2017年3月16日木曜日

【回転窓】インフラを造るということ

 地方自治体で助役を務めていた親戚に、「特に思い入れがあった仕事は」と尋ねたら、「ダム事業」という答えが返ってきた。「文句を言われたり、恨まれたりもした。でも、必要だと思ったから、一生懸命、地元を説得して回ったよ」▼そのダムはかつての集中豪雨をきっかけに計画された。反対運動や方針転換など紆余(うよ)曲折を経てようやく工事がスタート。完成が見えてきている▼地域の人たちも、危険な状況があったことを忘れているかもしれない。でも彼は荒れ狂った川の様子を鮮明に覚えている。だから何を言われても「建設すべきだ」との思いはぶれなかった。引退した今は懐かしくもあるようだが、当時はそんな余裕などなかっただろう▼先日、八ツ場ダムの定礎式が群馬県長野原町の建設現場で開かれた。苦渋の決断をした地元関係者と事業に長年取り組んできた先輩たちへの感謝の声が多くの出席者から上がっていた▼国土交通省関東地方整備局の八ツ場ダム工事事務所は開設から50年目。式典には歴代所長も9人出席していた。多くの積み重ねがあって今がある。生活を支える基盤はこうして造られている。

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