2016年1月15日金曜日

【「木のおもてなし」をどーぞ】国際観光施設協会、五輪施設への木材活用提案

 国際観光施設協会(鈴木裕会長)が、2020年東京五輪の選手村などのパブリックスペースに木材を活用するよう観光庁など関係省庁に提案している。全国から集めた均一の角材を使用。五輪後には伐採した地域に使用した木材を戻し、住宅など材料に転用して五輪の「レガシー(遺産)」を各地に残すという提案だ。外国人観光客に「日本らしさ」をアピールできるだけでなく、循環型社会、持続可能社会を具体化する提案として注目を集めそうだ。

 同協会が提案しているのは「木の力によるおもてなし『美蓄』木道」。地域で木材を備蓄し、イベントなどの際に計画的に木材を利用することで木材の地産地消を図り、林業の再生につなげるのが狙いだ。すぐに利用できるよう、均一の角材として整え、平常時には地域で美しく蓄えておくことから「美蓄」と名付けた。

 これを五輪施設にも活用。パブリックスペースに木道を敷設し、選手村の出入り口(ゲート)や、木道脇に設置する自動販売機の置き場やベンチ、サインボード、喫煙所などにも木材を使うことを提案している。

 角材のサイズは、長さ3メートルで105ミリ角、90ミリ角、75ミリ角、60ミリ角、45ミリ角の5種類を標準とし、1サイズの利用期間を12年と設定した。これを使って施設を構築する際には、電動のこぎり、スクリュービスとインパクトドライバーだけを使い、専門的な技術を必要とせずに組み上げられる井桁組みの構造を基本とする。

 105ミリ角で利用した角材の表面を12年後に削り、90ミリ角として再び使用。12年ごとに75ミリ角、60ミリ角、45ミリ角としてサイズを小さくしながら60年間使い続ける。削りくずや、傷んで交換される材料は燃料として再利用する。一定量の木材の備蓄は災害時の非常用燃料や仮設構築物の資材にも生かすことができる。

 同協会は、環境省が12年度から支援する東北の太平洋沿岸地域(三陸)を結ぶ長距離自然歩道整備計画「みちのく潮風トレイル」の一部に美蓄木材を使った観光木道を提案。続いて美蓄木材を活用した試作例として、13年に「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」の会場デッキ(設計・隈研吾氏)、「第20回森と花の祭典 みどりの感謝祭 みどりとふれあうフェスティバル」のメーンステージとイベントステージ(設計・住友林業)、14年に「第42回国際ホテル・レストランショー」のステージと喫茶コーナー(設計・同)などを築いた。

選手村への活用イメージ
 15年に行われた「第43回国際ホテル・レストランショー」では、これまでのノウハウを基に、会員企業の中から住友林業、WISE・WISE、三菱地所設計、越井木材工業、日本設計、構造計画研究所、観光企画設計社、鹿島の8社が美蓄木材を使った多様な空間を考案し、木道に点在する形でミニチュアモデル(素材提供・阿部興業)を展示した。

 各社のモデル案は、ゲート(住友林業)、自動販売機コーナー(日本設計)、階段状客席(観光企画設社)、バスストップ(構造計画研究所)、キオスク(三菱地所設計)、ベンチスツール(WISE・WISE)、サインボード(越井木材工業)、テントデッキ(鹿島)と多彩。バスストップは二酸化窒素やホルムアルデヒドなどの有毒ガスを50%以上吸着する杉材を使えば、喫煙室としても利用が可能になる。このモデル案が、五輪選手村のパブリックスペースへの美蓄木材の活用提案につながった。

 同協会は、2月16日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕するホスピタリティーとフードサービスの専門商談会「HCL2016」にブースを出展。県産材を加工した実際の美蓄木材を展示するとともに、選手村のゲートや木道、店舗などに活用した後、元の地域に戻し、住宅、公園、駐車場、駅前施設、店舗の材料などとしてリユース・リサイクルしてもらう提案も行う予定だ。

 東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場のデザイン「木と緑のスタジアム」とともに、同協会が提案する五輪施設のパブリックスペースの木化提案も話題を集めそうだ。

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