2016年1月14日木曜日

【インバウンド需要を取り込め】免税店の開設、全国で相次ぐ

都内最大の市中空港型免税店が入る東急プラザ銀座の完成イメージ
 急増する訪日外国人旅行者(インバウンド)をさらなる成長に取り込もうとする新たな設備投資が相次ぎ動き始めている。受け入れ環境の拡充が急務となる中、政府が推進しているのがMICE(国際的イベント)誘致拠点施設の整備、免税店の拡大、民泊解禁の3点だ。いずれも全国的に高いニーズが見込まれており、建設業の新たな市場としての期待も大きい。

 ◇〝爆買い〟効果で設置店数が爆発的伸び◇

 中国人観光客が高額な商品を大量購入する「爆買い」の効果などで訪日外国人客の消費額が急速に伸びるのに合わせ、爆発的な勢いで増えているのが免税店だ。国税庁のまとめによると、14年4月から15年10月までの間に免税店の数は5倍に増加。特に地方での伸びが顕著だ。政府は免税店をさらに拡大するため、16年度の税制改正で対象金額を引き下げる。需要拡大を当て込み、免税店をキーテナントとした大型の商業施設の開発事例も出てきた。

 訪日客の消費は15年7~9月で前年同期比82%増の1兆0009億円と、四半期で初めて1兆円の大台に乗った。免税店は15年10月時点で2万9047店に達し、同年4月と比べ地方で4583店増えた。田村明比古観光庁長官は「地方へ急速に広がっている」と話し、地方創生の起爆剤にしたいとの考えを示す。

 背景の一つには、14年10月に免税対象(1店での1人当たりの総額が1万円を超える場合)が家電製品やバッグなどから、飲食料品や医薬品などの消耗品にまで拡大されたことがある。地方の民芸品や特産品が新たに対象に加わった。

 今年4月には、免税手続きを商業施設のカウンターなどで一括して行える制度も導入される。商店街にカウンターを設置すれば、複数の店舗で買った商品をまとめることで免税対象額に達すると見込む。カウンターを設置した商店街も岡山市など既に3カ所ある。

 免税には、消費税を免税する制度と、消費税に加え関税や酒税、たばこ税が免除される「空港型免税店」制度の二つがある。伸びているのは消費税免税店だ。免税店登録は既存店舗がほとんどだが、新規に開発するケースもある。免税品大手のラオックスは昨年6月、東京都新宿区に総合免税店の旗艦店をオープンした。同社の免税店は現在30店舗程度だが、17年までに50店舗まで増やす計画だ。

 東急不動産は東京・銀座に建設中の「東急プラザ銀座」(地下5階地上11階建て延べ約5万平方メートル)に、都内最大の市中空港型免税店となる「ロッテ免税店銀座」を誘致。ビルの8~9階部分が免税店となる。今年3月末に開業する。

 東急プラザ銀座の敷地は、08年のリーマンショック前に売買が行われ、1500億円を超す巨額の用地取得費で注目を集めた物件。東急不が社運を懸けたプロジェクトのキーテナントに免税店を据えたことには、訪日客の消費需要への強い期待がうかがえる。

免税店の現状を「地方での拡大が顕著」と話す田村観光庁長官
 空港でも免税店拡大の動きがある。富山空港では15年6月、免税店の増床工事が行われ、売り場面積が20%以上拡大した。免税店をさらに地方へと広げるため、政府は16年度税制改正で、民芸品や飲食料品など一般物品で免税を受けられる購入金額を、現行の1人1日1店舗当たり「1万円超」から「5000円以上」に引き下げる。

 地方の観光地で人気のある民芸品は2000~3000円の価格帯が多く、1万円超まで購入するケースは少なかった。田村長官は「免税店数や売り上げが地方でさらに増えていく可能性がある」と期待を込める。

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