2017年2月13日月曜日

【駆け出しのころ】ライト工業執行役員・高橋修氏

 ◇想定外に対する意識を持って◇

 入社してから8カ月間は吹き付け工事の現場で研修を受けました。この研修中、現場に来られた人事課の方から配属先の希望を聞かれたため、「都市土木をやってみたい」とお伝えしました。大学のゼミで研究した薬液注入に関わる仕事がしたかったこともありますが、現場関係者だけでなくもっと人のいるところで仕事がしたいというのが本音でした。

 そうして東京支社第一事業部工事部の配属となり、薬液注入工事を手掛けるようになります。最初の現場は東京都内の鉄道関連工事でした。ここでは先輩から、お客さんとの打ち合わせにいきなり一人で行くよう指示されるなど、短い期間でしたがいろいろなことを学びました。

 20代半ばになった頃のことです。いつものように現場で夜勤をしていたのですが、ボーリング工事で埋設事故を起こしてしまったことがありました。事前に埋設物の位置を確認し、さらにガイドパイプも埋めて対策を講じたものの、地中にある管の一部を損傷させてしまったのです。

 実はこの日、私の結婚式が間近に迫っていました。当然、現場を離れられる状況ではなく、女房には電話で「結婚式に出られないかもしれない」とすぐ伝えました。そうして覚悟を決めて対策に当たっていると、現場の上司が「早く戻って準備しろ」と言ってくれたのです。これでどうにか結婚式に出られたのです。元請さんや上司、先輩の方々にフォローしていただき、今でも本当に感謝しています。

 30歳を過ぎるころまでは現場で夜勤が多く、こんな思い出もあります。昼間は家にいるので娘が通う幼稚園の参観日に行くと、教室に「仕事に行くお父さん」とタイトルの付いた絵が飾られていました。娘の絵には月と星が出ている真夜中に作業着姿で家を出て行く私が描かれていたんです。子どもながらによく見ているものだと感心しつつ、何だか複雑な気持ちになったのを覚えています。

 これまで携わった現場での苦労は数え切れません。そんな数多くの経験を基に、現在は生産性向上のための新たな技術開発に取り組んでいます。地下のことは目に見えないので、当初想定したのとは異なることが起こるものです。計画の中で見えている通常のリスクに対処することに加え、現場の変化を自分の目で見て確認しながら計画にないリスクも想定することが重要です。普段からそうした意識を持っていないと、想定外のことには対応できず、また対応できても時間がかかってしまいます。

 若い人たちには、私たち専門土木のプロはこうした役目を担っているという自覚を持って頑張ってほしいと思っています。

 (施工技術本部副本部長兼R&Dセンター長、たかはし・おさむ)1987年東洋大工学部土木工学科卒、ライト工業入社。関東支社施工技術部生産第4グループ工事長、開発技術本部都市技術部地盤改良担当部地盤改良グループ長、施工技術本部地盤改良部長、同本部副本部長などを経て、16年から現職。群馬県出身、52歳。

20代のころ友人の結婚式に出席した時の一枚


 

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