2016年4月27日水曜日

【さすが森林大国】スウェーデンで大型木造建築続々/木造専門デベも登場

ストランドバーケンには2棟の大型木造建築が完成している
 国土の7割が森に覆われている北欧の森林大国スウェーデン。伝統的に木造住宅が親しまれてきた同国で、近年は大型の木造建築が次々に登場している。公共建築にとどまらず民間企業が開発する中層集合住宅にも木造物件が生まれている。製材や建築の技術革新を背景に、日本より一足先に環境負荷が小さいとされる木造建築を消費者が選択できる時代を迎えつつあるようだ。

 スウェーデン大使館が主催する森林をテーマにしたイベントの一環で、木造建築の最新事例を紹介するシンポジウムが3月に東京都内で開かれた。スウェーデン建築家協会と日本建築家協会(JIA、芦原太郎会長)が共催し、両国の専門家らが意見を交わした。

 スウェーデンは世界3位の製材輸出国で、林業が成長産業の一つと位置付けられている。1903年に制定された森林法で伐採量の規制と伐採後の植林義務が定められ、収益性と環境保護が両立する持続可能な林業を目指している。木材需要のさらなる拡大に向けて期待されるのが建材分野。イベントに合わせて来日したブクト農務相は「持続可能で革新的な建材である木材を使った建築の拡大は、政府が最も力を入れる政策の一つだ」と強調した。

2025年着工を目指すストックホルム市内の20階建て複合施設
同国では94年から木造建築の大型化が認められ、現在は耐火性能を満たせば階数制限はない。業界団体のデータでは、新しく建てられる集合住宅の10~15%が木造。民間による木造建築が増える中、2013年に完全木造では世界最高層とされる8階建て集合住宅「ストランドパーケン」を開発したフォルクヘムは象徴的な存在だ。

 同社は約10年前に、開発物件をすべて木造にすることを決断。アルネ・オルソン最高経営責任者(CEO)は「当社のような中小規模のデベロッパーは特色を出すことが必要だった」と明かす。さらに決断を後押ししたのは「CLT(直交集成板)の普及」(オルソンCEO)だったようだ。

 事業成功の背景にはマーケットの成熟がある。ストランドパーケンが立地する首都近郊のスンドビュベリ市は、都心へのアクセスに優れ、緑が多く暮らしやすいと人気のエリア。環境問題に関心が高く、デザインや暮らし方にこだわりを持つ中間層へ訴求したことに加え、一般的な住宅と比べて見劣りしない価格設定が受け入れられたという。

 

 施工も担うフォルクヘムは、生産システムを徹底して効率化。生産地に近い同国北部の工場で約8割の部材をプレハブ化した。現場では冬の厳しい環境に左右されないようテント内で組み立てを行い、RC造の約半分という短工期を実現している。

 メンテナンスの負担を小さくするため、板ぶきの外壁と屋根にはスギの無垢(むく)材を使用する。経年による色の変化で魅力を生み出すことも狙いだ。設計を担当したヴィンゴード・アルシテクツのアンナ・ヘーグルンド氏は「外装は欧州で多数の実績があるカナダ産を採用したが、将来的には国産材を使いたい」と話す。

 同社は25年までの間に20階建てを含む18件の物件を計画中だ。オルソンCEOは、環境面に加えて香りのよさや防音性、健康効果、ライフサイクルコストなど木造の多様な利点をPRしていくとした上で、「民間による木造化の拡大には政策的なインセンティブも必要だ」と訴えた。

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