2016年5月23日月曜日

【回転窓】竹中工務店400年の夢

 建築の展覧会が絵画や彫刻など他のものと異なるのは、実物が展示できないこと。だから写真や図面、模型、映像を定番アイテムにして趣向が凝らされる。どういった空間が演出されているのか、観覧する前に想像するのは楽しい▼それぞれの建築が創られた時代の気配を感じ、同時に独自の価値観と美意識で刻んだ時が一つの建築文化史を形成していることに気付かされる。そんな展覧会が世田谷美術館(東京・砧公園)で開催中だ▼「竹中工務店400年の夢」展がそれ。独自の文脈で竹中建築の歴史をひもとく試みで、実に見応えがあった。400年という気の遠くなるような長い歴史を四つのアイテムだけでなく、各時代の景色や造形感覚を反映した美術作品などと共に紹介している▼国内で多くの建築展が開かれているが、中には趣旨を読み取るのが難しい展覧会もある。実物が展示されていないからこそ、建築ファンでなくても訪れた人の目が厳しくなるのは仕方なかろう▼竹中展の図録に収録された槇文彦氏の論考「私のみた竹中のDNA」も一読の価値がある。来月19日まで。もう一度足を運びたい。

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