2017年9月11日月曜日

【駆け出しのころ】馬淵建設常務取締役・角井英明氏

 ◇人と人の信頼関係が基本に◇

 東京オリンピックが開かれたのは、私が15歳の年でした。開催に伴って造られたさまざまなインフラや施設をテレビなどで見たのが建築に興味を持ったきっかけです。大学では建築を学び、地元の会社で名前を知っていた馬淵建設の入社試験を受けました。

 入社すると技術課に配属され、施工図の作成補助などを担当しました。半年後、東京支店工事部に移り、千葉県内の病院建築工事に携わります。この現場で初めて所長を務めた上司からは、しっかりとした計画の柱と段取りが工事を進める上でいかに大切かを教え込まれました。これ以降も東京支店が担当する東京都以外の地域で施工管理に従事します。

 当時は、名刺を出しても会社の知名度がない地域での現場を担当することが少なくなく、高度成長時代でもあったため、協力会社の確保には所長以下、現場職員が汗をかいて対処しました。人材を確保することの難しさと大切さがよく分かりました。

 若い頃は、昼間に現場で施工のプロセスを勉強し、主に夜間に事務所で施工図を描いて先輩からその基本や納まりのディテール、数量拾いなどの施工管理技術を教えてもらいました。計画から施工図の作成、チェックまで一気通貫で管理をしていたため、現場の状況が細部にわたり把握できる環境であったと思います。結婚を契機に自分から会社に申し入れ、横浜にある本社の配属となって現場を担当しました。

 これまで施工に携わった多くの現場で貴重な経験を積んできましたが、中でもある現場での経験は得難いものがありました。著名な設計事務所が設計した建物で、この監理者は命懸けと言ってもいいほどの姿勢を全面に出す方でした。完璧な作品を造ろうと一切の妥協を許さず、非常に高度な施工管理を求められました。一つのことが決まるのにも時間がかかり、なかなか工事を計画通りに進められませんでした。

 若かった私はこの方に反発することもありましたが、自分の技術的な未熟さが分かりましたし、あれほどの熱意と情熱を仕事に注げることのすごさも学ばせていただきました。

 私たちの会社の理念は「信頼と技術の馬淵建設」であり、信頼していただける関係を社内外でつくり上げていくことが大切です。基本は人と人の信頼関係です。若い人たちには、信頼される社会人、企業人、技術者になってほしいと期待します。これからは、より限られた時間の中で中身のある仕事をしていかなくてはなりません。与えられた時間をどう有効に活用し自分の能力を発揮していくか。そうしたことを考えられる人が成長していけるのだと思います。

 (建設事業本部長兼土木本部長、つのい・ひであき)1972年明治大工学部建築学科卒、馬淵建設入社。執行役員建築統轄部副部長兼工事一部部長、取締役建設事業本部副本部長兼建築統轄部長、同建設事業本部長、同建築本部長、同建設事業本部長兼営業本部長などを経て、16年6月から現職。神奈川県出身、67歳。
会社に入って5、6年目の頃に現場事務所で
(前列左側が本人)

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