2017年7月31日月曜日

【建設産業、AIでどう変わる?】ビッグデータ時代到来で活用本格化

 1990年9月に土木学会が発刊した『AIで描く土木の未来~土木AI進化論』。第2次AIブームの中で土木分野が手を付け始めた各種のAI技術の紹介を通して、生産、品質、安全の管理や働き方が大きく変わる建設業の未来の姿を描く。AI研究の成果を建設に応用する社会的意義を示す同書の発刊から27年。建設業はどう変わり、これからどう変わっていくのか-。

 □ソフト性能が飛躍的に向上□

 1983~2007年の土木学会で発表された学術論文の中からAI関連を抽出すると、その大半は専門家や熟練技術者が持つ知識をコンピューターに取り込む「エキスパートシステム」が占める。

 同書の編集に三井建設(現三井住友建設)の社員として関わった高田知典氏(高田技術経営コンサルタント代表)は「当時のエキスパートシステムは知識処理が『もしaならばb(if a then b)』の形で表現する簡単なもので、その形式のソフトしかなく、データとネットワークもなかった」と振り返る。

 最も変わったのは「ビッグデータの時代が来たこと」と指摘する。3次元(3D)のデータが手に入るようになったことに加え、今はハードと、ディープラーニングなどAI機能を高めるソフトの性能が格段に上がった。少子高齢化の時代を見据え、「国がインフラをつくる役割の一端をAIなどのシステムに持たせる意図を持ってデータ取得の取り組みを進めてきた」と国の下支えも第3次ブームを起こした要因とみている。

 減少する技術者の業務を補う点からもAI活用が進んでいる。高田氏は「当時も最後は人間が判断するが、業務を軽減できるところはAIに代替させるという発想だった」と話す。

 □企画・計画や防災活用に課題も□

 懸念するのは計画段階での利用が少ないことだ。同書には「AIは企画、計画段階に特に効果的」という表現がある。高田氏も「環境関連の法規などは地方自治体の条例を含め膨大な数があり、計画段階への利用はやりやすかった。エキスパートシステムの論文も最初は計画、環境シミュレーションの分野の数が多かった」と振り返る。

 ただ、「工程図や工程表を書くのに1週間程度かかっていたものが30分程度でできるようになると、皆の意識が変わり、情報化施工の取り組みも加速するとオペレーターのノウハウを入れようという動きが出てきた」と生産性向上の現場意識の高まりが施工面の利用に開発が集中した理由とみる。

 土木学会は本年度、会長特別委員会を発足させ、維持管理・更新分野でのAI利用のガイドラインづくりに入る。各種センサーで取得したビッグデータの活用などに関するガイドラインや共通プラットフォームをつくるという。今は活用できるデータが共通で市販のAIソフトも豊富。他社との差別化を図りにくい。高田氏は「標準化と差別化の話をどう切り分けるかがポイント」と指針整備の課題を説明する。

 □他分野と連携した研究の視点重要□

 AI普及への課題はまだある。「技術が飛躍的に伸びるのはゼネコンが元気な時。また冬の時代が来るかもしれない。もう一つはデータを集め切れなかった場合と情報を共有化・公開できなかった場合だ」。

 ただ、研究開発の継続やデータの共有化・公開は、災害分野でAI研究が本格化すれば予算も付きやすく、進展するとみる。そのために「社会インフラをベースに多様な分野が横断的にAIを研究できれば社会のためになり、国際競争力も増す技術が実現する。AIの防災・減災への活用はこれからの世代が考えていかなくてはいけない」と主張する。

 もう一つの課題は人口減少社会でのAI活用の視点だ。

 高田氏は「都市高齢者の問題を考える時には、心地よい安全な歩道とは何かを考えないといけない。人間工学的な工夫を求められるが、ものを作ることを主体とする土木が一番弱いところで、曖昧な表現を処理するファジー理論の研究をやっていなかったところがネックになる」と指摘する。

 バリアフリー関連データは建築分野が多く保有する。AI研究での建築との融合のきっかけとして災害や高齢者の分野を挙げる。高田氏は「土木も早めにそういう方向に動けばもっとインフラ整備を安くできる。人間がどう動くかをAIを使って分析すれば最低限のもので最大の効果を生み出し、日本は本当に素晴らしい国になる」とみている。

 基礎知識から実例まで解説

 土木学会土木情報システム委員会の「人工知能小委員会」が土木に携わる若手技術者らにAIの内容を知ってもらうという趣旨で編集した入門書=写真は表紙。90年9月に土木学会から刊行された。

 3章立てで、221ページのポケットサイズ。ゼネコンが第2次AIブームで企画から計画、設計、施工、維持管理までのさまざまな分野で開発を進めたAIを応用したシステムを中心に紹介し、AIの活用で将来の建設分野が「快適で、格好良く、給料の高い3K」を実現するとうたった。

 序章に掲載した「2010年 木田家の金曜日」は、土木エンジニアの木田氏を主役にAIや各種のICTが駆使された未来の建設業の姿を物語風に描く。2017年現在、実現または実現に動いているリニアモーターカーや車の自動運行システム、観測や施工のためのロボット、1000メートル級の超高層ビルなどの多数の技術やプロジェクトが登場する。

 第1章はAIとは何かを分かりやすく解説した「AIの基礎知識」、第2章はゼネコンが開発した専門家や熟練者が持つ知識をコンピューターに取り込んだ「エキスパートシステム」の紹介と作り方、第3章は高度なAI領域に進むために必要な参考文献類、ハードとソフトを掲載した。

 今では当たり前となっている曖昧な表現を処理するファジー理論、学習によって知識を蓄積するニューロの仕組みや、エキスパートシステムとして「土地利用コンサルテーション」「都市トンネル掘削工法選定」「軟弱地盤対応基礎工法選択」「山留め施工支援」「コンクリートひび割れ原因推論」のシステムを紹介。巻末には用語集も付けている。

【回転窓】AIの進化の先には

仲間と冒険する主人公になれるコンピューターゲーム「ドラゴンクエスト」が人気を博している。1986年発売の1作目から30年超。11作目となる今年の新作も幅広い世代のファンに愛されているようだ▼90年発売の4作目にはシリーズ初のAI(人工知能)戦闘システムが登場。望んだ行動が遂行されず、はらはら、わくわくしたプレーヤーは当時少なくなかったが、仲間のキャラクターが自動でモンスターを攻撃したり、仲間を回復させる呪文を唱えたりするゲームは大きな話題になった▼AIへの関心は建設産業でも高まるばかり。社内に専門組織を設けて現場のニーズを吸い上げながら、写真から工程を判定するシステムの構築や、タワークレーンを自動化する研究開発などが進む▼AIの学習や画像認識技術の進歩は目覚ましい。自律型ロボットが現場のそこかしこで活躍する時代も遠くない-。そうした見方は、ゼネコンの研究開発担当者や学識者に広がりつつある▼本紙はきょう、AIやIoT(モノのインターネット)に着目した暑中企画特集号を発行した。革新的技術への期待と熱意が伝われば幸いである。

【楽しかったかな?】日建連、都内でけんせつ小町現場見学会開く

 日本建設業連合会(日建連)の夏休み特別企画「けんせつ小町活躍現場見学会」が27日、清水建設が東京都江東区で施工する道路トンネルの現場で行われた。

 女子小中学生15人とその保護者が参加。広い敷地内で稼働する杭打ち機やクローラクレーンなどを見学するとともに測量体験や重機の試乗も実施。仮囲いの中を初めて体感した子どもたちは「面白い仕事」「現場がきれい」などと目を輝かせていた。

 現場見学では、工事に従事するけんせつ小町が工事内容や見どころなどを分かりやすい言葉で紹介。重機について「杭打ち機の高さは約30メートルです。学校にある25メートルのプールよりも長いんですよ」などと、子どもの目線やスケール感を大切にしながら伝えた。

 測量体験コーナーでは、ハンディタイプのレーザー距離計を使って的までの距離を測定。その記録を記した「子供測量士認定証」が交付された。このほかバックホウに試乗したり、騒音計に向かって叫んでみたりなど普段は体験できない貴重な時間を過ごした。

 木工体験も行われ、子どもたちは金づちややすりなどを使って木製のキースタンドを組み立てた=写真。女性の重機オペレーターなども交えた質問時間も設けられ、「地中に作った壁は最終的にどうなるか」などといった質問にけんせつ小町たちが丁寧に答えた。

 子どもたちは「建設業のイメージが変わった」「ものを作る仕事がしたい」など、たくさんの思い出を持ち帰ったようだ。現場は東京都港湾局発注の「平成28年度南北線中防内側陸上トンネル整備工事」。清水建設・鴻池組・岩田地崎建設JVが施工を担当している。

【水害から地域を守る】六渕・瀬場両砂防堰堤(山形県庄内町)が登録有形文化財に

 山形県庄内町の立谷沢川に設置されている「六渕砂防堰堤」=写真=と「瀬場砂防堰堤」が、国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

 立谷川沿川、最上川下流域などの土砂洪水氾濫を軽減するため、建設省東北地方建設局最上川水系砂防工事事務所(当時)が、立谷沢川中流域に二つの基幹堰堤を建造した。

 六渕砂防堰堤は1952年、瀬場砂防堰堤は53年に完成。両堰堤とも水通し部分が美しい曲線を持つなど、当時の高い技術力と熟練した技で施工されており、現在では復元することが難しい貴重な施設となっている。

 六渕砂防堰堤は堤長157メートル、堤高15メートルの玉石コンクリート造で、堰堤全面に玉石を張り、上部は割石を亀甲積みした帯を表している。瀬場砂防堰堤は堤長193・3メートル、堤高6メートルの玉石コンクリート造で、副堰堤と水叩き2段を備えている。

 先人たちが土砂洪水災害を鎮めることを祈願して建立した龍神供養塔の石碑が数多く見られるのも特徴。

 今後は両堰堤を管理する東北地方整備局新庄河川事務所と、所在する庄内町が協力し、これら歴史的資源を活用した町の地域振興、地域活性化に向けてさまざまな取り組みを進めていく予定だ。

【方向性決定は9月】新国立の五輪後利用・運営、コンセッション方式導入も視野

日本スポーツ振興センター(JSC)は、28日の定例記者会見で2020年東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区ほか)の五輪後の利用・運営方法の可能性について説明した。民間活力を生かす工夫の一つとして、コンセッション(公共施設等運営権)方式が有効な手法の一つになるとの認識を示した。

 国は、五輪後の新国立競技場を球技専用として改修する案や、運営手法にコンセッション方式を導入する案などを検討中。政府の関係閣僚会議で9月に方向性が決定する見通しだ。

 JSCの幹部は「これだけの大規模施設で球技専用となれば、民間の知恵を借りなければならない」と説明。コンセッション方式の導入が決まった場合、民間事業者を把握する方法や、事業スキームなどを検討するための支援業務を年度内に委託し、来年度に本格的な市場調査を実施する考えを明らかにした。

 JSCは「まずは民間の知恵も借りて実施方針をつくる。その後、事業者公募の準備、五輪後の施設改修を経て、民間事業化という手順になる」との見通しも示した。 

 新国立競技場の建設工事で協力会社の社員が過労自殺したとされる問題については、「労働基準監督署の調査にしっかり協力する」と説明。その上で、「工事のフェーズが移れば、持ち場の状況も変化する。超過勤務が発生しないよう気を配り、必要に応じ現場の人員増などを施工者と話し合う」と対策を示した。

【凜】IHIインフラシステム堺工場製造部・中村詩織さん

 ◇チャレンジ精神忘れずに◇

 「父が土木関連の仕事をしていたことで、小さい頃からダムや橋梁などの大型構造物を見に行く機会が多かった」と振り返る。

 将来は自分でも大きな構造物を造り、人の役に立ちたいと考え、大学では土木を専攻。大学院まで進学し、研究室で橋梁構造を学んだ。就職活動の際には、勉強したことを最大限に生かせる会社に入りたいと考え、IHIインフラシステムを選んだ。

 12年4月に入社し、最初の2年間は設計部門に配属された。「その時の上司が仕事に対して大変情熱を傾ける方だった。私もその上司を見ならい、チャレンジ精神や向上心を持って仕事に打ち込もうと決めた」と話す。

 その後、生産設計部門に異動となり、非破壊検査要領書の作成や部材の運搬業務に関する資料作成などに携わってきた。今年4月には製作部門(工事計画)へと異動。工場製作担当として製作方針の取りまとめなどを行っている。

 「橋梁などを製作するにも、さまざまな方法があり、日頃、知識不足を感じることも少なくない」という。だからこそ、「さまざまな製作方法を一つ一つ学んでいくのが楽しく、成長を実感できる」とも。

 設計や加工、製作などさまざまな仕事を経験したいと思っている。「さらに知識を深め、幅広い分野で活躍していきたい」と笑顔を見せる。

 (生産情報課、なかむら・しおり)

【建設業の心温まる物語】ニッカホーム福岡・岡本勝宣さん(福岡県)

 ◇しっかり確実に掘れているから頑張れ◇

 私の実家は祖父の代から続く水道工事業です。そんな家に産まれ育った私は幼い頃から「大きくなったら一緒に水道屋の仕事をするんだぞ」という父の魔法の言葉により、大きくなったら父親と一緒に仕事をするものだと思い込んでいました。そして月日は流れ見事に兄も私も水道屋になりました。

 学校を卒業してから現場ではスコップしか持たせてもらえず、約1年間は毎日毎日穴掘りの日々。父からは「水道屋は穴掘りが基本だ! あとから配管する人のことを考えながら掘ればいい堀山になる」と言われる毎日でした。それがすごく大変で嫌でした。

 早く配管工事や器具の取付けをしたいと思い、モンキーレンチやパイプレンチを勝手に触ると、父から怒られました。「職人は目で見て盗め」が父の口癖で、特別何かを教わった記憶がありません。

 そんなある日、現場で父と2人で浄化槽を設置しました。その現場の立地では重機が入ることができないため、掘削は手掘りでした。深さ2メートル以上掘らないといけないので、先の見えない作業に心が折れかけていました。

 その時、父が「スコップ1杯でもしっかり確実に掘れているから頑張れ!」と言ってくれたのです。その一言がすごく嬉しく、やる気になって無事掘り終えたときのことを鮮明に覚えています。そしてその時、思いました。「やはり水道屋は穴掘りが基本なんだ」と。穴掘りばかりの日々は決して無駄ではありませんでした。今、職人としての自分があるのは父の背中を見て学んだおかげです。そんな父は80歳を超えましたが、まだ現役で穴を掘っています。

【建設業の心温まる物語】河西建設・伊藤真二さん(山形県)

 ◇受け取らなかったはずの千円札◇

 建設業にたずさわるようになり30年以上になります。これまで数十カ所の現場を完成させてきました。国道48号線の道路拡幅工事をしているときのことでした。現場と隣接する無人くで作業を行っていると、一日数本しか停車しない電車から老夫婦が降りてきて立っていました。

 気になって「どうしましたか」と声をかけてみると「一つ前の駅で降りるつもりが間違えて下車してしまった」とのこと。無人駅なのでタクシーなどいません。私は「次の駅まで、車で乗せていってあげますよ」と話しました。老夫婦は恐縮しながらも笑顔で私の車に乗られ、次の駅に着きました。降りる際に、「これお礼として受け取ってください」と千円渡されましたが、「いえいえけっこうです」と私は受け取りませんでした。

 お二人が何度も頭を下げる様子を見送りながら現場に戻りました。ふと、後部座席を見るとそこには、受け取らなかったはずの千円札が置いてありました。私は当たり前のことをしただけなのにと思いながら、お役に立てた喜びを感じました。

 また別の日には、タイヤがパンクして交換できない人を助けたり、側溝にタイヤを落として動けない車を助けたり、といろいろ人助けをしてきました。山形にはまだ整備されていない道路が多いため、そんなときは私たち建設会社の出番だと思っています。住みよい山形を作るためにこれからもがんばろうと思います。

【建設業の心温まる物語】山田塗装・石川浩充さん(北海道)

 ◇近所の方からの差し入れがうれしい思い出◇

 高速道路の耐候性鋼板の鋼橋の一部を塗装して補修する工事を施工したときのことです。
 その橋梁は山の中にあり、橋脚の高さは40メートルもあるため容易には近づけません。しかも補修する箇所が橋桁の長さ300メートルの中に点在しています。当初設計では補修箇所ごとに点在した足場が計画されていますが、足場間の通路は見込まれておらず、移動するには空飛ぶ絨毯でもなければできません。利益があまりでない現場であることは着工前からわかっていました。

 資材費の低減や施工方法の工夫により、少しでもコストを下げようと考えました。それでもまだ不足するので、私は自分たちの宿泊代も削ることを会社に申し出たのです。通常は旅館などに寝泊まりするのですが、それを止め、現場事務所の会議室に布団と調理道具を持ち込んで自炊することにしました。

 風呂は偶然近くに銭湯がありました。毎日仕事が終わると、スーパーに買い出しにいき料理をして食事をしました。職住が近接しすぎているため、悲しいことに食事が終わったあともまた仕事をしてしまうことも多く、メリハリがつかずに情けないと感じてしまう日々を過ごしていました。

 そんなある日のこと、現場事務所に近所の方がいらっしゃいました。「毎日工事ご苦労様です。男ばかりでたいへんでしょうから、これ食べてください」と言って、枝豆、ぶどう、カレーライスなどを差し入れていただいたのです。近所の方々が、私たちの様子を見て、現場事務所に住んでいることに気付いたようでした。私はその気持ちが涙が出るほどうれしく、ありがたくおいしくいただきました。

 銭湯は、沸かし湯でなく温泉だったので、毎日温泉に入れて幸せだなと、と思うと段々楽しくなってきました。他ではできない経験ができ、今では良い思い出になりました。

【サークル】鹿島 龍舟部「接戦を制した時の感動はひとしお」

 2009年に有志によるドラゴンボートの同好会として発足し、15年度に会社公認の運動部になった。ドラゴンボートは、中国に由来する細長い船。太鼓手の太鼓に合わせ、複数の漕手が息を合わせてパドルをこぐことで加速しながら進む。

 部員は5月時点で約60人。東京近郊での練習会やレースに参加できる本社、支店、現場、関係会社の社員が中心で、コーチは社外経験者にお願いしているという。

 「1分のレースにドラマを詰め込め!」が合言葉。勝どきマリーナ(東京都中央区)を拠点に、月2回を目標に練習会を開く。東京や横浜で開催される大会やスポーツイベントに出場。今年5月に東京・お台場で開かれた大会では男女混合の部で好成績を残した。

 部員の村木桂子さん(東京土木支店管理部経理グループ)は「今までは大会前に重点的に練習を行ってきた。今後は月ごとに練習キャプテンを設定するなど、定期的に練習できるように計画を練っている」と明かす。「接戦を制した時の感動はひとしお。勝利の美酒を目標に、部員がシンクロし、鹿島龍舟部の名前を社内外にとどろかせるよう頑張っていきたい」。

【駆け出しのころ】ピーエス三菱代表取締役常務執行役員建築本部長・黒柳辰弥氏

 ◇厳しい中でも「こだわり」を学ぶ◇

 高校生の頃に生活と密着した衣食住のいずれかに関わる仕事がしたいと考えるようになり、中でも「住むところが一番かな」と建築の道に進みました。

 入社した当時はオイルショックの影響がまだ残り、就職状況は厳しかったと記憶しています。最初に配属された現場は自動車の製作工場で、営繕・リニューアル工事を行っていました。まずは先輩や協力会社の方がやっていることをしっかり見て覚えるという日々でした。

 ここでは、新人でしたが図面も描かせてもらいました。先輩にやっと描いた図面を見てもらおうと持って行くと、「あっ」と思った時には既に赤ペンで修正が入れられ、また一から描き直しでした。原図をそのまま見てもらったためで、本来は青焼きした図面を持っていかなければいけなかったのです。でも、そうやって図面を描いていると寸法が頭に入り、職人さんへの説明もスムーズに行えるようになっていきました。

 入社2年目には、公団住宅の建設に着工時から携わります。数量を拾うことなども含めて一通りのことをやらせてもらい、その後につながる大きな経験となりました。30代半ばに担当した現場も自分を成長させてくれました。大手デベロッパーから発注された事務所ビルの建築工事で、厳しい現場でしたが、良いものを造るためのこだわりを学ぶことができました。

 若い頃は現場で走り回っていました。しかし、年数を経ていくうちにデスクワークが増え、どうしても現場に出られる時間が限られるようになっていきます。そんな時、協力業者の方々が現場のことを「あのままでいいのか」などと教えに来てくれるのは大変にありがたく、そうした方々のサポートがあったからこそ、これまでやってこられました。

 現場では皆が一体となって良いものを造り、お客さまに引き渡す。これが基本です。現場の安全確保でも、「自分の家族が来ても大丈夫なようにしておけば、けがなんてしない」とよく言ってきました。朝は職人さんに「おはよう」とあいさつし、帰る時には「お疲れさま。あすも頼むね」と声を掛ける。そういった触れ合いを繰り返していると、職人さんから話し掛けてくれるようになりますし、自分の知識や経験では足りないことをいろいろ教えてもくれます。

 ミスは避けなければいけませんが、かといって上の者があまり多くをやってあげると、若い人はそこにいたけれど仕事を覚えない、ということになります。その線引きが非常に難しいのですが、自分も多くのことを経験させてもらってきたように、若い人たちにもいろいろなことを経験してもらいたいと思っています。

 (くろやなぎ・たつや)1979年東海大工学部建築学科卒、三菱建設(現ピーエス三菱)入社。東京建築支店建築統括部工事第三部長、同支店建築工事部長、執行役員東京建築支店長、常務執行役員建築本部長などを経て、16年6月から現職。東京都出身、60歳。
30歳くらいの頃、都内の建築工事現場事務所で

2017年7月28日金曜日

【手すりにつかまって歩かない】森ビルら、エスカレーター乗り方教室開く

 森ビルは東京メトロ、都営地下鉄と共催で、エスカレーターの正しい乗り方を啓発する親子向けイベントを、東京都港区の六本木ヒルズで開いた。

 15年から鉄道事業者らを中心に展開する「エスカレーター『みんなで手すりにつかまろう』キャンペーン」の一環。イベントには周辺地域から親子8組19人が参加した。同キャンペーンで小学生を対象としたイベントを行ったのは初めて。

 イベントでは、児童たちがエスカレーターの正しい乗り方を学び、実践したほか、エスカレーターの緊急停止訓練を見学。東京メトロ日比谷線六本木駅と六本木ヒルズをつなぐエスカレーターの利用者に正しく乗るよう呼び掛けた。

 イベントを終えた児童からは、「エスカレーターの乗り方や仕組みなどを知ることができ勉強になった」などの声が聞かれた。森ビルの担当者は「六本木ヒルズ内にはエスカレーターが多い。エスカレーターによる事故を防止し、安全・安心な街づくりを進めたい」と話した。

【回転窓】後利用にも目を向けよう

 長野市が1998年の長野冬季五輪で使ったボブスレー・リュージュ競技場を来年度から利用しない方針を決めた。施設の老朽化と多額の維持管理費がその理由。人口減少と財政難を背景にした決断である▼2020年東京五輪の施設整備を本格化させている国や東京都にとっても、大会後の施設利用は大きな課題。整備費と維持管理費の縮減に加え、施設利用のしっかりとした見通しを立てることが後世に負担をかけないためにも必要だろう▼東京五輪の組織委員会が選手村の交流エリアとなる「ビレッジプラザ」に使う木材を全国の地方自治体から集め、五輪後に返還して再利用する案を検討している。後利用が計画された木材を大会施設に使うのは五輪史上で初という▼実はこの計画を提案したのは日本建築士会連合会。1年前に三井所清典会長が記者会見で「全国に五輪のレガシー(遺産)を残し、環境問題に取り組む日本の先進性をアピールできる。日本古来の木の文化も世界に伝えられる」と訴えていたのを思い出す▼造るだけでなく、後利用を考えるのも建築士の大事な役割。提案を実現に導く実行力も求めたい。

【竹中工務店で既存解体着手】新宮下公園再整備(東京都渋谷区)、8月から始動

15年3月に公表した新施設の完成イメージ
三井不動産が、東京都渋谷区の旧宮下公園(神宮前6の20の10)の敷地を区から借り受けて行う「新宮下公園等再整備事業」が具体化に向けていよいよ動きだす。8月1日に竹中工務店の施工で既存施設の解体工事に着手する見通し。18年3月末に解体を完了させた上で、同4月の本体着工、19年度末の完成を目指す。開業は東京五輪開催前の20年春ごろを予定している。

 事業の実施に当たり、区は3月末に公園の供用を停止した。現在は敷地(約1万0500平方メートル)が北側と南側に分断されているためデッキで接続し、公園面積を約1万0800平方メートルに拡大する都市計画を4月26日付で決定・告示。その後、6月22日の公園廃止手続きを経て、同日に三井不と定期借地権契約(30年間)を締結した。同23日からは旧公園の管理を三井不が担当している。

宮下公園は8月から解体工事が始まる
三井不が15年に示した計画によると、敷地に3層の商業施設を建設し、立体都市公園制度を活用して施設の屋上に公園を整備する。敷地北側の一部は公園区域に加えず、17階建てのホテル(200室程度)を主体とした施設を建設。旧公園では1階部分に配置されていた駐車場を地下に移設する。これらの計画をベースに現在設計を詰めているという。

 区の担当者によると、「これまでの公園の形を踏襲するのではなく、従来のスポーツ施設の要素を残しながらも地域に開かれた公園にする」ことを想定。「渋谷区への来街者が必ず訪れたくなる公園」を目指し、開発が進む渋谷駅周辺や、道玄坂エリア、宇田川町エリアにもにぎわいが波及するような仕掛けを検討する。

 区は今秋にも、公園などの整備計画のたたき台を示したい考え。秋口ごろに地元の意見を聴取する場を設け、計画へ反映させるという。

【英国ウエストミンスター宮殿が大規模修復】日本工営グループ会社が設計業務受託

日本工営グループの英国建築設計大手BDP(マンチェスター)は、英国議会が入るウエストミンスター宮殿(ロンドン・ミルバンク)の大改修事業の建築設計業務を受託した。

 米国のコスト管理会社のCH2Mとの共同受託で、本年度に支払われる費用は両社で1200万ポンド(約17億5000万円)。英国議会が実施した設計コンペティションでアライズ・アンド・モリソン、フォスター・アンド・パートナーズ、HOKなどと競合したが、BDPの提案が最高評価を得た。

 ウエストミンスター宮殿はテムズ川のほとりにあり、全長280m、高さ(時計塔)96mで、上院と下院の議事堂が入っている。建物と設備は19世紀半ばの再建以来、大規模な修復・改装がまったく加えられていないため、老朽化が激しく、英国議会は安全性を確保する観点から大規模修復の実施を決めた。

 業務内容は、建物全体の保全、機械・電機系設備の修繕に加え、建物全体の警備に関する戦略立案やアスベスト除去の実施計画、防火システムの改善提案など。大改修は2020年までに終える予定だ。

 今回の改修に先立ち、国会議事堂の機能を宮殿北側に近接する複数の建物に一時移転させるが、そのための改修設計業務もBDPが受託している。

【17年度内に整備方針取りまとめ】等々力緑地官民連携事業可能性調査業務、日本経済研に委託

2期整備に向けた検討が本格化する等々力陸上競技場
(提供:川崎市)
川崎市建設緑政局は、「平成29年度等々力緑地官民連携事業可能性調査業務」の委託先を決める公募型企画提案(プロポーザル)による選定手続きで、日本経済研究所を受託者に決め、通知した。提案は9者からあった。近く正式契約する。委託料の上限は2000万円(税込み)。

 等々力緑地(中原区等々力1の1)の施設整備・維持運営についてPFIやPPPなどの民間活用の導入可能性を調査。状況分析、各施設の需要予測、事業方法案の検討、VFM(バリュー・フォー・マネー)の算出、事業スキームの検討などを支援する。履行期限は18年3月29日。

 対象となるのは等々力緑地内の陸上競技場(収容人数約2万7000人)の第2期整備。調査結果を受け、市は本年度中に整備方針をとりまとめる。新たに編入する区域を含め、全体で6・3ヘクタールの公園整備方針についても、PFIなどの可能性を含め検討していく。
2期整備事業で増設するスタンドの断面イメージ

【収容2万人、基本構想策定急ぐ】山梨総合球技場、候補地は小瀬スポーツ公園周辺に

山梨県の後藤斎知事は27日の県議会全員協議会で、総合球技場の建設地を小瀬スポーツ公園周辺(現第3駐車場)に決定したことを明らかにした。

 収容人数は2万人程度を想定。幅84メートル、長さ124メートルのフィールドを設ける計画だ。既に総合球技場整備基本構想の策定に着手しており、速やかにまとめる方針。その後、整備基本計画の策定に着手する。総工費は80億~140億円程度を見込んでいる。

 小瀬スポーツ公園(甲府市小瀬町)周辺と甲府市大津町地区に設置予定のリニア中央新幹線「山梨県駅」(仮称)前の2カ所を最終候補地として選定を行っていた。

 後藤知事は選定理由について、小瀬スポーツ公園周辺の方が球技場周辺に、より広い空間の確保が可能なこと、全部の用地を買収した場合、面積や単価比でリニア駅前は小瀬スポーツ公園に比べて約1・8倍の用地取得費がかかると想定されること。リニア駅前に整備する場合、駅舎と総合球技場の施工時期が重なり、建設工事に影響が出る懸念があることなどを挙げた。

 総合球技場検討委員会(委員長・佐々木邦明山梨大学教授)が16年12月に県に提出した報告書によると、サッカーやラグビー、アメリカンフットボールのすべてに対応可能な芝生のフィールドを設ける。天然芝面は幅80メートル、長さ120メートルの大きさとする。イベントなどへの利用も考慮して設計・整備を進めるとしている。

 整備・運営手法については、公設民営や公設公営、PFI方式、負担付き寄付方式などを例示。建設場所や周辺環境を考慮しつつ、最適な整備・運営手法を採用すべきだとしている。

 想定敷地面積は約9万平方メートル。内訳は本体施設の敷地が約3万平方メートル、駐車場が約6万平方メートル(約2000台分)となっている。

2017年7月26日水曜日

【回転窓】魅力発信にもうひと工夫を

 高校の校長を務めていた方から久しぶりにメールを頂いた。建設産業に詳しく、次代を担う人材の教育・育成に対する熱い信念の持ち主。届いたメールにも若者への業界PRのあり方などがつづられていた▼校長在任中に大学の土木系学科に通う女子学生の母親から、娘さんの就職について相談を受けたことがあった。この時に、女性技術者らの活躍が取り上げられていた建設業団体の機関誌を渡すと、後日、「大変役に立った」と感謝されたという▼読んでもらえれば魅力は伝わる-。こう考えるのが情報の発信側であろうが、元校長はそうした機関誌を学校にも広く配布するのと同時に、学生が手に取って読むよう「サブタイトルに工夫してほしい」と提案する▼例えば「建設の仕事を知りたい」「建設技術の神髄を知ろう」「こんな仕事も建設業」などのサブタイトルが付くと興味を持つ学生は少なくないと見る▼機関誌や冊子をただ送付しただけでは受け取った側が「活(い)かし方が分からない」とも。図書館や進路指導の担当者との打ち合わせなど細かな対応を求める。建設業界の魅力発信に、もうひと工夫を期待しよう。

2017年7月25日火曜日

【ERI学生デザインコンペ審査員インタビュー・3】千葉学氏(建築家、東京大学教授)に聞く「コンペの特徴と応募作品への期待」


ERIホールディングスが主催する設計競技「ERI学生デザインコンペ」。「RULE(ルール)/SPACE(スペース)/HARMONIZE(ハーモナイズ)」をテーマに競う2017年度コンペの選考委員に聞くリレーインタビューも3回目。今回は建築家で東京大学教授の千葉学氏に聞いたコンペの特徴や学生へのメッセージをお届けします。

――ERI学生デザインコンペの特徴は。

「テーマに『ルール』という言葉が入っている点が大きな特徴です。2006年にギャラリー間で展覧会をしたときに、『rule of the site そこにしかない形式』という書籍を出版しました。建築の中に存在する原理やまちを形作る法律、規範、そういった『ルール』や『形式』をどう解釈し直し、新しい価値創造につなげていくかが重要だと考えていました」

「そのときに考えていたことと通じるものがあります。いかに建築の中に新しい秩序や原理を見つけていくか、多くの建築家が考えていることだと思います。ルールは単に何かを縛るものではなく、新しい建築が生まれるときの一つの重要な概念になると昨年のコンペで改めて感じました」

――昨年の審査の感想を。

「ルールというテーマに対し突っ込んだ提案があったかというと、多少物足りない印象を持ちました。ルールに建築デザインがどうドライブしていくかというダイナミックな関係性を考えていた案は少なかったように思います。実務に携わっている僕にとっても難しい概念ですし、学生には容易ではないテーマだと思いますが、コンペの回数を重ねる中で応募者と主催者の対話が継続し、メッセージが伝わっていけばよいとも考えています

――印象に残った作品はありましたか。

「最優秀賞に選ばれた法政大大学院の道ノ本さん、前波さんの作品『蔀戸の在る街の暮らし』は、コミュニティーを作るツールとして、古くから日本の建築に使われている建具に着目した点がおもしろかったです。建築の中で唯一動く部位であり、生活の様々な場を作ってきた重要なツールでしたが、時代の流れの中で多くが失われてしまいました。場と場、人と人との関係をつかさどる大事なツールが鉄の扉に置き換わってしまったのは、日本の建築の系譜にとって貧しいプロセスだと思います。建具をノスタルジックに復活させるのではなく、今の日本にふさわしい新しい関係性をつくるために使ったという点で非常に野心的でした」

「佳作の『共界線の街』(立命館大大学院・廣田さん、藤関さん)は、建築にとって不自由な線引きとも言える敷地境界のあり方を問う作品でした。あらゆる建築の前提条件になっている敷地境界の存在自体を見直すと、街がこんなにも変わっていくんだと示してくれた提案で、僕たちが日常当たり前だと受け入れている法的、社会的制度を根本から考え直した点が新鮮でした」

――今年のテーマの一つは「ハーモナイズ」。応募作品への期待は。

「何と何が、どのように調和しているのか、創造的に考えていく必要があります。東京という街は秩序がない、調和がないと思われていますが、実は調和の概念が潜在していて、それに気付いていないだけかもしれないと思っています。今年のテーマは、建物同士の新たな調和のあり方や人と人、人と建物の関係性を再発見することにもつながるのではないでしょうか。現代の建築・都市を考える上で興味深いテーマだと思います」

――学生の指導で心がけている点は。

「建築は世界共通の言語であり、年が離れていても、先生と生徒という間柄でも、国籍が違っていても、建築を語る上では通じ合うことができます。だから学生ともいつも同じ土俵で戦っているという感覚を持っています。びっくりするような新しい提案をしてくる若い人が出てくると、素直にすごいなと興奮します。そういう案は見ていて清々しく、またそういう人との出会いにも、救われたような気持ちになります。建築の将来に向けても期待が高まります」

「建築は100人いれば100通りの答えがある。だからこうしなさい、ああしなさいといった建築教育はやってはいけないことだと思っています。いろんな価値観が共存していることが社会そのもの。僕の考えは必ず伝えますが、感覚的に好きだ嫌いだとは言わず、どうしてこういう建築になったのかを丁寧に説明することを心がけています。それに賛同するかどうかは学生が決めることです」

――学生にはどういう建築家になってほしいと思いますか

「建築の仕事はとてもアーティスティックであるとと同時に、アートではないと思う部分もあります。建築をつくるとき、僕たちは過去から様々な影響を受けながら、継承するところは継承し、変えるところは変えていく、その判断を常にしています。また、豊かな建具が失われたことと人と人の関係性が漂白されていったこととは鶏と卵のような関係で、どちらが先かわからない面もあります。建築は新しい創造でありながら、人間を規定し、また変えていくものでもあるのです」

「だからこそ、歴史的文脈をどう解釈して新しい未来にどうつなげていくかという視点が大事だと思っています。自己表現として建築をつくるのではなく、時間軸や社会とつながっていく回路を持っている人を僕は建築家と呼びたい。日本に近代建築が導入されて以来、戦災復興、高度経済成長と、日本は常に新しいものをつくることばかり考えてきましたが、これからの建築家は歴史や地域、社会を読み解く力を身に着けなければいけないと思います」。

ERI学生デザインコンペ2017

【主  催】 ERIホールディングス
【協  賛】 日本ERI、ERIソリューション、ERIアカデミー、
       東京建築検査機構、イーピーエーシステム

【特別協賛】 日刊建設工業新聞社

【応募受付】 2017年9月1~20日

【一次選考】 2017年10月上旬

【最終選考】 2017年11月11日(公開審査)

【賞  金】 最優秀作品賞(1点)50万円、優秀作品賞(1点)25万円
       佳作(数点)5万円、特別賞

【女子学生を建築現場に招待】フジタ、東京・八王子市で見学会開催!!

見学会を開いた現場はこちら!!
 フジタは東京都八王子市で施工中の「八王子みなみ野病院」の工事現場で見学会を開きました。参加したのは東京家政学院大学で建築を専攻する女子学生28人。現場で働く魅力を大学生に伝えようと、見学会を企画したそうです。学生のみなさんに躯体工事が進む様子や構内に設けたモデルルームを見てもらったほか、子育てをしながら現場で活躍する女性技術者が仕事の楽しさや苦労を話しました。

 八王子みなみ野病院は、八王子市で病院や介護施設などを運営する医療法人社団永生会(安藤高朗理事長)が205床の慢性期病院として計画しています。RC造4階建て延べ9265平方メートルの規模で、18年4月の開院を予定。設計・監理は久米設計が担当しています。
田野倉副本部長は「使う人の思いを考えながらものづくりを」と話しました
 見学会に出席した永生会法人本部の田野倉浩治副本部長は「建物はそこで活動が行われた時点で完成したと言えます。使う人の思いを考えながらものづくりに取り組んで下さい」と、学生に話しました。工事を指揮する梅澤善光所長は設計コンセプトや計画概要を説明。その上で「女性技術者は大歓迎です。力仕事ばかりが現場の仕事ではありません。見学会でものづくりの喜びを感じてもらえたらうれしいです」と語りかけました。
外壁のモックアップを触って品質を厳しくチェック!?
見学者のみなさんを建築現場にご案内
 工事概要を説明した後はお待ちかねの現場見学に。工事の様子や病室のモデルルーム、ALC(軽量気泡コンクリート)を使った外壁のモックアップを工事関係者が紹介。建設現場を訪れるのが初めての学生も多かったようで興味津々な様子でした。
大河原さんは5歳児のママ。
「細く長く続ける」ことが今の目標だそう
建築現場を見学した後は、工事の最前線で活躍する女性技術者が登場。育児休業を取りながら約9年間現場勤務を続け、現在は東京都内の現場で働く大河原迪恵さんが、仕事内容や1日のスケジュールを紹介したほか、現場で働くことの面白さや苦労した点などを話しました。
梅澤所長㊤と原口教授
 「人を動かすのが現場監督の仕事」と話す梅澤所長は見学会の後、建設業界で女性の活躍の場がさらに広がっていくことに期待していました。学生を引率した原口秀昭教授は「普段見られない現場を見せていただき、大変ありがたかったです。ゼネコンがどのような仕事をしているのか知らない女子学生がほとんどです。見学会などをきっかけに女性が増えつつある建設業界に、学生が飛び込んでいってほしいですね」と話していました。

【官民連携でハード整備推進】国際クルーズ船拠点、横浜など6港指定

国際クルーズ船拠点の一つに選ばれた横浜港
(提供:横浜市)
国土交通省は、国際クルーズ拠点の形成に官民連携で取り組む「国際旅客船拠点形成港湾」として、横浜港(港湾管理者=横浜市)、清水港(静岡県)、佐世保港(長崎県佐世保市)、八代港(熊本県)、本部港(沖縄県)、平良港(沖縄県宮古島市)の6港を指定した。今月8日に施行された改正港湾法で創設された制度で、指定港湾では、旅客ターミナルビルなどの投資を行うクルーズ船会社に岸壁の優先的な使用を認める。

 短期間での効果的な国際クルーズ拠点の形成を図るため、指定港湾では、クルーズ船会社による旅客施設などに対する投資と国や港湾管理者による受け入れ環境の整備を組み合わせる。

 指定を受けた港湾管理者は、官民連携で外航クルーズ船の受け入れ拠点を形成するための「国際旅客船拠点形成計画」を作成。この計画に基づき、港湾管理者と連携するクルーズ船会社が岸壁の優先的な使用や、クルーズ船会社による旅客ターミナルビルの整備などに関する協定を締結するなどの必要な取り組みを進めていくことになる。

 今回指定する港湾を利用するクルーズ船社は、▽カーニバル・コーポレーション&plc▽ロイヤル・カリビアン・クルーズ▽ゲンティン香港▽郵船クルーズ-の4社。

 港湾ごとの利用会社は次の通り。

 ▽横浜港=カーニバル・コーポレーション&plc、郵船クルーズ▽清水港=ゲンティン香港▽佐世保港=カーニバル・コーポレーション&plc▽八代港=ロイヤル・カリビアン・クルーズ▽本部港=ゲンティン香港▽平良港=カーニバル・コーポレーション&plc。

【小学生の夢、みんなで叶えます】土木学会が「未来の街のアイデア」募集中!!!

土木学会(大石久和会長)は、小学生から未来の街のアイデアを募る「未来の土木コンテスト」を実施する。締め切りは9月8日。来年1月20日に東京・お台場の日本科学未来館で最終選考と表彰式を行う。

 「土木がかなえる未来の社会」をテーマに募り、1次選考を通過したアイデアには土木技術者による検討チームが加わり、提案者と共に実現に向けた技術的検討を行う。第1次選考は9月9日~10月15日。技術検討期間は10月中旬~12月中旬で、11月11日に東京・四谷の土木学会講堂で技術検討会を開く。最優秀賞1点、優秀賞4点、入選数点を選ぶ。

 選考委員長は高橋良和京都大教授、特別委員は宇宙飛行士で日本科学来館館長の毛利衛氏が務める。

 学会の関係者は、今回のコンテストを通して子どもを中心とする市民と土木技術者が未来の社会を共に考える場を提供するとともに、土木技術者を広くPRしたいとしている。応募方法は学会のホームページへ。

【回転窓】言い得て妙のネーミング

コピーライターの岩永嘉弘さんが自著に書いている。ネーミングによって〈初めてそのモノやコトに命が吹き込まれるのです〉(『ネーミング全史』日本経済新聞出版社)▼商品であればその売れ行きに大きく影響するのがネーミングの良しあし。とはいえ商品名が独り歩きしてもいけない。ネーミングの大切さを「命が吹き込まれる」と表現するのもうなずける▼建設分野の商品にも言い得て妙のネーミングは多い。ジェイアール東日本コンサルタンツが開発し、建設現場や工場などで採用実績を伸ばしている「メットフォン」もその一つだろう。ヘルメットに装着する音声ガイドシステムで、見学会などで案内役の声が聞き取りやすくなると評判の商品だ▼現場では見学会を開く際も作業を止めるわけにはいかず、重機や工具の音がする中での説明となる。そんな時に見学者もヘルメットをかぶるだけで説明の声が明瞭に聞こえるのはうれしい▼これまでに改良が重ねられ、現在の商品名は「メットフォンIII」。商品をすぐに連想できるネーミングがよい。現場取材や見学会で話題の3代目を利用できるのを楽しみにしたい。

【9月30日〆切、ご応募待ってます】建コン協、フォト大賞の作品募集開始

第8回の大賞受賞作品、横田直さん(岡山県)の「水田鏡」
建設コンサルタンツ協会(建コン協、村田和夫会長)は、第9回「建コンフォト大賞」の作品募集を開始した。土木施設の役割を市民に広く認識してもらう目的で実施している写真コンテストで、テーマは「あなたのお気に入りの『土木施設』」。最優秀賞には賞状と副賞として10万円分の商品券が贈られる。締め切りは9月30日。募集要項などは建コン協のホームページへ。

 建コン協は29日~8月4日、昨年度に実施した第8回「建コンフォト大賞」の入賞作品の展示会を開く。開催場所は首都高速道路川口線上りの川口パーキングエリアにある無料休憩所。入賞作品13点とともに、建設コンサルタントの役割などを記したパネルも展示する。

【記者手帖】喜ばれる仕事を

取材を担当している中央官庁の定期人事異動が今月あった。例年のことだが、役所内や記者の間で予想していた通りの役職に就いた人もいれば、「まさか」と思う役職に配属された人も。いずれにしても、同じ役職で前任者の仕事とどのような違いを出してくるか、興味深い◆日頃の取材でお世話になり、異動が決まった方のところへあいさつに行った時に必ず聞いていることが二つある。一つは「一番充実していた仕事は?」、もう一つは「一番苦労した仕事は?」◆予想外の回答に驚くこともあるが、「一番充実していた仕事」の理由として多くの人が共通して挙げるのが、「住民や民間事業者から大変喜ばれたこと」。役所仕事には批判も少なくないが、多くの職員はそうした視点で真面目に仕事に打ち込んでいることを改めて知らされる◆暮らしを豊かにし、安全・安心を守るインフラ整備や身近な産業行政を所管する国土交通省などは特に、「住民や民間事業者に喜ばれる行政」が使命といってもよいだろう。新しい役職でもまた「喜ばれる仕事」を、と活躍を期待している。(か)

【凜】三井住友建設東京土木支店・鶴見知香さん


 ◇カッコイイ構造物をつくる◇

 経済学部出身ながら、土木を学ぶ友人に話を聞くうちに建設業に興味を持ち、就職活動はゼネコンに絞ってチャレンジした。学生時代に抱いていた建設業のイメージは「かっこいい構造物をつくる人たち」だった。

 昨年、「女性が働きやすい体制が整っている」と志望した三井住友建設に事務系総合職として入社。新東名高速道路の現場で工務係を務める今も、その印象は変わっていない。

 日本の新たな大動脈をつくる仕事に携わる日々。「橋梁工事は1ミリを大事にする仕事」と語り、巨大な構造物が人の手で築き上げられていく様子に感動を覚えている。約250人の作業員が出入りする現場で、役割は「サポート係」と自認。唯一の事務系職員として、支店との連絡や諸手続きを一手に引き受ける。

 赴任当初は、現場に同じ立場の人がいないために不安を感じたこともあった。朝礼には欠かさず参加してコミュニケーションを取るよう心掛け、今では作業員の方から話し掛けてくれるように。チームの一員になれたことに喜びを感じている。

 入社した頃は経理関係の部署で働きたいと考えていたが、現在は「工務の仕事も捨て難い」と明かす。「今はまだ目の前の仕事で精いっぱい」と言いつつも、「次は現場の立ち上げからやってみたい」と先を見据えている。

 (三井住友建設・日本ピーエスJV新東名厚木第2作業所、つるみ・ちか)

【中堅世代】それぞれの建設業・174

現場には多く人が集まる。広く見通して仕事ができる人こそプロだと思う
◇入職2日目の決意、今も◇

 絶対に職長になってやる-。この仕事を初めて2日目、そう決意した。山中公太さん(仮名)はベテランの鉄筋工となった今も、当時の気持ちを覚えている。

 体を使った仕事をやりたいと思い、高校卒業後、鉄筋工事の会社に入った。右も左も分からないまま現場に向かった。「先輩から教わりながら仕事を覚えていけばいい」。そう言われていたが、実際は違った。嫌がらせのように、何をやってもけなされる。仕事ができない自分を笑い物にするような雰囲気があった。

 「今に見ていろ。数年後には上に立って、絶対にお前たちを使ってやる」。理不尽な仕打ちを受けたことが、余計に決心を固くした。

 鉄筋工の仕事は、思っていた以上に厳しいものだった。夏は暑いし、雪の降る日には作業をする手がかじかむ。負けてたまるか-。その一心で日々の仕事に打ち込んだ。だから、職長になった時は、本当にうれしかった。「やっと職長ができる。自分に任せてもらえた」。そんな思いに包まれた。

 職長になると、それまでとは違った世界が広がっていた。今までは自分の作業の質を高めていればよかったが、職長は、現場全体が円滑に回るよう、他職種との連携もしっかりと考えなければならない。そこをクリアしなければ、鉄筋組み立てもうまくいかない。

 職長になった頃はまだ若かった。他職種のベテラン職長から甘く見られていると感じることもあった。そこでまた闘志が沸々と湧いてきた。

 今の作業が問題なくできるのは当然のこと、もっと先の作業まで見越していかに動けるかが勝負だと思った。「現場全体のことを理解しなければ、やっぱりなめられる」。ベテラン職長はどこに目を光らせて仕事をしているのか。どうやったら、自分たちも他職種の人たちも、効率よく仕事が流れていくのか。分からないことがあれば、誰彼構わず聞いて回った。

 そうするうちに、だんだんと認めてもらえるようになった。若さが問題だったのではなかった。仕事の質が問われていたのだ。それがプロだと、後になって分かった。

 新人が入ってくると最初は厳しく接するようにしている。「新人のために仕事しているわけではない。しっかりとした品質の物を造るために自分は働いている」。そうした思いが強い。「最初に優しくすると、それが当たり前になってだらだらされる。それで辞めたらそこまで。厳しくしないと本人のためにもならない」。そう割り切っている。

 難しいと思う場面もある。最近の若手は、厳しく言われたら「もう駄目だ」とへこんでしまう。「この仕事は、やればやるほど自分に返ってくる。すべては自分次第なのに…」。若手には、良い意味での負けん気を持ってほしいと思っている。

 一人前になったら、対等な職人として扱われる。そこまで頑張れば先は見えてくる。そうやって自分は踏ん張ってきた。これからもその心意気で続けていく。

【サークル】大林組 ランニング部


 ◇SKOTT駅伝大会で優勝めざす◇

 1975年創部。「当時の本社(東京都千代田区)近くにYMCA体育館があり、会社の仲間同士で定期的に汗を流していました。そのメンバーで皇居ランニングを始めたことが創部のきっかけです」と仲田政美さん(東京本店土木事業部コストマネジメント部施工計画第二課)は説明する。

 部員は4月時点で約70人。OBも一緒に活動する。「ランニングは孤独な闘いのように見えるけれど、メンバーはいざとなったら一致団結します。一人ではありません。『安全第一、健康第一で楽しもう』をモットーに活動しています」。

 毎年3月に社内の駅伝大会を運営。ゼネコン大手5社(清水建設、鹿島、大林組、大成建設、竹中工務店)の有志が健脚を競う「SKOTT駅伝大会」(SKOTTは各社の頭文字)、「ザ・コーポレートゲームズ アジアパシフィック」のリレーマラソンの部にも参加している。

 季刊誌「R&愛」を発行。「国内外のレースやトライアスロンに関する情報、部員の記録を掲載し、盛り上がっています」と仲田さん。「今年のSKOTT駅伝大会では何としても鹿島の10連覇を阻止し、当社から優勝チームを出したい」。

【駆け出しのころ】大和ハウス工業取締役常務執行役員建築事業推進部長・浦川竜哉氏

 ◇目の前の景色を変えた仕事◇

 中学2年の時、登山家の高田光政さんが書かれた『北壁の青春』を読み、「自分が求めていたのはこれだ」と山登りが好きになりました。登山を通じて地理にも興味を持つようになり、大学は文学部地理学科に進みました。

 卒業後に大和ハウス工業のキャリア採用面接を受けた時のことです。都市計画の仕事に携わりたいと希望したのですが、「空きはない」と言われ、私は「それならいいです」と帰ってしまいました。しかし、会社から「東京の建築事業部でどうか」といったお話を頂けて入社します。

 後で聞いた話では、面接官3人のうち2人が「こんな頑固なやつは駄目だ」と「×」の評価だったのに対し、もう一人の面接官である建築事業部の部長だけが「頑固だけど伸びる可能性がゼロではない。俺が引き取る」と周りを説得してくれたそうです。このことを知り、人のご縁の大切さをものすごく感じました。

 最初に配属されたのは、建築事業部の中でも請負だけでなく、土地の有効利用も手掛けていく部署です。入社して半年ほどたち、当時としてはかなり大型の事務所ビルを請け負えるかもしれないという話が舞い込んできました。お客さまは大変に厳しい方で、借り入れの組み合わせなどについて次々と難しい宿題を出され、これを会社に持ち帰り、夜のうちに対応するという日々でした。会社の警備員さんには「浦川さん、また会社に泊まりですか」とよく言われたものです。

 建築不況の頃であり、この物件を受注するために1年間追い続けました。十数社いた競合が絞られ、最後の決勝戦まで行ったのですが、結局は受注できずに終わりました。これには力が抜け、「この1年は何だったのか」と悔やみ切れませんでした。

 でも、これを契機に目の前の景色が変わります。毎日のように出された難題に必死に答えていたことで、他のお客さまからの要望にすぐ対応できるようになっていたのです。すると仕事もどんどん取れるようになっていきました。こうして振り返ると、私はお客さまや上司、先輩、後輩に恵まれてここまで来られたとつくづく思います。

 どうするか迷ったら、まずはやってみることが大切です。大和ハウス工業は、チャレンジしないことのリスクには厳しい会社です。若い人たちは、萎縮せず、そういったチャレンジさせてもらえる権利をぜひ謳歌(おうか)してほしいものです。

 何が世の中、世の人のために役立つかを第一に考えて仕事をすれば、おのずと世の中から喜ばれ、評価され、支持されて商売は成り立っていく。これが創業からのDNAであり、私たちがこれからも伝えていかなければいけないことです。
入社1年目に冬の富士山頂で撮影した一枚
(うらかわ・たつや)1984年立正大文学部地理学科卒、85年大和ハウス工業入社。執行役員東京支社建築事業部事業部長、常務執行役員東京本店建築事業部事業部長兼建築事業推進部長などを経て、17年6月現職。12年明大大学院グローバル・ビジネス研究科修了。神奈川県出身、56歳。

2017年7月24日月曜日

【回転窓】人生100年時代の生き方・働き方

 先日インタビューした学識者が、働き方改革の本質を「人生100年時代の生き方」と説いていた。確かに、今生まれた日本人が平均して98歳まで生きると考えれば、遠い未来の話ではなく、既に現実味を帯びたテーマだ▼18日に105歳で死去した医師の日野原重明氏(聖路加国際病院名誉院長)はまさに人生100年時代の生き方を体現した。きちんとした生活習慣の下、生涯現役として医師を続け、著作や講演など幅広く活動。100歳近くになってミュージカルを企画し、俳句も始めた。104歳で句集を出すなど好奇心は衰えしらずだった▼元気なら100歳まで社会と関わりを持ちながら生き、何らかの形で働く。日野原氏が実践した生き方、働き方はそんなことを示唆しているようだ▼生活や経済を支える社会資本も同じではないか。生涯現役として役割を果たすにはきちんとした手入れが不可欠。それがなければインフラや建築物に100年の命は宿らない▼メンテナンス時代と言われて久しい。黙々と守り続けるメンテナンスは、人の役に立ち、自身の成長にもつながる人生100年時代の新たな仕事となる。

2017年7月21日金曜日

【高速データ通信、7月22日から運用開始】スマートスタジアム事業、第2弾はカシマサッカースタジアム

カシマサッカースタジアムは国内最先端のスマートスタジアムとして
来場者らに様々な情報・サービスを提供することになる
(写真提供:茨城県)
Jリーグが進めるスタジアムのスマート化プロジェクトで、第2弾事業として鹿島アントラーズの本拠地「茨城県立カシマサッカースタジアム」に高密度wi-fiが導入された。4万人収容のスタジアムに455基の公衆無線LANアクセスポイント(AP)を整備。スタジアム全観戦エリアと近隣エリアで高速データ通信が可能になる。

 スマートスタジアム化のハード整備費用はJリーグやNTT、2017年シーズンから試合を中継しているDAZN(ダ・ゾーン)が全額負担。コンテンツ開発費用や設備運営費などランニングコストはアントラーズが負担する。

 Jリーグら3社は昨年、高密度wi-fiを整備して高速データ通信を可能にする「スタートスタジアム事業」で協業契約を結んだ。2017~26年シーズンの10年間で、J1クラブのホームスタジアムを中心に設備投資を実施し、スマート化を後押しする計画を立てている。すでに初弾プロジェクトとしてベガルタ仙台の本拠地、ユアテックスタジアム仙台(仙台市泉区)で高密度wi-fiの整備が完了。ベガルタ仙台は市と連携し、クラブや試合の情報だけでなく地域情報をスタジアム来場者や観光客、市民に届ける取り組みを始めている。
カシマサッカースタジアムの所在地は茨城県鹿嶋市神向寺後山26の2。RC・SRC・S造地上6階建て延べ8万5019㎡の規模で、2層式スタンドに4万0830人を収容する。竣工は2001年5月。アントラーズは導入した高密度wi-fiを活用した多彩な映像コンテンツ、パートナー企業と連携したコンテンツなどの提供で来場者満足度の向上を目指す。デジタルマーケティングの強化による観客動員のアップやファン層の拡大も図る。カシマサッカースタジアムは7月、2020年東京五輪でサッカー競技会場として使用することを、国際オリンピック委員会(IOC)理事会が正式承認した。

 wi-fiへのアクセスにはID取得などの手続きが必要となる。7月22日に開催する試合から運用を開始する。地震などの自然災害が発生した場合、通信環境が災害モードに自動で切り替わり、登録不要でwi-fiが利用できるという。

【アーク・ノヴァがやってくる】東京ミッドタウン、9月に開業10周年イベント開催


 開業10周年を迎えた東京ミッドタウン(東京都港区)で、巨大な移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」を活用したイベントが開かれる。


 アーク・ノバは建築家の磯崎新氏と英国人彫刻家のアニッシュ・カプーア氏が制作した高さ18m、幅30m、奥行き36mのドームで、収容可能人数は494人。

 スイスの音楽祭「ルツェルン・フェスティバル」が東日本大震災の復興支援を目的に企画し、2013~15年に宮城県松島町、仙台市、福島市の3カ所に展示され、コンサートやワークショップなどの会場になった。

 東京ミッドタウンの開業10周年イベントは、「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017 in 東京ミッドタウン」として9月19日~10月4日に開催。ミッドタウン・ガーデンの芝生広場にアーク・ノヴァを設置し、震災被災地で行われたイベントの様子を放映したり、コンサートや映画上映会を開いたりする。

 アーク・ノヴァは塩化ビニールでコーティングしたポリエステル膜でできており、約1時間の送風でドーム状に膨らむ。

 ホール内に設置するベンチの一部は、震災の記憶を残すために、津波の塩害と地盤沈下を理由に伐採した瑞巌寺(宮城県松島町)の参道杉を材料に、市民が参加したワークショップで制作した。アーク・ノヴァはラテン語で「新しい方舟」の意味という。イベントの詳細は東京ミッドタウンのホームページで。

【施設整備検討で小委設置へ】群馬県、28年国体の準備本格始動

群馬県は、2028年に開催する第83回国民体育大会(国体)の準備を本格化する。

 本年度内に競技団体や市町村と連携し準備委員会を設置する。準備委には関連する施設整備の小委員会も設ける。県内の大型主要スポーツ施設は老朽化しているものも多く、国体開催へ向け大規模な建設投資が行われる見通しだ。

 国体開催は1983年の「あかぎ国体」以来45年ぶり。第28回全国障害者スポーツ大会も同時期に県内で開催されることになる。

 大会開催の5年前(23年)には、開催県が日本体育協会と文部科学省スポーツ庁に開催申請書を提出することが求められている。申請書には、各競技の開催市町村や競技施設を明示する必要がある。各競技施設を新設するか、補修するか、既存施設をそのまま活用するかをそれまでに決定することになる。

県内の大型競技施設では、あかぎ国体時に使用された正田醤油スタジアム群馬(県営陸上競技場)、前橋総合運動公園テニス場など完成から30年以上経過した施設もある。

 敷島公園水泳場や馬事公苑、クレー射撃場など現行の競技基準を満たさない施設もあり、国体開催へ向け施設整備が必要になる。首都圏では埼玉国体(04年開催)で主要施設が更新期を迎えていたため、新武道館(上尾市)など複数の施設が建て替えられている。

 施設整備小委は準備委発足後に設置し、早ければ本年度末までに初会合を開く。今後、競技団体や市町村の希望を聞きながら、競技場所決定に向けた協議に入る。

【回転窓】経営人材をいかに確保するか

14年5月成立の「担い手3法」に代表される建設産業政策は、住宅・社会資本整備に携わる技術者や技能者の働きやすい環境を整備することに主眼が置かれてきた▼特に技能者については13年4月の大幅改定以来、公共工事設計労務単価の機動的な見直しを実施。末端まで浸透し切っていないとの指摘もあるが、技能者の処遇改善に向けて、これまでにないほどの対応が取られてきたのは確かであろう▼政府挙げての働き方改革が、建設分野では公共工事だけでなく民間工事でも実現できるのか。担い手の確保・育成には他産業並みに休暇が取れる環境を整えることが不可欠なだけに、官民が一体となった取り組みに期待したい▼ただ、産業の持続発展には労働供給側への対策だけでは不十分だ。技術者や技能者を抱えながら、事業をしっかりと継続していく経営人材をいかに育成するかも問われている。建設業法上の規制緩和も良いが、対象者がいなければ政策効果は出ない▼経営人材を育成するため、独自の奨学金制度を創設した専門工事会社もある。将来を託せる経営人材の確保-。こうしたことも後押しできる政策を願う。

【積女ASSAL】アーキ・ピーアンドシー・室井理乃さん

 ◇新しいことが学べる環境◇

 入社1年目は建具、2年目以降は外装、現在は7年目で内装の積算をしています。

 図面からいろいろなことを読み解く難しさを感じながらも、一つの部門にとどまらずに新しいことを学んで行ける今の環境が、とても良い刺激になっています。担当した物件の現場を見学させて頂く機会があります。実際に目で見て触れることにより、図面だけでは分からないことが理解できるようになり、さらに知識を深めることができています。

 積算というと知名度が低いように思いますが、当社では女性社員が年々増えています。さらに積女ASSALを通じて多くの女性が積算業務の中で活躍していることを知りました。女性が活躍できる仕事「積算」に少しでも多くの方が興味を持っていただけるとうれしいです。

 (むろい・りの、次回はアーツコンサルタントの小室直美さんを紹介します)

2017年7月20日木曜日

【ターゲットはラグジュアリーリゾート】不動産各社、需要獲得へ積極投資


 ◇伊良部島計画、前田建設で着工◇

 不動産各社がラグジュアリーリゾート市場で攻勢を強めている。森トラストは18日、沖縄県宮古島市の伊良部島でラグジュアリーホテルの本体工事に着手し、同日現地で地鎮祭を開いた。

 設計は坂倉建築研究所、施工は建築と昇降機工事を前田建設、空調と衛生設備工事を竹村コーポレーション、電気設備工事をきんでんが担当。18年の完成を目指す。

 計画名称は「(仮称)沖縄伊良部島計画」。計画地は宮古島市伊良部伊良部長底原818の5ほか(敷地面積9027平方メートル)。伊良部島南部の観光地「渡口の浜」に近接する。森トラストは地元企業の宮古島LaLaリゾートから土地を取得した。

 ホテルの規模はRC造地下1階地上4階建て延べ約5500平方メートルで、客室は約60室。全室オーシャンビューで、一部客室にはプライベートプールを設ける。誘致するホテルブランドは未定。

 森トラストは、沖縄県本部町の約34ヘクタールの土地でもホテル開発を計画している。同恩納村では、既存ホテルの大規模なリノベーションを行い、リゾートホテル「シェラトン沖縄サンマリーナリゾート」をオープン。未利用地で新たな開発も検討している。

 ◇20年までに6施設開業◇

ヒューリックとカトープレジャーグループ(KPG)が共同展開するスモールラグジュアリーリゾート(高級旅館事業)「ふふシリーズ」で、2020年東京五輪までに全国に6施設が新規開業する。今後も都心から2時間程度で移動できる神奈川県の三浦半島、千葉(房総エリア)、静岡県の伊豆などを対象に開発案件の具体化を進める。

 両社は共同で高級旅館の運営・コンサルタントを担うKHリゾートマネジメントを15年7月に設立し、各地域の特性を生かした施設の整備・運営を進めている。現在、3施設(熱海、箱根)を運営中。新たに6施設の開業に向けて設計、建設工事を進めている。各施設の総合監修・基本計画・デザインはTKN・ARCHITECTが担当。開発投資額は1件当たり40億円程度を見込む。

 19日に行った両社合同の事業説明会で、ヒューリックの高橋則孝常務執行役員は「市場でのブランド力を高めるためにも開発中の6物件に続き、新たに3、4件程度は開発していきたい」と表明。KPGの加藤友康社長は「ふふシリーズではハード・ソフトの細部まで作り込み、世界に発信できるトップリゾートを目指す」と語った。

 現在開発中の6施設の概要は次の通り。▽件名(所在地)=〈1〉施設規模〈2〉開業予定〈3〉設計・施工者等。

 ▽河口湖ふふ(山梨県富士河口湖町水口)=〈1〉延べ床面積4383平方メートル、32室〈2〉18年10月〈3〉設計・施工は竹中工務店

 ▽熱海ふふANEX・木の間の月(静岡県熱海市水口町15)=〈1〉6室〈2〉19年春

 ▽奈良ふふ(奈良市高畑町1184の1)=〈1〉延べ床面積4444平方メートル、30室〈2〉19年春〈3〉デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所、設計・施工は淺沼組

 ▽京都ふふ(京都市左京区南禅寺草川町43)=〈2〉19年春〈3〉設計は日建設計、施工は竹中工務店

 ▽日光ふふ(栃木県日光市本町1573の8)=〈1〉22室予定〈2〉19年秋〈3〉設計は久米設計、施工は東武建設

 ▽強羅ふふ(箱根エリア)=〈2〉20年春〈3〉設計・施工は大成建設。