2017年9月11日月曜日

中堅世代-それぞれの建設業・178

女性の働きやすい現場の環境整備が進んでいる
 ◇現場のやりがいに男女は関係ない◇

 「女性の活躍が大きく取り上げられ、新たな取り組みが次々と出てくる。自分が入社した時からすると考えられない」。

 17年前にゼネコンに土木技術者として入社し、現在は広報を担当している加藤詩織さん(仮名)。現在の建設業界の状況には隔世の感があるという。

 父が土木関係の仕事をしていたこともあり、幼い頃からダムや橋梁などの大型構造物を見に行くのが休日の過ごし方だった。「いつかは自分でも大きな構造物を造りたい」。小学生の頃にはそんな思いが芽生えた。その気持ちは変わらず、大学は土木系の学部に進んだ。

 就職活動でも迷わずゼネコンを受けた。だが、2000年ごろは就職氷河期。なかなか内定をもらえない。「ここで落ちたら諦めよう」と思い受けた準大手ゼネコンで内定が出た。

 入社後、すぐに配属された部署では、発注者から受け取った図面や計算書に間違いがないかなどをチェックする業務を任された。「面接試験の時には、現場で働きたいと伝えていたのに、女性ということもあって希望を受け入れてもらえなかった」。男女の間で入社後の扱いに大きな差があると実感したという。

 上司には「現場で働きたい」と訴え続けた。そのかいあってか、4年目を迎えると同時に土木工事の現場へ配属された。「やっと自分のやりたいことができる」。そう思った。 

 最初の配属現場では、橋梁の基礎工事のコンクリート管理を任された。だが、想像と現実は大違い。所長に「あれをやってこい」と指示されても、その内容がまったく分からないということが何度もあった。「所長に聞くと、現場から外されるのではないかという恐怖心があり、聞けなかった」。そんな時に頼りにしたのが職人。「職人さんにこっそり教えてもらった」。当時、親しくしてくれた職人とは今も親交がある。

 希望通りに現場に出て、多くの人に支えられながら完成した構造物を見た時、感動で涙が出たのを鮮明に覚えている。「この仕事を続けているのは、やりがいが苦労を上回るから。その気持ちに男女は関係ない」。

 その後に担当したどの現場も、ほぼ全員が男性。更衣室やトイレなどの環境も整っていなかったが、やりがいをばねに、残業続きや休みなしにも耐えた。「自分と同じように、現場で働きたいと思っている女性が実はたくさんいるはず」。そう思ってきた。精神的・肉体的につらい時にも、そんな人たちの先導役になりたいと気持ちを奮い立たせ、必死に踏ん張った。

 結婚や出産を経て4年前に広報部へ配属された。現在の部署でも、現場のことは頭から離れたことがないが、今は広報の立場から、女子学生にたくさん入職してもらいたいと女性活躍の取り組みのアピールに工夫を凝らす。

 女性が働きやすいよう、ここ数年で現場の環境は様変わりした。「また現場に出られる機会があれば、どう変わったのか自分の目で確かめたい」と思っている。

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