2016年6月17日金曜日

【回転窓】世界を回る北斎

「戴斗」「為一」「卍」…。これらは江戸の浮世絵師・葛飾北斎が名乗った雅号である。北斎は生涯に30回も改号した。弟子に名を譲り、生活費に充てたともいわれるが、真偽は分からない▼画家の名前はブランドと同じ。広く世間に浸透しているから仕事が舞い込む。不利を押して名前を変え続けた北斎が画家として名をはせたのは技量が飛び抜けていた証しだろう。作品は海外でも評価が高い▼外務省が19年度にパスポートの査証欄の図柄を北斎の代表作「冨嶽三十六景」に変える。赤富士を描いた「凱風快晴」など24種の図柄が印刷される。東京五輪を前に三十六景のパスポートが各国を回り、世界の人々に日本を強く印象付けるに違いない▼東京・両国で建築家・妹島和世氏が設計した「すみだ北斎美術館」の建設が進んでいる。開館は11月22日。パスポートより一足早く本物を常時見られる施設が誕生する▼北斎美術館からは江戸東京博物館と両国国技館が目と鼻の先。周りは江戸から続く老舗の商店も並ぶ。浮世絵、味と江戸文化を一度に体感できるとは何ともぜいたく。開館が今から楽しみでならない。

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