2016年8月1日月曜日

【あいつが帰ってきてくれた】建設業の心温まる物語・8-太田建設(山形県)・黒沢貢

 私は高校の土木工学科を卒業しました。その後24年間、土木工事一筋で仕事をしてきました。

 そんなある日のこと、初めて工事を担当してもらう協力業者さんが現場にやって来ました。その協力業者の若い作業員の一人が、なぜか気になっていました。

 その作業員さんは体格が良く、笑うと目が細くなる愛嬌(あいきょう)のある顔をしていました。不思議に思いながらも、しばらく一緒に仕事をしていてようやく気づきました。体格と細い目が16年前に若くして亡くなった仲の良い高校の同級生に良く似ていたからです。かつてはその友人も私と同じ現場監督でした。

 まさかと思いながら、生まれたところやご両親の話を聞いているとなんと、その作業員さんは友人の一人息子だったことがわかりました。

 「あいつが現場に帰ってきた」

 私は「私は君のお父さんと一番の友人だったんだよ。小さいころ、よく一緒に遊んだんだ。そして同じ現場監督をしていたんだ」と話しました。息子さんも驚き、そしてとても喜んでくれました。息子さんがお父さんの後を継いで、同じ建設業界で働いていることに感動さえ覚えました。約20年ぶりに息子さんを通して友人に会えたような気がして、建設業で働いていてよかったとつくづく思いました。

 これからも友人の分までがんばって、現場監督としてよい土木建設物を作り続けようと決意しました。

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