2016年6月30日木曜日

【1年間の成果を紹介】建設物価調査会、「チームひまわり」の活動を小冊子に

 建設物価調査会(土渕昭男理事長)は、建設業の女性活躍を支援する一環で15年6月に結成した「チームひまわり」の1年間の活動成果をまとめた小冊子を発行した。

 小冊子には、物価情報誌「建設物価」の誌面やホームページを通じて情報提供してきた「女性が活躍する現場のレポート」「発注者や受注者の各種施策・取り組み」を収録。建設の仕事に従事する「土木女子」もピックアップして紹介している。

 チームひまわりは、調査会の女性職員10人で構成。女性ならではの視点・感性で現場や商品情報などを取材し、紹介する活動を展開している。

 小冊子「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」では、建設物価で12回にわたって特集してきた女性活躍の現場や行政施策、女性専用仮設トイレの開発と運用、女性が働きやすい就労環境に関する調査研究報告などを収録した。

 「土木女子」は、建設物価サービスの「建設MIL」の特集記事の中から、最近掲載された13回分を収録し、建設の仕事に従事する女性を思いを伝えている。

 小冊子は無料で配布。希望者はメール(himawari@kensetu-bukka.or.jp)で会社名、部署、氏名、住所、電話番号を記載して申し込む。収録した内容は、建設物価調査会のHPコンテンツ「チームひまわり」や建設MILのHPコンテンツ「土木女子」にも掲載されている。

【回転窓】ロックの殿堂BUDOKAN


 50年前の6月29日。未明の午前3時に羽田空港に到着した飛行機から法被姿で降り立った4人の若者に対し、警察は厳重な警備体制を敷いて混乱に備えた▼ヘリコプター3機を用意し、空港とホテル、沿道には約3万人の警官が動員されたという。警備の対象は、世界ツアーで初来日した英国のロックバンド「ザ・ビートルズ」のメンバー▼世界中で爆発的な人気となり、コンサート会場には半狂乱のファンが殺到。各地で大騒動を引き起こしている張本人たちが日本にやってくるのだから、迎える側が歓迎ムードよりも混乱をいかに抑えるかに腐心したのも当然だろう▼当時、ロックは「不良の音楽」とも。コンサートに日本武道館を使うことに反対の意見もあったという。そんな彼らが作り奏でた楽曲はその後のポピュラー音楽に大きな影響を与えた。以来「BUDOKAN」は世界に知られるコンサート会場となり、今や「ロックの殿堂」として多くのミュージシャンが憧れる場所だ▼1964年の東京五輪に合わせて建設された武道館。4年後の五輪でも競技会場になる。万全の準備で世界の人々を迎えたい。

【輝く!けんせつ小町】フジタ名古屋支店・水野香織さん


 ◇違いを認め特性生かした働き方を◇

 東海北陸自動車道白鳥インターチェンジ(IC)~飛騨清見IC間の4車線化事業に伴う「三尾河(みおご)トンネル建設工事」に従事する水野香織さん。シビルエンジニアという言葉の響きと、ものづくりに憧れ、土木の道に進んだ。

 名古屋市内にある中・高一貫の女子校で学んだ後、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部土木工学科へ。同大卒業後、98年3月に名古屋大学大学院地圏環境工学研究科を修了し、フジタに入社した。

 フジタでは2人目の女性土木技術者。土木技術者女性の会中部支部長も務める。

 高校卒業時に担当教師から「わが校から土木に進んだ子はいない」と言われ、「ならば私が」と発奮し、土木の世界へ。6年間を女子だけの環境で過ごし、その後6年間は共学を経験した。「男だから、女だからという考え方はない。性格はあまのじゃくで、子どもの頃から勝ち気な子だった」と冷静に自己分析する。

 「土木は、私たちの暮らしを支えており、やりがいのある仕事だ」と学生時代の友人に土木の果たす役割や仕事の誇りを伝えている。

 入社早々に、東京都内のポンプ場の現場で活躍。トンネル工事は今回が初めて。工事は延長約880メートルのトンネル本体と前後の明かり部分の橋梁下部工事。進ちょく率は約50%。工事完了まであと8カ月となっている。工務主任として役所への提出書類の作成や現場管理に多忙な日々を送る。安全帽に安全帯、作業服姿に長年のキャリアがにじむ。幸いに会社や上司の理解もあり、現場宿舎には専用のトイレと浴室が確保されている。国や業界団体が女性の活躍を支援している。

 「女性が働きやすい職場環境は、男性にとっても同じこと。長時間労働の軽減や休日の安定確保が女性や若者の入職促進に欠かせない」ことを強調する。女性が社会で活躍する上で結婚や出産、育児は、壁になることが多い。「出産や育児で仕事を中断(休職)することはハンデではなく、『ライフキャリア』の一つ」と語り、特性を生かした働き方の大切さを訴える。

 近い将来に「女性が現場で働くことが珍しくない業界になってほしい」。

 (三尾河トンネル作業所工務主任、みずの・かおり)

【再生医療に照準】ゼネコン各社、インターフェックスで関連技術紹介

 医薬品などの研究開発・製造技術国際展「インターフェックスジャパン」が、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕し、ゼネコンでは大成建設、清水建設、竹中工務店、前田建設がそれぞれ出展した。各社とも、特に再生医療関連を有望市場に位置付けており、菌の封じ込め・漏えい防止技術や除染技術などをアピールした。展示会は7月1日まで開かれている。

 展示会で、大成建設は固形製剤やバイオ医薬品取り扱うメーカー向けにパネルで技術・実績を紹介し、再生医療関連としては、無菌製剤施設向けに導入した技術を展示。

 再生医療の現場では、無菌室レベルの高い基準が必ずしも求められるわけではないが、無菌環境と高度な封じ込め機能を両立する「アイソレーション技術」や、さまざまな薬剤と空調を組み込んだ「室内除染システム」など多岐にわたる技術を保有していることをアピールしている。

 清水建設は、再生医療向け施設への取り組みとして、柔軟性と低コストを両立した細胞調整施設の構築技術を紹介している。

 施設構築に当たっては、技術研究所内の研究メンバーに医学系や生物工学系を配置して実際に培養実験を実施するなど、ユーザー目線での技術提案が行えることを強みの一つにしている。

 竹中工務店は、千葉県印西市の技術研究所内に整備した「バイオクリーン・バイオセーフティ実験施設」の20分の1の模型を展示した。

 再生医療やバイオ医薬品、感染症対策といった施設の整備に向け、気密性や空調設備などの安全性を確保する技術を評価・検証するための施設。模型で実際の設備機器や配管類の配置、人の動線などを詳しく知ることができるのが特徴だ。

 前田建設は、これまで培ってきた製薬関連施設の新築・改修事例を紹介している。

 再生医療に特化した技術展示はないが、「将来、市場が醸成される時に向けて研究開発を進めている」(担当者)とし、施設の新築や改修で下地づくりを行うという。

 特に改修では、施設を稼働させながら施工する「止めないリニューアル」など、ユーザーの利便性に配慮した提案を行っている。

 再生医療は、細胞や組織が持つ再生能力を活用し、損傷した組織や臓器を正常な状態に回復することで治癒に導く医療技術。国内では、製薬会社などで構成する再生医療イノベーションフォーラム(FIRM、戸田雄三会長)が産業化に向けて検討を進めているが、建物や施設の基準など詳細は決まっていない。

 経済産業省が算出した再生医療周辺産業についての将来市場規模予測によると、12年が170億円だったのに対し、2020年には950億円、2030年には5500億円、2050年には1・3兆円にまで拡大する見通しだ。すべてが建設関連投資というわけではないが、建設業界にとって将来的に大きな市場として成長するのは間違いない。

 さらに、2020年東京五輪に備え、感染症対策の施設整備が進むとみられており、再生医療とも親和性の高い菌の封じ込めや漏えい防止といった関連技術の開発がゼネコン各社の間でも進むとみられる。

【究極の地産地消かも】東京都市大や東急建設、宇宙探査に向け共同研究


 東京都市大学や東急建設などで構成するチームが、宇宙探査に向けた共同研究を開始した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙探査イノベーションハブ」による宇宙探査の研究テーマ募集で採択された。

 研究チームは月面基地建設に必要な建設資材の現地生産技術と、地盤推定手法の確立を目指す。

続きはHP

2016年6月29日水曜日

【記者手帖】担い手確保の第一歩

ある建設関連団体がまとめた学生向けインターンシップ(就業体験)の報告書に目を通していて違和感を覚えた◆問題は参加者へのアンケート。「建設業は必要な産業」「建設業は良いイメージがある」という選択肢に誘導するような質問が目立ち、建設業を賞賛する回答が多くを占める結果になっていたからだ。インターンシップに関する質問が「役に立ったか否か」を聞く1問だけだったことにも疑問を感じた◆建設業界では今、若い担い手を確保しようと官民挙げて対策が進められている。業界をPRしたい気持ちは分かるが、若者に振り向いてもらうには、まず若者が建設業の仕事にどのようなイメージを持ち、業界のどこに課題があると感じているのか、生の声をしっかりと受け止めることだろう◆目的が不明確な報告書の中で、ある学生のコメントが目に止まった。「大変そうだけどやりがいのある仕事だと思った」。ひたむきに何かを学び取ろうとしている若者はいる。仕事の魅力と共に業界の課題や欠点も正直に伝え、聞く耳を持って若者と対話することが担い手確保の第一歩ではないか。(ゆ)

【回転窓】「伝える」と「伝わる」の違い

「伝える」と「伝わる」の意味はどう違うのか。とてもよく分かる本を書道家の武田双雲氏が執筆し、『伝わる技術』(ベスト新書)のタイトルで出版した▼武田氏は独創的な書体の作品で知られ、映画やテレビドラマなどの題字・ロゴも多く手掛ける。そんな書道家が仕事や人間関係などでの「伝達力」に着目して書いたのが本書。「伝える」のではなく「伝わる」を意識することの大切さを説く▼これだけ伝えているのに、なかなか理解してもらえない-。ついそう思ってしまう場面が誰にも少なからずあるだろう。確かにもどかしいことだが、「伝わる」という相手の目線に立てば、これまでとは違ったアプローチが見えてくるかもしれない▼〈何か伝えたいことがあるなら、「迎合」の姿勢からポジティブな要素を抜き出し、実践することです〉と武田氏は書いている。「迎合」とは「迎えて合わせる」こと。「伝わる」ためのコミュニケーションができるのはこの迎合ができる人だという▼さて、今日は職場や家庭で「伝わる」ために何をしよう。こう考えるだけでもいつもと違う一日を過ごせる気がする。

【あっっつぃ夏はもうすぐ (`-д-;)ゞ 】猛暑到来の見通し、厚労省「熱中症予防に万全を!!」

建設現場で働く作業員の熱中症災害が1年で最も懸念される夏が本格的に到来する。

 気象庁は今夏が平年よりも厳しい暑さになると予想。厚生労働者は熱中症予防対策の重点業種に建設業を指定し、今年2月には例年より大幅に前倒しして関係団体に十分な対策とその準備期間を確保するよう通知している。

 ここ数年来、建設業界でも熱中症の恐さは広く浸透してきたが、今夏は受発注者とも例年以上に万全の対策を講じて予防に臨む必要がありそうだ。

続きはHP

【熊本地震】57号北側復旧ルートの概略公表、長大トンネル想定

九州地方整備局は熊本県を中心に続く地震で大規模斜面崩壊が発生し通行止めとなった南阿蘇村の国道57号阿蘇大橋地区の災害復旧事業として現道の北側に計画している「北側復旧ルート」の概略ルートを公表した。

 斜面崩壊箇所を避け阿蘇市と大津町を結ぶルートで、主要構造物として長大トンネルを想定している。7月4日まで九州整備局のホームページなどで意見募集し、意見聴取後、早急にルートを提示する。

 概略ルートは阿蘇市赤水の市街地北側から外輪山をトンネルで通過し、熊本中核工業団地などを迂回(うかい)した上で大津町引水につながる。安全性確保のため大規模斜面崩壊箇所や小規模斜面崩壊が発生したエリアを極力回避。早期の復旧に向け最短で国道57号の間をつなぎ、工期がかかるトンネルの延長ができるだけ短くなるよう設定した。

 現段階では幅約1キロの範囲で示しており、意見募集の結果を踏まえ、より詳細なルートを絞り込む。ルート決定まで道路延長などは公表しないとしているが、概略ルートによると延長の4分の1程度をトンネルが占めることになりそうだ。

 ルートが決まれば引き続き地元説明会を開催し、用地買収や地質調査、詳細設計などを進める。阿蘇大橋地区では4月16日の本震により幅約200メートル、長さ約700メートル、推定土砂量約50万立方メートルに及ぶ大規模斜面崩壊が発生。JR豊肥線や国道57号が被害を受け、国道325号阿蘇大橋が落橋した。

【都心で進む大工事】渋谷駅街区土地区整、東口地下広場や地下貯留槽の工事進む

 東京急行電鉄(東急電鉄)が東京の渋谷駅一帯で進めている「渋谷駅街区土地区画整理事業」。駅東口の地下で行っている▽東口地下広場整備▽雨水貯留槽整備-で構成する工事のうち、地下広場は19年度、地下貯水槽は20年度の完成を目指している。工事は東急建設・清水建設・鹿島JVが担当している。

工事中の東口地下広場
 渋谷駅は複数の路線が複雑に入り組む都内有数のターミナル駅。同事業で乗り換えの利便性や駅周辺の回遊性の向上を図る。地下広場は延べ約1600平方メートルの規模で、JR線や東京メトロ銀座線など高い階層の駅から、東急田園都市線や東横線、東京メトロ副都心線など地下にある駅を結び、乗り換えをしやすくする。現在、地下広場には天井にコンクリートを打設するため、足場が複雑に組み立てられた状態だ。

 工事期間中の利便性向上も視野に入れ、ハチ公広場の「出入口8番」に上下エスカレーターを設置する工事も進めている。17年春ころの使用開始を目指す。スクランブル交差点付近の「出入口6番」と道玄坂改札口付近をつなぐエレベーター、ハチ公改札口前の上下エスカレーターの新設も検討しており本年度の着工を目指している。

完成すれば4,000tの雨水が貯留できる
 地下貯留槽は、深さ25メートルに構築する。現場を担当する東急電鉄の森正宏所長は「浸水対策として約4000トンの雨水を一時的に貯水する機能をもつ」と話す。

 区画整理事業の施行面積は約5・5ヘクタール。主に駅の東口と西口を再編整備する。施行期間は10~26年度。東急電鉄を施行代表者にJR東日本、東京メトロも一部の施設整備を施行。都市再生機構が技術支援を担当している。

2016年6月27日月曜日

【3次元表示が可能に】安藤ハザマ、ICT使用の斜面計測監視システム開発

◇広範囲変位を3Dで常時把握◇

 安藤ハザマがICT(情報通信技術)を駆使した施工現場の斜面計測監視システムを開発した。

 CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)や無人航空機(UAV)を活用。広範囲の変位状況を3次元(3D)表示でリアルタイムに把握できるのが特徴で、斜面安定性評価の高度化と省力化につながる。

 トンネル建設や明かり部の造成工事で運用を開始した。

続きはHP

【脱請負進む】有料道路コンセッション(愛知県)、優先交渉権者は前田建設グループに

有料道路コンセッションの対象路線
愛知県道路公社は24日、PFI法に基づき、管理する有料道路8路線の運営権を民間に売却する国内初の「有料道路コンセッション」で、前田建設グループを優先交渉権者に決めた。譲渡額は1377億円。昨年11月に募集要項を公表、2月に1次審査、今月に2次審査を実施していた。7月に基本協定、8月に実施契約を結び、10月に事業を開始する。

続きはHP

【若者が憧れる未来を】語り継ぐ土木の心・3-エイト日本技術開発国土インフラ事業部技師長・椛木洋子氏

土木とは、人を幸せにするためにあるものだと思う。われわれが安全・安心な生活を送るためにはインフラが必要だ。しかもそのインフラは品質が良くなければならない。

 土木は人間が生活していく上での基盤であり、市民の生活に密着している。かつて行政が土木工事を直接手掛けた時代があったことを考えてもそれが分かる。

続きはHP

【下流の安全を守る】鶴田ダム(鹿児島県)、本格運用後初の洪水調節

 九州地方整備局は、鶴田ダム(鹿児島県さつま町)で再開発事業による本格運用開始後、初の洪水調節を行った。

 停滞した梅雨前線による大雨を受け、19日から22日にかけて4回にわたり洪水調節を実施。22日午前0時40分には流入水量が最大となる毎秒1285トンに達し、毎秒353トンを貯留して下流の河川水位を低減した。

 ダム管理所によるとダム下流の宮之城観測所付近(同町)では最大で約1メートルの河川水位低減効果があったと推定している。

 洪水調節では19日午後2時10分から流入水量の一部を貯留する操作を実施。22日午前4時40分に洪水調節を終え、次の洪水に備え貯水位を下げるため、放流を行った。

 鶴田ダムは堤高117・5メートル、堤頂長450メートルの重力式コンクリートダム。06年7月の川内川流域の豪雨災害を受け、洪水調節容量を従来の約1・3倍に当たる最大9800万立方メートルに引き上げるため、07年度に再開発事業に着手。3月に増設放流設備を完成し、4月にダムの運用を開始した。現在も減勢工の改造工事などを進めており、17年度中の事業完了を予定している。

【開業は11月7日】豊洲市場(江東区)の本体施設4棟完成

本体施設工事が完了した豊洲市場(手前)
(写真提供:東京都)
 東京都中央卸売市場は、築地市場(中央区築地5)の移転先として建設を進めている「豊洲市場」(江東区豊洲6)の本体施設4棟が5月中に完成し、各施工者から引き渡しを受けたことを24日の卸売市場審議会に報告した。11月7日の開業に向け、現在は施設周辺の外構整備などを施工中とした。

 豊洲市場の4棟は、延べ床面積17万3000平方メートルの「水産仲卸売場」(施工=清水建設・大林組・戸田建設・鴻池組・東急建設・錢高組・東洋建設JV)、同12万4000平方メートルの「水産卸売場棟」(施工=大成建設・竹中工務店・熊谷組・大日本土木・名工建設・株木建設・長田組土木JV)、同9万7000平方メートルの「青果棟」(施工=鹿島・西松建設・東急建設・TSUCHIYA・岩田地崎建設・京急建設・新日本工業JV)、同2万4000平方メートルの「管理施設棟」(施工=関東建設工業・鍛治田工務店・川口土木建築工業・国際建設JV)。

 都は、豊洲市場を利用する業者らが行う店舗や事務所などの工事も6月から順次着工していると報告。新施設の利用に習熟するための訓練や、品質・衛生管理マニュアルに基づく講習会なども実施していくとした。

 審議会の委員である伊藤裕康東京都水産物卸売業者協会会長は、「豊洲市場への移転は業界の総意。慣れ親しんだ築地を離れることに不安を抱いている人もいるが、施設が老朽化した築地で業務を続けるわけにはいかない」と述べ、計画通りの開業をあらためて都に求めた。

【回転窓】予報技術は進歩しても

日本列島の南の太平洋で台風が発生すると、天気図に現れる「予報円」と「暴風警戒域」。台風の中心が70%の確率で入ると予想される範囲が予報円で、台風の中心が予報円内に進んだ場合に風速25メートル以上の暴風となる恐れのある範囲が暴風警戒域である▼気象庁が先日、台風の進路予報を改善し、予報円と暴風警戒域をより絞り込んで予報すると発表した。数値予報モデルの改良や新たな観測データの活用で精度が向上。予報円は半径を従来より20~40%も小さくできるそうだ▼正確で細かい予報は災害への備えの基本。予報技術の進歩はありがたい。ところで、新たな進路予報が初採用されるはずの台風1号がいまだ発生していない。1951年の統計開始以来4番目に遅い記録という▼一方で、九州では梅雨前線による記録的豪雨、関東では6月には珍しい渇水傾向で取水制限が始まった。利根川水系で6月に取水制限を行うのは29年ぶりらしいから、あちこち記録ずくめ。予報技術がいくら進歩しても気まぐれな空模様に翻弄(ほんろう)されることに変わりはない▼梅雨末期。豪雨と土砂災害への警戒がますます怠れない。

【凜】東京都都市整備局市街地整備部・坂部布実さん


 ◇国内外で活躍できる技術者に◇

 入庁から5年目。行政の仕組みや働き方にも慣れてきて、建築技術者としての自身の課題と目標がより明確になり始めてきた。

 14年度から所属する現在の部署は、JR山手線の外周部を中心に分布する木造住宅の密集地域で進める「都市防災不燃化促進事業」を所管。耐火・準耐火建築物への建て替え、老朽施設の解体、仮住まいの確保などに要する建築主の費用の一部を補助している。

 2年間の経験を踏まえ、与えられた職責をより高い水準で全うすることが本年度の目標だ。「補助金の申請内容を審査する際は、これまで以上に現場に足を運び、住民の目線で課題を解決することを心掛けていく」。

 昨年、都の防災事業を紹介するためにバングラデシュへ派遣された先輩の姿も刺激になっている。「将来は、語学力や都の歴史に関する知識などを深め、国内外に都の施策を発信していきたい」。

 建築と海外に関心があるのは、家族の影響もある。子どものころ、両親と旅行した欧州で見た荘厳な教会や美術館などの建築物が今でも忘れられない。建築関係の研究者として大学に籍を置く叔父は、歴史的建造物の保全や修復、途上国の地震防災などの活動で世界を飛び回るプロフェッショナルでもある。

 憧れだった技術者の道を歩む醍醐味(だいごみ)を知るのはまだこれから。「今できていないことは、これからやりたいこと」と苦しいことも原動力に変えていく。

 (防災都市づくり課防災事業担当、さかべ・ふみ)

【命の大切さを教えてくれたひまわり】建設業の心温まる物語・5-キーマン(大阪府)・西坂達哉

私は耐震補強工事を専門に行う会社で現場の施工管理の仕事をしています。これはある夏小学校の耐震工事現場を担当した際に経験した話です。

 工事が始まった際はまだ学校も夏休みに入る前で、休み時間にはグラウンドで子供たちが元気に走り回っており、「何してるの?」と聞かれることもしばしばありました。中には「耐震補強工事をやってるんでしょ?」と問いかけてくる子どももいました。

 前日に暴風を伴った強い雨が降った日の朝のことです。私はひとりの先生に声をかけられました。「午後からの時間で、子どもたちを連れて仮囲いの中に入り、花壇に生えたひまわりの花に添え木をさせてほしい」。確かに前日の雨風により、花壇の花たちはその多くが頭を垂れた状態となっていました。通常であれば仮囲いの中には危険で、第三者を入らせることはありません。しかし事情を聞いて私は所長との相談の上、その時間の作業場所を移し、仮囲いの中へ入ってもらうことにしました。

 先生に聞くと、そのひまわりは、東日本大震災で崩壊してしまった小学校から送られたものであり、そのひまわりを通して子どもたちに命の尊さを伝えたいとのことでした。

 私は、子どもたちのこの工事に対する関心が高い理由が分かった気がしました。地震の恐ろしさ、命の尊さを、ひまわりから学んでいたのです。

 子どもたちの手によって添え木がなされたひまわりは、また元気に天に向かって顔を上げていました。そのひまわりと子どもたちの姿を見て、私自身も改めて命の尊さを学び、この工事をやり遂げ、この校舎を子どもたちの命を守ってくれる校舎へと生まれ変わらせるんだという責任感に燃えるきっかけとなりました。

降旗達生(ハタコンサルタント代表取締役)選
協力=全国土木施工管理技士連合会
NPO法人建設経営者倶楽部KKC

【30分だけ手伝うよ】建設業の心温まる物語・4-遠鉄建設(静岡県)・尾嶋幸一

私は、建築工事現場の現場監督をしています。

 とある現場での出来事です。仮設工事で、私の拾った数量が少なく現場で材料が足りなくなってしまいました。このままだと工期が遅延してしまいます。私は頭を抱えてしまいました。その時職人さんが、別の材料を使ってその現場にあうように加工し、現場で対応してくださったのです。さらには、別の組み立て方法で工程短縮につながるようなことを教えてもくれました。

 困ったことは続きます。雨天が続きどうしてもコンクリート打設工期が間に合わなくなってしまいました。すると、型枠大工さんや鉄筋屋さんが人員を増やし、2時間以上残業してでも打設日に間に合うよう努力・協力をして下さいました。そして職人さんが帰った後、私一人で打設前の準備をしていると、既に帰ったと思っていた職人さんが「30分だけ手伝うよ」と言いながら戻ってきてくれて、最後まで手伝ってくれたのです。翌日には「間に合って良かったな」と笑いながら、その職人さんが先頭に立って打設してくれました。

 現場監督という仕事は、現場ではトップですが、一人では何一つできません。今、自分がこの仕事ができているのはたくさんの業種の方々のおかげです。そして、たくさんの方々のおかげで日々成長できています。

 各業種の方々の力があって建物が建てられていますので、そういった方々の力になれるような現場監督を目指していきたいです。

降旗達生(ハタコンサルタント代表取締役)選
協力=全国土木施工管理技士連合会
NPO法人建設経営者倶楽部KKC

【3時の“一服”の楽しみ】建設業の心温まる物語・3-オオサワ(滋賀県)・本田真司

20歳で入社し、現場に配属された日から「監督」と呼ばれました。建築のことを何一つ分からない中で、上司に指示されたことは「ほうきを持って、現場を掃除してきて」でした。毎日毎日、物を片づけたり、掃除したり。これが「監督」の仕事だろうか、と悩み始めました。

 10時と3時には、“一服”と呼ばれる休憩時間があります。職人の親方に「監督、コーヒー買ってきて」とお札を渡され、買いに行くのです。いわゆる「使い走り」です。作業員全員のコーヒーをヘルメットに入れて運びました。「○○さんはブラック、○○さんは微糖…」いつしか名前と好みを覚えました。

 一服しながら、職人さんに聞きました。「あそこはなんで○○してるん?」「そこってどうなるん?」。作業中は答えてくれませんが、一服中は丁寧に教えてくれました。見た目は怖い顔をしていますが、話すと優しい人がほとんどで、見た目で人を判断することはなくなりました。現場がどんどん楽しくなりました。

 あれから18年、いまは現場の所長として本当の「監督」になりました。いろんな話をしてきた中で、職人にとってやりやすい環境なども教えてもらいました。だから気持ちよく仕事をしてもらえる環境を提供したい、そのような思いで現場管理しています。育ててもらった職人さんに感謝していますし、尊敬もしています。建築の現場は1人では何もできません。たくさんの技術が結集して、初めて1つのモノをつくることができ、お客様に感謝され、社会の人たちの役に立ちます。

 18年が経ち「監督」という職業に自信とほこりが持てるようになってきました。そのように思えるようにしてくれた職人さんに感謝でいっぱいです。

降旗達生(ハタコンサルタント代表取締役)選
協力=全国土木施工管理技士連合会
NPO法人建設経営者倶楽部KKC

【サークル】大建工業岡山工場軟式野球部


 ◇「自主型人間」の育成を合い言葉に日々練習◇

 大建工業岡山工場(岡山市南区)設立後の1960年ごろに野球部が発足した。4月時点で部員数は38人。同工場公認の部活動で、3交代制で勤務する製造オペレーターが中心になって活動している。最近は部員数が増えたため、2チームに分かれて活動を行っている。

 モットーは「自主型人間の育成」。部員が各自でメニューを考え、全国大会出場に向けて日々練習を積む。

 2チーム(Aチーム=大建工業、Bチーム=大建工業ベースボールクラブ)がそれぞれ、全日本軟式野球連盟に加盟し、同連盟が主催する国体・高松宮杯・天皇賜杯などの大会に出場している。今年は、Aチームが岡山地区予選で敗退したものの、Bチームは第38回西日本軟式野球大会(2部)の岡山県大会で優勝。10~13日に沖縄県で行われた西日本大会に出場した。

 「平均年齢は20代と若いチームだが、全国大会に出場するという高い目標を持って日々練習に励んでいる」と代表を務める藤井雅志さん(同工場総務経理課)。

 3交代制勤務の関係で合同練習がなかなかできないが、「野球を通じて人間形成を行い、会社が必要とする自立型人材へ部員を育てていくのが軟式野球部の使命」と意気込む。

【駆け出しのころ】熊谷組執行役員九州支店長・梶山雅生氏

◇人とのつながりを大切に◇

 就職活動でいろいろな会社を訪問させていただいたのですが、そこで「熊谷組はすごい」といったことをよく聞きました。当時の熊谷組は、国内だけでなく、海外でも積極的に事業展開していたころで、実際に訪れた会社の中でも一番に輝いて見えたのが、入社したいと思った理由です。

 最初の現場は、JR京葉線の東京駅乗り入れ部のシールド工事でした。このトンネルは単線トンネルを二つ重ね合わせたマルチフェース(MF)シールドが初めて採用された現場です。

 有識者と発注者である国鉄(当時)の方々、熊谷組の技術陣が設計と実証実験を重ねて技術開発したものであり、私が配属されたのは、まだどのような工法で施工するかを検討している時でした。

 施工は順調に進んだのですが、シールドの先端部に人が一度入らなければいけない状況になったことがありました。ですが、最初というのは気が引けるもので、誰も入りたがらずにいると、先輩の一人が「俺がやる」と言って中に入って行かれたんです。土木の仕事に懸ける人のすごさを見たようで、そうやって皆を引っ張っていくのが工事を進めるのに大事なことだと実感した時でもありました。

 このプロジェクトに技術開発から施工まで一貫して携わることができたのは非常に良い経験となり、その後の仕事の進め方に大きな影響を及ぼしたと思っています。

 その後、東京湾横断道路建設工事を担当しました。ここでは施工管理をしながら、後輩にいろいろ教える立場になっていました。かつて自分が教えられたように、事務所にいるのではなく、現場をしっかり見るよう指導してきたつもりです。私たちの仕事は書類でものができるわけではありません。現場で見て聞いたことを施工管理に生かすのがとても重要です。

 現場では、働いている人同士はもちろんですが、顔見知りでない方が来られてもしっかりあいさつするように言っています。それと上の人が話したことをただ伝達するのではなく、自分の言葉で話すことが大切です。現場事務所で昼に皆が集まっての打ち合わせは発表の場ですから、その前に協力会社の人たちなどと個別にどれだけ打ち合わせしておくか。これが大事です。

 若い人たちには、人とのつながりの中でいろいろなことをやってほしいと期待しています。自らいろいろと発信していくことで、自分自身が成長できるものです。お客さまと接する場合にも、営業だけでなく、現場や管理を担当する人も積極的にお話しさせていただき少しでも会社をアピールしてほしいと思っています。

 (かじやま・まさお)1985年東大農学部農業工学科農業土木専修卒、熊谷組入社。土木事業本部鉄道営業部部長、執行役員鉄道プロジェクト推進室室長、同鉄道プロジェクト推進本部長兼鉄道営業担当、16年5月から現職。福岡県出身、55歳。
東京湾横断道路建設工事のシールド発進式で
(右端が本人)

2016年6月24日金曜日

【実験開始は6月27日!!】東急東横線・武蔵小杉駅にマルチメディアホームドア

 東急電鉄がデジタルサイネージを組み込んだ「マルチメディアホームドア」の実証実験を開始する。

 日本信号、三菱電機、旭硝子と共同開発した新型ホームドアを東横線武蔵小杉駅に導入、6月27日から運用を開始する。大井町線溝の口駅でも7月以降、実証実験を行うという。

 ホームドアの戸袋に当たる両サイドに、旭硝子が開発したガラス一体型デジタルサイネージ「インフォベール」を組み込み、情報を発信する。ディスプレーのサイズは55インチで、今後1年間をかけて屋外環境での技術的な検証、駅利用者の反応、コンテンツ配信の方法などを調べる。

 配信コンテンツの内容はマナー啓発や沿線のプロモーション映像、整列乗車案内など。トラブルが発生した場合には運転再開見込みといった情報も表示する。

 武蔵小杉駅は渋谷方面に向かう4番線ホームの「10両編成・6号車・2番目ドア」(8両編成の場合は4号車)。溝の口駅は大井町方面に向かう3番線ホームの「6両編成・3号車・3番目ドア」(5両編成の場合は2号車)。

 東急電鉄は2020年を目標に東横線、田園都市線、大井町線の全64駅にホームドアを設置する。実証実験の結果を踏まえて、一部の駅に「マルチメディアホームドア」の導入を検討する。

 旭硝子のインフォベールはガラスに大型ディスプレイを直接貼り付けた製品。

 ガラスとLCDパネルの間に空気層がなく、視認性が高く浮かび上がるような映像が表示できる、従来品よりも厚みがなく狭いスペースに設置できるといった特徴がある。

【回転窓】人材育成に「志ある資金」を

 インターネット上で事業のアイデアやプロジェクトを紹介し、賛同する不特定多数の人たちから広く資金を集める。「クラウドファンディング」と呼ぶ手法の活用が、まちづくり分野でも広がりを見せている▼インターネットの交流サイトなどを通じて情報を発信し、プロジェクトの運営者や事業の進ちょく状況を「見える化」する。そうした手法で関心を高め、利益よりも事業を応援したいという志ある人たちからの資金を期待する▼東日本大震災の被災地の復興でも成功事例があると聞く。新たなまちづくりによるコミュニティー形成に向けて、この手法で資金を集めた▼地域を支える建設産業の将来を担う人材を確保しようと、地域単位で試行錯誤が重ねられている。廃校を活用して「職人育成塾」を運営する先進事例も出始めた。地域づくりと組み合わせた人材育成に「志ある資金」を生かすという発想はどうだろう▼国土交通省が建設産業界に「人材投資成長産業」になるよう呼び掛けた。共感を呼ぶプロモーション展開で広く資金を集める。新たな産業像の実現に一考の価値がある取り組みにならないか。

【まずは〝安全第一!!〟】日建連、岩手県で現場パト



 ◇復興道路2カ所、安全対策徹底を◇

 日本建設業連合会(日建連)は全国安全週間(7月1~7日)を前に、伊藤寛治安全委員会委員長(飛島建設社長)による現場パトロールを22日に行った。

 岩手県内で本格化している東日本大震災の復興道路・復興支援道路の建設現場のうち、三井住友建設・日本国土開発JVが施工中の「国道45号樫内地区トンネル工事」(東北地方整備局発注、宮古市崎山)、大成建設・錢高組・東日本コンクリートJV施工の「国道45号摂待道路工事」(同、宮古市田老)で実施。伊藤委員長は「工事量が増加している東北地区で事故が目立つ。安全管理に最善の努力で対応してほしい」と現場関係者らに呼び掛けた。

 現場パトロールは全国安全週間の準備期間(6月1~30日)に「災害防止対策特別活動」として毎年行っている。今年は、先に行われた国土交通省など公共発注機関との東北地区の意見交換会で事故件数の増加を指摘されたことなどを踏まえ、日建連東北支部や会員各社が現場の安全管理の徹底に一段と力を入れている。

 三井住友JV(生野嘉明所長)と大成JV(小原克己所長)の両現場でパトロールを行った伊藤委員長は「東北地区で事故が多発している原因として、超繁忙であること以外に、作業員不足に伴う新規入場者、未習熟な技能労働者の増加が挙げられている」と指摘した。

 今後の対応について「新規入場者を見た目で分かるようにするほか、作業に対する習熟度が高まっていることを確認できる仕組みなど、現場側でいろいろと考えてもらいたい」と述べ、周囲が新規入場者や未習熟者により目を配れる環境づくりを求めた。

 三井住友JVは宮古田老道路(延長約21キロ)の自動車専用道路のうち、樫内地区でトンネル2カ所(総延長2028メートル)の建設と田代川橋(橋長170メートル)の上下部工を担当。既に2本のトンネルは貫通し、覆工コンクリートを施工中。橋梁工事では橋脚2基の構築作業を進めている。

 工事用の取り付け道路で狭い箇所があり、周辺には民家も点在していることから、ダンプトラックなど工事用車両の位置情報を一元管理できる運行システムを導入。車両交通の円滑化と安全性の向上を図っている。

 大成JVは三陸沿岸道路のうち、向新田~上摂待~下摂待地区の本体工事(トンネル工、橋梁上下部工、道路改良工)、仮設の生コンプラントの整備を担当。トンネルは摂待第1(延長1355メートル)、摂待第2(同1772メートル)の2カ所を整備し、第1は昨年9月に貫通した。第2は全体の約8割の掘削が完了。両トンネルをつなぐ摂待大橋(橋長234メートル)は橋脚2基の躯体工事を進めている。

 現場内での安全対策として▽ジャンボマンゲージへのプロテクター設置(切羽の肌落ち災害防止)▽無線式重機接近監視装置の設置(作業員と重機の接触事故防止)▽橋脚工事に主筋以外の鉄筋を6段分地組みしてつり込む「NOPキャリイ工法」を採用(鉄筋組み立て作業の簡素化・安全性向上)▽橋脚部で大型システム型枠を採用(省力化と施工精度の向上)-などに取り組んでいる。

【興味のある方もない方も】土木展、スタートだよ

人々の暮らしを支えるインフラの役割を伝える企画展「土木展」が24日、東京・赤坂の21_21 DESIGN SIGHTで始まる。

 土木の専門家らによる展覧会企画チームと、デザイナーやアーティストが集まり、道路や鉄道、上下水道、災害に対する備えなど土木構造物の役割をさまざまな角度から捉えた展示を行い、土木の新たな価値や魅力を伝える。

 主催は21_21 DESIGN SIGHTと三宅一生デザイン文化財団。建築家の内藤廣氏が企画に協力し、中村英夫東京都市大学名誉総長がアドバイザーを務める。

 展覧会では、土木写真家の西山芳一氏が選んだ日本の名土木構造物をマップで紹介するとともに、西山氏が撮影した霊山トンネル工事で使われたドリルジャンボ、施工途中の夜の明石海峡大橋、ダム湖に残されたタウシュベツ川橋、放水中の地苅ダムの写真を超大型パネルとして展示室の壁面いっぱいに展示している。

 来館者に土木をより身近に感じてもらうため、高度経済成長を支えた土木の工事現場の記録映像を使って現代までの土木の歴史を振り返り、その迫力を音で表現する「土木オーケストラ」と題した映像で展示。道路や橋、ダムなどの土木施設を「ほる」「ためる」「つむ」「ささえる」などの切り口で多彩な作家が表現したインスタレーション作品、駅改造が進む東京の新宿、渋谷、東京の三態を描いたドローイング作品、ご飯をダム、カレーをダム湖に見立てて器に盛りつけた各種の「ダムカレー」のサンプル展示などの工夫も凝らした。

 展覧会ディレクターを務める建築家でデザイナーの西村浩氏は、開幕前日の23日に行われたプレスプレビューで「人々の暮らしを支えている土木が提供する日常の価値というものは普段、意識されることがない。展示会を通じて子どもから大人まで土木を身近に感じてほしい」と述べた。

 9月25日まで(火曜休館)。開館時間は午前10時~午後7時。入場料は一般1100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下は無料。

2016年6月23日木曜日

【ゆっくり日本をお楽しみ下さい】国交省、手ぶら観光カウンター整備支援

 国土交通省は訪日外国人旅行者(インバウンド)の受け入れ環境の改善に向け、旅行者の手荷物集荷拠点の整備を推進する。

 空港や駅、商業施設などで手荷物集荷場を整備したり、集荷場機能を強化したりするなど、手ぶら観光の環境整備に取り組む民間事業者や地方自治体を対象に関連経費(人件費を除く)の3分の1までを補助する制度を創設。助成希望者を7月20日まで最寄りの地方運輸局などで受け付ける。

 国の観光ビジョンでは、集荷関連サービスを提供する「手ぶら観光カウンター」の数を15年度末の80カ所から16年度末に倍増させ、東京五輪が開催される2020年までには全国の主要交通結節点すべてに同カウンターを設置することを目標に掲げる。

 荷物を空港・駅、商業施設などで一時預かり、日本の優れた宅配サービスを活用して空港・駅やホテルに配送するなど、手ぶら観光できる環境整備でインバウンド需要の継続的な取り込みに力を入れる。

 国交省はインバウンド向けの手荷物配送・一時預かりサービスを提供し、そのサービス水準・内容が一定の条件を満たす事業者に対して「手ぶら観光共通ロゴマーク」の掲出を認め、手ぶら観光ネットワークの形成を進めている。

 今回の補助制度では、ロゴマーク掲出を認定された民間事業者や自治体などが支援対象(認定見込みを含む)。手荷物集荷場の整備・拡充(受付窓口の開設や機能向上の工事費用、荷物を一時保管するための設備など)のほか、案内標識や可変情報表示装置などの多言語化に要する経費を助成する。

【回転窓】予断許さぬ英国民投票

英国できょう、欧州連合(EU)への残留か離脱かを問う国民投票が行われる。壮大な社会実験とも言えるEUの枠組みが、今回の投票結果によっては大きく揺れることになる▼世界経済への影響はもちろんのこと、これからの国際社会の進む道という意味でも、大きな転換点となりかねない。争点の一つが移民問題。労働力が増加して社会を支えるという見方と、公共サービスの圧迫や治安悪化につながるという認識の両方がある▼域内の移動の自由に関しても、経済発展に力となる一方で、テロ対策を困難にしているとの指摘があるのも事実。グローバル化が進む中で、メリットとリスクが複雑に絡み合う様相がより強まっているともいえよう▼報道によると、直近の世論調査でも残留派と離脱派が拮抗(きっこう)しており、予断を許さない状況だ。問題が難しいが故に、逆にイエスかノーかというような単純化した選択に委ねざるを得ない矛盾した状況があるようにも感じる。「選び切れない」というのが本音ではないか▼日本社会が抱える問題にも類似した構造があるだろう。じっくり考える大事な時期なのかもしれない。

【コンセッション前提に】文科省有識者会議、文教施設民営化で具体策整理

文部科学省の有識者会議は22日、地方自治体の文教施設の民営化促進に向けて検討している具体策の要点を整理した。

 公共機関が施設を所有したまま運営権を民間に売却する公共施設等運営権(コンセッション)の導入を前提とし、より多くの民間事業者に事業への関心を持ってもらうため、事業参画時に何らかのインセンティブを与えられる仕組み作りを促す。

 事業者選定では民間のアイデアを最大限反映しやすい性能発注方式を求めていく方向だ。

続きはHP

【夏休みの自由研究にいかが?】女子小中学生対象にけんせつ小町活躍現場見学会

 ◇7~8月、全国15カ所で◇

 日本建設業連合会(日建連)は、女子小中学生と保護者を対象にした「けんせつ小町活躍現場見学会『Girls SITE(ガールズサイト)』」を全国15の工事現場で開く。「夏休み特別企画」として、名古屋市内の土木工事現場を皮切りに7月21日から8月30日まで順次行う。参加者を専用ホームページで募集中。女性技術者・技能者の仕事や建設業の役割、魅力を積極的に発信する。

 見学会は、「けんせつ小町」の愛称で呼んでいる建設業で活躍する女性技術者・技能者をさらに知ってもらおうと15年に始めた。前回は14現場で開き約400人が参加。中村満義日建連会長は「募集人数を上回り意義ある見学会だった」と手応えを示している。

 各現場では、鉄筋の結束や左官の仕事の体験、女性専用の更衣室やトイレの見学などを行う。国土交通省が後援しており、日時、場所は未定だが石井啓一国交相が視察を予定しているという。

 けんせつ小町活躍現場見学会の日程、工事現場の概要は次の通り。▽開催日(開催地)=〈1〉工事名〈2〉施工者〈3〉発注者。(▼は定員に達し募集終了)

 ▽7月21日(名古屋市)=〈1〉中村中部雨水幹線下水道築造工事〈2〉安藤ハザマ〈3〉名古屋市上下水道局

 ▽7月23日(広島市)=〈1〉広島駅南口Cブロック第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事〈2〉戸田建設〈3〉広島駅南口Cブロック第一種市街地再開発組合

 ▽7月25日(千葉県市川市)=〈1〉東京外環自動車道市川中工事〈2〉鹿島〈3〉東日本高速道路

 ▽7月27日(仙台市)=〈1〉仙台湾南部海岸深沼南工区井土浦地区堤防復旧工事〈2〉前田建設〈3〉国土交通省東北地方整備局

 ▼7月28日(東京都品川区)=〈1〉目黒駅前地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事〈2〉大成建設〈3〉目黒駅前地区市街地再開発組合

 ▽7月29日(さいたま市)=〈1〉(仮称)HC大成有楽浦和駒場計画新築工事〈2〉長谷工コーポレーション〈3〉大成有楽不動産、長谷工コーポレーション

 ▽8月2日(北海道小樽市)=〈1〉北海道横断自動車道天神橋(PC上部工)工事〈2〉三井住友建設〈3〉東日本高速道路

 ▽8月4日(大阪府茨木市)=〈1〉安威川ダム建設工事〈2〉大林組〈3〉大阪府

 ▽8月5日(東京都港区)=〈1〉(仮称)北里研究所白金キャンパス薬学部校舎・北里本館建替新築工事〈2〉戸田建設〈3〉北里研究所

 ▽8月8日(大阪市)=〈1〉京都線・千里線淡路駅周辺連続立体交差工事(第2工区)に伴う土木工事〈2〉奥村組〈3〉阪急電鉄

 ▽8月10日(東京都江東区)=〈1〉東京港クルーズ・海の建設現場見学〈2〉五洋建設〈3〉東京都港湾局など

 ▽8月23日(長崎市)=〈1〉長崎県庁舎行政棟新築工事〈2〉鹿島〈3〉長崎県

 ▼8月24日(東京都練馬区)=〈1〉(仮称)東映アニメーション新大泉スタジオ計画〈2〉清水建設〈3〉東映アニメーション

 ▼8月26日(東京都渋谷区)=〈1〉渋谷駅南街区プロジェクト新築工事〈2〉東急建設〈3〉東京急行電鉄

 ▽8月30日(名古屋市)=〈1〉ささしまライブ24グローバルゲート〈2〉竹中工務店〈3〉ささしまライブ24特定目的会社。

2016年6月22日水曜日

【回転窓】気になる〈菌〉

梅雨の時期から夏場にかけて注意したいのは熱中症だけではない。細菌を原因とする食中毒の発症が多い時期でもある。日ごろから用心するに越したことはない▼それにしても最近は〈除菌〉や〈抗菌〉を売りにした商品の多さに驚かされる。消費者のニーズは高く、日本人が日常生活でそれほどまでに菌を気にするようになったのはいつごろからだろう▼そんな中、自著で「除菌・殺菌に熱心にならないことが親の愛」と指摘するのは藤田紘一郎東京医科歯科大名誉教授。身の回りから細菌を排除するような生活環境がアレルギーを急増させていると警鐘を鳴らしてきた免疫学者である(『最新! 腸内細菌を味方につける30の方法』ワニブックスから)▼除菌や殺菌にどれほどこだわるかは人それぞれだが、何事も行き過ぎると不自由を強いられてしまう面もある。正しい知識を身に付けたいものだ▼藤田氏が健康のために推奨するのは「週2回はステーキ、週5回は魚料理を食事のメインにする」「亜麻仁油やエゴマ油をとる」など。氏の著書をうなずきながら読む自分も既に〈菌〉を気にする一人かもしれない。

【再オープンは7月1日!!】横浜アリーナ大規模改修が大詰め

 竹中工務店が進めている横浜アリーナ(横浜市港北区新横浜3の10)の大規模改修工事が大詰めを迎えている。

 休業期間6カ月というタイトな工期での工事を実現するため、さまざまな工夫を凝らした。休業期間外に工事を行う「前倒し工事」も併せて実施することで工期を順守するとともに、無事故・無災害を達成した。7月1日にリニューアルオープンする。

続きはHP


【進む、東名のピンポイント渋滞対策】東京五輪までに大和トンネル付加車線設置

大和トンネル付近の付加車線設置イメージ
 東名高速道路の神奈川県内の渋滞発生ポイントである大和トンネル付近の付加車線設置事業を2020年東京五輪までに完了させる。現在、事業主体の中日本高速道路会社が関係機関との協議や関連工事の発注手続きを進めている。高速道路のストック効果の最大化に向けた取り組みの一環で、海老名ジャンクション(JCT)のランプ部の2車線運用も拡充し、渋滞解消を推進する。

 東名高速上下線の大和トンネル付近は
上り坂やサグ部などによって渋滞が頻発する区間。トンネルを拡幅して付加車線(上り線約4キロ、下り線約5キロ)を設置し、現在の片側3車線を4車線に増やすことで渋滞緩和を図る。

 中日本高速会社は用地取得などの準備が整った区間から順次工事に着手する予定。五輪までに付加車線の運用を開始した後、交通状況などに応じて追加の渋滞対策を検討する方針だ。

 海老名JCTでは、昨年10月に東名高速から東北自動車道までが首都圏中央連絡自動車道(圏央道)でつながったことにより、交通量が大幅に増加。10日間で8回程度の渋滞が発生していたが、東名高速から圏央道八王子方面に向かうランプ分流部(1車線)での2車線運用を同月末から実施した結果、渋滞が解消した。

 今回は圏央道八王子方面から東名高速に向かうランプ分流部(1車線)を対象に、7月中旬をめどに既存の道路幅員の中で2車線運用を実施する。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/直接施工拡大の法制化めざす

 建設工事の下請比率を減らし、直接施工を拡大する内容の立法が推進される。また、建設労働者が受け取る「適正賃金」を定めて、下請の過程で賃金が削られることを根絶しようとする法案も発議される。

 これら二つの法案はいずれも前国会の会期中に発議されたものの、処理できずに廃案とされたが、最近の南揚州市での地下鉄工事事故を契機に、「危険の外注化」があらためて問題視され、今国会で処理されるか注目されている。

 8日、民主党の乙支路委員会は、国会政論館で記者会見を行って、このような内容を盛り込んだ「建設産業基本法改正案」と「建設労働者雇用改善法改正案」を発議する予定だと明らかにした。

 建設産業基本法改正案は、公共工事で工事費20%以上に一定比率を乗じて算出した金額の工事に限り、元請負人である総合建設会社が「直接施工」するよう義務付ける。現行法より直接施工比率を増やすのがポイントだ。

 直接施工制は、現行の建設産業基本法にも規定されているが、100億ウォン未満の工事に限り直接施工を義務付ける規定になっており、さらに、施行令では30億ウォン未満にまで縮小している。これに対し、現行の直接施工制規定が事実上有名無実だと乙支路委員会は指摘した。

CNEWS 6月9日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/日系デベの事業展開活発化

 ベトナムで事業を展開する日本の不動産関連企業の動きが活発になっている。既に実績を持つデベロッパーのほか、新規参入組にもチャンスが広がっているようだ。

 日本国内で住宅開発を手掛けるサンヨーホームズは、不動産開発大手ホアビングループと提携し、ホーチミン市で高層住宅を計画している。同社の田中康典会長は「ホーチミン市の住宅市場は非常に有望だ。今回の提携を足掛かりに戦略的に展開していきたい」と話している。

 ここ数年は需要の冷え込みが指摘されながらも、新たな開発に乗りだす企業もある。

 アジアで不動産開発を行うクリードグループは、NBB社の転換社債2727万ドルを取得し、いずれもホーチミン市で「シティーゲートタワー」や「NBBガーデン」など住宅プロジェクトを実施している。西日本鉄道と阪急不動産は、ナムロングループとホーチミン市9区に1.3兆ドンを投資して高層マンションを建設することで合意したところだ。

セイ・ズン 6月10日)

【さてどうなる?】ヒースロー空港拡張コンセプト設計案、4者が最終候補に

ザハ・ハディド・アーキテクツの提案
 ロンドン・ヒースロー空港は、計画している空港拡張事業のコンセプトデザイン提案を募集し、このほど最終候補の設計事務所4者を選定した。長年の課題だった英国首都圏の空港機能強化に向け、15年7月に政府の諮問委員会は滑走路の新設を答申したが、現時点で計画は承認されていない。ヒースロー空港は未来の姿を示すことで進展に弾みをつけるのが狙い。

 最終候補に選ばれたのはザハ・ハディド、グリムショー、HOK、ベノイの4者。HOKは本拠地米国で多数の実績を持つほか、仙台空港や中部国際空港のターミナルの設計にも参加した。ベノイは現在建設中のシンガポール・チャンギ空港第4ターミナル、ザハ・ハディド事務所は北京の新空港を設計している。グリムショーはトルコ・イスタンブール新空港のコンセプト設計などを担当した。

HOKの提案
 諮問委は事業費を176億ポンド(約2・7兆円)と試算。計画では敷地北西部に第3滑走路を新設し、国際旅客ターミナルを新たに建設する。既存のターミナルビルとの連結や管制塔、駐車場なども含まれる。空港会社は、持続可能性と革新的な旅客サービスを実現しながら、現実的なコストと計画のフレキシビリティーを備えた設計案を求めた。4者からさらに詳細な提案を受け、7月に最優秀提案を決める予定だ。

 騒音や土地収用をめぐり計画に反対する声があるほか、ロンドン郊外のガトウィック空港も滑走路の増設を主張しており、政府がどちらを選択するか判断が待たれている。

 経緯を調査した議会の交通委員会は5月、ヒースロー計画を支持する内容の報告書を発表した。エルマン委員長は「2036年までに世界で新たに50本の滑走路が建設され、対応旅客数が10億人増えると言われている。中東や東アジア、北米がハブ空港としてのヒースローの地位を脅かしている」と指摘。計画の遅れは英国経済に大きな損失を与えると警鐘を鳴らし、政府に早期の決断を促した。

2016年6月21日火曜日

【本田翼さんが問いかける】田島ルーフィング、60年ぶりに企業CM制作


 建設防水最大手の田島ルーフィング(東京都千代田区、田島国雄社長)は20日、新しいテレビCMの放映を全国で開始した。新キャラクターに女優の本田翼さんを起用。「あたりまえの豊かさをささえる、あたりまえじゃない技術」をテーマに、中核事業として取り組む建築防水材と床材の製造・販売をPRしていく。同社が企業CMを制作したのは60年ぶりという。

 新CMは「屋上は問いかける」「床は問いかける」の2編で、それぞれ15秒と30秒のバージョンがある。

 屋上は問いかける編は、本田さんがたたずむ屋上にゲリラ豪雨が襲い掛かるが、全くぬれることなく笑顔を浮かべてくるりと回転。すると激しい雨が一瞬で上がっていく。

 激しい風雨からも人々を守り抜く「雨漏りのしない屋上」という当たり前の豊かさを演出した。

 床は問いかける編は、さっそうと歩く本田さんの足元で床のデザインが変化していく中、ソファに横たわる本田さんはリラックスした様子でその変化を楽しんでいる。安らかな本田さんの表情を通じ、歩きやすさと当たり前の豊かさに加え、過ごす人の気持ちまで変える床デザインの可能性を表現した。

 CMイメージソングは、シンガーソングライターのスガシカオさんがボーカルを務めるバンド「kokua」のファーストアルバム「Progress」から「夢のゴール」が使われている。同社は、「普段の本田さんのかわいらしい印象とはひと味違ったクールで大人な表情に注目してほしい」(広報企画室)としている。


【ネット中継で現場を体感】近畿整備局、在学型現場見学会開く

 近畿地方整備局が大阪市内の市立中学校と和歌山県の工事現場をインターネットで中継する在学型の現場見学会を開いた。

 建設業界や技術者への魅力を感じてもらおうと、授業参観に合わせて実施。生徒たちは事業の説明を受けるとともに現場で働く作業員らに次々と質問し、仕事の内容を学んだ。

 インターネット中継を行ったのは、市立昭和中学校(阿倍野区)と京奈和自動車道紀北西道路雄ノ山高架橋(岩出市)の建設現場。3年生約60人が教室に居ながら現場と交信。最初に和歌山河川国道事務所の中尾勝副所長が工事の概要や整備効果を説明し、現場に出向いた技術科の教諭がタブレット端末でネット電話の「スカイプ」で現場をつないだ。

 生徒はクレーンのオペレーターや鉄筋工、型枠大工、測量士、CADオペレーターなどさまざまな職種の技能者や技術者に質問。「なぜクレーンオペレーターになったのか」と問われた作業員は「子どもの頃におもちゃの重機で遊んでいた。人が持てない物を運べる」と答えていたほか、「安全にはどう気をつけているか」と問われた鉄筋工の職人は「安全設備もあるが、危ないと言い合える仲間とのコミュニケーションが一番大事だ」と答えていた。必要な資格や給料に興味を持つ生徒も多かった。

【記者手帖】「これが工事」では済まない

18日から19日にかけてフランスで行われた伝統の自動車耐久レース「ルマン24時間」。TS050ハイブリッドで臨んだトヨタは、トップを走っていた5号車が残り3分余でストップ、初の総合優勝を逃した◆30年前からルマンに挑戦してきたトヨタチームは、上位入賞、2位獲得はあったものの悲願は達成できていない。今年は加速時に1000馬力を出すハイブリッドエンジンを投入し、各部品も改善。必勝を期したが、最終局面でポルシェの2連覇を許した◆レースカーの製作者は、過去のトラブルの原因を一つ一つつぶし、部品やシステムの強化を繰り返すという。それでも結果に結び付かないこともある。その話を聞いて工事現場の安全対策に似ていると思った。過去の事故に学び、災害要因を一つ一つ丹念に取り除くことでゴール(無事故・無災害)を目指す◆今回のトヨタチームの結果には「これがレース」と語るファンもいるが、工事現場ではそうはいかない。必ず結果に結び付けなければならない。事故が起きても「これが工事」と言ってはならない点が決定的に異なる。(土)

【回転窓】いきなり地元と言われても…

第24回参議院議員通常選挙があす22日公示される。選挙区73と比例区48の計121議席が改選対象。7月10日の投開票に向け、気温の上昇とともに各党の舌戦も一段と熱を帯びそうだ▼今回は選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が施行されてから初めての国政選挙としても注目を集める。選挙権年齢の改正はほぼ半世紀ぶりで、約240万人が新たに有権者となる▼参院選が初めて行われたのは1947年4月。当時は第1次吉田内閣が政権を運営していた。全国区100議席、地方区150議席を争い、得票数の多い順に上位125人は規定通り任期6年、下位125人は次回選挙の改選議席として任期が半分の3年とされた▼選挙の投票率が右肩下がりなのはご存じの通り。参院選の最高は80年の74・5%、最低は95年の44・5%。前回2013年は52・6%だった。18歳選挙権が投票率にどう影響するかも注目点だ▼通勤の駅で辻立ちする候補者が「地元のために」と連呼していた。選挙の時以外は顔を見掛けた記憶がない。低投票率の原因はこんなところにもあるのでは。

【ようやく、ですかね】政府、公共スポーツ施設の「稼げる施設」への転換に本腰

 政府は、地方自治体が所有・運営する大規模集客型の公共スポーツ施設を官民連携で「稼げる施設」へと変革させる。

 プロ野球やサッカーJリーグのように1回の試合開催だけで最大数万人規模の観客を呼び込めるポテンシャルに着目。年末までに、スポーツ以外でも利用できる機能の多様化や鉄道駅に近い立地を誘導する施設整備の指針をまとめる。17年度からは設計段階から国が直接助言を行えるような仕組みも導入する方向だ。

続きはHP

2016年6月20日月曜日

【名古屋に新名所、誕生】JPタワー・KITTE名古屋が開業

JPタワー(中央)の全景。
左側は建設中のJRゲートタワー
日本郵政と名工建設が建設を進めていたJPタワー名古屋内の商業施設「KITTE名古屋」が17日開業した。開業に伴って行われた式典では、日本郵政の井上進執行役員が「このKITTE名古屋がJR、バス、地下鉄などとつながり名古屋にとって切っても切れない場所になれるようこれから精いっぱい努力していきたい」とあいさつした。

 続いて井上執行役員や名工建設の野田豊範社長、JPビルマネジメントの野村日出夫社長、元プロビーチバレー選手の浅尾美和さんらがテープカットを行った。

テープカットする浅尾さん(左から3人目)ら
「KITTE名古屋」は中部圏最大級の複合ビルJPタワー名古屋の中核商業施設。同ビルの1~3階延べ4650平方メートルにショップやレストランなど計36店舗が出店する。

 JR名古屋駅と直結し、地下通路によって地下鉄や名鉄、近鉄とも接続、さらに17年には隣接してバスターミナルが開業することで高いアクセス性を有することから、名古屋駅前地区の活性化が期待されている。隣接地にはJRゲートタワーが17年4月の全面開業に向けて施工中。一体的な開発によりにぎわいの創出に向けて相乗効果を狙う。

【完成は19年7月】京橋ビル(東京都中央区)が起工、低層階はブリヂストン美術館に

京橋ビルの完成イメージ

 ブリヂストンの関連会社の永坂産業(東京都中央区、石橋寛社長)が東京・京橋で計画しているオフィスと美術館の複合ビル「(仮称)永坂産業京橋ビル」が本体着工し、17日に現地で地鎮祭が行われた。設計は日建設計、施工は戸田建設が担当。19年7月末の竣工を目指す。

 
低層階に入るブリヂストン美術館の3階受付イメージ

続きはHP

【ニーズとシーズを縁結び!!】CNCP、建設関連業務のマッチングサイト開設

土木学会が創立100周年記念事業の一環として創設した「シビルNPO連携プラットフォーム」(CNCP、山本卓朗代表理事)が、まちづくりや環境保全、防災・減災、インフラの維持更新など建設関連業務(調査・設計、工事など)の発注先を探すNPO法人や企業、地方自治体と、仕事を探す土木技術者、企業などを結び付けるインターネットの専用サイト「シビル・マッチ」を開設した。多数の土木専門家集団(NPO)が登録するCNCPが運営することで受発注者間の契約や支払いの信頼性を担保する。

続きはHP

【お客様、ご案内します】大林組ら2社、建物利用者の誘導アプリ開発

 大林組と電通国際情報サービスが、建物の利用者を快適な空間に個別に誘導するアプリを共同で開発した。

 利用者の空間へのニーズを生理状態や環境条件などからリアルタイムに評価し、利用者に最適な空間での過ごし方を提案できるという。

 大阪市北区の大型複合施設「グランフロント大阪」でデジタルサイネージ端末(電子看板)を使った実証実験を開始した。一般利用者を対象に、屋内から屋外へ誘導する実験を断続的に秋まで行っていく。

 開発した個別誘導アプリは、独自ロジック「快適感向上エンジン」を組み込んだ。利用者の位置情報に加え、▽環境情報▽生体情報▽ソーシャルデータの三つの要素から各利用者の「快適感指標」を算出し、快適感をより向上させる屋外空間と過ごし方を導き出す。三つの要素を解析して独自の快適感指標を算出する手法は世界で初という。

 実証実験のフィールドに選んだグランフロント大阪は充実した屋外空間を備えた建物で、アプリを搭載したデジタルサイネージを設置した。

 サイネージ端末のカメラが利用者の心拍数などの生態情報を自動で計測。屋外設置の気象ステーションから気温、風速、日射量などの環境情報を取得する。利用者がソーシャルデータとなる同行者との関係性(友人、恋人、家族など)をサイネージ端末へ入力することで、アプリ内の解析ロジックが利用者にとって快適な場所と過ごし方を個別に解析・提示する。

 キャラクターによる対話形式で、楽しみながらの使用が可能。利用者が推薦された屋外区間へ移動した後の快適感の向上を、移動後の生体情報や利用者からのアンケートを基に定期的に評価し、解析ロジックにフィードバックすることで、指標算出の補正もできる。

 心身ともに社会生活で積極的な健康を目指すウェルネス志向の都市生活が注目される中、屋内外空間の快適性について、外的環境に加え、利用者の心理状況や生体情報など内的要因も含め総合的に評価するニーズが高まっている。特に屋外空間の快適性評価は、気温など気象条件を基に算出された客観的指標を用いて行うのが一般的で、利用者側の状況を個別に反映していないことや、ウェルネスの観点からも快適に利用しきれていないことが課題とされる。

【回転窓】「木の時代」が再来

 事前の期待が大きいほど、落胆も大きいことは珍しくない。日本で名の知れたある城を見た時もそう。石垣越しに見上げた天守閣は雄大そのものだったが、中に入ると近代的なSRC造で味気なさを感じた▼木造の天守は戦災で焼失したという。「二度と燃えないように」との市民の願いを受け、この城の天守は半世紀以上前に再建された。そうした市民の強い思いは分かるが、史実と異なる建造物になってしまった面も否めない▼貴重な文化財である城や史跡は、まちのシンボルとして市民の手で大切に守り継がれてきた。今春に耐震改修工事を終えた小田原城はRC造だが、地元では木造天守への再建を求める声が強い▼構造設計や耐火、施工などの技術が進歩し、ここ数年は建築の木造化・木質化の動きが活発になっている。日本に再び「木の時代」が到来するのは歓迎だ▼地震で創建当時からの木造櫓が石垣と共に崩れる被害に見舞われた熊本城はいまだ再建の見通しが立たない。この影響で天守の木造復元構想に逆風が吹き始めた城もある。地域活性化のためにも木造復元の意義は高い。行方を見守りたい。

【凜】LIXILキッチンテクノロジージャパン・本山知さん



 ◇お客様に喜んでもらえる製品づくりを◇

 今年で入社から4年。主にキッチンに組み込む水栓金具をはじめ、キッチン全体の製品開発に携わっている。

 新しい製品を作る時は、企画部門からコンセプトが上がってきて、それを実際に製品に落とし込んでいく。「どうすればお客さまに喜んでいただけるか。そこを考えるのが、開発のやりがいであり、難しさでもある」。さまざまな人の意見や知見をもらいながら仕事を進めていく毎日だ。

 LIXILグループは、2011年にトステムやINAXなど住宅設備関連のメーカーが統合して発足した。キッチン開発部門でも、合流したそれぞれの会社の風土が混ざり合っている。「企業文化の違いを感じる時もあり、仕事の進め方に戸惑うこともある」が、合理的な開発の組織作りや、革新的な商品の開発のために「相乗効果を出していければ」と風土の違いを前向きに捉えている。

 学生時代には、化学を専攻していたが、生活する上で欠かせない存在の水に関わる仕事がしたいと考え、就職活動を始めた。「特にキッチンなどの水回り製品を展開するLIXILが自分の中で魅力的に感じ、入社を決めた」。

 開発部門は男性社員がほとんどだが、同社はダイバーシティー(人材の多様化)を推進しており、仕事と家庭の両立を図るための社内制度は充実しているという。「(開発部門で)仕事と子育てを両立する初めての女性社員になりたい」。そんな目標も持っている。

 (開発部先行開発グループ、もとやま・あきら)

【中堅世代】それぞれの建設業・141

決算説明会の成果が株価に影響することも…

 ◇置かれた場所でベストを尽くす◇

 過去最高益を更新するなど16年3月期は好決算が相次いだゼネコン。東日本大震災の復興事業に加え、2020年東京五輪に向けたインフラ整備やリニア中央新幹線など大規模プロジェクトも本格化し始め、投資家からのまなざしも熱い。

 中堅ゼネコンに勤務する上田次郎さん(仮名)は、経営企画部で中長期的な経営計画や事業戦略の立案、アナリスト対応などを任されている。会社は3期連続の増収増益を達成。営業利益は創業以来最高となった。東京都内で5月下旬に開いた16年3月期の決算説明会には例年を上回る参加者があり、手応えを感じた。

 今年で入社25年目。左官職人の父に憧れて大学で建築学を専攻。幼いころは仕事をしている父について、現場によく連れていってもらったという。「父と同じものづくりに関わる仕事に就きたい」。就職活動中に研究室の先生の紹介もあって今の会社に入社。念願かなって設計部に配属された。

 入社が決まった時は父も喜んでくれた。ただ、バブル崩壊後の不況で会社は経営不振が続き、建築部門の縮小を決定。入社後1年もたたずに設計部から総務部に異動になった。与えられた仕事は、2000年になるとコンピューターが誤作動する可能性があるとされた「2000年問題」への対応だった。

 すべてが初めての経験だった。図面に向かうのではなく、パソコンとにらめっこする毎日。もともと悪かった視力がさらに低下し、度のきつい眼鏡を掛けるようになった。「ここは自分の能力を発揮できる場所ではない」。転職を考えたことも一度や二度ではない。「この仕事が終われば呼び戻す」。異動前に設計部の上司が言ってくれたその言葉を信じて踏みとどまった。

 考え得るあらゆる可能性をつぶし、システムの再点検など万全の態勢で2000年を迎えた。おかげでトラブルの発生は最小限で済んだ。だが、いつまでたっても設計部から声は掛からなかった。「だまされたとは思わなかった。自分のやりたいことじゃない、と立ち去るのは簡単だ。もう少し頑張ってみよう」。そう考えるようになった。

 経営企画部は、誰かが作ったマニュアルがある部署ではない。東京五輪後を見据え、本業の強化と同時に、海外事業や新規事業など収益源の多様化も模索する。業績が上向いた今だからこそ、次の布石が必要だと感じている。社内では誰も経験したことのない施策を考える仕事にやりがいを感じている。半面、会社の経営と直結する部署としてプレッシャーも大きい。

 新しい事業を展開するためにも人材の確保が欠かせない。採用担当の同僚から相談を受けることも少なくない。「新入社員が『自分がやりたいことではなかった』と言って辞めていく」と嘆く同僚には、「サラリーマンをやっていれば思い通りにならないことばかり。給料をもらった上に面白おかしく働こうというのがそもそも虫の良すぎる話」と突き返す。

 「望んだ部署ではないから」「仕事がつまらない」と言い訳ばかり探していた時代が自分にもあった。それも含めて自分の人生。そう割り切るすべをこの25年の間に身に付けた。今いる場所でベストを尽くす。その積み重ねが今の自分を形成していると思っている。