2017年6月7日水曜日

【技能教育リポート】金沢職人大学校/地域挙げ伝統の技を継承

瓦科の学生は夜間研修でベテランから手ほどきを受ける
金沢市大和町の広大な紡績工場跡地にある金沢市民芸術村。その一角で1996年10月発足の金沢職人大学校(北浦勝理事長兼学校長)が、20年を超える活動を積み重ねている。「歴史に責任を持つ」という市の方針の下で誕生した大学校はこれまでに、本科と修復専攻科で482人の修了生を輩出。伝統的で高度な職人の技の伝承と、後継者の育成に取り組んでいる。

 本科は、石工、左官、大工、瓦、造園、畳、板金、建具、表具の9職種で展開している。ここで学ぶのは、職歴10年以上の中堅世代。各職種の組合から推薦を受けた人だけが入学を認められる。働きながら週に1回、夜間や土・日曜に行われる研修に通い、ベテラン職人から3年間にわたって伝統の技の手ほどきを受ける。現在の7期生は計45人。

 名山瓦店(石川県志賀町)で働く向田斉朗さん(35)は17年前に高校を卒業し、瓦施工の世界に飛び込んだ。大学校に通うことで「伝統的な技能の知識と手法を詳しく学ぶことができている」という。

 同じ職種で働く同世代の仲間と知り合うことができ、技能グランプリ北陸地区大会に出場するチャンスも得た。ここでしっかりとした技を身に付け、「本葺(ぶ)きにも挑戦したい」と意欲を見せる。研修では、施工に当たっての原図の描き方も習得。講師からは、全体像をイメージしながら作業に当たるようにと指導されている。

理事長兼学校長の北浦勝氏
武家文化が育まれた城下町の金沢は、非戦災都市で、伝統文化が息づく。歴代の市長が開発と保全の調和したまちづくりに取り組んでおり、市民も歴史を継承する文化政策に理解を示す。

 市が施設をつくり、公益社団法人の金沢職人大学校が指定管理者として運営に当たる大学校の学費はすべて無料。市は毎年、60百万円の予算を計上している。

 本科修了生や建築士、市の文化財関係職員などが学ぶ修復専攻科では、歴史的な建物の修復や復元の考え方など具体的な知識を身に付ける。講師には、差し金一つで木造部材の形状を描く伝統技能の「規矩術(きくじゅつ)」の第一人者である持田武夫氏などがいる。修了生には、「金沢匠の技能士」(本科)、「歴史的建造物修復士」(修復専攻科)の称号が与えられ、金沢の歴史・伝統を守っていく役割が期待される。

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