2016年8月1日月曜日

【命までは取られないぞ】建設業の心温まる物語・7-高三建設(秋田県)・小松昭夫

 今から2年前、農林水産省 東北農政局の工事の担当を命じられました。地元の会社との共同企業体で行う工事です。工事金額、難しさなど、私の経験したことのないものでした。

 日々不安を感じながら関係先や協力会社の方々と打ち合わせながら工事を進めて行きました。そのうち「最後までやり遂げられるだろうか」「現場代理人として発注者から信頼されているだろうか」などと考えるようになりました。仕事の重圧で精神的に追い込まれていたある日、会社の部長に呼ばれました。そしてこう言われました。

 「現場でミスをしても、命までは取られない。君ならできると判断したから担当に任命したんだ。自信をもってやれ。そして困ったら会社にもっと頼れ。」と。

 肩の力がふっと抜けたような気がしました。「自分一人の責任でやりきらなければ」という思い上がった意識がなくなりました。その後、私、そして現場で働く人達が工事完成に近づくにつれ、自分が造り上げた物に満足感を持つことができるようになってきました。

 今思えば、当時はまったく仕事を楽しめず、工事の困難さにつぶされそうになっていました。さらには会社に言われて仕方がなくやっているんだ、という考えで毎日過ごしていたように思えます。

 「命までは取られない」は「生きているうちは楽しめ」の意味だと思います。その後の仕事では充実感を味わえるようになりました。これからは若い技術者が困っているときにはあの部長と同じ話をしてやろうと思います。

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