2017年1月4日水曜日

【業界展望2017】建築設計-WLB改善へ働き方改革本格化

建築設計は今年も堅調な受注環境を維持しそうだ。特に民需は好調で、都心部での大型再開発案件や老朽建物の更新需要に加え、医療、宿泊、物流などニーズが急速に高まってきている分野が中心となり、業績を下支えする見通しだ。実務がさらに繁忙になれば、マンパワーは限られているだけに、優良案件をめぐって各社の受注競争が激化することも予想される。デザインや機能性、コストなどトータルでの提案力が一層求められることになる。

 公共事業では、コストや工期の観点から設計・施工一括発注(デザインビルド)方式を採用するケースが増えつつある。危機感を募らせる各社は、設計業務の川上段階に位置するコンストラクション・マネジメント(CM)業務やプロジェクト・マネジメント(PM)業務などへの事業領域の拡大を模索しているが、本業の設計業務に忙殺されて人手が割けなかったり、兼業による設計者への負担増を懸念する声もある。

 こうした状況を踏まえ、社員のワークライフバランス(仕事と家庭の調和)の改善に乗りだす設計事務所も増えている。業務の性質上、他産業に比べて残業時間や休日出勤を一律に抑制するのは難しい。設計者個人の能力やプロジェクトの進行状況、受注状況によって業務量が異なるため、マネジメントする側の高度な業務遂行・調整能力に加え、働き方そのものに対する意識変革が必要とされる。

 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用も、業務の効率化・合理化の一翼を担うことになる。各設計事務所によってBIMの活用方法や活用度合いは異なるが、顧客と情報を共有し、意思決定を迅速に行うツールとして役立て、業務効率の改善につなげているケースも増えている。シンガポールなど建築確認申請にBIMモデルの提出を義務付ける国も出始めており、海外展開を視野に入れる設計事務所にとっては特に欠かせないツールとして、さらに活用の幅が広がりそうだ。

 働き方改革は人員採用計画にも影響を与える。DB方式の増加に伴い、ゼネコン各社が設計部門への人員採用に力を入れており、人材の確保に苦心する設計事務所も出始めている。業務体質の改善を会社の魅力の一部としてアピールすることで、計画的な新卒採用の実施につなげるとともに、既存社員の継続的な雇用の実現を目指す動きも出てきた。

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