2016年10月3日月曜日

【回転窓】名勝負を支えた脚

以前から購入しようかどうか悩んでいる家具がある。チョウが羽を広げ飛んでいるようなフォームが名前の由来になっている柳宗理氏デザインの椅子「バタフライスツール」がそれ▼同じ形の2枚の成形合板を左右に組み合わせ、1本の金属棒で連結するシンプルな構造が特徴だ。図面に頼らず、模型を作って自分の感覚を基にデザインする柳氏の手のぬくもりを感じられる柔らかい曲線が魅力だ▼この椅子を製造する天童木工(山形県天童市)は日本でいち早く成形合板の技術を実用化し、デザイナーや建築家たちと数多くの名作家具を創造してきた。その挑戦心は脈々と受け継がれ、今では家具メーカーという枠を超えた新たなニーズや可能性に踏み込んでいる▼先日閉幕したリオ五輪で公式採用されていた卓球台の脚も天童木工の仕事である。曲げ加工した複数の成形合板を継ぎ目なく合体させ、一つの曲面体を作った。日本の職人技が感動あふれる名勝負を支えた▼全国各地に眠っている地域特有の技術や文化を掘り起こし、世界に発信する-。4年後の東京五輪に向け、そんな機運が高まってほしいものだ。

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