2016年8月25日木曜日

【「鉄の腕」で櫓を支持】大林組、熊本城緊急対策工事に総力挙げる

 城の再建を復興のシンボルに-。

 大林組が4月の熊本地震で被災した熊本城(熊本市中区)の再建に向けた緊急対策工事に取り組んでいる。

 崩壊を免れた角部分の石垣だけで辛うじて支えられている飯田丸五階櫓(やぐら)の倒壊を防ぐ工事では、櫓を上から覆うように仮設の架台を組み、櫓の下に荷重を受ける梁が付いた「鉄の腕」を入れて抱え込む方法を提案し、6~7月末の約2カ月という短期間で設置を完了した。

 熊本城は戦国大名・加藤清正が築城。大林組は、1877(明治10)年の西南戦争で失われた天守閣や本丸御殿の再建・復元工事を施工した。4月の熊本地震では石垣や塀、瓦が崩落したほか、建屋にひびが入った。

 同社は、熊本市発注の「熊本地震に伴う熊本城飯田丸五階櫓倒壊防止緊急対策工事」(工期16年6月~17年3月)と「熊本地震に伴う熊本城南大手門倒壊防止緊急対策工事熊本城南大手門倒壊防止緊急対策工事」(同16年6~8月)の施工を担当している。

 五階櫓倒壊防止緊急対策工事で一番の難題となったのは、架台施工段階での事故による櫓の倒壊をいかに防ぐかという点だ。櫓から離れた敷地で長さ33メートル、高さ14メートル、幅6メートル、重量220トンの架台を最大限まで組み立てた後、地面に敷いたレールで南側へ約20メートル、そこから西側の櫓まで約20メートルスライドさせる施工計画を採用した。

 櫓の下部の状況が確認できず、「鉄の腕」を指し込む空間の寸法も実測できない条件。地盤を崩壊させず、石垣や櫓にも影響を与えず安全に設置するため、「鉄の腕」の先端部となる荷重受け梁の鉄骨を、いったんボルト接合せずに、架台本体と重なり合うように電動ホイスト(巻き上げ装置)でつり上げ、架台のスライドに合わせて上下左右に動かしながら二つの石垣を越える手順を考案したという。

 現場を率いる土山元治熊本城工事事務所長は熊本県の出身。「被災した熊本城の姿を目にし、私を含め地元の皆さんにとって、熊本城がいかに大切な存在だったかということをあらためて認識した。今回の仕事を成功させることが、熊本の皆さんを元気付ける結果につながると信じて取り組む」と話している。

 工事の詳細は同社ホームページの「プロジェクト最前線」でリポートしている。

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