2016年7月8日金曜日

【現場主義、さらに進化】復興庁・西脇隆俊事務次官に聞く/被災地復興にどう取り組む


 ◇津波被災地で住宅再建総仕上げ◇

 今年3月で東日本大震災の発生から5年が経過し、政府は新たに16~20年度を「復興・創生期間」と位置付ける復興の総仕上げ段階に移行した。復興事業に取り組んできた当初から最重点課題に掲げる住宅再建や沿岸居住地の高台移転をどう完了させ、事故が起きた福島第1原発の周辺地域の生活再建支援をどう進めていくのか。6月21日付で就任した復興庁の西脇隆俊事務次官に聞いた。

 --就任の抱負を。

 「復興庁がモットーとしている被災地や被災者の声に寄り添う『現場主義』を徹底し、(府省庁間などの)縦割りを排除した前例にとらわれないきめ細かな取り組みを展開する。さらにこの仕事のやり方を進化させられるように、復興・創生期間の初年度を良いスタートにしていきたい」

 --被災地の現状をどう見る。

 「(岩手、宮城両県を中心とする)津波被災地域ではそれなりに住まいや生業(なりわい)の再生が進んでいる。災害公営住宅は来年3月末までに計画の86%の約2・5万戸(15年度末時点で57%の約1・7万戸)が完成する予定だ。地域の基幹産業である水産加工業の施設もおおむね業務を再開できるところにまで来ている」

 --ここに来て住宅建設などを担当する被災市町村の技術職員の不足が指摘されている。

 「そうした課題は国も認識している。まずは災害公営住宅の建設や高台移転を計画通りに着実に進めることが最も大事だ。そのため、引き続き国が官民の技術職のOBを採用して市町村に派遣する取り組みや、国が被災市町村の人件費負担をすべて賄う任期付き職員の採用も支援する」
 「人を確保することは大事だが、これからは働き手となる生産年齢人口が減少していく中で仕事のやり方をより効率的に変えていくことも大事だ。被災市町村の技術職が不足しているのはそれなりの仕事量がある裏付けでもあるので、引き続き復興庁の職員でつくる『工事加速化支援隊』などを通じ、工事の効率的な発注事務手続きのやり方も助言していきたい」

 --原発事故の影響で遅れている福島の復興の課題と展望を。

 「福島では、飛散した放射性物質の除染に取り組んでいる効果で空間線量もだいぶ下がってきた。来年3月までに国が指定している(比較的線量が高い)居住制限区域と(比較的線量が低い)避難指示解除準備区域の指定を解除できるように準備しているところだ。本格的な復興に向けて前進していると思う」

 「福島県外などに避難中でふるさとに戻りたいとお考えの住民の方々が一人でも多く戻っていただけるように、国としてきめ細かく住民の意向を把握しながら商業施設や病院など生活に不可欠な施設の整備・確保に努める。福島の復興は、国として法律で定められる復興庁の設置期限後の21年度以降も前面に立って対応する方針を決めているが、まずは復興・創生期間にできる限りのことを行っていく」。

 (にしわき・たかとし)79年東大法学部卒、建設省(現国土交通省)入省。総合政策局長、官房長、国土交通審議官を経て16年6月から現職。京都府出身、60歳。

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