2017年7月3日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・172

多少忙しくても、好きなものづくりができるから現場にいたい
 ◇大切なことは職人から学んだ◇

 白形弘幸さん(仮名)は、ゼネコンに入社して今年で15年目。首都圏を中心に複数の建築現場の施工管理を手掛け、2年前から本社の管理部門にいる。「早く現場に戻りたい」が口癖だ。

 多くの大工職人を抱える材木屋で育った。木材のかんながけなど、職人の華麗な技を見るのが好きで、気が付けばものづくりのとりこに。高校生の時に建築の道に進むことを決め、大学は建築学科を選んだ。「建築学科に進む人の多くは設計を志すが、自分は施工管理がやりたくて選んだ。その時から就職先はゼネコンしか考えられなかった。とにかく建物が造りたかった」と振り返る。

 大学3年生の時にアルバイトをしていた飲食店の近くに、あるゼネコンが本社を構えていた。いつも夜遅くにその会社の社員が来て、楽しそうに話をしていたのが印象的で、親近感を抱いた。面接を受けに行くと、店によく来ていた一人が面接官をしていて、「お互いにびっくりした」と笑う。

 そのゼネコンに入社し、初めて配属されたのは東京都内のマンション現場。工事写真の撮影など雑用が中心だったが、着工から竣工まで現場にいることができ、いろいろな業種と関わった。「完成した時はすごく感動した。たくさんの職人さんがいて、彼らとのコミュニケーションが楽しかった」という。

 仕事は上司から教わるのが基本だが、若い頃は仕事にせよ、遊びにせよ、職人から教わることの方が多い。白形さんもそうだった。「所長にあれをやってこいと指示されても、その内容が分からないことが何度もあった。所長には聞き直しづらいので、その都度、職人さんにこっそり教えてもらった」。自身も職人から言われたことやお願いされたことは、段取り良くいくように工夫し、上司とも掛け合った。そうした信頼関係を築きながら現場は進んでいった。

 施工管理のどこにそれほど魅了されるのか。「安全、工程、品質、環境、原価すべてを見るのが醍醐味(だいごみ)。もうけないといけない、施主と交渉もしないといけない、協力会社もまとめないといけない。そして、近隣や環境にも配慮する。こんなにいろいろなことができる仕事はほかにない。大変だからこそ、やりがいがあるし、完成した時の達成感も大きい」と力を込める。

 同じ現場は一つとしてない。同じ目標のために集まった仲間も、その現場が終わるとまた別の現場へとそれぞれ散っていくことになる。ただ、コミュニケーションのよく取れた現場は、その時のメンバーが集まって酒を飲むこともある。

 所長の経験はまだない。現場勤務に戻ったら、挑戦したいと考えている。人とのつながりがたくさんでき、生涯で好きなものづくりがたくさんできる。

 「多少忙しくてもこの仕事を続けているのは、きっとそういう理由なんじゃないかな」。

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