2016年4月5日火曜日

【記者手帖】進歩の先にあるもの

 先日、山岳トンネル工法の開発に取り組む技術者と話をする機会があった。新しい構造のトンネルボーリングマシンを使って掘削する技術で、屋内実験では、従来のマシンに比べ大幅な工期短縮の効果があることを確認。実用化に向け今後、現場でより踏み込んだ検証を進めるという◆会話の中で印象に残っている言葉がある。「山岳トンネルの現場は風や雨の影響を受けず、昼夜問わず作業もできる。土木の中でも特に工場化が可能だ」。自然を相手にする工事で「工場化」という表現が一瞬不思議に思えたが、機械化や省力化など技術の進歩により、過去に取材したトンネル現場はどこもきれいで静か、作業員も少なかったと思い出し納得した◆その技術者は「担い手の減少に備え、経験を伴う専門的な要素を減らす努力が欠かせない。そうした技術は海外にも売り込める」とも話した。最先端の工法を使用するのに、必ずしも特別な能力を必要とするとは限らない◆「誰にでも使える」というのが広く普及する条件の一つとも言える。技術開発の奥深さを知る時間となった。(田)

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