2017年1月10日火曜日

【IR誘致へ動き活発化】港町・横浜、臨海部開発の胎動鮮明に


 ◇IR誘致へ高まる期待◇

 横浜商工会議所(上野孝会頭)は16年5月に、カジノを含む統合型リゾートの経済波及効果や導入の可否などを調査・検討するためのIR研究会(座長・原田一之京浜急行電鉄社長)を設置。昨年11月にはその報告書をまとめた。

 報告書では施設の誘致は横浜経済の活性化に重要としたうえで、官民が連携した役割分担や民間の創意工夫を生かす柔軟な都市計画の必要性などを指摘している。

 整備スケジュールとして6年程度を想定。新法成立から3年目に事業者を選定し、4年目の中ごろにも事業区域と事業者を決定。設計と施工を経て6年目の中ごろに1期開業、終盤の全体開業を目指す計画だ。

 候補地は東神奈川臨海部周辺、横浜駅周辺、みなとみらい21地区、関内・関外、山下ふ頭周辺地区などの横浜都心臨海部。山下公園や中華街など既存観光地との相乗効果で臨海部全体の活性化・底上げにも期待している。

 IR施設の建設投資は約2500億円。これに伴う経済波及効果(生産誘発額)は3903億円、雇用創出効果(就業者数)は3・1万人と推計。施設開業後の経済活動に伴う波及効果は5595億~6710億円、雇用創出効果は6・6万~7・9万人と試算している。

 実現に向けては官民連携の重要性を指摘。国には法制度の早期整備や開発支援、横浜市にはIRへの理解醸成、回遊性向上などの交通インフラ整備、柔軟な都市計画、経済界や民間事業者には都心臨海部全体での連携強化とホスピタリティー向上、経済界としてのIR誘致推進体制の構築などを求めている。

IR誘致の有力候補地・山下ふ頭
(提供:横浜市港湾局)
横浜市も横浜商工会議所も候補地を横浜都心臨海部と広域でとらえている中で、第一候補と目されているのが山下ふ頭だ。市は15年9月に「横浜市山下ふ頭開発基本計画」を策定。山下ふ頭(中区、約47ヘクタール)に大規模集客施設やコンベンション施設、スポーツ・エンターテインメント施設などを集積させ、都心臨海部にふさわしい新たな魅力「ハーバーリゾート」の創出を図る考えだ。

 山下ふ頭地区のうち山下公園側の約13ヘクタールについては、東京五輪が開かれる2020年の一部供用を目指して先行的な事業推進を目指すとした。事業手法は公民連携を基本とし、段階的に開発。全体完成は25年ごろと想定している。

 山下ふ頭の開発では港湾荷役や倉庫事業者らでつくる横浜港運協会(藤木幸夫会長)も市が進める開発計画に事業主体として参画することなどを表明し、市に申し入れしている。移転にも積極的に協力しており臨海部開発・運営事業のプロとして、開発事業の主体を継続して担うことを主張。これを具体化するため、協会が中心となって年度内をめどに港湾関係者らによるコンソーシアムを立ち上げる方針だ。

 都心臨海部ではドーム球場の建設を目指す「横浜ドームを実現する会」(会長・池田典義アイネット会長、横浜商工会議所副会頭)も、国際都市・横浜の新たなシンボルにふさわしいドーム球場の建設実現に向けた活動を展開している。会には現在、400を超す企業や経済人らが名を連ねる。建設候補地はみなとみらい21(MM21)地区(西区)と山下ふ頭地区(中区)を想定。野球をはじめとするスポーツ、エンターテインメントなど多様なイベントが開催できる施設を提案している。

 IRの誘致・整備に向けた行政と民間の足並みはそろっているが、カジノに対する負のイメージをどう取り除くかも課題だ。林市長はギャンブル依存症や治安悪化への懸念などについて、しっかりと研究していくと説明するが、市財政の基盤強化というプラス面とギャンブル依存症などのマイナス面をどう市民に理解してもらうかがカギとなりそうだ。

 横浜市は本年8月に市長選が予定されている。野党が反カジノを掲げて共闘した場合、カジノ誘致が争点となる可能性があるとの指摘がある。林市長は3選に向けた出馬意向を明らかにしていないが、19年のラグビーワールドカップや20年の新庁舎移転など大型事業を控えていることなどから、出馬に意欲的との見方が優勢だ。IR誘致実現には8月の市長選の結果も大きく影響しそうだ。

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