2016年3月31日木曜日

【新卒採用へあの手この手】建設関連各社、大学や学生との接点増やしPR

 2017年春に卒業する学生の採用に向けた会社説明会が3月1日に解禁されて1カ月。若手の獲得競争が業界を問わず過熱する中、建設関連業界でも人材確保に向けた取り組みが多様化している。大学で土木・建築を学んだ留学生や女性、工業高校の生徒などに門戸を開く企業が増えてきた。学生との接点を増やして企業のPRや採用動向を伝え、受験者を増やすところもある。自社の魅力をアピールし、どう採用につなげるか。各社がしのぎを削っている。
業界や企業の魅力をどう伝え、採用につなげるか。
若手人材の獲得競争は業界を問わず加熱している
 建設業界は、東日本大震災の復興事業や全国での防災・減災対策の増加に加え、大型インフラ整備や2020年東京五輪関連工事など需要増が見込まれる。建設関連各社の採用意欲は高いが、土木、建築を学ぶ学生は年々減少傾向にあり、学生の売り手市場になっている。

 日刊建設工業新聞社が実施したアンケートに回答したゼネコン33社が今春採用する新卒者は最大で合計3434人(15年比401人増)に上る。これまで新入社員の多くを占めていたのは、理系大学を卒業する男子学生だが、建設需要の増加による技術者不足で人材の奪い合いは高校生、留学生、女性にも広がっている。

 来春の新卒採用活動では、採用人数が今春を上回るのは16社で、うち3年続けて増加を計画しているのは、清水建設、フジタ、東急建設など9社。東洋建設は1・8倍の70人(16年比33人増)で計画している。ゼネコン以外で来春の採用人数を今春と比べて増やす(同数含む)計画なのは、▽建築設計事務所(アンケート対象19社)=6社▽建設コンサルタント(14社)=4社▽設備関連(22社)=11社▽道路舗装(8社)=4社▽建機・建機レンタル(7社)=5社▽セメント(6社)=6社▽住設(6社)=4社。各社が採用枠を広げたことで獲得競争はさらに激化している。

 採用活動で重要となるのが大学へのアプローチだ。多くの社がインターンシップの実施回数や会社説明会の機会を増やしている。

 「役員参加の自社セミナー開催」(清水建設)、「土木・建築系学部にとらわれず学内セミナーなどに積極参加し幅広い学部の学生にアプローチ」(竹中工務店)、「会社説明会と大型イベントの集中開催(3月初~4月初)」(大成建設)、「OB社員による大学研究室との交流」(山下設計)、「地方の就職活動イベントに参加」(関電工)など学生との接点をさまざま形で作っている。「学生と直接会える機会を増やす」(住友大阪セメント)など、フェース・ツー・フェースを大事にし、企業の魅力を伝える動きが目立つ。

 経団連が採用スケジュールを2年連続で変更。17年春卒業の学生は今月1日に会社説明会が始まり、面接などの選考活動が前年より2カ月繰り上がり、6月1日以降となる。これによって会社説明会の期間が3~5月の3カ月間となり、前年と比べて2カ月短縮された形だ。

 各社からは、新入社員研修や年度末の繁忙期などと時期が重なり、「短期集中で日程が多忙」などの意見が多く寄せられた。さらに「昨年度に続き企業側の足並みがそろわないのでは」「経団連外の企業が早期に囲い込みをする」などの懸念を指摘する声も上がっている。

 最近の学生は地元志向が高い傾向にあり、全国転勤のある建設産業界を敬遠しがちな面もある。公務員や他産業との人材争奪戦に打ち勝つためにも、各社が業界全体の魅力をPRしていくことが重要になりそうだ。

【回転窓】東北の思い出の一杯

とてもおいしいコーヒーに出会った。福島県南相馬市小高区で地元商工会が開いている「ひまわりカフェ」の一杯▼同地区では福島第1原発事故の影響で避難指示が続く。帰還を準備する人たちの交流の場を設けようと喫茶コーナーを始めたという。5年前の春はここに入ることすらできなかった▼すぐ近くに知人の実家がある。知人は当時、父親から「今は帰ってくるな」と言われていた。たまたま同市での取材が入り、父親の様子を見てきてほしいと頼まれた。「故郷を失わせてしまって娘に本当に申し訳ない」。被害者であるはずの彼から聞いたその言葉を今も忘れられない▼同地区では除染や復旧作業が進み、避難指示解除へ最終段階に入った。建設産業の仕事を経たからこそ今がある。東日本大震災の集中復興期間はきょうで終了。16年度から次のステージに移る▼2年ほど東北で取材をさせていただいた。被災地には依然多くの課題がある。だが、困難の中で奮闘する多くの方々の力も感じた。4月からは東京に戻って新たな取材が始まるが、10年後も20年後も、その姿を見つめ、描いていこうと思う。

【若手技術者の学舎に】茨木技術研修センターで「保全スペシャリスト」育成

劣化したRC床版を展示し、研修に役立てている
西日本高速道路会社は、昨年6月1日に開設した「茨木技術研修センター」を核に、若手技術者への技術伝承や、専門技術者の育成に力を注いでいる。大阪府茨木市の旧茨木管理事務所を改修した施設で、愛称は「I|TR(アイトレ)」。施設内には、劣化損傷した実橋梁など道路本体構造物の供試体を多数設置し、点検から診断までの実体験を通じて損傷要因の体系的理解の習得が可能な「体験型研修」を中心に行っている。

 同社やグループ会社の20~30代社員を中心とした研修施設だが、自治体からの受講生受け入れや、大学等と連携した合同研修などにも活用。親子見学会など一般にも公開している。

 全体の敷地面積は5231平方メートル。講義棟は3階建て延べ3369平方メートルで、最大約70人収容可能な講義室や資料室、設計実習室、通信設備実習室、土木実習室、施設点検実習室、通信線路実習室などが入る。

研修センターは学生らの学習の場にも活用している
屋外の立体駐車場や大型車庫には、劣化損傷した実橋梁、劣化を模擬したコンクリート供試体、大型舗装供試体などの道路本体構造物を多数設置。橋梁では、塩害等で劣化した中国自動車道の西下野橋・蓼野橋や、経年劣化した大阪府道鳥飼大橋のRC床版が展示されており、劣化メカニズムや予防保全・補修・補強の留意点などを学べる。

 また、阪神大震災で被災した宝塚高架橋・水堂高架橋の橋脚の展示や、道路橋示方書の基準変遷に応じて配筋した鉄筋供試体を用いて大規模地震時の破壊形態、鉄筋の役割などを学習できるコーナーもある。

 高速道路の総合的な研修施設として、橋梁など道路本体構造物や道路付帯施設だけでなく、通信設備やETC・料金機械設備といった道路付帯設備の模擬設備も設置。故障対応や接客対応などの実践的な研修も行う。

 竹野毅センター長は「点検・診断の高度化や効率化に加え、大規模更新等事業に向けた基準類の整備などに高い専門性が求められる。将来を担う専門技術者の養成にも力を入れていきたい」と話している。

【尾張・名古屋は城でもつ!!】竹中工務店のプロポ提案、議会や市民に報告へ

 名古屋城天守閣の木造復元を目指す名古屋市は、プロポーザルで選定した竹中工務店の提案について、4月に議会や市民に報告し、理解を深めてもらう。

 市民向けには、同18日から25日まで5会場で市民報告会を開くほか、2万人を対象としたアンケートなどを実施する。その結果を踏まえ、設計費などを盛り込んだ補正予算を6月議会に提出する考えだ。

 技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)を採用して行ったプロポーザルでは、同社と安藤ハザマが提案書を提出、27日のプレゼンテーションを経て、29日に同社が優先交渉権者に決まった。同日、第7代尾張藩主徳川宗春を模した姿の河村たかし市長が岡田正徳竹中工務店取締役副社長に審査結果通知書を手渡した。

 同社の提案は、史実に忠実な木造天守閣を復元するためのプロジェクト推進体制、工程計画、バリアフリー化、木材調達、仮設計画、復元過程の公開などが評価された。

 提案によると、現代技術を生かし、次の400年を見据えた木造天守閣を実現する。設計期間は17年12月までの21カ月。SRC造の現天守閣解体を17年6月から18年1月までに行い、18年1月から20年7月末までの31カ月で木造復元工事を進める。

 総事業費は、石垣を現状のまま維持する場合と積み直す場合、現ケーソン基礎を利用する場合と利用しない場合を想定し、438億6000万~467億1000万円と見込んだ。

 利用する木材は原則国産材とし、一部外材の使用も考える。復元過程の公開では、5階建ての素屋根内見学施設を設けて対応する。バリアフリーについては、車いす利用者用の小型エレベーターを設置し、史実に配慮する。

 会見で河村市長は「実測図があり、寸分違わない木造復元ができる」と自信を示すとともに、提案書を提出した2社に対し「短期間でよく検討してもらった」と感謝した。

2016年3月30日水曜日

【スイスイスイーっと】大林組、外壁タイルの新型検査システム開発

 大林組が建物屋上から打診検査用の機械や目視検査用のカメラを搭載したロボットをつり下げて外壁タイルの劣化度を診断する外壁検査システムの新型を開発した。

 垂直方向しか移動できなかった旧型システムを改良。左右に伸縮するアームをロボットに取り付けることで、1度に検査できる幅を最大3600ミリに拡大した。

 1時間当たり80平方メートルの検査が可能になるという。建設技能者不足を補う技術として積極的に採用を提案していく。

 旧型システムは、垂直方向にしか移動できなかったため、窓やひさしなどの障害物の下にあるタイルを検査できず、作業員が建物内に入って障害物周辺の検査を行う必要があった。

 新型システムは、検査機構がアーム上をスライドすることで3600ミリ幅のタイルの列を10秒程度で効率よく検査でき、障害物周辺もカバー。作業員の立ち入りを最小限に抑えられるため、建物使用者のセキュリティーやプライバシーの向上につながる。
 旧型システムではできなかった打診検査用機械と目視検査用のカメラを連携して同時に動作させることが可能。カメラで目地を認識し、タイル中央部を1枚ずつ高速で打診しながら自動で撮影できる。

 1日当たり最大約500平方メートルの検査が可能で、作業員による検査や旧型システムに比べ、検査にかかる時間を半分程度まで短縮できると同時に、より正確な検査結果を得られるという。

 打診検査時の打音データは、検査に並行しタイルの浮きの有無、ひび割れなどの撮影画像と共に、タイルの位置情報を付加した上で診断結果として内蔵記憶装置に保存される。

 データ処理ソフトを使い、建物の立面図上に診断結果を一覧表示できる。任意の範囲で浮きやひび割れのあるタイルの枚数を位置情報とともに一覧として出力することも可能。劣化の多い建物では、診断結果を立面図に手書きする方法に比べ、報告書の作成にかかる時間を半分に短縮できるという。

【ドーンとご紹介】近畿整備局ら、訪日外国人に大規模土木工事PR

 近畿地方整備局京都国道事務所とフジタ、西松建設が「国道9号京都西共同溝立坑設置工事」と「国道9号京都西共同溝シールド工事」を外国人旅行者にPRする大型看板を京都市右京区西大路五条交差点の立坑設置工事用仮囲いに設置した。

 工事現場から日本・関西の魅力をインバウンド(訪日外国人旅行者)に発信する「ワンダー・スポット・関西」キャンペーンの一つで、大型看板設置は今回が初めて。

 キャッチコピーや構造物の概要などを日英中韓の4カ国語で表記した。2枚設置し、いずれも縦は1・92メートル、長さは北側に設置した看板が7・2メートル、西側が4・8メートル。引き続き関西の観光地周辺の工事現場で同じコンセプトの看板を設置する考えだという。

【回転窓】もう一つの別れの場

3月の卒業シーズンも終わりだが、この時期の学校ではもう一つの別れの場がある▼転任する教師たちの離任式である。地域や学校によっては「辞校式」とも呼ぶらしい。どのような言葉で別れを告げるのか。学校や生徒たちへの思いが強い分だけ、後ろ髪を引かれる気持ちで新たな学校に移っていく先生も多かろう▼東北の工業高校で土木を教える一人の教師から、転勤を知らせるメールが届いた。この高校がある地域は東日本大震災で津波被害に遭い、被災直後から教員と生徒たちががれきの片付けや避難所での支援活動に奔走。本紙記者が初めて取材に訪れたのは、震災から3カ月後だった▼「土木の教師としてどうすればいいのかを考えなくてはいけないと分かっていても、目の前のことへの対応でどうしても思い付かない」。被災してまだ間もないにもかかわらず今後の復興のあり方を尋ねてしまい、そう本音を話していただいたのが強く印象に残る▼転任先は土木の潜水技術が学べる専門科を持つ高校という。4月の新学期はもうすぐ。これからも次代を担う技術者の教育に汗する先生にエールを贈りたい。

【その様子、まさにジッパー(チャック?)なり】NEXCO東日本、移動式防護柵の設置デモ公開

コンクリート防護策を簡単に素早く移動させるBTM
(3月29日、谷和原管理事務所内で)
東日本高速道路会社は茨城県つくばみらい市の関東支社谷和原管理事務所の敷地内で29日、欧米など海外で実績がある移動式防護柵「Road Zipper System」の設置デモンストレーションを報道関係者に公開した。高速道路の本線の車線規制を伴う工事の安全対策の一環で、同防護柵を国内で初めて実工事に試行導入する計画。4月上旬~8月上旬の導入期間中に安全性や作業効率、コストなどを検証した上で、本格適用の是非を判断する。

 今回導入する移動式防護柵は米国のLINDSAY社の保有技術。コンクリート製防護柵を、専用の防護柵切り替え用車両(BTM)で簡単、効率的に移動させることが可能。作業スピードは時速10キロ程度。工事区間や道路の混雑状況に合わせて車線規制の範囲を自在かつ安全に変えられる。コンクリート製の防護柵を専用金具で隙間なく連結するため、作業員の安全性の向上が図れる。

 初弾は常磐自動車道の「初石BOXはく落対策工事」。上り線の柏インターチェンジ(IC)~流山ICの施工区間(蓋掛け・半地下構造)のうち、約2キロを移動式防護柵で車線規制する。重交通路線での工事規制渋滞を効率よく軽減させるため、車線規制の変更は1日に3回行う。

 BTMや防護柵については東日本高速会社グループがLINDSAY社からリースを受け、現地作業も一貫して行う予定。4月上旬の試行導入を前に、谷和原管理事務所内でオペレーターの実地訓練を実施中。コンクリート製の防護柵の現地への搬入作業も順次進める。

 試行導入では現在行われているラバーコーンによる車線規制を新技術による規制に変更し、安全面や作業性などを確認。一般的なラバーコーンの設置作業には4~5人程度を配置するが、移動式防護柵ではオペレーター2人だけ。人力作業の省力化が図れるとともに、本線内に人が立ち入る作業がなくなり、安全性も格段に高まる。

 試行導入の結果を踏まえ、BTMなどの購入、リース期間の延長などを判断する方針。担当者は「大規模更新事業など、長期間、長い区間の車線規制を伴う工事で導入効果が大きくなる。将来的にはラッシュ時など交通量の増減に合わせて、上下線の車線数を弾力的に変更するような渋滞緩和策などにも活用できる」と話している。

【国内初の迎賓館、当時の姿そのままに】東京都、「延遼館」を復元へ

 東京都が浜離宮恩賜庭園(中央区)で計画している延遼館の復元方針を明らかにした。写真などの歴史資料を踏まえ、建物外観は復元し、資料の少ない内部は部分的に復元的整備を施す。20年3月末の完成に向け、6月までに基本設計を終える。

創建時の延遼館
 延遼館は1869年に国内初の迎賓館として竣工。1879年にグラント米大統領が滞在するなど、海外からの多くの賓客をもてなす際に使われたが、1889年に老朽化によって解体された。

 復元整備に当たり都は、本年度から遺構調査や史資料調査に着手。遺構調査では、建物の基礎遺構がおおむね健全な状態で残っていたことから、当時の建物の規模などを確認。建物は木造石張りの平屋で、付属棟を除く建築面積が約1340平方メートルだったことが確認された。

 この調査結果を踏まえた復元方針を決定。写真などが残る外観は当時の通り復元し、写真など視覚的な史料が残っていない内部は、文献や間取り図から当時の内装をイメージして一部を復元的に整備する。内部は正面玄関付近を「復元的整備エリア」とし、その左右に「ガイダンスエリア」と「活用エリア」を配置する。

 復元的整備エリアは、展示室とし、和風の内装とする方針。ガイダンスエリアは、一般利用向けにカフェや日本文化の学習・体験室を設ける。活用エリアはホール機能を整備。2020年東京五輪時は海外からの賓客をもてなす迎賓施設として利用し、大会後はMICE(国際的なイベント)のユニークベニューなど幅広い活用を想定している。

 現在、文化財保存計画協会が担当している基本設計は6月に完了する予定。実施設計は8月から17年3月までで、引き続き同協会と随意契約する方針。17年度に復元工事に着手し、19年3月末の完成、同4月のオープンを見込んでいる。

【やっぱりカッコイイのがいいー】新デザインの作業服、相次ぐ(作業服って別の呼び方ないかな?)


 ◇ジョンソン-45周年記念だよ◇

 ジョンソンコントロールズが日本法人創立45周年を迎えるに当たり、4月1日に作業服を14年ぶりにリニューアルする。

 新しいウェアのテーマは「スマート&プロフェッショナル」。作業服メーカーの丸十服装(大阪市大正区、西川記由社長)の協力で社内にプロジェクトチームを作り、それぞれの世代・性別ごとの要望を取り入れながらデザインや機能を決定したという。

 上着は、コーポレートカラーである青色を基調とし、同社のロゴから着想した流線形をモチーフにした左右非対称のデザインを採用。見た人に先進的でスマートな印象を与える。脇に立体裁断、背中にプリーツ加工を施し、作業性も高めた。

 女性活躍を推進するとの方針に基づき、これまでは無かった女性用の作業服も作った。今後も女性の能力開発や職場環境の改善に取り組んでいくという。


 ◇鉄建-25年ぶりに新デザイン!!◇

 鉄建が作業着のデザインを25年ぶりに一新し、4月1日に全国の作業所で着用を始める。

 伸縮性に優れた生地の採用と立体裁断による仕立てにより、動きやすさを追求。胸ポケットを幅広く深くしたり、スマートフォン用のポケットを追加したりなど機能面の充実を図った。

 手足の長さやバランスなども最前線で活躍する若手社員に合うよう細かく調整。これまでなかった女性専用のサイズも導入する。

 全社員が生き生きと活躍できるようにする職場環境改善の一環。14年11月に社内ワーキングを立ち上げ、社員の声を反映させるとともに最新の作業着事情を研究して作り込んだ。

 新しい作業着は動きやすさとデザイン性を両立させたのが特徴。伸縮性に優れた生地を立体裁断で仕立てている。カラーはズボンとブルゾンが茶系、シャツが淡いグレーを採用。夏場、グレーのシャツと茶色のズボンのツートンカラーになるのは初めて。前合わせの向きや、シルエットが男女で異なるデザインとなっている。

 ブルゾンとシャツは背中にベンチレーションを兼ねた切り替えを設け、衣服内の蒸れを防ぐ。胸ポケットは野帳(小型ノート)や電卓などが納まるよう幅広くて深い。名刺を付ける専用ループも設けた。右袖にはスマホ用のポケットを新たに追加した。ズボンはノータックでフィット性を高めたが、立体裁断で動きやすさは損なわない。ウエスト部にはシャツの裾を出にくくする滑り止め加工も施した。

 肩、ひざ、胸ポケットのタグなどにローマ字で社名を記した。社員としての誇りを持てるようなアクセントとなっている。

2016年3月29日火曜日

【回転窓】江戸のゴミ問題

時は元禄9(1696)年、弥生終わりの29日。江戸にあふれるゴミ問題で、幕府は大きな決断をしたのであった…▼江戸幕府が開かれてほぼ1世紀がたった5代将軍綱吉の時代、江戸の町は人口の急増で市中にゴミがあふれ、衛生状態も極度に悪化していたそうだ。苦慮した幕府は、江戸市中のゴミ捨て場として隅田川河口の永代島付近(現在の東京都江東区永代)に目を付け、3月29日(グレゴリオ暦4月30日)、ゴミを利用した埋め立てを許可した▼江戸でゴミ問題が深刻化し始めたのは1600年代半ばごろ。ゴミで道路を補修してはいけない、下水溝にゴミを捨ててはいけないといったお触れを出したが、社会が安定し人々の暮らしが豊かになるにつれ、ゴミ問題はますます大きくなり、埋め立てという策に行き着いた▼永代島の埋め立てはゴミの分別やリサイクルといった仕組みを生み出した。さらに1698年に架けられた永代橋。約20年後に財政難で廃止されそうになったが、町が維持補修費を全額負担する条件で存続を許された▼ゴミ処理にインフラの維持管理。結局、歴史は繰り返すということか。

【学びは一生】東京都市大学、大学院に社会人向け「社会基盤マネジ」プログラム新設

東京都市大学(三木千壽学長)は、大学院工学研究科都市工学専攻に社会人を対象とした実践的なプロジェクトマネジメントを学べる「社会基盤マネジメント」プログラムを4月に新設する。海外のインフラ工事では現場管理者に修士号保持者の配置を求めることが増えており、同大は日本の建設技術者が海外現場で活躍できるよう支援したいとしている。

 新設コースは、同大の渋谷サテライトクラス(東京都渋谷区)で授業を実施。原則月1回の土・日曜に集中的に講義を行うことで忙しい社会人が通いやすいよう配慮する。建設契約管理技術を中心に、インフラ事業に関するあらゆるマネジメント技術を体系的に学べる。

 4月に修士課程13人、博士後期課程5人が入学する。年間授業料は修士・博士とも119万円。社会人選抜の入学者は、修士50%、博士90%の授業料減免制度を利用できる。

【重さ134トンなり!!】外環道・高谷JCT工事(千葉県市川市)/巨大桁の一括架設実施

 東日本高速道路会社は、千葉県市川市で建設中の東京外かく環状道路(外環道)の高谷ジャンクション(JCT)付近で26日深夜から27日未明にかけて、国内最大級の大型クレーン(つり上げ能力1250トン)を使ったランプ橋の巨大桁の一括架設を実施した。

 施工は駒井ハルテック・高田機工JVが担当。周辺の国道357号(東京方面行き)を通行止めにするなど、安全管理の徹底を図りながら円滑に作業を進めた。

 高谷JCTでは建設中の外環道と首都高速道路湾岸線が合流する。今回の架設作業は外環道から湾岸線の東京方面に入るC1ランプ橋の建設工事の一環。

 C1ランプ橋の構造形式は鋼10径間連続細幅箱桁橋(橋長499・7メートル、幅員8・61~11・41メートル)。今回の架設箇所は国道357号の直上の区間(架設延長35メートル)で、桁の重量は134・5トン。巨大クレーンによる一括架設により、周辺交通への影響を最小限に抑えながら安全性の確保と作業の効率化を図った。

 高谷JCTと埼玉県三郷市の外環道・三郷南インターチェンジの間(全長15・5キロ、4車線)では、東日本高速会社と関東地方整備局が施工分担方式で建設事業を推進中。17年度中の開通を目指している。

【今の苦難は将来の幸福への門】建設業「命」の現場で・26/第5章・希望をつくる


 ◇子孫につなぐ恩返し◇ 

 東日本大震災が起きた日、長澤佳祐は祖母らと車で避難していた。渋滞でなかなか進まない。たくさんの人が、焦りの表情で車の脇を走り抜けていく。振り向くと、黒い固まりが-。津波だった。車ごと流された先で、皆で何とか脱出した。

続きはHPで。

『東日本大震災5年-建設業「命」の現場で』は今回で終わります。


【おめでとー】建設業スキー大会、130人出場し"雪上の技"競う

団体総合優勝した大成建設チーム
 第41回建設業スキー大会(主催・建設業スキー大会事務局、後援・日刊建設工業新聞社)が3月4~6日に長野・高峰高原の「アサマ2000パーク」で開かれた。約130人が参加し、団体総合は大成建設が優勝。2位に鹿島、3位に竹中工務店が入った。2本の合計タイムを競う個人戦の男子は大成建設の黒羽秀之介選手が優勝し連覇を達成。女子は竹中工務店の小松愛選手が初優勝し、安藤ハザマの水谷万里子選手(2位)の4連覇を阻んだ。

 □団体総合優勝した大成建設山とスキーの会・田口典生会長の話

 雪不足のシーズンで、仕事が忙しいこともあって練習不足の選手もいたが、幹事会社ということもあって一つになって頑張ってくれた。優勝を次の大会につなげ、連覇したい。

団体2位の鹿島チーム

団体3位の竹中工務店ち

個人優勝の小松選手(竹中工務店)㊧と黒羽選手(大成建設)



 □個人男子優勝・黒羽秀之介選手の話


 1本目が難しかったが思う通りに滑れた。1本目は、ポイントだと思った2カ所を滑り切ろうと挑み、2本目は特に雪が重かったが1本目のマージンを生かして確実に滑った。





 □個人女子優勝・小松愛選手の話


 雪が重くて板をコントロールしづらかった。失敗したら遅くなるので、丁寧なコース取りを心掛けた。今シーズンは、職場の理解もあって何度か練習できた。初優勝できて良かった。

2016年3月28日月曜日

【回転窓】シンギュラリティの世界

AI(人工知能)の話題が紙面をにぎわせている。囲碁で世界トップクラスの棋士を負かし、AIが創作した小説が文学賞の予選を通過した▼将棋やチェスなどではAIが人間のチャンピオンに勝ったことはあった。ただ、囲碁はルールの複雑さと棋譜の多様さから、プロ棋士を負かすには数年かかると言われていただけに、今回の勝利は技術進歩の速さを示したと言える▼AIはどこまで進化するのか。人間の知能を超え、自ら意思を持つようになるのか。技術開発と進化の主役が人間からコンピューターに移る特異点を「シンギュラリティ」という。それが2045年に来るとの説がある▼昨年6月に総務省の研究会がまとめた報告書では、45年には「人間に伍する機能を持つAIは実現されないとの認識が主だった」とある。ただ、より長期を考えると人間を超えるAIが実現し得るとも▼物理学者ホーキング博士は「完全なAIを開発できたら、それは人類の終焉を意味する」と発言している。進化したAIが人間を攻撃するのは映画の世界だけだと思うが、AIが今後どう活用されていくか、興味は尽きない。

【凜】埼玉県県土整備部本庄県土整備事務所・柴山菜摘さん

 ◇市民目線のゼネラリストに◇

 14年度の入庁から、埼玉県本庄市内を中心に県道の維持修繕や歩道整備などの設計、積算、工事監督を担当している。「市民目線で課題を解決できる土木技術のゼネラリストになりたい」との目標を胸に、日々の職務に励む。

 中小規模の道路舗装工事の測量と設計は自前で行うのが埼玉県県土整備部の基本。工事発注の時は、自分の判断が設計に反映された責任の大きさを強く実感させられる瞬間でもある。

 大雨や地震など自然災害に対する備えも、県の土木技術者の重要な責務。毎年台風シーズンが来ると、月に数回は庁内に災害対応の待機命令が出されるが、「待機を苦に感じたことはない」。災害対応の経験が浅いことの方に悔しさを覚える。

 自分の力量に対する課題は少しずつ克服していくしかない。職場の先輩や上司はもちろん、経験豊富な地元の建設会社の意見にも真剣に耳を傾け、技術者としての腕に磨きをかける。部内には、女性技術者同士が交流する機会もあり、「とても心強く感じている」。

 気持ちをリフレッシュしたい時は、休日に外へ出て体を動かすのが最近の習慣だ。今の時期ならスノーボード。スポーツに夢中になった後は、頭の中が整理され、また頑張ろうという活力が生まれてくる。

 「舗装の傷みの原因は何か、効果的な施工方法は何か」。持てる専門知識と行動力をフル動員し、きょうも現場で最善を尽くす。

 (しばやま・なつみ)

【中堅世代】それぞれの建設業・131

将来を担う職人を育てなければ
 ◇旧友の熱い思いを受け止めて◇ 

 大学卒業後、別々の道に進んだ二人。それが二十数年の時を経て、再び同じ釜の飯を食う仲間として歩んでいくとは当時、考えもしていなかった。

 中国地方出身の手嶋豊さんと関東地方出身の平井孝之さん(いずれも仮名)は、東京の大学で出会った。4年間、上下関係の厳しい応援団に籍を置き、苦楽を共にした。卒業後、業種は異なるが、どちらも世間的には名の知れた大手メーカーに就職した。

 手嶋さんは、やがて勤めていたメーカーを退職。次の職場となる広告代理店勤務を始めていた。そして取引先の会社に足しげく通う中で受付の女性に一目ぼれし、交際、そして結婚へ…。

 交際していた時から彼女の父親が建設関係とは聞いていた。ただ、まさか経営者だとは思ってもみなかった。結婚の許しを得ようと彼女の実家に出向いた際、どこか境遇が似ている父親と意気投合。結果として、婿養子に入り、そのまま義父が経営する専門工事会社に就職することを決めた。

 経営陣の一人として仕事も任され、忙しい毎日を送っていた。ただ、手嶋さんの目には、業界の「体質」が奇異なものに映っていた。

 「高校を卒業して入ってきた若者が3年もたたずに辞めてしまう」。建設業界ではよく聞かれる話だが、何も手を打とうとしない業界に違和感を覚え、現状を何とか打開できないかと思い悩んでいた。

 「辞めていく人が後を絶たない。それなのに辞めていく人の声に耳を傾けようとしない。入職してくる人の意見も聞き入れず、頭数だけそろえようとしたって何も変わらないじゃないか」

 そう考えた手嶋さんは、社長である義父に直訴した。「男女、経歴を問わず、やる気のある人を募集して育成することに特化した子会社を作りたい」と。了解を得て、親会社に在籍するベテラン職人たちの力も借りることになった。

 独自の分析に基づく教育システムを考案し、身の丈に合った育成をスタート。着実に、しかも効率よく育てながら、周囲に目配りの効く職人になってもらう。それが結果として、一人前以上の仕事をこなす人材になる。職人の仕事に意欲があるなら、育児中の女性でも受け入れる。そのために彼女たちの意見も聞き入れ、短時間勤務など多様な働き方も取り入れるなど、「人財」を有効に利用できる体制を整えた。

 新進経営者として頭角を現し始めていた手嶋さんのことは、平井さんの耳にも届いていた。「あいつ頑張ってるな」。そんなある日、二人は久しぶりに再会した。これから本格化する経営のパートナーを探していた手嶋さんは、「一緒にやらないか」と平井さんを誘ってみた。

 平井さんは大手メーカーの子会社にいて、将来は役員の道が約束されていた。それでも生き生きとした表情で人を育てることへの思いを熱く語る手嶋さんを前に、意を決した。「決められた道を歩くのもよいが、これも悪くないのではないか」。

 当然、妻や両親からは反対された。それでも旧友の誘いに「半生を懸ける価値がある」と説得を続けた。

 平井さんは今、建設業界という新たな道を手嶋さんと共に歩んでいる。

【サークル】TAKENAKA GOLFチーム/めざせ!決勝の舞台!!

 企業に勤めるゴルフ愛好者が一堂に集う最高峰の競技会「日経カップ 企業対抗ゴルフ選手権」。竹中工務店は1994年から出場している。

 この競技会に同社の代表として出場し、結果を残すという「志」を継承していこうと、メンバーが集まり発足したのがこの同好会だ。現在は、営業部門などの内勤者や作業所に配属されている従業員など約25人が在籍している。

 活動のモットーは「目指せ 決勝の舞台へ!!」。各自が自主トレで腕を磨きながら、今月初旬にはレッスンプロによる研修会も開催。3~6月の第2土曜日に社内予選会が開かれ、成績(スコア他ポイント制)の「上位4人+補欠2人」の出場選手を選定する。

 最近は若者のゴルフ離れもあり、「メンバー勧誘」も重要な活動の一つ。代表を務める山之内忍さん(北関東作業所長)は、「『ゴルフ愛好家』は社内にも多くいますが、『競技会』という壁があり、メンバーの勧誘に苦労しています」と話す。

 まずは社内の交流の場として参加してもらうことで、「企業同士が競い合うメンバーの一員であるという『誇り』を伝承できればと考えます」と山之内さん。仲間を増やし、活動の輪を広げるとともに、企業の代表としての「誇り」と「志」も受け継がれていく。

【駆け出しのころ】東鉄工業常務執行役員・須賀克巳氏

 ◇緻密な計画と思い切った実行を◇

 大学3年の夏、就業体験でお世話になったのが、当社高崎支店の現場でした。いろいろと親切にしてもらい、現場が和気あいあいとしていてとても居心地が良かったんです。就業体験の期間が終わってからも遊びに行きましたし、できればこの会社に入りたいと思っていました。

 そうして入社でき、現場デビューは横浜の保土ケ谷駅改良工事でした。横須賀線と東海道線を別線にすることを目的にした工事です。先輩に付いていくだけでなく、職人さんと一緒に仕事しながらいろいろなことを覚えていきました。最初は職人さんから何を言われているかが分からず、よく手帳に書き留めては先輩に聞いていたものです。それと土木というのは昼の作業で、太陽の下で汗をかきながら仕事をするというイメージでしたが、夜間作業の多さには正直驚きました。

 日中もホームの点検や測量をやっていたのですが、最初のころはホーム上で若い女性の前に座って仕事するのが非常に恥ずかしかったのを思い出します。私も若かったので意識していたのでしょうが、2、3カ月すると何も気にならなくなっていました。この現場では、今で言うPDCAをしっかりと身に付けることができました。

 次に担当したのは千葉駅の改良工事です。最初の現場は仮設工事が多く、東北新幹線の現場などで構造物を造っている同期の話を聞くたびにうらやましく感じていました。次はそういう現場に行きたいと言っていたので、それを聞いていた上司が千葉駅改良工事の担当となるよう手配してくれたのだと思います。

 ここでは駅部の高架化工事を担当でき、同僚と測量を間違えないよう毎日必死でした。竣工検査の日は雪で、検査が終わってから雪の上を皆ではしゃぎ回った思い出があります。それほどうれしく、達成感もありました。

 これまでの現場経験を振り返ると、以前の現場は個人の裁量でそれぞれ仕事を進めていく傾向が強かったと思います。今はチーム力や組織力を求められる時代です。従って、すべての関係者間のコミュニケーションを良くし、個々の現場が最適な状態で工事に入っていく環境づくりが大切です。土木は自然が相手の仕事でもあり、個人よりもチームとしての総合力を生かした方が、想定外のことやさまざまな変化に迅速に対応できます。後輩たちにはぜひこうした環境づくりをしてほしいと考えます。

 また現場は事前にいろんな角度から緻密に計画を立てることも必要です。そして施工する時はそれを信じて思い切って実行し、施工段階の適度な緊張を楽しむとともに、完成時の達成感と喜びをぜひ味わってほしいと思います。

学生時代の就業体験がきっかけで入社を決めた
(新入社員当時に現場事務所で)
(すが・かつみ)1977年東洋大工学部土木科卒、東鉄工業入社。土木本部土木部長、東鉄メンテナンス工事社長、東鉄工業執行役員千葉支店長、高崎支店長などを経て、2103年常務執行役員東京土木支店御茶ノ水防災JV工事所統括所長(現職)。群馬県出身、62歳。

2016年3月25日金曜日

【いよいよだね】北海道新幹線・新青森~新函館北斗間、3月26日開業!!

あす3月26日に北海道で待望の新幹線が開通する。開通するのは北海道新幹線新青森~札幌区間のうち、新青森~新函館・北斗の約149km区間。整備計画の決定から40年以上の年月を経て、ついに新幹線が本州から北海道に到達する。


 北海道新幹線は東北新幹線の新青森駅と札幌駅を結ぶ延長約360kmの鉄道路線で、総事業費2兆2200億円を投入する北海道の一大プロジェクト。JR東日本やJR北海道の試算によると、開業により新函館北斗~青森間の所要時間が2時間から1時間に短縮される。



北海道新幹線の車両 ⓒJR北海道
東京駅までの所要時間も、5時間30分から4時間に短縮。また、新函館北斗~札幌間が開業すればこれまでの3分の1の1時間となり、道外からだけでなく道内の交通利便性も格段に向上する見込みだ。

奥津軽いまべつ駅
北海道新幹線の開通は青森県と道南部分に挟まれる「青函地域」での人やモノの交流を活発化させ、新しい経済圏を生み出すとの見方もあり、経済波及効果にも期待がかかる。

新函館駅北斗駅
15年1月には、残りの区間である新函館・北斗~札幌間の開業を当初の計画より5年早い30年度とすることが決定した。同区間では延長約2.6kmの渡島トンネルを含む10本のトンネルを整備する計画で、1日も早い開業に向けて工事が進行中だ。函館と札幌という北海道の二大都市を結ぶ新幹線が開業すれば、さらなる経済的な効果が期待される。

【ストックマネジメントのあるべき姿とは】東京都市大学・三木千壽学長に聞く

 全国には約70万の橋梁と1万のトンネルが存在する。このうち、2013年度に橋梁は20%、トンネルは18%が建設後50年を経過し、2023年にはそれぞれ43%、34%まで高まると予想される。工学博士で東京都市大学学長の三木千壽氏はインフラストックの現状を人間に例え、成人期での「生活習慣病」の状態だと指摘する。不具合箇所を発見しきちんと処置すれば、今後も長く使い続けることが出来ると話す。

 ◇適切に修繕すれば100年持つ◇

 ――高度成長経済期に整備された道路インフラの早急な老朽化対策が求められます。

 「私は、1950~60年代に完成した道路インフラが、手を加えても回復不可能なほどの老朽化状態にあるとは思いません。人間の身体でたとえると、高齢期ではなく成人期の働き盛りではないでしょうか。確かに、この時期に建てられた構造物は、所々で亀裂、腐食などいわゆる経年劣化が発生していますが、それらは局部的であり、しかも限られた構造物です。老いによって病気を患ったのではなく、働き盛りの成人がストレスや不摂生な生活がたたり生活習慣病になったと考えれば分かりやすいです」

 「最近のインフラ50年寿命説は、1968年に大蔵省から出された『減価償却期間』に基づいたものであり、なぜか建設から50年が経つ構造物はいつ崩れ落ちても不思議ではないとの認識が広がりましたが、それは誤った認識です。1960年代の土木技術はたった半世紀で壊れてしまうものしか造れなかったのでしょうか。当時から日本の技術は優れていました。世界的に見て、50年を老朽化の基準としている国は珍しく、多くは100年に設定しています」

 「米国・ニューヨーク市にあるブルックリン橋は1883年の竣工ですが、現在も幹線道路として重宝されています。英国・ロンドン市内には、建設後200年を超す橋梁が数多く残されています。適切に修繕すれば、長く使い続けられる好例です。ただし、当時は認識されていなかった鋼構造物の疲労やコンクリート構造物の材質劣化、設計地震動が低かったことなどの課題に対応することは必須です」

 ――道路インフラを長く使い続けるために重要なことは。

 「不具合が見つかった場合は、その原因を正しく分析し適切な対処をすることです。成人が病院で高血圧だと診断されても、投薬などの処置を適正に行えば健康な生活を送れるように、道路インフラも工事が終わってから年数が経ったとしても、きちんと管理すれば100年間は維持できます」

 「修繕の技術に関しては、十分なレベルに達しているでしょう。今後は、点検・診断の精度向上が課題です。チェックがいい加減ならば、正しい手直しが出来ず品質の劣化はどんどん進みます。民間企業は、この分野が新築工事と比べて利益率が低いと言って敬遠しがちですが、それは修繕の部分にしか目が向いていないからです」

 「メンテナンス事業で採算を合わせるには、点検・診断技術を磨いて稼ぐ仕組みを確立することです。損傷が早期に発見され適切な診断がされることにより、メンテナンスにかかる費用は激減すると思います。修繕などの工事費用だけではもうけが少なくても、点検・診断も含めて利益を上げる仕組みを考えるべきでしょう。プラントやエレベーターなどの業界のビジネスモデルは参考になります」

 ◇点検技術者は数ではなく質を◇

 ――点検・診断のレベルを上げるにはどうすれば良いですか。

 「府省横断で研究開発するために政府の総合科学技術会議が司令塔になって予算を配分する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、新しい技術が次々と生まれてくると思います。しかし、基本は接近目視です。実物を目で見て、手で触って状態を確かめることが最も信頼できる方法です。優秀な点検技術者の育成が急務です。現在、ロボットやドローンを活用しようとする動きが出ていますが、接近目視と同レベルの点検が可能であることが実装の条件でしょう。橋梁のほとんどの場所には接近が可能です」

 ――道路インフラの点検作業を担う人材の確保も大切です。

 「企業は、全国で道路インフラの点検作業が増えることを見越し、道路橋分野については、全国で数万人の点検技術者を確保したいと訴えていますが、数ではなく質が大事だと考えます。全体で500人程度の高いスキルを持つ人材がいればよいでしょう。全国で2メートル以上の橋は約70万橋、15メートル以上の橋は約17万橋あります。短い橋は点検する箇所が余りありませんので、構造的な性能をチェックするための定期的な検査が必要な橋の数は全国で約20万橋程度でしょう」

 「知人の医師から聞いた話ですが、外科手術は一週間に2~3件しなければ腕が落ちるそうです。特定の手術を200例程度経験して初めて専門医と呼ばれるそうです。点検技術者も同じで、いろんな症例を見ることで知見を深めて、優秀な人材に育っていくのです。一人前になるためには、最低でも年間50橋は見ないと無理ではないでしょうか。人数が多ければ、多くの橋梁を診断する機会が奪われる上、仕事量が少ない人も出てきます。やみくもに人数を集めなくてもよいのです。これは橋以外の分野でも同様です」

 「個人的には、新しい橋の建設よりメンテナンスのほうがはるかに面白いと思っていますが、メンテナンスの仕事は新築工事に比べて仕事の面白さが少々欠けると考える人は多いかも知れません。そのためにも、待遇を良くすることは大切です。ほかの業種よりも処遇を良くすれば優秀な人材が入職を希望するようになります」

 ――メンテナンスを強化することで、住民の安全を確保することが大切ですね。

 「道路インフラのオーナーは、国や自治体ではなく税金を納めている住民です。行政側は、道路の管理区分をとても気にしますが、住民は道路を歩いたり、車で走ったりする時にそこが直轄国道なのか、県道なのかは気にしません。中央自動車道・笹子トンネル天井板落下事故(2012年12月)を受けて改正された道路法では、すべての道路構造物に対して適切なメンテナンスの実施が義務化されました。そこではすべての道路構造物の安全性のレベルを同一にするために、地方自治体が技術的に難しい場合には国が代行できるシステムも設定されました。また、点検報告書は見える化され国が調査できるようにもなりました。いい加減な点検やその報告書の作成は出来なくなるでしょう。不具合を見逃し、悲しい事故が起こらないように、行政と企業の双方は責任を持って維持管理に取り組むことが責務です」。

【みんなに優しい神社に】水天宮社殿・社務所建替(東京都中央区)が完了

伝統木造様式の新社殿
2018年に江戸鎮座200年を迎える水天宮(東京都中央区)。記念事業として行っていた社殿・社務所の建て替えが無事完了した。妊婦や子どもが多く参詣することもあり、安全を最優先して境内全体を免震化。緩やかなスロープの動線、広い待合室など快適な空間が生まれた。4月8日から新社殿に参詣者を迎え入れる。

 ◇現代に生きる伝統をデザイン◇

 安産や子授けなどで知られる水天宮(中央区日本橋蛎殻町2の4の1)には、妊婦やその家族の参詣者が多く、特に戌(いぬ)の日には安産祈願に訪れる大勢の人たちでにぎわう。敷地面積は約2400平方メートル。建物はRC造(基礎免震)地下1階地上6階(塔屋1階)建て延べ約5000平方メートルの規模で、社殿や待合い、参集殿と異なる用途を併せ持つ。設計・施工は竹中工務店が担当。14年1月に着工し、16年2月に竣工を迎えた。有馬頼央宮司は「より優しく、より安全な神社を造り上げた」と話す。

 設計を担当した水野吉樹氏(設計部設計第5部長)は「参詣者のために環境改善や震災対策に重きを置き、より優しく安全な神社を目指す計画とした。地域に歴史を刻む新たなランドマークとして品格を備え、現代に生きる伝統をデザインした」と設計テーマを語る。高い安全性を持たせるため、建物や参道、外周歩廊など境内全体に基礎免震構造を採用した。参詣者が一歩境内に足を踏み入れれば、大地震の時も大きな揺れから身を守ることができる。

 社殿は宮大工による伝統木造の技で造営された。工期の長い宮大工工事に早期に着手するため、社殿の下部だけ部分的に逆打ち工法を取り入れ、地下工事と地上工事を同時進行した。逆打ちで免震装置を効率的に施工する「プレートスプリット工法」を開発。免震装置の取り付けプレートを分割し、構真柱(こうしんちゅう)(鉛直荷重を支える柱)に取り付けることで施工性が向上した。

 作業所長を務めた中江滋氏は「通常の工法だと2年半の工期が必要になる」と指摘した上で、「部分逆打ち工法とプレートスプリット工法の併用により全体工期を6カ月短縮し、2年の工期を実現できた」と胸をなで下ろす。水野氏も「伝統建築は宮大工と共に造りながら考える。設計・施工によって社殿の造営に十分な時間をかけることができた」と振り返る。

 境内全体の免震化で大地震時の揺れが低減されるメリットを生かし、一般のコンクリート柱より細い「高強度八角形スリム柱」を開発・採用した。超高強度コンクリートと特殊なポリプロピレン繊維を組み合わせ、高い構造性能と優れた耐火性能を両立させた。外径270ミリの正八角形断面のコンクリート柱で、表面は杉板の模様を転写した「杉板本実打ち放し仕上げ」となっている。

 伝統木造様式の社殿は日本の神社の神聖な象徴性を放ち、その背景として待合いや参集殿を現代的に表現。社殿の木造のプロポーションに調和するよう、待合いにはスリムな八角形柱が並ぶ。「細さと木目とがRC造の建物の中にいても、木造の神社建築を感じられる空間を創出した」(水野氏)。

 ◇より優しく、安全な神社に◇

 分かりやすく、少しでも快適に参詣してもらえるように動線を計画。外周歩廊から2階の境内まではゆったりとした階段、広い待合室から社殿へは緩やかなスロープとなっている。待合いと社殿とを半層ずらすことで、各階が立体的に重なり合う空間となり、厳かな中にも楽しく回遊できるのも特徴の一つだ。

 約100人が座って待てる参詣者待合い(2階)、同じく約100人分の家族用待合い(3階)を用意。長い廊下を設けることで、できるだけ多くの参詣者が快適に室内に滞在できるようにした。さらに拝殿は旧社殿の約1・5倍のスペースを確保し、多くの人が一度に祈願ができるようになった。

 戌の日、祝日、平日で大きく変動する参詣者数に対応するため、空調や雨水利用水槽の使用量を制御する工夫も取り入れた。利用者の快適性の向上とともに、建物全体での省エネ化を図る計画にもなっている。

【回転窓】次は政治が応える番

大家に誘われて花見に出掛けた貧乏長屋の面々が飲まされたのは番茶を水で割った「お茶け」、肴はかまぼこと卵焼きに見立てた大根の漬物とたくあん。「蒲鉾はボリボリ、卵焼きはバリバリかい」。落語「長屋の花見」の一場面である▼桜の開花の便りが届き始め、お花見シーズン到来だが、庶民の懐具合はいまひとつのようだ。今春闘の交渉では、賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)を昨年より小幅にする企業が目立っている▼企業の慎重姿勢の背景には、円高や株安の進行など経済の先行き不透明感がある。日本商工会議所の三村明夫会頭は、与党幹部による賃上げ要請に「中小企業が賃上げや設備投資を行える条件を整えてほしい」と答えたという▼ゼネコンの中には「経済の好循環の維持に寄与することは企業の社会的使命」とベアを決めたところもあるが、建設業界も決して先行きが安心とは言い切れない▼23日の国会で安倍晋三首相は、大手企業の相次ぐ慎重回答に「もう少し期待をしていた」と不満を漏らしたそうだが、無為無策では仕方あるまい。次は企業の努力に政治が応える番だろう。

【最後はみんなでハイ、ポーズ】設計事務所スノーフェスタに13社・114人出場


 建築設計事務所に所属するスキー・スノーボード愛好家たちが日ごろの練習の成果を競う第28回「設計事務所スノーフェスタin信州菅平高原パインピークスキー場」(全日本設計事務所スキー会主催、日刊建設工業新聞社など協賛)が2月27、28の両日、長野県上田市の信州菅平高原パインピークスキー場で開かれた。

 13社から114人が出場し、種目ごとにタイムを競い合った。団体総合優勝は日本設計。個人戦男子はスキーが伊藤雅人さん(日建設計)、スノーボードが竹重剛毅さん(梓設計)、女子はスキーが山口茜さん(構造デザインK&S)、スノーボードが新宮一美さん(梓設計)がそれぞれ優勝した。

2016年3月24日木曜日

【回転窓】ウイルスに負けるな!

さまざまなウイルスによって引き起こされる感染症が全国的・世界的に大流行するパンデミック(感染爆発)。ウイルスに対抗する免疫を体内に持たず、感染すると爆発的に広がる。健康だけでなく社会や経済にも甚大な被害をもたらす恐れも▼過去にはペストやコレラなどの感染症が世界的に広がった。パンデミックを抑えるため、各地で衛生環境の改善や新薬開発などが進展。事前のワクチン接種で感染を予防する対策も講じられるようになった▼一つのウイルスを押さえ込んでも、新たなウイルスが人類に脅威をもたらす。近年ではアフリカを中心にエボラウイルスが拡散し、多くの死者を出した。効果的なワクチンなど有効な治療法が確立されておらず、死亡率の高いウイルスとして世界を震かんさせたことは記憶に新しい▼日本ではインフルエンザが流行中。3月に入ってからの患者数は過去10年で最も多い状況という。ピークは越えたとされるが引き続き注意が必要だ▼卒業式や入学式、入社式など人生の節目のイベントが相次ぐ季節。ウイルスに負けず、新たな門出を祝えるように体調管理には万全を。

【日本の技術を米国に】清水建設ら、米国でZEB実証試験

実証運転を開始した米ニューヨーク州立工科大のビル
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、清水建設、シミズ・ノース・アメリカの3者は23日、ニューヨーク州立工科大学と共同で、同大学構内のビルに日本の省エネルギー・創エネルギー技術を導入し、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の実現に向けた実証試験を開始したと発表した。標準的なビルと比較して消費電力の半減を目指す。

続きはHP

【106作品の頂点は…】デザイン女子NO.1決定戦、名古屋で公開審査

 全国の建築・デザイン系の女子学生を対象とした卒業設計・製作の公募コンペティション「デザイン女子NO.1決定戦2016NAGOYA」が22、23の両日、名古屋市昭和区のサーウィンストンホテルで開かれた。

 22日は2次審査を通過した8作品の公開審査が行われ、大内真理奈さん(東京工業大学、写真中央)の作品「木のまちの輪廻」がデザイン女子ナンバーワンに選ばれた。

 建築や都市、インテリア、プロダクトなど空間に関するデザインについて、「女子」という視点とキーワードを介して議論することで、建築業界やデザイン業界に新たなムーブメントを起こし情報を発信することを目的に企画された。同決定戦実行委員会事務局(椙山女学園大学)が主催し、総合資格学院らが特別協賛している。

 5回目を迎える今回は全国から106作品の応募があった。公開審査では、1次審査を通過した47作品の中から選ばれた8人のファイナリストによるプレゼンテーション、審査委員との質疑応答が行われた。

 審査は永山祐子氏(永山祐子建築設計、審査委員長)、岡田栄造氏(京都工芸繊維大学大学院准教授)、岩月美穂氏(studio velocity)、馬渕晃氏(AKIRA MABUCHI DESIGEN)、村上心氏(椙山女学園大学大学院教授)が務めた。

 デザイン女子ナンバーツーは菅沼結衣さん(椙山女学園大学)の「記憶の継承-豊川海軍工廠跡地再生計画-」、ナンバースリーは長谷川友美さんの「まちなかこども園-地方都市再生に向けた地域貢献施設-」が選ばれた。

 表彰式では上位3人には表彰状と副賞、入賞を逃したファイナリストにも特別賞が贈られた。総合資格学院の竹谷繁愛知県統括支店長は「建築、インテリア業界は人材が不足し、業界で女性が活躍するチャンスは広がっている。われわれは資格取得の面で支援を行っており、活躍を後押ししていきたい」と述べた。

【KeyPerson】オフィスヨーコー社長・盛貞陽子さん

◇現場のお手伝いをしたい◇

 息子さんの高校入学をきっかけに少しでも家計の足しになればと始めたのが、PR紙を作成する仕事。得意のデザイン力を生かし、国土交通省中国地方整備局からイメージアップのパンフレット作成業務を任されたのが初めての受注だった。

 「二十数年前のことで、41歳の時でした。当時、建設業界は3K(きつい、汚い、危険)職場と呼ばれ、業界全体でイメージアップに取り組んでいました。現場にも顔を出し、イメージアップ予算があると『私に任せてください。良い提案をします』と言って一人で営業していた」

 無理せず少しずつ仕事を増やし、売り上げは順調に拡大。数年後には法人化した。大学生のアルバイトを使いながら冊子や看板などを製作。さらには安全祈願祭や貫通式、定礎式、開通式など、現場で行われるさまざまな行事のプロデュースも手掛けるようになった。

 「現場に出入りしていると、いろいろなことを相談されます。式典関係の手配業務もその一つでした。その仕事で得た利益で特殊な印刷機械や開通式の機材などを買い込み、すべて自社で用意できるようにした」

 広島県三原市にある本社事務所には式典関係の機材が山積みになっている。今では現場作業服の製作も手掛ける。「少数枚の注文でも安価にできるように息子が中国で縫製などの管理業務をしています。デザインは私がやることもあります」。

 5年前に義父の看病のため、会社を2人の息子に任せた。ただ、今も時間があればなじみの現場所長に声を掛ける。「現場が好き。これからも現場のためになることがあればお手伝いしていきたい」。

 (もりさだ・ようこ)

2016年3月23日水曜日

【次期会長内定】土木学会の17年度会長に大石久和氏

土木学会の第105代会長に、元国土交通技監で国土技術研究センター国土政策研究所長の大石久和氏が就任することが内定した。

 第104代会長となる16年度の鹿島の田代民治代表取締役兼副社長執行役員の後を引き継ぎ、17年度の会長となる。6月10日開催予定の総会で正式決定する。

 大石 久和 氏(おおいし・ひさかず)70年京大大学院修了、建設省(現国土交通省)入省。国交省道路局長を経て02年に技監。04年7月に退任し、国土技術研究センター理事長に就任。13年から国土技術研究センター国土政策研究所長。兵庫県出身、70歳。

【回転窓】迷った分だけ強く

自分で決めたこととはいえ、実行を前になかなか踏ん切りをつけられなかったという経験は誰にもあろう。建築家の宮本忠長氏も大いに迷ったことがあると、かつて本紙記者に語ってくれた▼佐藤武夫設計事務所(現佐藤総合計画)で師事した佐藤武夫から「ここで15年頑張れ」と言われていたが、13年目に独立。郷里の長野へ帰る日に東京・新宿での送別会に出て一人で電車に乗るも、気持ちの整理がつかず、途中の駅で降りてまだ仲間のいる店に戻ってしまったという▼その後は信州の地に根差し、多くの功績を挙げた宮本氏が2月25日死去した。2004年、76歳の時に松本市美術館で日本芸術院賞を受賞した際、「建築家としての滞空時間の長さも評価されたのでは」と笑顔で話していたのが思い出される▼日本建築士会連合会会長の在任中には耐震偽装問題が発覚し、建築士の信頼回復に奔走。建築士会の活動を「建築人としての人間形成の場」とも話し、その輪を広げるのにひとかたならぬ思いで取り組んだ▼迷った分だけ揺らがない心を持ち続けられる。そんな大事なことを教えてくれた建築家だった。

【視線の先には】建設関連企業、海外部門の再編加速

海外建設協会がまとめた会員企業の海外受注推移。
アジアを中心に増加傾向がせんめいになっている
 建設関連各社が2020年東京五輪後を見据え、海外事業の基盤整備を進めている。国内市場が18~19年をピークに縮小するとの見方もあり、実行中の経営計画の中に「海外事業の拡大」を掲げる企業が多く、中長期的に海外事業を成長させていくため組織の再編・強化に乗りだしている。4月1日付で海外の営業部門や事業部門の組織を再編したり、拠点を設けて新たな国に進出したりするなど、ポスト五輪を視野に入れた動きが活発化してきた。

 ゼネコン各社の中期経営計画を見ると、「海外」をキーワードに打ち出す社が目立つ。政府が後押しする海外インフラ輸出案件への参画に向けた事業執行体制の構築や、五輪後に売り上げ計上できる大規模プロジェクトの受注に力を注ぐ方針だ。

 大成建設は実行中の中期経営計画(15~17年度)で、海外事業の健全な成長に向けた基盤整備を進めている。その一環として海外事業の営業強化を図るため、営業総本部内に「国際営業本部」と「国際営業担当統括部」を4月1日付で新設する。国際支店の営業部を本社組織に移管。国内と海外の営業連携をより活発化させ、全社一丸で営業活動を推進する体制を整える考えだ。



 4月に3カ年の中期経営計画が始動するフジタは、これまでの成長戦略を踏襲し、建築、土木、海外のコア事業をさらに強化する方針を打ち出す。

 海外は、豊富な実績を持つ中国やメキシコなどを中心に日系企業の生産施設の受注に注力。新たな国での事業展開も図り、将来へ布石を打っていくため4月1日付で「タイ事業所」を新設する。

 新しい拠点を設ける動きは活発化。鉄建は2月にカンボジアの首都プノンペンに事務所を開設した。これにより同社の海外拠点は6カ国・地域となった。東南アジア地域で営業・工事のネットワークをさらに強化し、インフラ整備事業を中心に海外で安定的な受注と施工を確保したい考えだ。

 不動テトラも2月にインドネシアで事務所を開設。米国、ベトナムに続き3カ所目の拠点でアジア全域をターゲットに受注活動を積極展開していく。

 4月1日付の機構改革では、淺沼組が海外事業部に「カンボジア営業所」を新設。東洋建設は経営管理本部に「海外事業推進グループ」を設置する。ピーエス三菱は土木本部海外部を改組して「海外事業室」を置く。

 海外事業の基盤整備の一環として、外国人の人材育成に力を注ぐ社も少なくない。ナカノフドー建設は4月1日付で海外事業本部に「教育研修部」を新設する。ナカノトレーニングセンターの運営・管理業務を所管する部署で、マネジメントのできるローカルスタッフの育成に取り組んでいく。

ゼネコン以外のさまざまな建設関連業種でも海外組織の再編が進む。建築設計界では、三菱地所設計が4月1日付で「海外営業室」を新設する。

 日建設計は1月に始動した5カ年経営計画でグローバル化(海外)の強化とビジネス領域の拡大を2本柱に設定。1月に「グローバルマーケティングセンター」を新設し、本体とグループ会社で海外プロジェクトの情報を共有する体制を整えた。

 高砂熱学工業は4月1日付で国際事業本部国際経営管理部に「企画開発室」を新設。東南アジア統括部ミャンマー事務所をタイ現地法人タイタカサゴに移管し、ミャンマー支店として新たにスタートさせる。新日本空調は5カ所目の海外拠点として15年度内に「カンボジア支店」を開設する。

 JFEエンジニアリングは4月1日付で海外統括本部の戦略企画部を管理部に統合するとともにマーケティング部を新設。同時に「バンコク支店」も開設する。

 東芝エレベータは技術本部のグローバル技術企画部を改編し、「商品企画部」と「グローバル技術部」を新設。海外のニーズに的確に応える技術の開発に取り組む体制を整える。文化シヤッターは海外事業部に「営業部」を立ち上げる。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/トップ外交で海外受注支援

韓国の中堅・中小企業748社が昨年、政府のトップセールス外交経済使節団に参加して2兆ウォンを超える契約を成功させたことが分かった。全国経済人連合会など経済5団体と大韓貿易振興公社(KOTRA)が開いた「海外進出成果拡散討論会」で明らかにした。

 チュ・ヒョンファン産業通商資源部長官は、「昨年の経済使節団による一対一相談会等を通じて260件を超える契約締結を推進し、20億2600万ドルの成果を上げた」と語った。

 チュ長官はまた、△輸出とプロジェクト受注のために政策金融支援を結合した協力パッケージの提供△保健・医療、文化、教育が充実した環境に優しいスマートシティー、産業団地建設などシステム輸出での協力範囲の拡大△歴訪事前準備と後続使節団派遣など事後支援強化-の三つの政策方向を提示した。

 キム・ジェホンKOTRA社長は今後の計画について「中小企業の参加拡大のために、地方での説明会開催を拡大する」とし、「相談会参加企業の契約支援も強化していく」と語った。

CNEWS 3月16日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/リン建設副大臣が日系2社と会談

 ファン・ティー・ミ・リン建設副大臣は10日、ハノイの建設省本部で日建設計シビルの浅見秀樹社長と工業炉メーカー・宮本工業所の宮本芳樹社長と会談し、地下街開発や環境配慮型火葬場の建設について意見交換した。

 宮本社長は、同社の事業内容や日本や各国で採用されている火葬炉の最新技術を紹介した。

 同社は環境負荷の少ない日本式の火葬場をベトナムで展開することを検討している。浅見社長は、両社が日本で整備した実績のある火葬場と公園が複合した斎場公園モデルを説明した。

 リン副大臣は両社に対し、「パイロットプロジェクトの実施に向けて建設省のインフラ技術局と協力してほしい」と返答。日建設計シビルに対しては、都市部の地下街開発事業の実現に向けて前進してほしいと要望した。

セイ・ズン 3月11日)

2016年3月22日火曜日

【回転窓】被災者の思いと姿に学ぶ

 今月初めに岩手県宮古市を訪れた。内陸の盛岡と沿岸の宮古を結ぶJR山田線が運休のため、約2時間かけてバスで移動した▼地域の貴重な交通機関とあって車内はほぼ満席。隣にご婦人が座った。話を聞くと釜石市の方で、盛岡に住む娘さんに子どもが生まれ、1週間滞在した帰りとのこと。携帯電話で撮影した孫の写真を温かいまなざしで見つめていた▼ご婦人は釜石で漁業を営んでおり、東日本大震災で仕事道具や住まいなどをすべて失ったという。幸いにも家族全員無事で「私は運がいい。恵まれている」との言葉に、何も返せず、ただうなずくしかなかった。「43年前に“山から海に”嫁いだのは同級生で私だけ。冒険心旺盛なの」という明るさに救われた▼漁業の仕事もご主人と長男とで再開。今春には移転した高台の土地で新しい家が着工する。「年内に新居に移り、来年には新しい暮らしが始まる。これからだよ」。前向きな姿勢が印象に残った▼被災地の復興は道半ばとされるが、一歩ずつ着実に前進しているのも確か。復興の原動力となっている被災者一人一人の強い思いと姿に学ぶことは多い。

【働き方改革の最前線を追う】KMユナイテッド、「1・2人前」の塗装職人育成

◇社員化と週休2日で定着図る◇

 大阪市を拠点とする建築塗装の竹延(竹延信会長兼社長)の全額出資で13年1月に設立したKMユナイテッド(大阪市、竹延幸雄社長〈竹延副社長〉)が、女性活躍やダイバーシティー(人材の多様化)の取り組みを評価されて公的機関などが主催する各賞を相次ぎ受賞している。

 「商品は人」(竹延社長)と言い切る同社が就職希望者に求めるのは、前向きに仕事に取り組むこと。育児中の女性でもやる気さえあれば、短時間勤務を含めた多様な働き方を認める。

 独自の分析を踏まえて構築した教育システムによる「1・2人前」の職人育成も注目される。

 ◇生産性高め多様な働き方に◇

 2月26日に優秀賞を受賞したワーキングウーマン・パワーアップ会議(事務局・日本生産性本部)の「女性活躍パワーアップ大賞」では、経験を問わない女性の採用と躍進、工法改善による生産性向上の実現が評価された。

 3月16日に経済産業大臣賞を受賞した「新・ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)では、「男性・日雇い勤務中心の業界の常識を一から見直す職場づくり」と「徹底した教育による未経験者の早期戦力化で生産性を強化」を進めながら着実に利益を上げていると認められた。

 今年で創業66年を迎える親会社の竹延は、大手ゼネコンなどが官公庁や大手民間企業などから請け負った幅広い物件の塗装工事を下請として施工。一定規模の売り上げを確保しながら、元請志向を持って展開するタイルや防水などを含めたリフォーム・リニューアル工事などでも業容拡大と収益向上を図っている。

 竹延信会長兼社長の娘婿の竹延幸雄氏が入社した03年時点で15億円だった竹延の年商は、今期(16年8月期)で倍増の30億円に初めて到達する見通しだ。

 竹延の事業が拡大する中でKMユナイテッドを立ち上げることにしたのは、採用した若者がなかなか定着しないという業界全体の課題を実感したことがきっかけという。そうした問題を何とか打破したいという強い思いがあったが、半世紀を超える歴史を持つ竹延本体は人事制度も確立しており、250人に上る職人がそれぞれ抱くニーズをすべてかなえられるような多様な働き方を実践することは難しい。

 竹延でトップクラスの技能を持つベテラン職人の力も借りながら、やる気のある人材を少数精鋭の形で育成していくことに特化した子会社を設立することにした。職人はすべて「社員」として雇用。若者が定着するのに不可欠とされる「週休2日」を実現し、子育て中の女性に配慮した「時短勤務」も認める。この春からは社内に「キッズルーム」も開設するなど、安心して働ける環境整備に余念がない。

竹延社長㊧と桧垣副社長
竹延氏がKMユナイテッド社長としてまず試みたのは、職人の作業内容を分析することだった。そこから分かったことは、専門職種にならなくても対応可能な領域が思った以上に多いこと。職人は「10年で一人前になる」などといわれるが、すべての領域が、できるようになるまでに10年を要するわけではない。

 そこで「最初の3年間」「次の3年間」、さらに「その次の3年間」と工程を切り分け、各工程に特化した教育システムを構築することで、効率的で効果的な人材育成に取り組むことにした。工程ごとに1・2人前となるように技能を教え込んでいけば、より広い視野で効率的に施工を手掛けられる人材へと育っていくという考え方だ。

育成過程では、富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を利用するほか、取引のあるメーカーに教育目的で出向かせ、カタログに掲載されている商品を使った施工を覚えさせる。

 メーカーにとってみれば、ラインアップした商品を使った施工ができる職人がいることが販売増加にも寄与する。メーカーと施工者である同社の双方のニーズが合致したやり方だ。こうした取り組みが奏功し、難易度の高い案件の受注にもつながっている。

 シンナーを使った塗料を改善してほしいという女性職人の声を生かして開発した水性塗料は、施工現場の環境改善にも大きく寄与。女性活躍や多様な働き方を追求する中で、人を大切にする同社の思いにかなう商品の販売にも力を入れる。こうした同社の働き方全般のマネジメント役として、竹延氏の旧友で大手メーカーでの勤務経験もある桧垣知宏氏を副社長として3月に迎えた。

 30人の社員のうち、職人は女性7人を含めて25人。前期に1・8億円だった売上高は今期(16年6月期)4億円の見通しだ。「職人数は最大でも50人」にとどめ、年商5億円程度の業績を安定して確保できる体制を築くのが今の目標だ。