2016年8月23日火曜日

【駆け出しのころ】三信建設工業取締役執行役員東京支店長・城戸博行氏

 ◇疑問を持ち進化の第一歩に◇

 大学の機械工学科に在籍していたため、入社したら施工機械の整備を担当するのかと思っていました。

 ところが、入社試験の面接で言われたのは「現場に出てもらう」でした。土木の知識もなく不安でしたが、「考えるより慣れろ」と覚悟を決めました。それに知らないことを担当するのですから、自分で勉強していくしかないと良い意味で割り切ることができたのかもしれません。

 入社して1カ月間、当社が地盤改良工事を担当していた上越新幹線・中山トンネル(群馬県)の現場で研修を受けました。先輩から出水して危ない時期もあったと聞きましたが、私たちが研修に行ったのは工期も残すところ1年という時期で、出水もなく落ち着いた雰囲気の中で工事が進んでいました。

 そこには、現在の大沢一実社長が当時は主任として赴任していて、図面は誰が見ても間違いがないように数字の書き方に注意するよう言われ、事務所のドラフターで何回も書いて練習したのを覚えています。

 研修を終えると、シールド工事の立坑部を地盤改良する現場に配属されました。入社1年目は言われたことをやるしかなく、2年目になって少しずつ自分で動けるようになっていった気がします。

 この現場には、元請の共同企業体にも2人の新入社員が配属されていて、同年代の私たちは休日もよく一緒に行動していました。会社は違っても社会人の第一歩を同じ現場で踏み出せたことをとても心強く感じ、その後も長年にわたり良いお付き合いをさせていただいています。

 当時の教えで今でも大切にしているのは、地盤改良工事に伴って地上に出てくる土をよく観察することです。その土には、目には見えない地中からの貴重なメッセージが込められているからです。数値でも管理を行いますが、頭で考えるだけでなく、目で見て吸収したものは大変に役立つものです。

 「繊細に、そして大胆に」-。現在、社内で皆に言っている言葉です。事前にさまざまなことを想定して対応策を練り上げたら、現場では自信を持って実行してほしいと思っています。

 そして、常に「何でこうなっているのか」と疑問を持ち、「こうやればもっと良くなる」という自分の考えを持ってほしい。例えば施工機械はこの30年で大きく進化し、これからも進化していくはずです。進化というのは誰かが疑問に思うことから始まります。その進化の第一歩をぜひ踏み出してくれるよう期待しています。

 (きど・ひろゆき)1981年東海大学工学部動力機械工学科卒、三信建設工業入社。東京第一事業部主任、同課長、同部長代理、同部長、東京第三事業部長、東京支店副支店長、執行役員東京支店長などを経て、16年現職。富山県出身、58歳。

新人研修後に初めて配属された現場で

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