2016年2月1日月曜日

【駆け出しのころ】森組取締役常務執行役員リフォーム事業本部長・中田順次氏


 ◇あきらめずにチャレンジを◇

 高校生の時に寺社建築を見たのが、建築の道に進みたいと思うようになるきっかけでした。このため、もともとは木造建築に興味があったのですが、大学で学んだ構造の知識を生かそうと、ゼネコンに就職しました。父親は飛行機を造っていた技術者で、子どものころからものづくりの良さをたたき込まれていたのかもしれません。

 最初の現場は、ボウリング場の建設工事でした。竣工の3カ月前に配属され、ちょうど内装工事が行われていました。まずは現場で働く職人の人数を確認し、この仕事をするのにはこの職人で何日かかるかを覚えさせられました。学生時代にイメージしていた現場の仕事とはギャップがありましたが、職人あっての現場であり、相互理解することの大切さを学べました。

 その年の夏、次に小学校の建築工事を担当します。8月に基礎杭を打ち始め、翌年2月には体育館を含めて全7棟を完成させて引き渡すという突貫で進めなければならない工事でした。先輩から仕事のことは簡単に教えてもらえず、「一緒にいて見ながら盗んで覚えなさい」とよく言われました。

 不思議なのですが、誰かに教えてもらったことより、自発的にいろいろと考えながらまねることが自分の知識になり理解できました。厳しくしかられたこともありました。ある日、現場で所長から「協力業者と開く連絡会のテーマを考えなさい」と言われた時のことです。「自分はこんなに忙しいのに何で」という思いが態度に出てしまい、所長からは「厳しい環境の現場だからこそ協力業者とのチームワークが大事なんだ」と教えられました。このことは、その後につながる良い経験となり、今でも協力業者との関係を大切にしています。

 これまでにマンションや下水浄化センター、病院、体育館、寺院、阪神・淡路大震災の復旧などいろいろな現場に携わってきました。30代初めのころ、現場の所長を務めていた私は、あと数カ月で竣工という時に体を壊し、1カ月間入院したことがありました。

 退院翌日に現場に復帰したのですが、自分で考えていたものとは違うイメージになっているのを見て、とても悔しい思いでした。でも病気には勝てません。それから部下には、とにかく健康第一を心掛けるようにと言っています。

 仕事で大切なのは「ネバー・ギブアップ」。現場の工程でもあきらめてはいけません。あきらめてしまうと、苦労して積み重ねてきた全てが無駄になってしまいます。他にやり方はないのかなどと、絶えずいろいろな解決策を求めてチャレンジしていってほしいと思います。

 (なかた・じゅんじ)1972年近畿大理工学部建築学科卒、森組入社。建築本部建築部長、執行役員リフォーム事業担当兼大阪リフォーム部長、常務執行役員大阪リフォーム事業本部長などを経て、13年6月から現職。大阪府出身、66歳。

入社1年目に現場事務所で。
施工図を書くのに苦労していた


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