2016年9月14日水曜日

【施工は三井住友建設JV】越・南北高速道路建設事業パッケージJ2工事

 ◇加速する日越技術移転◇

 ベトナム高速道路公社から発注された「南北高速道路建設事業(ベンルック~ロンタイン区間)」のパッケージJ2工事は、14年10月に三井住友建設とベトナムのシエンコ4との共同企業体で着工した。J1~J3の三つの工区の中で最も進ちょく率が高く、橋脚、路盤工事とも概成している。これまで三井住友建設はベトナム企業とさまざまな形態で協業しており、今回のプロジェクトでは日本で最も一般的な両者で一体的に施工管理する共同企業体の組織体制を確保した。「ベトナム企業への技術移転が重要」という持論を展開する三井住友建設の田原一光所長。徹底した教育を実践し、ローカル企業に技術移転を図る現場を訪ねた。

 J2工事は、チャー川橋を含む約4・75キロの高架橋区間(ホーチミン市)で、他の2工区に先行して着工した。橋の形式は4~6径間連結PCスーパーT桁橋が4・44キロで、残りが3径間PC箱桁橋となっている。契約工期は32カ月だったが、「8カ月減らして24カ月で完成させるのが当初の目標でした」と田原所長。ハノイ市のタインチ工事を所長として施工した経験もあり、あえて高い目標を掲げた。共同企業体の形態については思い入れが深く、共同企業体をJVではなく、JO(ジョイント・オペレーション)と訳す田原所長。

高速道路の完成イメージ
海外でローカル企業と組むときは、言語、習慣、環境の相違などにより相互理解が進まず、「日系企業の意図が工事に反映しにくく、技術移転も難しい」と田原所長は指摘。特にJO構成企業間で施工・管理能力に差が大きい場合、工程、品質、安全の面で差が生じる可能性が高く、JOリーダーへ過度の負担が生じやすい。しかし、「それを避けていたのでは、到底技術移転は出来ない。日々のOJTからしか実際の技術を学ぶことは出来ない」(田原所長)としてこの2年間、三井住友建設とシエンコ4のスタッフは大きなストレスを抱えながらも、相互理解を図りながら正面から課題に向き合った。

 まず、最初に実践したのが朝礼での訓話だ。田原所長が作成した訓話を毎朝30分程度、ベトナム語で直接ベトナムのスタッフらに伝える。「直接話すと彼らに熱意が伝わり、結果として信頼関係が生まれます」(同)。朝礼での訓話は250話を超え、「朝礼千話集」として今でも手元に置いている。ベトナムは「日本の最新技術を導入する」ことを求めているが、それ以前に「基本的な施工技術と、それに伴うマインドの移転が必要」と田原所長は強調する。このため、英語や技術知識のテストを定期的に実施したり、作業の注意点などをまとめた小冊子を作ったりして、安全や技術に対する意識を高めた。

 「目指せシエンコ4のモデル現場」をスローガンに、実際に現場を体験したシエンコ4のダン・クワン・トアン副社長は、こうした一連の取り組みに「当社はベトナムでは一流ですが、技術力はまだ足りません。初めてJOを組んだ三井住友建設からは十分に技術移転してもらっています。外国のエンジニアに教えてもらい大変に満足しています」と2年余りを振り返る。

 田原所長は「02年からベトナムに赴任して、色々な共同企業体の形態を試しましたが、現在の姿がこのベトナムに最も合うものと確信して、徹底した教育を行ってきました。着工当初は歴史的な考え方の違いもあり双方とも苦労しましたが、今では理想的なJOの形態となっていると思います」と話す。

 工期を大幅に短縮できた原動力は、まさにこのバイタリティーあふれる現場のマネジメントだろう。

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