年間に排出する二酸化炭素(CO2)を約9万トン削減することにつながるという。

 バイオマス発電を開始した当時の燃料使用比率は木質チップ65%、石炭30%、ゴムタイヤチップ5%だった。その後、再生可能エネルギーの利用促進の取り組みを進める中、14年度には石炭の使用比率を12%まで押し下げており、今後も木質バイオマスの比率をさらに高めていく方針だ。

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