2016年8月24日水曜日

【プロジェクト・アイ】震災復興事業工事施工等一体的業務(岩手県陸前高田市)


 ◇施工は清水建設JV◇

 岩手県陸前高田市の高田町と気仙町で進む「陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務」。東日本大震災の大津波で甚大な被害を受けた土地をかさ上げし、大規模な高台を造成する工事が行われている。

 計画面積約300ヘクタール、約1100万立方メートルという膨大な量の土砂を扱うため、施工を担当する清水建設は複数のICT(情報通信技術)を組み合わせて工期短縮を図る技術を提案。効率的な施工管理を行いながら、急ピッチで工事を進めている。

 ◇作業効率化へUVAやICT建機導入◇

 計画の事業主体は陸前高田市。同市から事業委託を受けて業務全体の総合調整を行う都市再生機構が、復興まちづくりモデル事業としてCM(コンストラクション・マネジメント)方式で発注した。受注したのは、清水建設・西松建設・青木あすなろ建設・オリエンタルコンサルタンツ・国際航業JV。測量から調査、設計、施工までを一体的に行っている。

 清水建設は、これだけの大規模な造成工事を効率的に進めるために、▽無人航空機(UAV)による写真測量▽ICTブルドーザーによる敷きならしガイダンス▽ICT振動ローラーによる締め固め管理システム▽ICT油圧ショベルによるバックホウガイダンス▽GPSによるのり面変状監視-というさまざまなシステムを現場に導入した。

 使用するUAVは、時速80キロの飛行速度が出せる「固定翼」と呼ばれるタイプ。近年さまざまな現場で活用され始めたドローン(小型無人機)と比較し、1回当たりの航続時間が倍以上なのが特徴だ。

 UAVを、GNSS(汎地球測位航法衛星システム)による位置誘導に基づき自動操縦する。従来の20メートルメッシュでの方眼測量を行う場合と比べ、大幅な省人化と工程短縮を図ることができる。

 UAVによって収集した航空測量データを基に、1メートルメッシュの点群データによる2次元・3次元(2D・3D)モデルを作成する。

点群データで作成した現場の3Dモデル
 これによって、毎月の土工量を短時間で算出できるようになる。3Dモデルとオルソ画像(位置情報を含む真上から見たような傾きのない画像)を重ねた鳥瞰(ちょうかん)図を作成して出来形管理も行う。月ごとにデータを管理しているため、造成計画変更時の全体土量バランスの確認や、運搬計画の修正などにも早急な対応が可能になる。

 ◇街全体が現場、品質確保に全力◇

 ICT建機による施工効率の向上、工事品質の安定化も図っている。敷きならしでは、GNSS搭載のブルドーザーにより30センチ厚を高精度に確保。GNSS搭載振動ローラーによる規定の転圧回数(6回)管理も行うことで、ばらつきのない施工を実現する。

 GNSSによる位置情報を利用することで3DモデルによるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)データを作成し、情報の一元管理を図っている。1層ごとの締め固め終了後の面データを重ね合わせて作成した3Dモデルに、▽作業期間▽施工高さ▽走行時間▽転圧回数-などの属性情報を持たせて帳票管理を行い、高品質な盛り土施工につなげている。

 GNSSによるダンプトラックのトレーサビリティー(追跡可能性)管理も実施している。GNSS機能付きのスマートフォンをダンプに搭載し、土砂の区分や積み込み・荷下ろし地点の位置情報を取得してデータをサーバーに保存。これを各運搬段階に引き継ぐとともに、土質の試験結果を付与して敷きならし・締め固め工程にデータを引き渡す。

 現場で工事を指揮する小出直剛所長は「最盛期にはJVの社員や作業者も含め、現場の人員が1000人弱に膨らむこともあった。『街全体が現場』という感覚は今までに経験したことがない。全員を統制して安全に施工するためにも、繰り返し安全教育を徹底することを心掛けた」と工事の苦労を話す。

 UAVやICT建機については「最初は戸惑う人もいたと思うが、今では施工効率と品質の確保の点で優位性を大きく発揮してくれている」という。

 予定工期は19年3月まで。今後もしばらくは工事は続くが「被災地ではいまだに仮設住宅に暮らしている人も多い。少しでも早く工事を終わらせることが復興につながる。安全・安心を十分に考慮
しながら、残りの工事に取り組んでいきたい」と気を引き締めている。

 《工事概要》

 【工事名】=陸前高田市震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務
 【発注者】=都市再生機構
 【施工】=清水建設・西松建設・青木あすなろ建設・オリエンタルコンサルタンツ・国際航業JV
 【工事場所】=岩手県陸前高田市高田地区・今泉地区

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