2016年8月8日月曜日

【回転窓】職能への誇りと敬意を

近代建築の巨匠ル・コルビュジエが設計を手掛けた国内唯一の作品で、世界遺産登録が決まった「国立西洋美術館本館」(東京都台東区)。実施設計を担当したのが「日本の3大弟子」と呼ばれる坂倉準三、前川國男、吉阪隆正の建築家3人と、構造設計家の横山不学だ▼東京帝国大学を卒業した横山は日本銀行臨時建築部に勤務後、行政組織で構造設計監理に従事。戦後、戦災復興院計画局技官などを務め、1950年に日本で初めて民間の構造設計事務所を開設した▼温厚誠実な人柄もあって建築関連学協会で理事や委員などを歴任。建設に従事する者の社会的地位を確立しようと力を尽くした。構造設計図書に必ず署名・押印したのも職能への誇りと敬意の表れだろう▼磨きを掛けた技能と経験を情報として蓄積し、それに応じた適正な評価と処遇を得られるようにすることで意欲を高め、向上心へとつなげる-。現在、官民で検討中の「建設キャリアアップシステム」にはそんな思いが込められている▼日本には世界に誇れる建築が多く存在する。その建設に技術者・技能者の姿があることを忘れてはいけない。

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