2016年2月22日月曜日

【駆け出しのころ】三井住友建設専務執行役員土木本部長・益子博志氏


 ◇まずは自分で解決方法を考えて◇

 私が生まれ育った町でのことです。一つの道路橋が造られてからは生活がものすごく便利になったのを実感し、同時にこうした仕事で社会に貢献できることを知りました。会社には私と高校・大学が同じ二つ年上の先輩がおられ、そんなご縁もあって入社試験を受けました。橋の建設に携わりたいという思いが強く、面接でもそのことをはっきりお話しさせていただきました。

 最初に配属されたのは土木部橋梁設計課です。すぐにでも橋の建設工事に携わりたかったのですが、設計課での3年は大変に貴重な経験を積めました。上司は厳しく、よくしかられもしましたが、当社の特徴でもあるプレストレストコンクリート(PC)技術についていろいろ教わることができました。新人とはいえ、任された構造計算が実際の設計に生かされるのですから、間違いは許されません。当然、先輩の確認はありますが、何回もやり直しながら計算したものです。

 当時の設計図面といえばほとんど手書きです。PC斜張橋の設計では、設計計算と設計図面を一致させるため、10分の1スケールの図面を長時間かけて作成しました。CADなどもなく大変でしたが、設計・施工で受注した橋梁を、自ら設計して施工できるのは格別な思いがあります。

 関越自動車道永井川橋上部工工事(群馬県)では、当時の日本で最も高い橋脚上のカンチレバー架設を実施し、土木学会田中賞などを頂くことができました。とにかく一生懸命でしたし、まだ若かったとはいえ、発注者との打ち合わせでも設計のことを知っていることが大きく役立ちました。

 最後に所長として携わった橋梁建設工事は、工期も短く厳しい現場でした。新しい技術に挑んだ現場で、失敗しないよう細心の注意を払っていたため、自分で多くのことをやり過ぎてしまい、若手職員への配慮に欠けていたかもしれません。人材あっての会社です。もっと教育に時間を掛け、任せられるものは任せてもよかったと考えています。

 会社の若手には何か不便なことがあってもすぐ先輩に相談するのではなく、まずは自分で解決する方法を考えてみなさい、と話しています。そうして考える癖を付けることが、私たちの仕事ではとても大事です。

 若い人たちは優れたITのスキルを持ち、私たちにはこれまでに培った施工ノウハウがあります。これらをどう結び付けて、現場の効率化を図っていくかが課題でしょう。そう考えると仕事は楽しいものです。せっかく建設会社に入ってきたのですから、そういった醍醐味だいごみをもっと味わってほしいと思っています。

 (ましこ・ひろし)1979年早大理工学部卒、住友建設(現三井住友建設)入社。九州支店長崎自動車道日見橋PC上部工工事所長、三井住友建設土木部土木技術部長、常務執行役員東北支店長などを経て、15年4月から現職。茨城県出身、59歳。

橋の建設に携わりたい、という思いで入社した

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