2017年3月3日金曜日

【回転窓】受け入れ国の役割

先日取材した職業訓練校で、建築大工の技能を学ぶ若者たちの中に一人の黒人男性がいた。聞けばアフリカのコンゴ出身という。既に日本国籍を取得し、日本の伝統技能を学びたいと、自らその訓練校を探し当てたそうだ▼遠い異国出身の若者が日本の技能のどこに憧れを抱いたのか。大工の下で修行を積みながら訓練校で学ぶ姿を見て、頼もしさを感じた▼建設分野に限らず、数多くの外国人技能実習生が日本にやってくる。ただ、実習を終えて母国へ帰っても、せっかく学んだ技能を生かし切れないことが多いという。習得した日本語を使ってツアーガイドに就く人もいると聞く▼理由の一つが、身に付けた技能を生かせる職が母国にないこと。これでは宝の持ち腐れといえる。技術・技能の移転と人材育成という実習制度の趣旨にも合わないだろう▼帰国前の実習生に特別な教育を施す試みが群馬県沼田市で始まった。東南アジア各国で多くの需要が見込める工事を想定し、それに対応できる知識と技能を身に付けて帰ってもらうのが目的だ。実習生が母国で活躍できる土壌をつくる。それも受け入れ国の大切な役割である。

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