2016年9月26日月曜日

【建設業の心温まる物語】岸之上工務店(高知県)浜田周作さん/身寄りのない子どもたちを通して恩返し

 中山道広さんという軽天・ボード工(軽量鉄骨で、壁や天井の下地を組み、その下地にボードを張る)職人のお話です。

 中山さんとは、私が新卒で初めて配属された現場ではじめて会いました。中山さんは、その時すでに職長で、いつも若い弟子を3~4人連れて現場にさっそうと現れ、体が大きく、無口でまさに「親方」といった雰囲気の人でした。弟子もまた無口でいつも黙々と仕事をしていました。いつも昼前になると中山さんの奥さんが、弟子の分も含めて弁当を持って来ます。私は「アットホームなチームだな」と思っていました。

 ある日、中山さんが、「◯日の〇時〇〇放送のテレビ見てみてや。自分が出ちゅうき。」と言ってきました。当日テレビを見てみると、番組は身寄りの無い子供を預かる施設を支援する取組みを紹介する内容でした。そして施設を出た人に住むところと仕事を与える活動をしているのが、中山さんでした。施設を出た人は中山さんがいつも連れている弟子の人で、その人たちは中山さんの家に住み込みで暮らしているようでした。そのため中山さんの奥さんが、みんなの分の弁当を持ってきていたのです。

 翌日現場に来た中山さんに「昨日見たで、中山さんがそんな事しゅうこと知らんかった。すごいねえ」というと、「いろいろあった子供らやき、最初は全然人と会話をようせんがよ。途中でおらんなる子も結構おる。けんど、残る子はちょっとずつ変わっていくで。今は打合せにも行かせゆうろう」。「自分の家に住まわして世話したのに、夜逃げされたら嫌になりませんか」と聞くと「そんな事あんまり気にせん。自分がそこの施設出やきね。恩返しよ。」そういってニコニコしていました。


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