2016年8月18日木曜日

【理想と現実の狭間で】日本経営協会「就労意識ギャップ調査」、若年層の転職志向高まる

 日本経営協会(会長・浦野光人ニチレイ相談役)が入社2年半~3年半の若手社員を対象に実施した「就労意識ギャップ調査」によると、回答者の半数近くが「再度就職活動が行えるとしたら活動する」と答え、4年前の調査に比べ転職志向が高まっていることが分かった。

 転職の際に重視するのは「給与・福利厚生が良い」(44・2%)。学校を卒業して最初に就職した会社は「就業環境は想像していたより快適」だったが、「給与やキャリア形成は期待していたほどではなかった」という評価が多く、給与面の不満が比較的早期の転職に直結することがうかがえる。

 この調査は大学や大学院、専門学校を卒業し、現在正規雇用者として働いている若手社員を対象に実施。668人からの回答を集計・分析した。質問項目は「就職活動と入社後のギャップ」や「転職志向」「理想の職場と就労意識」など。

 新卒時に選んだ職場は「自分のやりたい仕事ができると思ったから」「安定感があると思ったから」などの理由が上位にランクインした。働き始めてから将来像を具体的に描く「キャリアデザイン」と持ったかどうかの問いには、半数以上が「持っていない」と答えた。回答者の4割強は「昇進や昇任はしたくない」と回答。キャリアデザインの有無、就職後に感じた理想と現実のギャップが「昇進や昇任に対する考えに影響を与えている」と分析している。

 転職志向と密接に関係する仕事に対するモチベーションは、低下要因に「職場の人間関係が良くない」を挙げる回答が最も多かった。上司に対する要望は仕事の指示命令やOJT、業務分配に関する項目が上位を占める。若手社員は「人間関係や雰囲気が良い職場」で働き、「親切丁寧なOJT」をしてもらえ、「ミスや無駄を避けて働きたい」と思う傾向が強いという。

 調査結果を踏まえ、同協会は「競争を好まない」や「素直」といった特性を持つ現在の若手世代に対しては、採用時にキャリア意識・志向の確認をしっかりと行い、育成計画をしっかりと立てる必要があると指摘。企業の将来を担う人材に、安易に離職を選択させないためには「彼らの期待を裏切らない育成方法を採る」ことと同時に、過信や自信不足に陥らないようにするため「自身について客観的な能力判断を可能にする機会を組織として用意するべきだ」としている。

 少子高齢化が進展する中、国内の労働市場は人材不足が深刻になりつつある。苦労して採用した新卒者の3人に1人が3年以内に離職してしまう現状にあって、企業は若手世代の仕事や職場に対する考え方をしっかりと把握し、人材の確保・定着につなげる取り組みが不可欠になっている。

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