2017年1月23日月曜日

【駆け出しのころ】あおみ建設取締役専務執行役員・小寺哲郎氏

 ◇見えない仕事だからこそ自負を◇

 国土総合開発(現あおみ建設)はかつて、建設事業のほかに米企業と提携して海外の油田開発なども手掛けていました。会社には同じ大学の先輩が結構おられ、北海の油田開発に携わっている先輩のお一人からリクルートされたのが入社のきっかけでした。

 この方は英国の立派なリゾート地に自宅があり、現場で3週間働くと2週間の休みに。給与ベースも日本と比べてはるかに高く、ヘリコプターでの送り迎え付きといった夢のような暮らしぶりでした。

 自分もそうやって世界に出たいと考え、入社したら「(赴任地は)英国がいいか、それとも他国がいいか」などと勝手に思っていました。それに当時はオイルショックのころ。石油に対する価値観は相当に高いものがありました。安定供給にはいつまでも中東だけに頼ってはいられず、米国の資本とは言いながら独自の開発で供給体制を整えるのは大変によいことだと考えていました。

 ところがこのころ、会社は油田開発からそろそろ撤退する時期にあったようです。入社と同時に、それまで思い描いていたことはまさに夢の話に終わりました。

 最初に配属されたのは、東京湾の地盤改良現場です。会社が初めて建造したサンドコンパクション船を使った地盤改良工事で、試験施工の成果を確認した上で本工事が行われることになっていました。これがなかなか合格せず、試行錯誤しながらの試験施工は1年に及びました。

 ようやく試験施工がうまくいき、3カ月間ぐらいの本工事を行った後、今度は大阪で地盤改良工事を担当することになります。入社2年目の若手でしたが、現場の誰も経験していない地盤改良工法のノウハウを知っていたため、周りからは頼りにしていただき、楽しく面白い時期でもありました。作業所長にも重宝がられ、最後に「ご苦労だった」と言ってお小遣いも頂きました。

 現場での仕事は入社から20年以上にわたり、地盤改良工事をはじめ岸壁工事や浚渫、橋の架け替え工事などを手掛けました。東北に勤務した時期も長く、現在は地盤改良事業と海外事業、技術開発を担当しています。

 地盤改良は土の中の見えない仕事です。この基礎が駄目なら、上に造る物もすべてがうまくいきません。ですから、自分たちの仕事で物ができるんだという自負を持つことと、「絶対にうそをついてはいけない」ということを徹底的にたたき込まれてきました。

 新しい技術に対する投資を回収するのは厳しいことではありますが、チャレンジすることが技術革新につながっていくのだと思います。誰かがやらないと誰もやりません。

 (こでら・てつろう)1976年東海大海洋学部海洋工学科卒、国土総合開発(77年国土総合建設に改称、現あおみ建設)入社。執行役員地盤改良事業部長、取締役常務執行役員土木本部副本部長兼地盤改良事業部長、土木本部長などを経て、2012年から現職。東京都出身、65歳。

入社4年目の頃に作業所で同僚が撮ってくれた一枚

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