2017年4月7日金曜日

【回転窓】2カ月で消えた鯰絵

地下にすむ大ナマズが暴れると地震が起きる-。こうした民間伝承を題材にした浮世絵を特に「鯰(なまず)絵」と呼ぶ▼鯰絵には多様な構図があるが、大ナマズを懲らしめる神や民衆の姿、擬人化されたナマズが民衆に怒られてぼやく姿などが描かれたものが多い。鯰絵が登場したきっかけは、1855年10月に江戸で起きた「安政の大地震」▼マグニチュード7級の直下型地震とされ、発生当日から市中の情報を伝える瓦版として鯰絵が売り出されたという。絵師が多彩な構図を競い合ったこともあり、庶民の間で急速に広まったようだ▼鯰絵は200~500種類とされる。これだけの数が出回ったにもかかわらず、刷られた期間は地震直後からわずか2カ月余と短い。以降は復興で仕事が増えた職人の姿をナマズを交えて描いたものなどが散見されるが、2カ月を境に潮が引くように消えていった▼「のど元過ぎれば…」とは災害の後によく聞かれる言葉。メディアでも、3月の東日本大震災から6年の報道を境に、情報発信が下火になったように感じる。防災・減災は日々の積み重ねが重要だ。報道する側も改めて胸に刻みたい。

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