2017年1月23日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・157

多くの人にとって、家は生涯で最大の買い物
 ◇性に合う「一生一品」の家造り◇

 「建築関係の仕事をする父の背中が漠然とかっこよかった」。住宅メーカーの設計部に勤務する鏑木虎徹さん(仮名)が、建築士の道に進もうと決めたのは中学生の時だった。地元の高校を卒業後、首都圏の大学で建築を専攻し、所属ゼミの教授の推薦もあって今の会社を就職先に選んだ。

 職場では一戸建て住宅の設計を中心に手掛けている。設計の仕事は、机に向かって図面を描くことだけではない。営業担当者に同行して建築主の思いやライフプランをヒアリングし、図面に反映させていく。

 ゼロから考えるクリエーティブな仕事で、人をダイレクトに感動させることができる。同時に、自分の個性も随所にちりばめることができる。そこが性に合っていると感じている。「家は、多くの人にとって生涯で最大の買い物。『一生一品』で向き合いたい」という。

 「一生一品」は、京都の和菓子の世界で使われる言葉だ。菓子職人にとって、自分が納得のいく出来栄えの菓子を一生のうちでわずか一品しか作ることができないという菓子づくりの難しさと奥深さを表している。

 一方、この言葉には、「職人は、一生をかけて後世に残る一品を作るために精進しなくてはならないという戒めの意味も込められている」。自身の設計の仕事には後者の意味を重ね合わせている。

 東京近郊の賃貸マンションに暮らしているが、ポストに入る住宅販売やマンション分譲のチラシは隅から隅まで目を通してしまうのが癖。建築に造詣が深い俳優が、個人の自慢の家を訪ねるテレビ番組も好きで、欠かさず録画しているという。

 入社後すぐに取得した2級建築士に続き、1級建築士の試験にも2年前、ストレートで合格した。「取らないと駄目という勤務先の雰囲気に押された」と苦笑する。

 今年11月には35歳になる。1級建築士になってからは、会社での立ち位置が変わり、周りから期待を含んだ視線を感じるようになった。「職場の管理建築士の先輩が退職するタイミングも重なり、これからは自分が有資格者としてやっていく場面が多くなってくる」と意気込む。

 これからの課題の一つに挙げるのが、建設現場のマネジメントだ。工事の着工から竣工までのスケジュールを立て、そのスケジュールに沿った形で工事を進められるように監理する。

 毎日の工事の進ちょく、工事にかかる予算の管理や安全対策、品質チェックなど、業務は幅広い。実務経験を求められるため、日々の仕事をこなしながら、1級建築施工管理技士の資格を取ることを考えている。

 「今はまだ一人前とは言い難い」と謙そんするが、現在の職場で納得のいく成果を収めた後は、建築家として独立する夢を抱いている。具体的にどうしていきたいかは思案中で、自身の人生設計図の作成にも力が入る。

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