2017年1月10日火曜日

【若手人材の定着へ各社奮闘、行政も支援】北海道で進む担い手確保・育成の取り組み

 日刊建設工業新聞社は、北海道内に本社がある建設業300社を対象に担い手の確保・育成に関するアンケートを実施した。

 回答90社うち、3年前(13年4月時点)に新卒者を1人以上採用した企業は47・8%に当たる43社、採用がゼロだったのは52・2%に当たる47社だった。

 採用した企業43社のうち、3年後(16年4月時点)の在籍状況は、定着率100%の企業が46・5%、定着率60、70、80%台がそれぞれ4・7%を占めたほかは、定着率50%以下の企業が約4割を占めた。

 こうした若手社員の離職を防ぎ、定着化を図る目的で実施している取り組み(複数回答可)では、最も多い77・8%が「就業体験(インターンシップ)を開催」と回答。次いで「現場見学会を開催」(55・6%)、「イメージアップのためのPR活動」(44・4%)と続く。これらの取り組みのうち、効果を実感できた取り組みは「インターンシップ」(47・8%)、「現場見学会」(25・6%)との回答が多かったが、一方で「どの取り組みも効果を感じられない」との回答も21・1%を占めた。

 民間企業各社が若い人材の確保・育成に知恵を絞る中、自治体などの行政機関もそれらの取り組みの支援を展開している。

アンケートで77・8%が実施していると回答したインターンシップは、実際に現場などで作業をしてもらい、仕事内容への理解を促すことに加え、入社前に抱く職場イメージと実態とのミスマッチを無くすことで離職防止に有効とされている。一方で受け入れ学生の作業着代や交通費などが企業の負担になっている一面もあった。こうした企業側の事情を背景として、昨年北海道開発局が全国の地方整備局に先駆けて試行したのが「インターンシップ支援型」工事だ。

 「インターンシップ支援型」はインターンシップにかかる費用を発注者が負担するというもの。受注者がインターンシップの実施を希望した場合、受け入れ人数や期間、作業内容、必要経費などを盛り込んだ計画書の提出を求めた後、受発注者が協議の上、共通仮設費のイメージアップ経費として作業着などの被服費、交通費、宿泊費、日当などを設計変更で計上する。大学生や高校生などが参加するインターンシップが対象となる。

 16年度は港湾・空港工事を対象に適用。今後の適用拡大などについては試行結果を見て検討する。

 北海道では昨年、人手不足に悩む道内企業がより多くの求職学生とマッチングできるよう、道外の人材に目を向けた取り組みを開始した。昨年11月に群馬県高崎市にある高崎経済大学と、東京都の中央大学の2大学とU・Iターン就職促進に関する協力連携協定を締結した。道外の大学と就職促進に関する協定を結ぶのは初めての試みだ。

具体的には、道内の求人情報を同大キャンパス内の掲示板に掲載し、学内メール、就職イベントなどでも発信する。

 学内で開かれるU・Iターン就職相談会では、道内への就職に興味がある学生に対し、道内企業の求人情報を掲載している「U・Iターンネットシステム」の紹介や相談対応を行う。道内にある多くの企業で人材不足が生じていることから、求人情報の発信先を道外の大学まで広げ、道内企業が道外の人材を確保できる機会を増やしたい考えだ。

 札幌市では、建設業での女性の就労促進や、若手人材の確保などを目的とした補助金事業「建設業人材確保・育成支援事業」の内容を16年度に拡充した。

 女性の就労促進では、女子トイレの設置に関する補助金の対象範囲を拡大した。従来の制度では、女性の技術者が従事している現場を対象に、女性用トイレか更衣室を設置する費用を1現場につき50万円を限度として補助していた。16年度からは現場が広域の場合や事務所と現場が離れているなどの理由で、2カ所のトイレを500メートル離れて設置する必要がある場合は追加設置も新たに助成対象とした。

 若手人材を確保する取り組みの支援では、インターンシップの受け入れ対象を、これまでは学生に限定していたのを、16年度からは一般就労者まで拡大。市内に本店がある建設業者などが対象で、助成金額として1社当たり10万円を支援している。

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