2015年12月8日火曜日

【どうなる採用戦線】経団連が新採用指針公表/17年春採用、選考開始は6月1日

◇採用と就業体験線引き◇

 日本経済団体連合会(経団連、榊原定征会長)が、新たな新卒採用指針を公表した。2017年初入社の大卒採用で選考解禁日を「4年生の6月1日」とし、今年に比べ2カ月前倒しした。経団連は、政府や大学側の強い要請を受け採用指針を改定したが、選考が本格化する6月は3月期決算の企業にとって、株主総会の開催など繁忙期と被る。産業間、企業間で人材獲得競争が激化している状況にあって、果たして指針が機能するのか、先行きは不透明だ。

 新採用指針は、選考解禁日の前倒し以外に▽土・日曜日や祝日、平日夕方以降を活用した選考活動の実施▽インターンシップ(就業体験)と選考活動の明確な線引き▽留学経験者に対する選考機会の提供-といった項目を明記した。

 業界や会社の情報を発信する広報活動は、自社の採用サイトや就職情報会社の運営サイトで、学生の登録を受け付けるプレエントリーと同時に解禁。これより前に、学生の個人情報を取得したり、個人情報を活用した活動は一切行わないようにする。

 建設業界でも実施企業が増えているインターンシップは、「学生に就業体験の機会を提供するもので、社会貢献活動の一環」だと明記。インターンシップと採用活動を絡める企業が少なくない現状を踏まえ「採用活動とは一切関係がないことを明確にして行う必要がある」と、現在の風潮に釘を刺した。

 企業に対し、インターンシップの告知や募集は自社ホームページや大学などを通じて行い、採用活動とは無関係であることを明確にするよう要請。インターンシップで取得した個人情報は採用活動に使用せず、募集対象も学部3年や修士1年次に限定しないことも求めた。


 ◇有名無実、懸念の声も◇ 

 採用指針は、約1300社の会員に対して経団連が示したもので、罰則のない紳士協定との位置付けだ。外資など経団連に加盟していない企業は枠外にあり、経団連の会員であってもどこまで守るかは、企業側に委ねられている。理想と現実の狭間で、採用活動に苦労している地方企業や中小・中堅企業は枚挙にいとまがない。

 採用戦線で苦戦を強いられることが多い建設業界にあって、優秀な若手人材をどう採用し育てていくかは、企業の将来を左右する重要な経営課題。めまぐるしく変わる採用環境の中で、どのように学生にアプローチし、業界や会社への理解を深めてもらうか。採用担当者の手腕がこれまで以上に問われることになりそうだ。

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